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第八章 護衛艦ヴィルミアーシェ
第162話 仮初のお宝
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お宝パンツを奪い合うドローン競技については、私は一切関わっていない。
天地神命に誓って無関係だ!
もし、そんな競技を企画するなら平野のパンツは絶対はずす!
バレたら怖いし、それを妻に報告されたら……私は文字通り消されるだろうが!
なのに、何故か容疑者であるヴィルミカーラや山形砲雷長と一緒に、お説教ルームに連行されてしまった。
お説教ルームは、リーコス村の司令部にある一室だ。
捕虜に対する尋問や取り調べを行っていた部屋をそのまま流用したもの。
薄暗い部屋の奥には大きなモニタが置かれており、その両脇にはヴィルミアーシェさんと、サングラスをかけた女性が座っていた。
そしてヴィルミカーラと山形砲雷長、そして無罪の私は、モニタの正面で正座させられている。
モニタの電源が入ると、そこに平野艦長の顔が映し出された。
「貴方たちがここに呼び出されている理由はわかっていますね?」
平野の氷より冷たい声に、正座組全員がビクッと肩を震わせる。
「グレイベア村の村長様にもご出席いただく予定でしたが、ご本人から今回の処置については私に一任するとのことでした。ルカ村長、ヴィルミアーシェ村長、そして私が、これから何を処するのかわかってますね?」
正座組がまたビクってなる。
ちなみに何度も繰り返すが、私は今回の件に一切関わっていない!
なのに、何故かここで正座して震えている。
理不尽だ!
「艦長……」
「うひっ!?」
平野に声を掛けられた私は、思わず悲鳴を上げてしまう。
これはもうパブロフ的な条件反射なので理屈じゃ止めようがない。
スッ……と平野の目が細くなる。
今回の件については、私が一切関わっていないことを自信を持って主張する!
……のだが、もしかすると平野のお説教は他のことについてかもしれない。
それならかなり心当たりが……ある。かなりある。
「今回の下品な競技について、艦長は何か関わっていますか?」
ブンブンッと風を切る音がするくらいの高速で、私は首を横に振った。
「きちんと言葉で答えてください」
「一切関わってない!」
食い気味に答えた私を、平野の冷たい目が睨み付けている。
「……」※沈黙
「……」※沈黙
重たい沈黙が続く。
「では質問を変えます。昨日、リーコス村視察中にも関わらずラミアパブに4時間も入り浸っていましたね?」
「いや、休憩に立ち寄っただけで入り浸ってなど……」
「チョーウけるぅぅぅぅぅぅ!」
サングラスの女が私を指差して爆笑し始めた。
チクショウ! やっぱり土岐川だったか!
土岐川雪乃二等水兵のスキル【チョーウける真偽判定】は、指定した対象が嘘をつくと土岐川が超ウケてしまうというものだ。
本来は捕虜の尋問にこそ活用されるスキルだが、ここ最近は、平野が私の嘘を見抜くために使われることが多い。
土岐川の爆笑を見た二人の容疑者が、ほっと溜息を吐く。
私に対してスキルが使われているということは、自分たちには使われていないと思ったのだろう。
そんな容疑者たちの内心を見透かしたような平野の発言が続く。
「悪魔勇者討伐で乗組員のスキルが向上したことで、今の土岐川は同時に3人を対象にスキルが発動できるようになっています。発言には注意するように」
容疑者たちの顔が青ざめた。
「どうやら艦長の方は、今回の件については無罪のようですね」
平野が私の無罪を認めてくれた。
思わずホッとため息が出る。
「とはいえ部下の不始末は上司が責任を取るものですし、この件についての処分が決定した後は、ラミアパブの件についてお伺いします」
結局、二人の容疑者に対する説教の間、ずっと一緒に正座させられた。
さらにその後は、私だけ残されて平野からお説教をくらった。
チクショー!
