ミサイル護衛艦が異世界転移!? しかも艦長が幼女になっちゃいましたけど?

帝国妖異対策局

文字の大きさ
44 / 214
第一章 護衛艦フワデラ

第43話 古代神殿の悪夢 Side:ミ=ゴ

しおりを挟む
~ 古代神殿破壊、数時間前 ~

 古代神殿の地下で雌伏の時を過ごしていた妾《わらわ》は、一昨日から侵入者がここへ近づいていることに気付いていた。

 妾の前では目覚めた子どもたちが集って、花の蕾のような頭を微かに震わせておる。

「「偉大なるマザー! 我々に道をお示しください」」

 子供たちが羽を振るわせて音を立てて妾の指示を仰ぐ。

「侵入者は全て生きたまま捕らえなさい。その脳を夢見る機械で十分に肥えさせた後に食餌とするのです」

 妾の意志を受けた兵隊ミ=ゴたちが、羽音を立てながら侵入者たちのところへ向かっていく姿を妾は愛おしく思いつつ見送った。

 久々に新鮮な脳を味わうことができる期待に、妾は頭部から涎が流れ出すのを止められない。

 この星に取り残されたミ=ゴを率いてきた王たるドドミ=ゴが、何者かによって殺されて以降、我らはこの地下で雌伏の時を過ごしてきた。

 魔族共を恐怖で縛り定期的に脳を献納させていたのだが、ドドミ=ゴの死はそれを途絶えさせることになった。

 幸い魔鉱石が豊富なこの場所にいる限り、飢えて死ぬようなことはない。ただしそれだけだった。

 今では地上階にある脳の精神汚染施設を動かすことさえできず、貴重な脳を腐らせてしまった。

 この星の生物の脳を採集し、精神汚染によって発酵させた上で食する楽しみは断たれてしまっていた。

「あぁ口惜しい。あの、ゆうしゃとやらの爛れた精神……至高の味となっただろうに……」

 唯一の希望は、茂木という勇者の存在だ。

「あの男は、妾に約束した。妾に大陸中の脳を好きなだけ喰わせると……」

 その時は近い。

 これまでずっと地上の動向など全く興味はなかったが、勇者の話を聞いてからは一変した。

 勇者である茂木は魔族共を率いて人類を蹂躙するつもりだと言っていた。茂木たちが勝利するための鍵となるのが妾達であると。その時の茂木の顔が思い出される。

「家畜豚《ニンゲン》共は、この山脈で北と南に分断されてるんだ。北の連中は、まだ自分たちが戦火に巻き込まれると思ってねぇ。呑気なもんさ」

 そのことについては妾も承知している。時折、無謀にも山脈越えを選択した旅人の脳から、そうした記憶を見たことがある。

 北方の国々は、魔族と人類軍の衝突を半ば他人事のように観察しているようだった。少々の軍隊を派遣している北方国もあったようだが、それはアリバイ作りのためであることが明らかだ。

 ……それにしても、精神汚染施設が稼働していれば熟した脳を味わえたものを。直接、吸うのは妾の肥えた舌にはいまひとつ合わぬ。

「まぁ、そこでだ。あんたらミ=ゴ? は、時が来たら一斉に山から下りてここら辺の都市で暴れまわって欲しいわけよ。なに無茶は言わねぇよ。ビビらせるだけでいい。後は俺たちが蹂躙する」

 そう言って勇者茂木は、これまで途絶えていた脳の供給を再開してくれた。

「必要な脳みそは魔族共に運ばせっからよ。それまで数を増やして蹂躙の時に備えておいてくれや」

 妾は勇者茂木の言葉に従い、これまでずっとミ=ゴたちの数を増やし続けてきた。脳さえあれば文句はない。

 精神汚染施設は稼働できなかったが、それは勇者茂木が約束を果たしてから、子供たちに修復に取り組ませれば良いだけのことだ。

 来るべき祝福の日を待ち遠しく思いながら、妾は日々、新しい子どもたちを生み続けていた。



~ 古代神殿破壊直前 ~

「偉大なるマザー! 奴らが基地の内部へ侵入しました!」

 不快……

 不快じゃ!

 侵入者を捉えに向った子供たちは誰一人として戻らなかった。

 それだけではない。侵入者たちは、妾の子供たちを育ている地下広間までやってきおった。
 
 今や妾が感知できる目の前まで到達している。

 不快……

 不快じゃ!

 彼奴らをどうやって狂い死にさせてやろうか!

 一人ひとり、その仲間の目の前で脳髄を堪能してやろうか!

 その無礼をどうやって恐怖と共に脳に刻み込んでやろうか!

 そんなことを考えているとき、侵入者の一人が妾の魔鉱石に手を付けた。

「ギィィィィィィィ! この猿がぁぁぁぁ!」

 妾が怒りのあまり羽を鳴らすと、子供たち全員が跳ね起きた。
 
「皆で食い散らかすがよい! 脳と言わず、身体と言わず、喰いつくすがよい!」

 妾の言葉を受け、その場にる全てのミ=ゴが侵入者たちに襲い掛かる。

「撃ちます!」

 侵入者のひとりがそんな音を発した。

 次の瞬間、この地下広間のあちこちに巨大な爆発が発生した。

「何が起こったのじゃ!? 魔術!? 何故じゃ!? ここで魔術は使えないはず!」

 この地下では、魔鉱石から無限に供給される魔力を駆使して、妾はスキル【沈黙の神殿】を展開し続けている。この影響範囲にいる者は誰であれ魔術を行使することはできないはずだ。

「魔力を使っていないのか? 魔術ではないのか?」

 混乱の中、侵入者たちは撤退を始めている。

 逃がしてなるものか!

 だが魔力を使わない彼奴等の魔法が、激しい光と音を発しながら妾の子供たちを次々と大地へ沈めて行く。

 侵入者たちが吹雪く山道の中へ消えたとき、妾はほとんどの子供たちを失っていた。

 妾のバラの蕾のような頭部が真紅に染まる。

 この恨み……晴らさずにおくべきものか。

 大陸中の人間の脳を、彼奴等が最も苦しむ残酷な方法で吸い尽くしてやる!

 妾は子どもたちの遺骸を集め、それを喰らいつつ慟哭する。

 ひとまず満腹した、その時――

 凄まじい衝撃が――



~ 護衛艦フワデラCIC ~

「全弾着弾!」

 山形砲雷科長が平野副長に向って叫ぶ。

 平野副長は受話器を手に取り、マルラナ山中にいる艦長に報告する。
 
「艦長、全弾着弾。目標を破壊ターゲットキルしました」

 古代神殿は跡形もなく破壊された。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

処理中です...