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#06:少女孵化
Moth burn away 01 ✤
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体育の授業が終了し、禮と杏は教室にふたりきりで体操着から制服へと着替えていた。男子生徒、女子生徒それぞれに教室はひとつずつ。男子生徒はひとつの教室に二クラス分の人数を詰めこんで狭っ苦しいことこの上ないが、女子生徒は同じ面積にふたりきりで広々としたものだ。
「アンちゃんのクラス、次の数学っていつー?」
「あ。この次の時間やわ」
「数学の小テストってあった?」
「イヤ、あれへんで」
杏が禮のほうへ振り返ると、スカートのホックを留めているところだった。
「ほな今日あたり危ないよー。ウチのクラスこの間抜き打ちで小テストあったんよ。先生、まったくラスする言うてはったさかい、アンちゃんのクラス今日やるんちゃう?」
「まー、小テストくらい気にせえへんけど。そもそも教科書持ってきてへんで」
杏は口を尖らせた。禮はスカートを翻してクルリと杏のほうを振り返った。
「ウチが貸したげる」
「おおきに」
禮につられて杏の顔面の筋肉が解れて笑みが零れた。いつも顰めっ面をしていた眉間の皺が緩んで表情が綻ぶ。ガチガチになっていた心の緊張が解けてゆく。自分でも吃驚するくらい自然に笑える。笑えば心が氷解して小さな幸福を感じる。あんなにも追い詰められていたのが嘘のように肩から力が抜けた。
「今から教科書眺めても間に合わへんけどなー」
禮は周囲をキョロッと見渡したあと、小走りに杏に近寄ってきた。口許に手を添えて顔と顔を近づけた。
「出る問題、教えたげよか?」
禮は声を潜めて耳打ちをした。ふたり以外には誰もいないというのにわざわざ小声になる禮がおかしくて、杏はプハッと噴き出した。
アハハッ、と禮と杏は互いに笑い合いながら教室から出た。呼吸を、歩幅を、リズムを揃えるように一緒に足を踏み出した。
――こんな、他愛もない話をする。
今までどうでもええと思うとったことが、今まで無視してきたことが、今まで捨ててきたモンが、こんなにも大切やったんやって今頃になって気が付いた。
禮、アンタはウチに色んなモンを教えてくれる。思い出させてくれる。
ウチも本当は「友だちやから」って堂々とアンタの隣に立ちたいよ。
男子生徒も女子生徒も制服へと着替え終え、各自教室へと戻った。運動を終えたばかりの年若い男たちが詰めこまれた部屋は、なんだか少々噎せ返るような空気だった。
禮は自分の机まで杏を連れてきた。禮の席と近い虎徹と大鰐は勿論杏が教室に入ってきたことに気づいたが、目で追うだけで特段声はかけなかった。
禮は引き出しから数学の教科書を引っ張り出し、杏に差し出した。
「ハイ、アンちゃん。教科書」
杏は「おおきに」と返し、禮から受け取った教科書をパラパラと捲ってみた。
「変な落書きとかせんといてよ」
禮は笑いながら冗談っぽく言い、杏はピタッと手を止めた。偶々開いたページに目を落とした。それが何の意味もない数字の羅列に見えるのは、その羅列の意味を理解できないのは、自分がこれまで好き勝手やってきたツケに相違ない。ツケは巡り巡って、絶対にいつか清算を強いられる。世界はそういう風にできている。人間の作ったルールではないのだから、人間では抗うことはできない。それを人は因果応報と言う。
「禮」
禮の名を口にした杏の声は少し強張っていた。
「何? アンちゃん」
禮は自分の席に座って杏の顔を見上げた。心なしか顔の筋肉も強張っているように見えた。杏はまた少し追い詰められたような顔をしている。
「もしウチが色んなことちゃんとでけたら……友だちになってくれるか」
杏は恐くて禮の顔を見ることができなかった。だから意味の通じない数字を見詰めた。
恐れたのは、禮に期待を裏切られること。誰かに期待するなんてとうに諦めていたはずなのに、禮は杏が忘れようとしたものを、要らないと捨てたものを、手に入らないと諦めたものを、思い出させる。
