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第七章 悪魔勇者討伐作戦
第144話 宅配ステーション
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護衛艦フワデラの乗組員で一番忙しいのは私であることは間違いない。
艦長としての職務以外に、ほぼ毎日のようにあちこち飛び回ってはフワーデ・フォーやドラゴンジャーとして戦ったり、投げ銭が増える決めポーズを色々考えたり、投げ銭が増える新しい企画を考えたり、投げ銭が増える決めポーズを色々試したりしているのだ。
超忙しい。
だが、あちこち飛び回っているという点に限れば、私よりも遥かに超忙しくしている者がいる。
それが帝国水陸機動隊の葛西充少尉(34歳独身)だ。
「艦長! 葛西到着しました!」
ごつい身体で敬礼をする葛西は、私が普通の大人だった頃の筋肉仲間だ。今は幼女なので控えているが、よく一緒にマッスルトレーニングに励んでお互いの筋肉を褒めたたえていたものだ。
「いつもすまんな葛西くん。最近は忙しくて、筋肉を可愛がる時間もないだろう」
「いえ! 移動中のヘリでも空気椅子やディップスで鍛えてるので大丈夫です」
ディップス……座席を使った筋トレという方法があったか。
私はいつもの癖で、ついつい葛西の腹筋や太ももをパシパシと叩いて、彼の筋肉の固さを確かめる。
「さすがだな! 葛西!」
以前、私が葛西をパシパシするのを見た平野から「それをセクハラと認識して鼻血を出す機関長や航海長がいるから止めろ」と、何度も注意された。
学生時代はラクビー選手だったという葛西は、その有り余る体力を活かし宅配便のアルバイトで学費を賄っていた苦学生だ。
性格も真面目で器量も大きい。こいつは本当に良い男なのである。
だから私のパシパシには、単に彼の筋肉を褒めたたえるという意味だけではなく、彼に対する愛情が込められている。
そのように平野に説明すると、平野が赤面して鼻を抑えていたが意味がわからん。
「只今より受け取り作業に入ります!」
「頼んだぞ!」
葛西が月光基地の倉庫に移動して、常駐員と打ち合わせを始める。
宅配便でのアルバイトがトリガーにでもなったのだろうか、この異世界に来て彼が得たスキルは……
スキル【宅配受け取りステーション】
これは神ネット業務スーパーで注文したものを受け取ることができるスキルだ。このスキルでは注文を行うことはできない。あくまで受け取りだけだ。
葛西の方を見ると、常駐員が読み上げるリストをいちいちタブレットに入力していた。このように発注自体は通信を経由して護衛艦フワデラから行う。
発注後、一時間以内に神ネット業務スーパーから物資が届けられる。燃料や水もタンクの近くに立っていれば、きちんとそこに補充してくれる。
つまり葛西本人と通信環境さえあれば、どこでも神ネット業務スーパーが利用できるのだ。
今や葛西はめちゃくちゃ重要人物となっている。
注文が終わった葛西に昼食を一緒にとらないかと話しかけた。
「申し訳ありません、艦長。今日はあと6カ所回らないといけないので、物資が到着次第すぐに出発します」
「お、おう……本当に大変だな」
SH-60L哨戒ヘリのカタログ値での航続距離を超える月光基地にでも、葛西が入ればノンストップで移動ができる。
飛行中に燃料補給が出来てしまうからだ。
究極的には、もし故障や戦闘でヘリが駄目になったとしても、葛西と通信さえ無事なら新品のヘリが1時間以内に届けられるのだ。EONポイントの消費がとんでもないことになるが、もちろん緊急事態になれば許可するつもりだ。
実際、月光基地や辺境にある隠し拠点への兵装や重機は、彼のスキルによって配置されている。
物資が到着すると葛西はすぐに次の拠点へと出発していった。
ふと気になったので平野に葛西のスケジュールを確認してみたところ……
「葛西ですが、一日の大半をヘリで移動している生活ですね。何度も乗り継ぎしてますし、この世界に来てからの飛行時間はパイロットよりも長いです」
「マジか!?」
「マジです」
久しぶりに話をした葛西の顔には、それほど疲れが浮かんでいるようには見えなかったが、さすがにどこかでぶっ倒れそうな気がする。
「何とかして休ませてやりたいが……」
そう言うと平野は同意を示しつつ、葛西が頑張っている理由を話してくれた。
「彼には婚約者がいるそうです」
「帝国に?」
「はい。ですので帝国への帰還を一日でも早めようと頑張っているのでしょう」
とはいえ、このままでは葛西の負担が増えていくばかりだし、彼が倒れでもしたら物流が破綻してしまう。
「少なくともリーコス村周辺は葛西に頼らずに済むようにしよう。できればアシハブア王国にも力を貸してもらうとするか」
「では例の9計画を?」
「あぁ、今すぐ始めてくれ」
9計画は、リーコス村とグレイベア村、そしてアシハブア王都を結ぶ物流網を構築するというもの。
リーコス村とグレイベア村の物流は、人魚族と11m作業艇による沿岸海上路と、トロッコによって結ばれている。これに加えて陸上で二つの村の間に鉄道路を敷くことで、円環状の物流経路を完成させる。
さらに制海権を確保している海上路をアシハブア王都まで伸ばすと、地図上の経路が9に見えるので、9計画と呼称しているわけだ。
「艦長にも、これまで以上にEONポイントを稼いでいただかなくてはなりませんね。そういえばドラゴンジャーの出演要請が来ていましたが、向かわれますか?」
「もちろんだ!」
ドラゴンジャーやフワーデ・フォーの活動をもっと頑張って、葛西の負担を一日でも早く減らそう。そうしよう。
