神殺しのステイ

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<13・繋がる奇跡>

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 あくまで自分は頼まれて、友人として楓の願いに応えただけのこと。そう、割り切って臨んだつもりではあったし、最後まで冷静に彼を慰めるためだけの抱き枕でいようとしたステイではあったのだが。

――ど、どうしよう……。

 翌日。真っ青になって早起きし、下着をこっそり洗うハメになっている自分がいる。あんなに激しくがっつくつもりは全くなかったのだ。避妊具もなしに中に出した挙句、最終的には3Rほどがっついてしまったのを思い出して頭を抱えてしまう。楓も楓でそれなりに気持ちよさそうにしているように見えたが、実際のところは相当負担をかけてしまっていたのかもしれない。これで朝目覚めた時、トラウマが再発していたら完全に自分のせいである。いくら、楓からお願いされたこととはいえ、まさか三回戦もやるなんて本人も思っていなかったに違いないのだから。

――最終的には、完全に俺の方が乗り気になってたし。ていうかぶっちゃけ、序盤からハイスピードで追い詰められて俺の方が余裕ゼロになってたし……!

 おまけのおまけに、疲れ果てて眠った筈が夜の夜まで淫夢を見る始末。朝起きたら下着は汚れているわ自分のブツは勃っていてもう一発抜くハメになるわと散々な状況である。十五歳の男子高校生、いくらなんでも若すぎるだろと言いたい。しかも、そのオカズにしたのが同性の親友だというのがあまりにも痛すぎるではないか。
 同性愛に特に嫌悪感はなかったが、だからといって違和感ゼロで事に臨める自信はなかった。しかも、あくまで友達として好きであっても、恋愛感情と呼べるもののない相手である。が、楓が自分の体を上手く隠しながら挑んでくれたせいか、準備が万端であったせいか、そして彼の顔が女の子顔負けに綺麗で華奢であったせいか。気づけば違和感どころか、完全に彼で欲情してしまっていた。いくらテクニックに翻弄されたとはいえ、これはいくらなんでも情けなさすぎるのではなかろうか。

――やべえ、これ、今後どんな顔して楓と接していけばいいかわかんね……!

 下着をこっそり手洗いして、各部屋一つずつ備え付けられている(この学校、相部屋とはいえ一部屋に一つずつ風呂トイレキッチン洗濯機と綺麗に揃っているのである。やっぱり相当金がかかっているとしか思えない)洗濯機の中に突っ込む。そういえば、シーツは大丈夫だったのだろうか。がっついた挙句先にステイの方が眠ってしまったので、夜どんな始末を楓がつけたか全く見ていないのである。
 彼と、恋をしているわけではない。そんはずだ。あくまで自分は彼の友人として、彼のトラウマを緩和するためにお願いを聞いただけなのだかrあ。
 そして仮にこれが恋愛であるのならば、順序が滅茶苦茶すぎるとしか言えない。相手に好きです、という言葉も付き合ってください、もなく。キスも手繋ぎも何もかもすっ飛ばしていきなり本番をやってしまったわけなのだから。こんな形でスタートする恋愛など、不良でもない限り間違いだとしか思えない。酷い言い方をするなら、ただのセフレと言われても否定のしようがないではないか。
 それなのに。昨夜の、感じている楓の潤んだ眼を見て。抱きしめた自分より一回りも二回りも細い体を感じて。さらには恐ろしく相性が良かった、彼の“中”を思い出して――ただの友達と言うには少し行き過ぎた感情を抱いたのもまた事実なのである。
 守ってやらなくちゃいけない、と思った。
 同時に、こんな綺麗な奴を、怪物や汚い大人に触れさせたくないと思ってしまったのである。自分がまさに現在進行形で、汚している一人であるにも関わらず。それはただの庇護欲というより、独占欲に近いものがあるのではないだろうか。

――これ、友達に思うようなこと、なのか?やべえ、なんか、また下半身が……。

 楓のことを助けたいと思いながらムラムラするなんて、完全にただの変態だ。首をブンブン振って気を逸らしながら、手洗いした下着を、朝洗おう思っていた自分の寝巻きやタオルと一緒に洗濯機にかけることにする。蛇口を開け、洗剤と柔軟剤を入れ、スイッチを入れて一息ついた。
 到底忘れられる出来事ではないし、忘れていいことでもないが。とにかく今考えるべきことは、今日一日でどれほど“調査”ができるかということである。楓は明日には契約書を書かされてしまう。それが魔術的なブツであったのなら、本人の意思が上書きされたり、情報が漏れるなんてこともあるかもしれないのだ。何か手を打つならば、その前になんとかしなければなるまい。仕事が始まってしまうまでは特に何も起きない、というのが理想であるとしてもだ。

――葵城先生が泊まり込みで使っていた部屋、は既に他の先生が使っていて調べられなかった。そもそも葵城先生が消されたってなら、普通に考えてやばい情報を隠し持ってないかどうか、部屋なんか真っ先に調べられるはずだよな……。