「なに言うてんの。もう友だちやん」
禮は杏の緊張に気が付かない振りをしてニコッと笑った。
杏はパタンと教科書を閉じ、笑った。
禮は期待どおりの返事をくれた。禮は杏の欲しいものをくれる、鍵に似た輝きで。否、鍵はもう手に入れた。鍵穴の場所も分かっている。あとは勇気を出して鍵を開けてドアを押し開くだけ。
「おおきに」
「変なアンちゃん」
杏は教科書を手に踵を返し、金色の髪を靡かせて教室から出て行った。
扉から出て見えなくなってしまうまで、禮は杏の背中を見詰めていた。変わらず杏の背中には力が入っており、変わらずピンと肩を張っていて、変わらず何かと戦い続けていると感じさせた。
「まるで今日か明日にでも死んでまうよな言い方やな」
禮は大鰐のほうへ目を向けた。大鰐は机の上に腕を組んで突っ伏し、顔だけを禮のほうへ向けていた。
「縁起の悪いこと言わんといてよ、へーちゃん」
「オマエかてそう思ったさかい、ジッと見とったんやろ」
「そんなんちゃうよ……」
境界線が見えるだけ。杏が禮との間に引いた境界線。最後の命綱のようなそれを断ち切って踏み越え、無遠慮に接近する勇気がないだけ。だって線を引くのは、それ以上近寄ってほしくないからでしょう。無理矢理立ち入って、傷つけてしまいはしないだろうか。
足を踏み入れてよいのか、見て見ぬ振りをすべきなのか、禮はまだ判断が付かなかった。
「アンちゃんがああ言うてことは、ウチはまだ友だちと思われてへんのかなって、ちょお凹んだだけ」
(この女でも凹むことあるんやな)
寂しそうに伏し目がちになった禮は本当にしおらしく見え、大鰐はひとりで感心した。
「せやけどほんまにアンちゃん危ないんとちゃうか~?」
背中からそのような台詞が飛んできて、禮は虎徹のほうを振り返った。
「危ないてどーゆーこと?」
虎徹は禮と目が合い、ニッと笑った。
「ほんまに何か大それた覚悟でも決めたよな言い方やったで。チーム抜ける決心でも付けたんちゃう? アンちゃんごっつ深刻な雰囲気やったしな」
「それが何で危ないん?」
禮は虎徹の机の上に肘を突いてズイッと顔を近づけた。
虎徹は机の上に頬杖について禮の顔をまじまじと見た。渋撥のあの反応を見るにつけ、このように至近距離で鑑賞する機会など滅多になさそうだ。
「禮ちゃんはマツゲ長いな~♪」
「せやさかい危ないてどーゆー意味なん。コテッちゃん教えて」
禮に真剣な顔で請われては断りづらく、虎徹はやや眉尻を下げた。せっかく滅多にない機会を堪能しているときに面白くない話など気が進まないのだけれど。
「隣のクラスのヤツがアンちゃんのチーム、いま大変なんやって言うとったんやろ。アンちゃんのチームな、いま抗争中でむっちゃゴッタゴタしとんねん」
「抗争中……?」
禮はあまりピンと来ていない反応。そもそもレディースという存在すら知らないのだから無理もない。虎徹は仕方がなさそうに笑いながら溜息を漏らした。
「禮ちゃんには縁ないことやろケド、どでかいケンカの真っ最中ってことや。自分のチームが潰れるかどうかて瀬戸際に族抜けなんぞ、フツー許されへんでな」
「許されへんかったらどうなるん?」
「アホ」
素直に疑問を口にした禮に対して真横から罵声が飛んできた。
禮は大鰐のほうに顔を向けた。
「族抜けに制裁は付き物や。ボコられるに決もてる」
「そんなんあかんやん! アンちゃんがケガするてことやんっ」
禮は反射的に大鰐の学生服の袖を掴んだ。
禮に縋りつくような目をされ、大鰐は何故か胸の奥が気持ち悪さを覚えた。だからチッと舌打ちをして禮の手を振り払った。
「アイツがケガしたかて俺の知ったことか。そもそも族抜けの制裁なんざ自業自得じゃ」
「自業自得……?」
「自分がやってきたことのツケやからなー」
虎徹は他人事のように放言した。
