ミサイル護衛艦が異世界転移!? しかも艦長が幼女になっちゃいましたけど?

帝国妖異対策局

文字の大きさ
165 / 214
第八章 護衛艦ヴィルミアーシェ

第163話 空飛ぶ幼女

しおりを挟む
 ドローン競技「お宝ゲットだヤフー!」については、私は一切関わっていない。

 だが、ドローン競技大会それ自体を立案し、積極的に推したのは私である。

 さらにさらに、リーコス村司令部(兼村長宅)の地下に、新兵装開発室を設置したのも私だ。

 この開発室には、現在は潤沢なフワデラの予算以外に、私がFuwaTubeの配信で稼いでいるお小遣いまで投入中だ。

 ちなみに、フワーデ・フォーを強制卒業させられた私は『チャンネル幼女艦長』を開設している。

 そこで始めた企画『艦長の家族に乾杯』が結構なPV数を稼ぎ出しているのだ。

 内容は、私がアシハブア王国の人々と触れ合いながら、その土地の名物を食べたり飲んだりするというもの。

 職務上、あちこちに出向くことが多いので、逆にそれを活かした企画である。

 視聴者数の方も『ゆきな☆わんこちゃんねる』には遠く及ばないものの、順調に伸び続けている。

 新兵装開発室には、私と覆面姿の四人が額を突き合わせるように立っていた。

 軽く咳ばらいをした私が厳かに告げる。
 
「よくぞ集まってくれた我が精鋭たちよ! 本日は諸君がアレを完成させたと聞いてやってきたのだが……なんか一人多くないか?」

 この新兵装開発室、実質的には、前に電動バイクを開発してくれた航空整備科の三人のために用意されたもの。   

 いつの間にか覆面がもう一人増えている?

「というか、この開発室が出来た以上、堂々と開発していいんだから、もう覆面は不要じゃないか」

「「「「!?」」」」

 私の言葉に、四人の覆面が一斉に動揺する。

 慌てて外された覆面の下から現れたのは航空整備科の三人と、どこか見覚えのある金髪の優男だった。

「お久しぶりです、タカツ様。イザラス村のカラデアです」

 イザラス村という言葉を聞いて、ようやく彼のことを思い出すことができた。

 北方の古代神殿から採掘される魔鉱石を、護衛艦フワデラに卸してくれているイザラス村。

 そこで魔導士をしている人物で、初めてイザラス村を訪れた際には彼の家にやっかいになったことがある。

「イザラス村からも乗組員への応募採用者がいたと聞いてはいたけど、カラデアさんだったのですね」

「妖異と戦う皆様に、私も何かお役に立てればと思いまして」

 基本的に、新規乗組員(見習い)は、リーコス村の白狼族、グレイベア村の魔族が中心である。

 人族についてはグレイベア村の住人でシンイチが推薦する者に限られている。 

 だが例外として、北方のイザラス村とアシハブア王国西方にあるネフューネ村から数名が採用されている。

 その例外の一人がカラデアということだ。

 覆面を取った航空整備士の一人、泉亜紀少尉が、カラデアを新兵装開発室に引き込んだ理由を説明してくれた。

「カラデアさんは、魔導士としての知識と経験が、また魔鉱石の加工技術をお持ちです。新兵装の開発にあたって、この世界の魔法技術を取り入れるためにも、必要となる人材ということで採用しました」

「なるほど。もしかして、今日のアレにも魔法技術が使われていたりする?」

「使われております!」
 
 泉少尉のドヤ顔の返答に、他の二人の航空整備士も同意するようにコクコクと頷いていた。

「とりあえずアレを見せて貰おうか」

「「「了!」」」
「りょ、りょう!」

 三人の航空整備士の敬礼に遅れて、慌ててカラデアも敬礼する。

「では海岸の方へ! アレは桟橋にご用意しております!」



~ リーコス村桟橋 ~

「えっ!? 思っていたのと違うんだけど?」

 桟橋についた私は、泉少尉が指し示すソレを見て、思わずそんな声を上げてしまった。

「えっと、艦長のご要望は空を飛んでみたいというものでしたよね?」

「そうだよ。こう空中に浮かぶバイクとか車とか、なんなら魔法の箒スタイルでもよかったが……」

 泉少尉の前には、大きなガスタービンを背中に付けたジェットスーツが置かれている。そのスーツの左右の腕部分にはさらにガスタービンが2個ずつつ用意されていた。

「これはちょっと……艦長が思ってたのとはちょっと違うかなぁ……」

 私は天を仰ぎつつ、目を閉じて今回の発注ミスが起こった原因を考える。

 その1.顧客《かんちょう》の指示
 艦長「折角、異世界に来たことだし、やっぱ空とか飛びたいよね? (帝国の)アニメみたいにさ!」
 
 その2.プロジェクトリーダの理解
 泉少尉「(マーベル)アニメみたいに飛ぶ!?」

 その3.実装された運用
 「ジェットスーツ!」

 その4.顧客《かんちょう》が本当に必要だったもの
 「ホバーバイクみたいなの」

 私の内心の葛藤を一切無視して、泉少尉がジェットスーツについて熱弁する。

「艦長のご要望にお応えできたものと確信しております! 空を飛ぶならジェットスーツですよ!」

「えっと、どちらかというと、艦長、空中バイクみたいなのをイメージしてたんだけど……」

 困惑する私を一切無視して、泉少尉が私の身体にジェットスーツを装着し始める。

「何言ってるんです! バイクなんかよりずっと自由自在に空を飛べるのがジェットスーツですよ! 空を自由に飛びたいな! ハイ、ジェットスーツ!」

「そ、そうかもしれんが……安全面とか大丈夫なの?」

 泉のジェットスーツに対するあまりの熱の入れ具合に、私はかなりの不安を抱き始めていた。

「大丈夫です! 落ちたとしてもこの先は海ですから!」
 
「えっ!? そんなノリ!? 超不安になってきたよ!?」

 泉以外の三人に目を向けると、彼らは一斉に目を背けた。

「おいぃぃ! ほ、本当に大丈夫なのか!?」

「はい。大丈夫です! 姿勢制御は全部AIがやってくれますから、艦長は進みたい方向に両手のジェットを傾けるだけです。さぁ行きますよぉぉ!」
 
 ちょっと待って! そんな適当な説明だけで、いきなり飛ぶのか!?

「はい。飛びますよ! 3、2、1」

 泉少尉は一切の躊躇なくカウントダウンを始めた。

 ピピピピッ! 

 何かが始まってしまいそうな電子音が響く。

 ブォォォォ!

 両手と背中から轟音が鳴り響く。

 ちょちょちょちょぉぉぉぉ!

「ゴー!」

 泉少尉の声と同時に、私は桟橋から飛び立った。

「ちょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

 この流れ的に、絶対、大空に弧を描いて海にドボンと行くものと思っていたが……。

「ちゃ、ちゃんと飛んでる!? 空を飛んでるぞぉぉ!」

 海面から2メートルくらいの高さを保ちつつ、私は前後左右を自由自在に移動する。

 空って言う程、高くはないけれど――

 幼女が空を飛んだ。
 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

処理中です...