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27話 社交界復帰 ②
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結論から言えば、ティアルーナの社交界への復帰となる夜会は成功に終わった。幸運にも記憶を取り戻したティアルーナに欠点などあるはずもなく、穏やかな笑みを浮かべ、周囲を硬直させながらも談笑に励んだ。
しかし、成功し過ぎたとも言える。
「ヴェルガム公爵令嬢、どうかわたくしのことはリィシュナ、と名でお呼びくださいませ」
「わ、私のことも是非名で…! よろしければ愛称でシューヤと」
有力な婚約者候補に群がるのが常の令嬢らに紳士そっちのけで囲まれ、まるで競い合うかのように令嬢らが牽制し合いながらティアルーナと話す権利を奪い合う地獄のような絵図に夜会は姿を変えていた。
渦中のティアルーナはといえば最早エスコート役のルードルフが壁の花となり苦笑している様子を見ることしか出来ない。困り果てながら令嬢らの言葉に一つ一つ答えていくが、とうにティアルーナの気力と体力は限界を超えていた。
「あの、皆様。ダンスのお時間ですがパートナーのお方は…?」
「「そんなものはどうでもよろしいのです!」」
「そ、そうですか…? でも、皆様お待ちでいらっしゃいますわ」
当初の予定では多少遠巻きにされるだろうが、それをどうにか距離を少しで良いから縮める…というのが目標であったのにそれがどうだろう。誘おうにもこちらにちらりとも視線を寄越さないパートナーに令息、当主らも持て余した手をどうするでもなく困り顔だ。
しかし、ドレスの鉄壁に阻まれていたティアルーナの元へルードルフが近寄った。王太子の歩みを妨げることは許されず、令嬢らが開けた道を歩いてルードルフはティアルーナの手を取る。
「すまないが、僕は婚約者と踊りたいんだ。そろそろ返してもらおうか」
そう言われてしまっては嫌ですとも言えない令嬢たちは皆一様ににこやかな笑みを浮かべると渋々とパートナーの元へ去って行く。ようやく人波から開放されたティアルーナが息をつきながら礼を述べるとルードルフは苦笑した。
「ティアルーナの人気にも困ったものだな、ダンスを申し込むにも苦労するとは。まあ、隣を譲ってやるのもここまでだが」
ルードルフはそう軽口を叩きながらティアルーナをホールの中央へエスコートする。
「──どうか、僕と最初のダンスを」
胸に片手を当て、紳士から淑女へのダンスの申し込みの言葉をルードルフが口にするとティアルーナもそれに答えるように満面の笑みを浮かべた。
「はい、喜んで」
軽快にステップを踏み、一曲を踊りきるとさして間もなく次の曲の演奏が始まる。既婚者もしくは婚約者でない者等は急ぎ輪から抜けるが二人はそのまま残り、立て続けに踊った。
────────
五曲連続で踊りきり、流石に疲労困憊で真夜中に公爵邸に帰り着いたティアルーナを出迎えたのはいつもの如く、ロイスであった。
「ルーナ、おかえり。夜会はどうだった? 嫌なことは無かったかな」
何時ものように軽い足取りで優しげな笑みを浮かべながら出迎えた兄にティアルーナはその壮健さに眉を下げる。ロイスも日がな1日暇を持て余していた訳ではなく、寧ろあちらこちらへとパーティやら茶会やらと引っ張りだこであるというのにそれを全く感じさせないのだから驚くばかりだった。
「兄様、まだ起きていらしたのですか? お友達が沢山増えましたの、少し疲れましたけれど…でも、とても楽しかったです」
ティアルーナは囲まれ、困惑しながらも親交を深めた者の名前を幾つかあげる。ロイスはそれをにこやかに聞いているようでその名前をしっかりと暗記しつつ、口を開いた。
「楽しめたのなら良かった。先程父上に領主代行を任されて、明日から領地に行くことになったんだけど…ルーナもいずれ一緒に治めるわけだし一緒にどうかな。領の研究所も見ておきたいでしょう?」
ロイスは乱雑に領主代行の正式な委任状を取り出し、現公爵であるアルフのサインを指で示しながら笑顔でティアルーナの興味関心を吸い寄せる事柄を並び立てる。強制は出来ないが、ロイスはティアルーナを領へ連れて帰る気でいた。
そんな思惑に気が付かぬティアルーナはロイスの口から飛び出る施設名や領特有の薬草の名に瞳を輝かせる。社交シーズン中頃から後半にかけて、領に帰還する貴族など滅多にいたものでは無いがそんなものは数多の魅力の前には抑制にさえならない。
「ご一緒させていただきます! 期間はお決まりですか?」
即答するティアルーナに笑いながらロイスは腕を組み、思案する。ヴェルガム公爵領は王都と隣接する為ほど近く、馬車で一日と少しといった距離になり、社交シーズンもまだ半分以上もある。