虎徹や大鰐、それ以外の皆にとっても真実他人事だ。結末を知りつつもその世界に属すると決めたのは己であり、その世界に染まっていったのも己自身だ。自分のツケを払う義務が常に己にあるのは当然だ。どのような形であれ制裁を受けるのは身から出た錆だ。自身で落とさなければならない錆だ。他人では落とせない、こびり付いた錆だ。
彼らは負うべき業の重さを、受け容れるべき咎を、知っている。他人に肩代わりできるものでも、押しつけられるものでもない。己の所業が導き出した結果だ。やめてくれと泣きながら乞われても殴る手を止めなかったのは自分だから。
「ウチ、アンちゃんとちょお話してこよ……」
禮はふらっと椅子から立ち上がった。その腕を、虎徹がぱしっと素早く捕まえた。禮が振り返ると虎徹は笑顔だったが、目は「行くな」と告げていた。
「アンちゃんがほんまにチーム抜けるつもりか分からへんやん。そんな心配せんでも大丈夫やがな」
「オマエは、あの女のトモダチちゃうやろ」
禮が虎徹に何か言い返そうと口を開いた瞬間、大鰐にも制止された。
「友だちやもん」
「まだトモダチちゃうやろ、禮ちゃん」
虎徹にも同じことを言われ、禮は正直吃驚した。禮から驚いた表情を向けられ、虎徹は困ったように苦笑した。
「アンちゃんは色んなことちゃんとでけたら、て言うてたやん。せなあかんことがあるっちゅうことや。やることやらな自分が納得でけへんっちゅうことや。もおちょっとだけアンちゃん待ったりいな」
虎徹と大鰐は杏と同じ世界に生きている。共通の認識、価値観を持っている。杏の望むもの、してほしいことは彼らのほうが理解できている。
禮は虎徹から目を逸らし、足許に目を落とした。黙りこみ、ストンと椅子に座った。自分がとても暗愚に思え、すべきことが見えなかった。
§ § §
その夜、杏は紫色の特攻服に袖を通した。何度袖を通したか知れない。何度鏡越しに対面したかもしれない。その姿を見る度に知るのだ、自分はこの服に護られていると。
紫色の特攻服、これは素肌を覆い隠すばかりでなく、杏の心を外気から遮断してくれる鎧。儘にならない大嫌いなものばかり溢れる外界から、杏の心を護ってくれる盾。
自分を護る殻と訣別を。自分を覆う虚栄心と訣別を。自分を隠す嘘吐きなプライドと訣別を。自分を護るのは自分の力だけだと知れ。
ドクンッ。
今夜、紫色の鎧を脱ぐのだと心に決めてからずっと心臓が鎮まらない。鼓動を制御することはできないが、一度固めた決心が揺らぐことはなかった。
鍵は見つけた。鍵穴に突っこんで回した。あとは扉を開くだけ。
杏は、同じように紫色の特攻服を身に纏った数人の前に立っていた。杏が所属するチームのリーダー格の女性たちだ。場の雰囲気は剣呑。全方位から見えない包丁を突きつけられているみたいだ。
「……もう一回言ってみな」
「お前、自分が言ってる意味分かってんのか」
杏はゴクッと生唾を嚥下し、爪が皮膚にめり込みそうなほどぎゅうっと拳を握り締めた。
鼓動が高鳴っている理由は緊張ではなく恐怖だ。何度痛めつけられてもそれに慣れることはなく、どれほど覚悟を決めてもそれを恐れる。恐い、恐い、恐い。苦痛は何処まで行っても恐い。手が、足が、唇が、髪の先端が、小刻みに震える。
「…………ハイ。桜時杏は……今日まででチーム胡蝶を抜けさしてもらいます」
それが、用意してきた精いっぱいの台詞のすべて。結末を知っているから、それ以上を考えることは無駄。自分を擁護する言葉はない。自分が何をしてきたか、それが罪であること、罪には罰が下る摂理、全部全部、嫌と言うほどに身に染みている。
やめてくれと泣きながら乞われても殴る手を止めなかったのは自分。自分にも順番が回ってきただけだ。
「どんな意味か分かって言ってんだったら、もう何喋っても無駄だな。あ?」
それが合図で、数人がかりで羽交い締めにされた。杏は力いっぱい目を瞑って歯を食い縛った。
バキィッ!
硬い物が顔面にぶち当たり、視界に火花が散った。神経から苦痛という信号が脳に到達し、全身が硬直した。身体をぎゅうぎゅうに硬くして耐え忍ぶしかない。自分が殴られる音と罵倒する声に全方位から取り囲まれ、ただただ耐えるしかなかった。
ゴボォッ!
