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来世は空気を希望します!
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神様――絵巻様というらしい――は、両の拳を胸の前で握り締め正座の状態から半分立ち上がりながら私に熱弁を振るってくれた。若干肩で息をしている。やっぱりこの人見た目通りの性格じゃないな?
その姿を見ていたら本来私は怒るべきなんだろうけどその気が削がれてしまって、言いたかった文句はため息に変わって出ていってしまった。代わりにこちらから話しかける。
「質問いいですか? 私が言葉ちゃんとしてメインストーリーを完遂できたら私は生き返って、元の人生に戻ることが出来るんですよね。じゃあ私がこの世界……ええと、ほしわず完全模倣世界? 箱庭? にいる間の元の世界とか私の身体ってどうなってるんですか?」
大人しく座り直して神妙な顔をした絵巻様は、質問に頷きながら答えてくれた。
「美和さんの世界とこの世界とは時間の流れが違います。元の世界と切り離して作ってありますので、無事クリアしたら事故の起きる直前の瞬間に戻ることになります。次こそは絶対美和さんを巻き込みませんから安心してください! あと美和さんの身体ですが、そのまま……と言ったらいいんでしょうか、観月言葉として使っている身体は美和さんのものです。魂だけ切り離したとか転生のために脱ぎ捨てたとかは起きていません。高垣美和の身体の上から観月言葉の着ぐるみを着ているって言ったら伝わりますか? 心も身体も美和さんは美和さんのままで、そこに観月言葉の情報が上書きされているだけです」
……なるほど?
「ええと、つまり、異世界転生ではない……?」
「そうですね、転生ではないです! じゃあ何なんだと言われると困っちゃいますけど……うーんなんだろう……」
「VRゲームとか近くないですか」
「あっそうかも! 美和さん冴えてますね! 運営が私のVRって捉えてもらうのが一番いいかもしれません!」
分かったような分からないような。私の死はまだ確定していなくて、このほしわず完全模倣世界……長いから箱庭でいいか、箱庭に繋ぎ止められている。死んでないから転生も何もない。ただこの箱庭VRから出ることを選んだりクリア出来なかったりしたらそこで死は確定して、高垣美和としての人生は終わってどこの誰とも知らぬ新しい命として輪廻の輪に戻る……とそういうことかな。こうですか? と聞いたらそうです! って絵巻様が力強くお返事してくださったからそういうことなんだろう。
「死にたくなければ、それこそ死ぬ気でクリアしろってことですね……。神様って横暴なんだなあ……。初詣とか元の世界に戻れたらやめちゃおうかな」
「うう本当にすみません……」
「ああいえ、こちらこそ絵巻様のお部屋の真下をちょうど通りかかってすみません?」
「いえいえこちらこそそそっかしくて美和さんの人生ぐちゃぐちゃにしてしまってすみません……」
お互いぺこぺこ謝る謎の空間が出来てしまった。ってそうじゃなくて。
「もうひとつ質問しても? 絵巻様がお助けキャラしてくださるってことですがそのタイミングは任意ですか? それとも固定?」
「固定です! 原因作った本人と言えどあまり介入したらつまらないだろって他の神から言われてしまったので……。あっでも曜日とか時間は指定が可能です! せっかくですし今何曜日の何時とか決めちゃいましょうか、いつがいいです?」
「あーそうですね……。じゃあ日曜日の夜がいいかな。午後九時とか」
「毎週日曜日の午後九時ですね、承りました! 箱庭の時間でその時刻になったら呼んでください!」