「僕としてはこのまま王都を離れたいところだけど、そういう訳にもいかないからね───社交シーズン最後の夜会には余裕を持って帰還するかな。だから、大体ひと月だね」
しかし、成功し過ぎたとも言える。
「ヴェルガム公爵令嬢、どうかわたくしのことはリィシュナ、と名でお呼びくださいませ」
「わ、私のことも是非名で…! よろしければ愛称でシューヤと」
有力な婚約者候補に群がるのが常の令嬢らに紳士そっちのけで囲まれ、まるで競い合うかのように令嬢らが牽制し合いながらティアルーナと話す権利を奪い合う地獄のような絵図に夜会は姿を変えていた。
渦中のティアルーナはといえば最早エスコート役のルードルフが壁の花となり苦笑している様子を見ることしか出来ない。困り果てながら令嬢らの言葉に一つ一つ答えていくが、とうにティアルーナの気力と体力は限界を超えていた。
「あの、皆様。ダンスのお時間ですがパートナーのお方は…?」
「「そんなものはどうでもよろしいのです!」」
「そ、そうですか…? でも、皆様お待ちでいらっしゃいますわ」
当初の予定では多少遠巻きにされるだろうが、それをどうにか距離を少しで良いから縮める…というのが目標であったのにそれがどうだろう。誘おうにもこちらにちらりとも視線を寄越さないパートナーに令息、当主らも持て余した手をどうするでもなく困り顔だ。
しかし、ドレスの鉄壁に阻まれていたティアルーナの元へルードルフが近寄った。王太子の歩みを妨げることは許されず、令嬢らが開けた道を歩いてルードルフはティアルーナの手を取る。
「すまないが、僕は婚約者と踊りたいんだ。そろそろ返してもらおうか」
そう言われてしまっては嫌ですとも言えない令嬢たちは皆一様ににこやかな笑みを浮かべると渋々とパートナーの元へ去って行く。ようやく人波から開放されたティアルーナが息をつきながら礼を述べるとルードルフは苦笑した。
「ティアルーナの人気にも困ったものだな、ダンスを申し込むにも苦労するとは。まあ、隣を譲ってやるのもここまでだが」
ルードルフはそう軽口を叩きながらティアルーナをホールの中央へエスコートする。
「──どうか、僕と最初のダンスを」
胸に片手を当て、紳士から淑女へのダンスの申し込みの言葉をルードルフが口にするとティアルーナもそれに答えるように満面の笑みを浮かべた。
「はい、喜んで」
軽快にステップを踏み、一曲を踊りきるとさして間もなく次の曲の演奏が始まる。既婚者もしくは婚約者でない者等は急ぎ輪から抜けるが二人はそのまま残り、立て続けに踊った。
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五曲連続で踊りきり、流石に疲労困憊で真夜中に公爵邸に帰り着いたティアルーナを出迎えたのはいつもの如く、ロイスであった。
「ルーナ、おかえり。夜会はどうだった? 嫌なことは無かったかな」
何時ものように軽い足取りで優しげな笑みを浮かべながら出迎えた兄にティアルーナはその壮健さに眉を下げる。ロイスも日がな1日暇を持て余していた訳ではなく、寧ろあちらこちらへとパーティやら茶会やらと引っ張りだこであるというのにそれを全く感じさせないのだから驚くばかりだった。
「兄様、まだ起きていらしたのですか? お友達が沢山増えましたの、少し疲れましたけれど…でも、とても楽しかったです」
ティアルーナは囲まれ、困惑しながらも親交を深めた者の名前を幾つかあげる。ロイスはそれをにこやかに聞いているようでその名前をしっかりと暗記しつつ、口を開いた。
「楽しめたのなら良かった。先程父上に領主代行を任されて、明日から領地に行くことになったんだけど…ルーナもいずれ一緒に治めるわけだし一緒にどうかな。領の研究所も見ておきたいでしょう?」
ロイスは乱雑に領主代行の正式な委任状を取り出し、現公爵であるアルフのサインを指で示しながら笑顔でティアルーナの興味関心を吸い寄せる事柄を並び立てる。強制は出来ないが、ロイスはティアルーナを領へ連れて帰る気でいた。
そんな思惑に気が付かぬティアルーナはロイスの口から飛び出る施設名や領特有の薬草の名に瞳を輝かせる。社交シーズン中頃から後半にかけて、領に帰還する貴族など滅多にいたものでは無いがそんなものは数多の魅力の前には抑制にさえならない。
「ご一緒させていただきます! 期間はお決まりですか?」
即答するティアルーナに笑いながらロイスは腕を組み、思案する。ヴェルガム公爵領は王都と隣接する為ほど近く、馬車で一日と少しといった距離になり、社交シーズンもまだ半分以上もある。
「僕としてはこのまま王都を離れたいところだけど、そういう訳にもいかないからね───社交シーズン最後の夜会には余裕を持って帰還するかな。だから、大体ひと月だね」
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