「ゲボッ……! ゥア……ガッ!」
杏は地面に蹲り、過去の自分を思った。
やめてくれと泣きながら乞われても決して許しはしなかった。「壊せ、殴れ、殺せ」と自分のなかで何かが叫んでいた。お前がそうなりたくなりたければ、アイツをそうするしかないのだと、何者かが命じ続けた。明日転覆するとも知れない危うい船に自分が立っている為なら、他人を踏みつけても何とも思わなかった。自分を護る為に他人を傷つけた。つまりは、自分の為だけに生きてきた。
積み重ねた罪は重たく、受け容れるべき咎は血を伴う。これは溜まり溜まったツケだから、これまで犯した罪故の罰だから、自分の身で購われるべきものだと知っている。
ツケは巡り巡って絶対にいつか清算を強いられる。それを人は、因果応報と言う。
――禮、おおきに。ほんまおおきに。
色んなものを教えてくれて。思い出させてくれて。
アンタと一緒なら、もっとたくさんのモンも見れる気がする。大嫌いでしょうがなかったこの世界が、少しは面白可笑しく見える気がする。
禮、禮、禮。
ウチもホントはアンタの隣に立ちたい。アンタみたいになりたい。
これからは何でも頑張るさかい。ちゃんと自分の力で頑張るさかい。頑張って頑張って納得できたらその時は、ウチを「友だち」と呼んでくれへんか。
ウチは変わる。死んでも生まれ変わるさかい。
杏は闇を迷う蛾であり、禮は闇を照らす焔である。その焔に飛びこめば身を焼かれてしまうと知ってか知らずか、光を求めずにはいられない愚かしくて哀しい習性。初めから闇に生まれついたのではない。暗闇に迷いこんでしまっただけ。そしてそこから抜け出す手立てを知らなかっただけ。闇から逃れる手段を持たぬ蛾は、迷い惑って疲れ果てた蛾は、その身が果てるとしても光に安住を求めるしかない。
燃えろ燃えろ、安らかな光に辿り着くまで。
燃えろ燃えろ、光になれるまで。
薄れゆく意識の中、朧気な視界の中、死んで生まれ変わればよいと思った。もしいま此処で果ててしまっても、蛾から蝶へと、生まれ変われるならばそれでよい。
顔も体も熱いのは、浄火の焔に焼かれているからだろうか。
強く煌めく眩いほどの焔、どうかわたしの罪を焼き滅ぼしておくれ。
燃えろ燃えろ、燃え尽きよ。この身も罪も何もかも。
「アンちゃんのクラス、次の数学っていつー?」
「あ。この次の時間やわ」
「数学の小テストってあった?」
「イヤ、あれへんで」
杏が禮のほうへ振り返ると、スカートのホックを留めているところだった。
「ほな今日あたり危ないよー。ウチのクラスこの間抜き打ちで小テストあったんよ。先生、まったくラスする言うてはったさかい、アンちゃんのクラス今日やるんちゃう?」
「まー、小テストくらい気にせえへんけど。そもそも教科書持ってきてへんで」
杏は口を尖らせた。禮はスカートを翻してクルリと杏のほうを振り返った。
「ウチが貸したげる」
「おおきに」
禮につられて杏の顔面の筋肉が解れて笑みが零れた。いつも顰めっ面をしていた眉間の皺が緩んで表情が綻ぶ。ガチガチになっていた心の緊張が解けてゆく。自分でも吃驚するくらい自然に笑える。笑えば心が氷解して小さな幸福を感じる。あんなにも追い詰められていたのが嘘のように肩から力が抜けた。
「今から教科書眺めても間に合わへんけどなー」
禮は周囲をキョロッと見渡したあと、小走りに杏に近寄ってきた。口許に手を添えて顔と顔を近づけた。
「出る問題、教えたげよか?」
禮は声を潜めて耳打ちをした。ふたり以外には誰もいないというのにわざわざ小声になる禮がおかしくて、杏はプハッと噴き出した。
アハハッ、と禮と杏は互いに笑い合いながら教室から出た。呼吸を、歩幅を、リズムを揃えるように一緒に足を踏み出した。
――こんな、他愛もない話をする。
今までどうでもええと思うとったことが、今まで無視してきたことが、今まで捨ててきたモンが、こんなにも大切やったんやって今頃になって気が付いた。
禮、アンタはウチに色んなモンを教えてくれる。思い出させてくれる。
ウチも本当は「友だちやから」って堂々とアンタの隣に立ちたいよ。