「分かりました」
ここまで話すと、ふと絵巻様が顔を曇らせた。
「どうかしましたか?」
「いえ……。美和さんに本当に申し訳なくて。理不尽を押し付けてすみません。私さえ! 失敗しなければ! こんなことには!」
「大丈夫です大丈夫です落ち着いてください……! だってもう箱庭のプレイはこれ私確定事項ですよね? やらなきゃ死んじゃうんですもん。頑張りますから大丈夫です! 本音を言えば成り代わるのは言葉ちゃんじゃなくてモブが良かったですけど!」
「ああ、そうそれ! 美和さんが意識を失う直前にいろいろ考えてらっしゃる中に、『来世は推しカプの間に漂う空気になりたい』っていうものがあったので、それを参考にして箱庭の舞台を設定したんです。流石に空気にして差し上げることはできないですし空気や脇役では話が進みませんから、プレイヤーキャラクターの観月言葉を採用しましたが」
「なるほど。うん、お気遣いありがとうございます……、かな。あはは。頑張ります」
「よろしくお願いします。私もできる限り協力しますから!」
絵巻様がまた拳を両方ぎゅっと握り締めて笑うと、ちゃぶ台と座布団しか無かった真っ白な世界の端っこがほろほろと崩れてきた。
「あっそろそろ戻る時間が来てしまいました……。じゃあ美和さん頑張ってくださいね! ああそれからステータスとかかっこよく空間に表示できたりはしませんけど、観月言葉の日記帳で似たようなことが出来ます! ゲームシステムについては美和さんの方が詳しいと思うのでいろいろ試してみてください!」
「了解です! 説明ありがとうございました! じゃあまた日曜日の夜に!」
「はいまた! 私はいつでも見守ってますよー……!」
そう言うと絵巻様は掻き消えた。それと同時にちゃぶ台と座布団二枚のなけなしの家具も消え去る。ほんの一瞬、私は真っ白な世界に取り残され、それからまた眩しい光に包まれた。
……そういえば、何で私、元凶である絵巻様にあんなに寄り添った考え方しちゃってるんだろう。もっと怒り狂ってもおかしくない立場のはずだよね。……まあいいか。今は頑張ってこの世界を生き抜く! 待ってろメインストーリークリア! 絶対生き返ってやるからなー!
*
「あー肩が凝った。でもま、中々堂に入った演技だったんじゃない? ……さ、頑張ってね高垣美和ちゃん。私の気が済むまでみっともなく足掻いてくれなきゃ嫌よ?」
その姿を見ていたら本来私は怒るべきなんだろうけどその気が削がれてしまって、言いたかった文句はため息に変わって出ていってしまった。代わりにこちらから話しかける。
「質問いいですか? 私が言葉ちゃんとしてメインストーリーを完遂できたら私は生き返って、元の人生に戻ることが出来るんですよね。じゃあ私がこの世界……ええと、ほしわず完全模倣世界? 箱庭? にいる間の元の世界とか私の身体ってどうなってるんですか?」
大人しく座り直して神妙な顔をした絵巻様は、質問に頷きながら答えてくれた。
「美和さんの世界とこの世界とは時間の流れが違います。元の世界と切り離して作ってありますので、無事クリアしたら事故の起きる直前の瞬間に戻ることになります。次こそは絶対美和さんを巻き込みませんから安心してください! あと美和さんの身体ですが、そのまま……と言ったらいいんでしょうか、観月言葉として使っている身体は美和さんのものです。魂だけ切り離したとか転生のために脱ぎ捨てたとかは起きていません。高垣美和の身体の上から観月言葉の着ぐるみを着ているって言ったら伝わりますか? 心も身体も美和さんは美和さんのままで、そこに観月言葉の情報が上書きされているだけです」
……なるほど?