そして私は翌日のヘリでグレイベア村へと向かうことに決めた。
のだが――
「艦長! 坂上隊が戦闘に巻き込まれました!」
ちょっと無理そう。
艦長としての職務以外に、ほぼ毎日のようにあちこち飛び回ってはフワーデ・フォーやドラゴンジャーとして戦ったり、投げ銭が増える決めポーズを色々考えたり、投げ銭が増える新しい企画を考えたり、投げ銭が増える決めポーズを色々試したりしているのだ。
超忙しい。
だが、あちこち飛び回っているという点に限れば、私よりも遥かに超忙しくしている者がいる。
それが帝国水陸機動隊の葛西充少尉(34歳独身)だ。
「艦長! 葛西到着しました!」
ごつい身体で敬礼をする葛西は、私が普通の大人だった頃の筋肉仲間だ。今は幼女なので控えているが、よく一緒にマッスルトレーニングに励んでお互いの筋肉を褒めたたえていたものだ。
「いつもすまんな葛西くん。最近は忙しくて、筋肉を可愛がる時間もないだろう」
「いえ! 移動中のヘリでも空気椅子やディップスで鍛えてるので大丈夫です」
ディップス……座席を使った筋トレという方法があったか。
私はいつもの癖で、ついつい葛西の腹筋や太ももをパシパシと叩いて、彼の筋肉の固さを確かめる。
「さすがだな! 葛西!」
以前、私が葛西をパシパシするのを見た平野から「それをセクハラと認識して鼻血を出す機関長や航海長がいるから止めろ」と、何度も注意された。
学生時代はラクビー選手だったという葛西は、その有り余る体力を活かし宅配便のアルバイトで学費を賄っていた苦学生だ。
性格も真面目で器量も大きい。こいつは本当に良い男なのである。
だから私のパシパシには、単に彼の筋肉を褒めたたえるという意味だけではなく、彼に対する愛情が込められている。
そのように平野に説明すると、平野が赤面して鼻を抑えていたが意味がわからん。
「只今より受け取り作業に入ります!」
「頼んだぞ!」
葛西が月光基地の倉庫に移動して、常駐員と打ち合わせを始める。
宅配便でのアルバイトがトリガーにでもなったのだろうか、この異世界に来て彼が得たスキルは……
スキル【宅配受け取りステーション】
これは神ネット業務スーパーで注文したものを受け取ることができるスキルだ。このスキルでは注文を行うことはできない。あくまで受け取りだけだ。
葛西の方を見ると、常駐員が読み上げるリストをいちいちタブレットに入力していた。このように発注自体は通信を経由して護衛艦フワデラから行う。
発注後、一時間以内に神ネット業務スーパーから物資が届けられる。燃料や水もタンクの近くに立っていれば、きちんとそこに補充してくれる。
つまり葛西本人と通信環境さえあれば、どこでも神ネット業務スーパーが利用できるのだ。
今や葛西はめちゃくちゃ重要人物となっている。
注文が終わった葛西に昼食を一緒にとらないかと話しかけた。
「申し訳ありません、艦長。今日はあと6カ所回らないといけないので、物資が到着次第すぐに出発します」
「お、おう……本当に大変だな」
SH-60L哨戒ヘリのカタログ値での航続距離を超える月光基地にでも、葛西が入ればノンストップで移動ができる。
飛行中に燃料補給が出来てしまうからだ。
究極的には、もし故障や戦闘でヘリが駄目になったとしても、葛西と通信さえ無事なら新品のヘリが1時間以内に届けられるのだ。EONポイントの消費がとんでもないことになるが、もちろん緊急事態になれば許可するつもりだ。
実際、月光基地や辺境にある隠し拠点への兵装や重機は、彼のスキルによって配置されている。
物資が到着すると葛西はすぐに次の拠点へと出発していった。
ふと気になったので平野に葛西のスケジュールを確認してみたところ……
「葛西ですが、一日の大半をヘリで移動している生活ですね。何度も乗り継ぎしてますし、この世界に来てからの飛行時間はパイロットよりも長いです」
「マジか!?」
「マジです」
久しぶりに話をした葛西の顔には、それほど疲れが浮かんでいるようには見えなかったが、さすがにどこかでぶっ倒れそうな気がする。
「何とかして休ませてやりたいが……」
そう言うと平野は同意を示しつつ、葛西が頑張っている理由を話してくれた。
「彼には婚約者がいるそうです」
「帝国に?」
「はい。ですので帝国への帰還を一日でも早めようと頑張っているのでしょう」
とはいえ、このままでは葛西の負担が増えていくばかりだし、彼が倒れでもしたら物流が破綻してしまう。
「少なくともリーコス村周辺は葛西に頼らずに済むようにしよう。できればアシハブア王国にも力を貸してもらうとするか」
「では例の9計画を?」
「あぁ、今すぐ始めてくれ」
9計画は、リーコス村とグレイベア村、そしてアシハブア王都を結ぶ物流網を構築するというもの。
リーコス村とグレイベア村の物流は、人魚族と11m作業艇による沿岸海上路と、トロッコによって結ばれている。これに加えて陸上で二つの村の間に鉄道路を敷くことで、円環状の物流経路を完成させる。
さらに制海権を確保している海上路をアシハブア王都まで伸ばすと、地図上の経路が9に見えるので、9計画と呼称しているわけだ。
「艦長にも、これまで以上にEONポイントを稼いでいただかなくてはなりませんね。そういえばドラゴンジャーの出演要請が来ていましたが、向かわれますか?」
「もちろんだ!」
ドラゴンジャーやフワーデ・フォーの活動をもっと頑張って、葛西の負担を一日でも早く減らそう。そうしよう。
そして私は翌日のヘリでグレイベア村へと向かうことに決めた。
のだが――
「艦長! 坂上隊が戦闘に巻き込まれました!」
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