男子生徒も女子生徒も制服へと着替え終え、各自教室へと戻った。運動を終えたばかりの年若い男たちが詰めこまれた部屋は、なんだか少々噎せ返るような空気だった。
禮は自分の机まで杏を連れてきた。禮の席と近い虎徹と大鰐は勿論杏が教室に入ってきたことに気づいたが、目で追うだけで特段声はかけなかった。
禮は引き出しから数学の教科書を引っ張り出し、杏に差し出した。
「ハイ、アンちゃん。教科書」
杏は「おおきに」と返し、禮から受け取った教科書をパラパラと捲ってみた。
「変な落書きとかせんといてよ」
禮は笑いながら冗談っぽく言い、杏はピタッと手を止めた。偶々開いたページに目を落とした。それが何の意味もない数字の羅列に見えるのは、その羅列の意味を理解できないのは、自分がこれまで好き勝手やってきたツケに相違ない。ツケは巡り巡って、絶対にいつか清算を強いられる。世界はそういう風にできている。人間の作ったルールではないのだから、人間では抗うことはできない。それを人は因果応報と言う。
「禮」
禮の名を口にした杏の声は少し強張っていた。
「何? アンちゃん」
禮は自分の席に座って杏の顔を見上げた。心なしか顔の筋肉も強張っているように見えた。杏はまた少し追い詰められたような顔をしている。
「もしウチが色んなことちゃんとでけたら……友だちになってくれるか」
杏は恐くて禮の顔を見ることができなかった。だから意味の通じない数字を見詰めた。
恐れたのは、禮に期待を裏切られること。誰かに期待するなんてとうに諦めていたはずなのに、禮は杏が忘れようとしたものを、要らないと捨てたものを、手に入らないと諦めたものを、思い出させる。
「なに言うてんの。もう友だちやん」
禮は杏の緊張に気が付かない振りをしてニコッと笑った。
杏はパタンと教科書を閉じ、笑った。
禮は期待どおりの返事をくれた。禮は杏の欲しいものをくれる、鍵に似た輝きで。否、鍵はもう手に入れた。鍵穴の場所も分かっている。あとは勇気を出して鍵を開けてドアを押し開くだけ。
「おおきに」
「変なアンちゃん」
杏は教科書を手に踵を返し、金色の髪を靡かせて教室から出て行った。
扉から出て見えなくなってしまうまで、禮は杏の背中を見詰めていた。変わらず杏の背中には力が入っており、変わらずピンと肩を張っていて、変わらず何かと戦い続けていると感じさせた。
「まるで今日か明日にでも死んでまうよな言い方やな」
禮は大鰐のほうへ目を向けた。大鰐は机の上に腕を組んで突っ伏し、顔だけを禮のほうへ向けていた。
「縁起の悪いこと言わんといてよ、へーちゃん」
「オマエかてそう思ったさかい、ジッと見とったんやろ」
「そんなんちゃうよ……」
境界線が見えるだけ。杏が禮との間に引いた境界線。最後の命綱のようなそれを断ち切って踏み越え、無遠慮に接近する勇気がないだけ。だって線を引くのは、それ以上近寄ってほしくないからでしょう。無理矢理立ち入って、傷つけてしまいはしないだろうか。
足を踏み入れてよいのか、見て見ぬ振りをすべきなのか、禮はまだ判断が付かなかった。
「アンちゃんがああ言うてことは、ウチはまだ友だちと思われてへんのかなって、ちょお凹んだだけ」
(この女でも凹むことあるんやな)
寂しそうに伏し目がちになった禮は本当にしおらしく見え、大鰐はひとりで感心した。
「せやけどほんまにアンちゃん危ないんとちゃうか~?」
背中からそのような台詞が飛んできて、禮は虎徹のほうを振り返った。
「危ないてどーゆーこと?」
虎徹は禮と目が合い、ニッと笑った。
「ほんまに何か大それた覚悟でも決めたよな言い方やったで。チーム抜ける決心でも付けたんちゃう? アンちゃんごっつ深刻な雰囲気やったしな」
「それが何で危ないん?」
禮は虎徹の机の上に肘を突いてズイッと顔を近づけた。
虎徹は机の上に頬杖について禮の顔をまじまじと見た。渋撥のあの反応を見るにつけ、このように至近距離で鑑賞する機会など滅多になさそうだ。
「禮ちゃんはマツゲ長いな~♪」
「せやさかい危ないてどーゆー意味なん。コテッちゃん教えて」
禮に真剣な顔で請われては断りづらく、虎徹はやや眉尻を下げた。せっかく滅多にない機会を堪能しているときに面白くない話など気が進まないのだけれど。