ちなみに、お説教に連れ出された私たちは試合を見ることができなかったが、ドローン競技「お宝ゲットだヤフー!」の結果は、フワデラチームの勝利だったようだ。
これまでの大会において史上まれにみる激戦が繰り広げられていたらしい。
そもそもフワデラのチームはドローン操作では一日の長があり、他2チームよりレベルが数段上だったので、今回の結果についてはある程度は予想されていた。
ただ、この競技においては、参加者の気迫が圧倒的だったみたいだ。
フワデラチームに参加していた青峰上等兵曹などは、競技前に他のメンバーと水盃を交わし、
「たとえ仮初《かりそめ》のお宝とはいえ、女王様の名を冠した宝具を万が一にも敵に奪われるようなことになれば、我ら近衛兵は腹を切って詫びよう」
などと、どこまで本気か冗談なのかわからないような、物騒なことを言っていたたらしい。
これと似たようなことが、他のチームでも行われていたという。
彼らの言う女王様って、やはり平野のことだろうか。確かに、うちの乗組員に陰で平野を女王様と呼んでいる者がいることは知っている。
鞭を持ってるジト目の女王様というなら、まぁ確かに平野かもしれない。
だが、ドラゴン幼女も魔族を率いているくらいだから、女王様と呼ばれてても不思議じゃない。
まぁ、三人の中で女王様を選ぶとしたら、私はヴィルミアーシェさん一択だけどな!
なんて個人の感想はともかく。結局、各チームが自分たちの女王様を守るために、全力を尽くして頑張ったということか。
きっとそうだよな。
私は無理やり自分を納得させて、直感が鳴らす警鐘から耳を塞いだ。
しかし、私の脳裡には、鞭を持って私を見下す平野のイメージが8K映像で展開されていて消せない。
彼女の持つスキル【見下し好感度UP】。
悪魔勇者討伐の報酬でレベルが何段階かアップしているはずだ。
フワーデの図鑑でチェックしてみたものの「すっごく強くなったよ!」としか表示されていなかった。
自分自身が何度も体験しているからわかる。
あのスキルは超危険だ。
もし平野が本物の女王になろうと思ったとしたら、それを容易く成してしまうほどに。
ま、まぁ、そうであってもまさか平野がそんなことするわけないか。
ないよな。
天地神命に誓って無関係だ!
もし、そんな競技を企画するなら平野のパンツは絶対はずす!
バレたら怖いし、それを妻に報告されたら……私は文字通り消されるだろうが!
なのに、何故か容疑者であるヴィルミカーラや山形砲雷長と一緒に、お説教ルームに連行されてしまった。
お説教ルームは、リーコス村の司令部にある一室だ。
捕虜に対する尋問や取り調べを行っていた部屋をそのまま流用したもの。
薄暗い部屋の奥には大きなモニタが置かれており、その両脇にはヴィルミアーシェさんと、サングラスをかけた女性が座っていた。
そしてヴィルミカーラと山形砲雷長、そして無罪の私は、モニタの正面で正座させられている。
モニタの電源が入ると、そこに平野艦長の顔が映し出された。
「貴方たちがここに呼び出されている理由はわかっていますね?」
平野の氷より冷たい声に、正座組全員がビクッと肩を震わせる。
「グレイベア村の村長様にもご出席いただく予定でしたが、ご本人から今回の処置については私に一任するとのことでした。ルカ村長、ヴィルミアーシェ村長、そして私が、これから何を処するのかわかってますね?」
正座組がまたビクってなる。
ちなみに何度も繰り返すが、私は今回の件に一切関わっていない!
なのに、何故かここで正座して震えている。
理不尽だ!
「艦長……」
「うひっ!?」
平野に声を掛けられた私は、思わず悲鳴を上げてしまう。
これはもうパブロフ的な条件反射なので理屈じゃ止めようがない。
スッ……と平野の目が細くなる。
今回の件については、私が一切関わっていないことを自信を持って主張する!
