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4話 両親との初対面
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あれから、王太子は見舞いと称して何度か公爵邸にやって来たが、ことごとく追い返されるか、ほんの一瞬だけティアルーナと会えるような対面と呼べない対面が続いた。そんな日々が1ヶ月ほど続き、平穏続きだった屋敷には再び慌ただしい雰囲気が戻ってきた。
ついに公爵夫妻がやってくる日が来たのだ。
「大丈夫です、お嬢様。私共が言った通りに
してくださればすぐにいなくな…お帰りになると思いますから。」
殆ど言ってしまった後に言い直したメアリの言葉を信じてティアルーナは頷く。これまで何度もメアリ達に練習相手になってもらい、公爵夫妻の求める元通りの『ティアルーナ』というものを練習してきた。勉学面でも不足はなく、問題は無いと思われるがそれでもティアルーナは緊張していた。記憶を失う前はどうだったか分からないが今のティアルーナは少なからず家族というものに憧れと期待を抱いている。
「ありがとう、メアリ。」
「はい…馬車が到着したようです。玄関ホールでお出迎えを。」
王太子を追い返したりは出来ても公爵夫妻がやって来るのをメアリが止める術はない。そのことに歯噛みしながらも緊張するティアルーナの後ろに控えて公爵夫妻が入ってくるのを頭を下げながら待つ。
「「「お帰りなさいませ、旦那様、奥様。」」」
「お…お帰りなさいませ、お父様、お母様。」
使用人が挨拶をして頭を上げ終わったところでティアルーナが挨拶をする。しかし、使用人全員とメアリは非常に青い顔をしていた。何故なら、厳格で有名なヴェルガム公爵は娘にさえ肩書きで呼ぶようにティアルーナが幼い頃から教えこんできていたのだ。
「「!」」
(ま、不味い…お嬢様に呼び方は公爵、公爵夫人だとお伝えするのを忘れていたわ!)
何故か公爵夫妻が固まっているのをいい事にメアリはすすっとティアルーナに近付いて耳打ちをする。
「お嬢様! 申し訳ございません、御二方の呼び方は公爵、公爵夫人です…!」
「えっ…! も、申し訳ありません。公爵、公爵夫人。」
メアリの言葉を聞いてティアルーナは慌てて言い直す。怒られるだろうことを覚悟してすぐに助けに出られるようメアリはティアルーナのすぐ後ろに控えて怒声が響き渡るのをぐっと待っていると想定外の声がホールに響いた。
「……と…ょ……の?」
「え?」
「もう、お母様とは呼んでくれないの?」
そう言ったのは、ティアルーナの実母でヴェルガム公爵夫人のドーラだった。ティアルーナは勿論、使用人やメアリもその言葉に目を見張り固まっていた。ティアルーナがメアリや他のメイドたちから聞いていた話ではドーラは貴族の夫人の中でも古くからの礼節を大切にしており、基本的に夫であるアルフ・ヴェルガム公爵には逆らわず口数も少なく、子供も乳母に全て任せて家を盛り立てる為に茶会や社交に勤しむ…そういった人だと聞かされていただけにその発言のインパクトはかなり大きい。
「ドーラ!?」
そして、驚いていたのはティアルーナ達だけではない。同様に先程まで固まっていた公爵も妻の名前を叫ぶ。厳格で娘にさえ自身を肩書きで呼ぶように言ってきた人物だ。怒っているのだろうかとメアリがその表情を見るとそこには驚愕と少し羨ましげなものが浮かんでいた。
ついに公爵夫妻がやってくる日が来たのだ。
「大丈夫です、お嬢様。私共が言った通りに
してくださればすぐにいなくな…お帰りになると思いますから。」
殆ど言ってしまった後に言い直したメアリの言葉を信じてティアルーナは頷く。これまで何度もメアリ達に練習相手になってもらい、公爵夫妻の求める元通りの『ティアルーナ』というものを練習してきた。勉学面でも不足はなく、問題は無いと思われるがそれでもティアルーナは緊張していた。記憶を失う前はどうだったか分からないが今のティアルーナは少なからず家族というものに憧れと期待を抱いている。
「ありがとう、メアリ。」
「はい…馬車が到着したようです。玄関ホールでお出迎えを。」
王太子を追い返したりは出来ても公爵夫妻がやって来るのをメアリが止める術はない。そのことに歯噛みしながらも緊張するティアルーナの後ろに控えて公爵夫妻が入ってくるのを頭を下げながら待つ。
「「「お帰りなさいませ、旦那様、奥様。」」」
「お…お帰りなさいませ、お父様、お母様。」
使用人が挨拶をして頭を上げ終わったところでティアルーナが挨拶をする。しかし、使用人全員とメアリは非常に青い顔をしていた。何故なら、厳格で有名なヴェルガム公爵は娘にさえ肩書きで呼ぶようにティアルーナが幼い頃から教えこんできていたのだ。
「「!」」
(ま、不味い…お嬢様に呼び方は公爵、公爵夫人だとお伝えするのを忘れていたわ!)
何故か公爵夫妻が固まっているのをいい事にメアリはすすっとティアルーナに近付いて耳打ちをする。
「お嬢様! 申し訳ございません、御二方の呼び方は公爵、公爵夫人です…!」
「えっ…! も、申し訳ありません。公爵、公爵夫人。」
メアリの言葉を聞いてティアルーナは慌てて言い直す。怒られるだろうことを覚悟してすぐに助けに出られるようメアリはティアルーナのすぐ後ろに控えて怒声が響き渡るのをぐっと待っていると想定外の声がホールに響いた。
「……と…ょ……の?」
「え?」
「もう、お母様とは呼んでくれないの?」
そう言ったのは、ティアルーナの実母でヴェルガム公爵夫人のドーラだった。ティアルーナは勿論、使用人やメアリもその言葉に目を見張り固まっていた。ティアルーナがメアリや他のメイドたちから聞いていた話ではドーラは貴族の夫人の中でも古くからの礼節を大切にしており、基本的に夫であるアルフ・ヴェルガム公爵には逆らわず口数も少なく、子供も乳母に全て任せて家を盛り立てる為に茶会や社交に勤しむ…そういった人だと聞かされていただけにその発言のインパクトはかなり大きい。
「ドーラ!?」
そして、驚いていたのはティアルーナ達だけではない。同様に先程まで固まっていた公爵も妻の名前を叫ぶ。厳格で娘にさえ自身を肩書きで呼ぶように言ってきた人物だ。怒っているのだろうかとメアリがその表情を見るとそこには驚愕と少し羨ましげなものが浮かんでいた。
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