「隣のクラスのヤツがアンちゃんのチーム、いま大変なんやって言うとったんやろ。アンちゃんのチームな、いま抗争中でむっちゃゴッタゴタしとんねん」
「抗争中……?」
禮はあまりピンと来ていない反応。そもそもレディースという存在すら知らないのだから無理もない。虎徹は仕方がなさそうに笑いながら溜息を漏らした。
「禮ちゃんには縁ないことやろケド、どでかいケンカの真っ最中ってことや。自分のチームが潰れるかどうかて瀬戸際に族抜けなんぞ、フツー許されへんでな」
「許されへんかったらどうなるん?」
「アホ」
素直に疑問を口にした禮に対して真横から罵声が飛んできた。
禮は大鰐のほうに顔を向けた。
「族抜けに制裁は付き物や。ボコられるに決もてる」
「そんなんあかんやん! アンちゃんがケガするてことやんっ」
禮は反射的に大鰐の学生服の袖を掴んだ。
禮に縋りつくような目をされ、大鰐は何故か胸の奥が気持ち悪さを覚えた。だからチッと舌打ちをして禮の手を振り払った。
「アイツがケガしたかて俺の知ったことか。そもそも族抜けの制裁なんざ自業自得じゃ」
「自業自得……?」
「自分がやってきたことのツケやからなー」
虎徹は他人事のように放言した。
虎徹や大鰐、それ以外の皆にとっても真実他人事だ。結末を知りつつもその世界に属すると決めたのは己であり、その世界に染まっていったのも己自身だ。自分のツケを払う義務が常に己にあるのは当然だ。どのような形であれ制裁を受けるのは身から出た錆だ。自身で落とさなければならない錆だ。他人では落とせない、こびり付いた錆だ。
彼らは負うべき業の重さを、受け容れるべき咎を、知っている。他人に肩代わりできるものでも、押しつけられるものでもない。己の所業が導き出した結果だ。やめてくれと泣きながら乞われても殴る手を止めなかったのは自分だから。
「ウチ、アンちゃんとちょお話してこよ……」
禮はふらっと椅子から立ち上がった。その腕を、虎徹がぱしっと素早く捕まえた。禮が振り返ると虎徹は笑顔だったが、目は「行くな」と告げていた。
「アンちゃんがほんまにチーム抜けるつもりか分からへんやん。そんな心配せんでも大丈夫やがな」
「オマエは、あの女のトモダチちゃうやろ」
禮が虎徹に何か言い返そうと口を開いた瞬間、大鰐にも制止された。
「友だちやもん」
「まだトモダチちゃうやろ、禮ちゃん」
虎徹にも同じことを言われ、禮は正直吃驚した。禮から驚いた表情を向けられ、虎徹は困ったように苦笑した。
「アンちゃんは色んなことちゃんとでけたら、て言うてたやん。せなあかんことがあるっちゅうことや。やることやらな自分が納得でけへんっちゅうことや。もおちょっとだけアンちゃん待ったりいな」
虎徹と大鰐は杏と同じ世界に生きている。共通の認識、価値観を持っている。杏の望むもの、してほしいことは彼らのほうが理解できている。
禮は虎徹から目を逸らし、足許に目を落とした。黙りこみ、ストンと椅子に座った。自分がとても暗愚に思え、すべきことが見えなかった。
§ § §
その夜、杏は紫色の特攻服に袖を通した。何度袖を通したか知れない。何度鏡越しに対面したかもしれない。その姿を見る度に知るのだ、自分はこの服に護られていると。
紫色の特攻服、これは素肌を覆い隠すばかりでなく、杏の心を外気から遮断してくれる鎧。儘にならない大嫌いなものばかり溢れる外界から、杏の心を護ってくれる盾。
自分を護る殻と訣別を。自分を覆う虚栄心と訣別を。自分を隠す嘘吐きなプライドと訣別を。自分を護るのは自分の力だけだと知れ。
ドクンッ。
今夜、紫色の鎧を脱ぐのだと心に決めてからずっと心臓が鎮まらない。鼓動を制御することはできないが、一度固めた決心が揺らぐことはなかった。
鍵は見つけた。鍵穴に突っこんで回した。あとは扉を開くだけ。
杏は、同じように紫色の特攻服を身に纏った数人の前に立っていた。杏が所属するチームのリーダー格の女性たちだ。場の雰囲気は剣呑。全方位から見えない包丁を突きつけられているみたいだ。
「……もう一回言ってみな」
「お前、自分が言ってる意味分かってんのか」
杏はゴクッと生唾を嚥下し、爪が皮膚にめり込みそうなほどぎゅうっと拳を握り締めた。