……のだが、もしかすると平野のお説教は他のことについてかもしれない。
それならかなり心当たりが……ある。かなりある。
「今回の下品な競技について、艦長は何か関わっていますか?」
ブンブンッと風を切る音がするくらいの高速で、私は首を横に振った。
「きちんと言葉で答えてください」
「一切関わってない!」
食い気味に答えた私を、平野の冷たい目が睨み付けている。
「……」※沈黙
「……」※沈黙
重たい沈黙が続く。
「では質問を変えます。昨日、リーコス村視察中にも関わらずラミアパブに4時間も入り浸っていましたね?」
「いや、休憩に立ち寄っただけで入り浸ってなど……」
「チョーウけるぅぅぅぅぅぅ!」
サングラスの女が私を指差して爆笑し始めた。
チクショウ! やっぱり土岐川だったか!
土岐川雪乃二等水兵のスキル【チョーウける真偽判定】は、指定した対象が嘘をつくと土岐川が超ウケてしまうというものだ。
本来は捕虜の尋問にこそ活用されるスキルだが、ここ最近は、平野が私の嘘を見抜くために使われることが多い。
土岐川の爆笑を見た二人の容疑者が、ほっと溜息を吐く。
私に対してスキルが使われているということは、自分たちには使われていないと思ったのだろう。
そんな容疑者たちの内心を見透かしたような平野の発言が続く。
「悪魔勇者討伐で乗組員のスキルが向上したことで、今の土岐川は同時に3人を対象にスキルが発動できるようになっています。発言には注意するように」
容疑者たちの顔が青ざめた。
「どうやら艦長の方は、今回の件については無罪のようですね」
平野が私の無罪を認めてくれた。
思わずホッとため息が出る。
「とはいえ部下の不始末は上司が責任を取るものですし、この件についての処分が決定した後は、ラミアパブの件についてお伺いします」
結局、二人の容疑者に対する説教の間、ずっと一緒に正座させられた。
さらにその後は、私だけ残されて平野からお説教をくらった。
チクショー!
ちなみに、お説教に連れ出された私たちは試合を見ることができなかったが、ドローン競技「お宝ゲットだヤフー!」の結果は、フワデラチームの勝利だったようだ。
これまでの大会において史上まれにみる激戦が繰り広げられていたらしい。
そもそもフワデラのチームはドローン操作では一日の長があり、他2チームよりレベルが数段上だったので、今回の結果についてはある程度は予想されていた。
ただ、この競技においては、参加者の気迫が圧倒的だったみたいだ。
フワデラチームに参加していた青峰上等兵曹などは、競技前に他のメンバーと水盃を交わし、
「たとえ仮初《かりそめ》のお宝とはいえ、女王様の名を冠した宝具を万が一にも敵に奪われるようなことになれば、我ら近衛兵は腹を切って詫びよう」
などと、どこまで本気か冗談なのかわからないような、物騒なことを言っていたたらしい。
これと似たようなことが、他のチームでも行われていたという。
彼らの言う女王様って、やはり平野のことだろうか。確かに、うちの乗組員に陰で平野を女王様と呼んでいる者がいることは知っている。
鞭を持ってるジト目の女王様というなら、まぁ確かに平野かもしれない。
だが、ドラゴン幼女も魔族を率いているくらいだから、女王様と呼ばれてても不思議じゃない。
まぁ、三人の中で女王様を選ぶとしたら、私はヴィルミアーシェさん一択だけどな!
なんて個人の感想はともかく。結局、各チームが自分たちの女王様を守るために、全力を尽くして頑張ったということか。
きっとそうだよな。
私は無理やり自分を納得させて、直感が鳴らす警鐘から耳を塞いだ。
しかし、私の脳裡には、鞭を持って私を見下す平野のイメージが8K映像で展開されていて消せない。
彼女の持つスキル【見下し好感度UP】。
悪魔勇者討伐の報酬でレベルが何段階かアップしているはずだ。
フワーデの図鑑でチェックしてみたものの「すっごく強くなったよ!」としか表示されていなかった。
自分自身が何度も体験しているからわかる。
あのスキルは超危険だ。
もし平野が本物の女王になろうと思ったとしたら、それを容易く成してしまうほどに。
ま、まぁ、そうであってもまさか平野がそんなことするわけないか。
ないよな。
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