「ええと、つまり、異世界転生ではない……?」
「そうですね、転生ではないです! じゃあ何なんだと言われると困っちゃいますけど……うーんなんだろう……」
「VRゲームとか近くないですか」
「あっそうかも! 美和さん冴えてますね! 運営が私のVRって捉えてもらうのが一番いいかもしれません!」
分かったような分からないような。私の死はまだ確定していなくて、このほしわず完全模倣世界……長いから箱庭でいいか、箱庭に繋ぎ止められている。死んでないから転生も何もない。ただこの箱庭VRから出ることを選んだりクリア出来なかったりしたらそこで死は確定して、高垣美和としての人生は終わってどこの誰とも知らぬ新しい命として輪廻の輪に戻る……とそういうことかな。こうですか? と聞いたらそうです! って絵巻様が力強くお返事してくださったからそういうことなんだろう。
「死にたくなければ、それこそ死ぬ気でクリアしろってことですね……。神様って横暴なんだなあ……。初詣とか元の世界に戻れたらやめちゃおうかな」
「うう本当にすみません……」
「ああいえ、こちらこそ絵巻様のお部屋の真下をちょうど通りかかってすみません?」
「いえいえこちらこそそそっかしくて美和さんの人生ぐちゃぐちゃにしてしまってすみません……」
お互いぺこぺこ謝る謎の空間が出来てしまった。ってそうじゃなくて。
「もうひとつ質問しても? 絵巻様がお助けキャラしてくださるってことですがそのタイミングは任意ですか? それとも固定?」
「固定です! 原因作った本人と言えどあまり介入したらつまらないだろって他の神から言われてしまったので……。あっでも曜日とか時間は指定が可能です! せっかくですし今何曜日の何時とか決めちゃいましょうか、いつがいいです?」
「あーそうですね……。じゃあ日曜日の夜がいいかな。午後九時とか」
「毎週日曜日の午後九時ですね、承りました! 箱庭の時間でその時刻になったら呼んでください!」
「分かりました」
ここまで話すと、ふと絵巻様が顔を曇らせた。
「どうかしましたか?」
「いえ……。美和さんに本当に申し訳なくて。理不尽を押し付けてすみません。私さえ! 失敗しなければ! こんなことには!」
「大丈夫です大丈夫です落ち着いてください……! だってもう箱庭のプレイはこれ私確定事項ですよね? やらなきゃ死んじゃうんですもん。頑張りますから大丈夫です! 本音を言えば成り代わるのは言葉ちゃんじゃなくてモブが良かったですけど!」
「ああ、そうそれ! 美和さんが意識を失う直前にいろいろ考えてらっしゃる中に、『来世は推しカプの間に漂う空気になりたい』っていうものがあったので、それを参考にして箱庭の舞台を設定したんです。流石に空気にして差し上げることはできないですし空気や脇役では話が進みませんから、プレイヤーキャラクターの観月言葉を採用しましたが」
「なるほど。うん、お気遣いありがとうございます……、かな。あはは。頑張ります」
「よろしくお願いします。私もできる限り協力しますから!」
絵巻様がまた拳を両方ぎゅっと握り締めて笑うと、ちゃぶ台と座布団しか無かった真っ白な世界の端っこがほろほろと崩れてきた。
「あっそろそろ戻る時間が来てしまいました……。じゃあ美和さん頑張ってくださいね! ああそれからステータスとかかっこよく空間に表示できたりはしませんけど、観月言葉の日記帳で似たようなことが出来ます! ゲームシステムについては美和さんの方が詳しいと思うのでいろいろ試してみてください!」
「了解です! 説明ありがとうございました! じゃあまた日曜日の夜に!」
「はいまた! 私はいつでも見守ってますよー……!」
そう言うと絵巻様は掻き消えた。それと同時にちゃぶ台と座布団二枚のなけなしの家具も消え去る。ほんの一瞬、私は真っ白な世界に取り残され、それからまた眩しい光に包まれた。
……そういえば、何で私、元凶である絵巻様にあんなに寄り添った考え方しちゃってるんだろう。もっと怒り狂ってもおかしくない立場のはずだよね。……まあいいか。今は頑張ってこの世界を生き抜く! 待ってろメインストーリークリア! 絶対生き返ってやるからなー!
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「あー肩が凝った。でもま、中々堂に入った演技だったんじゃない? ……さ、頑張ってね高垣美和ちゃん。私の気が済むまでみっともなく足掻いてくれなきゃ嫌よ?」
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