鼓動が高鳴っている理由は緊張ではなく恐怖だ。何度痛めつけられてもそれに慣れることはなく、どれほど覚悟を決めてもそれを恐れる。恐い、恐い、恐い。苦痛は何処まで行っても恐い。手が、足が、唇が、髪の先端が、小刻みに震える。
「…………ハイ。桜時杏は……今日まででチーム胡蝶を抜けさしてもらいます」
それが、用意してきた精いっぱいの台詞のすべて。結末を知っているから、それ以上を考えることは無駄。自分を擁護する言葉はない。自分が何をしてきたか、それが罪であること、罪には罰が下る摂理、全部全部、嫌と言うほどに身に染みている。
やめてくれと泣きながら乞われても殴る手を止めなかったのは自分。自分にも順番が回ってきただけだ。
「どんな意味か分かって言ってんだったら、もう何喋っても無駄だな。あ?」
それが合図で、数人がかりで羽交い締めにされた。杏は力いっぱい目を瞑って歯を食い縛った。
バキィッ!
硬い物が顔面にぶち当たり、視界に火花が散った。神経から苦痛という信号が脳に到達し、全身が硬直した。身体をぎゅうぎゅうに硬くして耐え忍ぶしかない。自分が殴られる音と罵倒する声に全方位から取り囲まれ、ただただ耐えるしかなかった。
ゴボォッ!
「ゲボッ……! ゥア……ガッ!」
杏は地面に蹲り、過去の自分を思った。
やめてくれと泣きながら乞われても決して許しはしなかった。「壊せ、殴れ、殺せ」と自分のなかで何かが叫んでいた。お前がそうなりたくなりたければ、アイツをそうするしかないのだと、何者かが命じ続けた。明日転覆するとも知れない危うい船に自分が立っている為なら、他人を踏みつけても何とも思わなかった。自分を護る為に他人を傷つけた。つまりは、自分の為だけに生きてきた。
積み重ねた罪は重たく、受け容れるべき咎は血を伴う。これは溜まり溜まったツケだから、これまで犯した罪故の罰だから、自分の身で購われるべきものだと知っている。
ツケは巡り巡って絶対にいつか清算を強いられる。それを人は、因果応報と言う。
――禮、おおきに。ほんまおおきに。
色んなものを教えてくれて。思い出させてくれて。
アンタと一緒なら、もっとたくさんのモンも見れる気がする。大嫌いでしょうがなかったこの世界が、少しは面白可笑しく見える気がする。
禮、禮、禮。
ウチもホントはアンタの隣に立ちたい。アンタみたいになりたい。
これからは何でも頑張るさかい。ちゃんと自分の力で頑張るさかい。頑張って頑張って納得できたらその時は、ウチを「友だち」と呼んでくれへんか。
ウチは変わる。死んでも生まれ変わるさかい。
杏は闇を迷う蛾であり、禮は闇を照らす焔である。その焔に飛びこめば身を焼かれてしまうと知ってか知らずか、光を求めずにはいられない愚かしくて哀しい習性。初めから闇に生まれついたのではない。暗闇に迷いこんでしまっただけ。そしてそこから抜け出す手立てを知らなかっただけ。闇から逃れる手段を持たぬ蛾は、迷い惑って疲れ果てた蛾は、その身が果てるとしても光に安住を求めるしかない。
燃えろ燃えろ、安らかな光に辿り着くまで。
燃えろ燃えろ、光になれるまで。
薄れゆく意識の中、朧気な視界の中、死んで生まれ変わればよいと思った。もしいま此処で果ててしまっても、蛾から蝶へと、生まれ変われるならばそれでよい。
顔も体も熱いのは、浄火の焔に焼かれているからだろうか。
強く煌めく眩いほどの焔、どうかわたしの罪を焼き滅ぼしておくれ。
燃えろ燃えろ、燃え尽きよ。この身も罪も何もかも。
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慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
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※【カクヨム】にて編掲載中。【ネオページ】にて序盤のみお試し掲載中。【Nolaノベル】【Tales】にて完全版を公開中。
イラスト担当:さんさん
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