 情報を残していても、見つかる可能性は相当低い。既に処分されてしまっていると見るべきだ。
 同じことが、彼が職員室で使っていた机でも言えること。彼が教えていた音楽室も昨日くまなく探させて貰ったが、やはりこちらにもおかしなものは見つからなかった。
 とすれば、残る候補は。

――軽音部が実質部室として使っている、音楽準備室か。

 軽音部のメンバーが信用できそうなら、彼らに話を聞いてみるのも悪くはないかもしれない。



 ***



 珍しく楓が寝坊しそうになったこと、それからステイの態度が随分ぎくしゃくしたものであったために、享には随分不審がられてしまった。二人の間で何かあったの?と尋ねられたが、かといっていくら享相手といえど詳細を話せるはずもない。とりあえずちょっと喧嘩をしただけだ、と言って誤魔化した。多分聡い享は疑問に思っているだろうが、今すぐ突っ込んで聞かれなかっただけ有難いと思うべきだろう。
 授業がある時間帯には、どこかを調べに行くなんてこともできない。休み時間と、授業後の自由時間。それも、決められた食事の時間などの合間に調査するしかないのである。調べるべきは場所だけではなく、軽音部のメンバーのこともだ。幸いにして、ステイが軽音部の奴いるか?と尋ねればすぐクラスで手を挙げてくれた者がいたので、探すのにはそうそう時間はかからなかったのだが。

「もうすぐ、南方が神子になるんだよな。……大丈夫なのかよ」

 軽音部のクラスメートも、どうやら楓のことは心配してくれていたらしい。葵城先生について尋ねると、合点が行ったのだろう。自分は大して話したことがないんだけど、と付け加えて教えてくれた。

「先輩達にとっては、すごく良い……なんつーの?先生っと言うより優しいお兄ちゃんみたいな人だったらしい。ピアノが滅茶苦茶上手くて、歌もすっげー上手くて、指導もできるイケメンだったってさ。不思議と独身だったらしいけど、まあこんなところで仕事してたんじゃ無理ないか」
「高橋先輩が神子だった時に、突然消えたって話だけど」
「そうだな。高橋先輩も軽音部のメンバーだったからな。神子って仕事が名誉なもんだってことは、この間の騒動までは信じてたやつが多かっただろうけど……それでも、神子に選ばれたら二ヶ月で強制的に卒業か退学だろ。高橋先輩のことは特に眼をかけてたから、先生もしょげてたし。軽音部自体もだいぶ微妙な空気になってたかな。だから……先生なら、高橋先輩を助けるために何かやっててもおかしくないなって、俺もそう思うぜ」
「……そうか」

 彼は、葵城と特に仲が良かったという先輩を紹介してくれた。三年生の、津築央つづきなかばである。休憩時間のうちに彼から津築に話を通しておいてくれたらしく、授業後は部活が始まる前にスムーズに話を聞くことができた。訪れた三人と後輩の話を聞いていろいろ察したのだろう。彼は音楽準備室に自分達を招き入れてくれ、先生が残したかもしれない書類などを探すのを一緒に手伝ってくれたのである。

「音楽準備室には、先生が残した楽譜やファイルがたくさんあったんですけどね。正直、特別な情報を残したメモなんかがあっても、もう処分されてしまっているかもしれません」

 眼鏡をかけた優しそうな、いかにも文系といった雰囲気の津築は。心底残念そうに告げた。

「妙だなとは思っていたんですよ。先生が急にいなくなって、しかも何処に行ったのかも誰も教えてくれないまま次の顧問の先生が来て。しかも、先生が消えてすぐ音楽室にずかずか複数人の先生が踏み込んできて、先生の名前が入っていたファイルや楽譜をみんな持っていってしまったんです」
「ええ!?」
「僕らも不審に思って、どういうことなんですかって問い詰めたんですけど。やめた葵城先生の私物が此処に残っているのは困るし、全部まとめて先生の自宅に送るからそのためだって言われたらどうしようもなくて。住所が分かっているなら手紙が書きたいから、先生の家の住所を教えてくださいとお願いしたら……やめた先生の住んでいるところを生徒に教えるわけにはいかないから、と」

 明らかに、葵城が神子に関する情報を学校に残していないかどうか警戒されている様子である。音楽室にもなかったし、準備室も危ないとは思っていたが――やはり学校側は先に手を打っていたということらしかった。
 ステイも享も楓も、肩を落とすしかない。棚をひっくり返して探したが、やはり葵城のものらしき書類などは一切見つかる気配がなかった。

――やっぱり、葵城先生が残した情報は、もうどこにも残ってないのか……?

 神様とやらについてを知る、最後の手がかり。唯一の希望であったというのに。目の前がじわじわ暗くなるのをステイが感じていると、待てよ、と楓が口を開いた。

「よくよく考えたら。葵城先生だって、それくらい読んでそうだよな。自分の行動が見つかったら、誰かに私物を丸ごと処分されたりしそうってことくらいは。だとしたら、事前に誰かに情報を話してバックアップしておくか、あるいはもっと見つかりにくい場所に情報を隠そうとするんじゃないか?音楽室とか、そんな簡単なところじゃなくてさ」

 一理あるといえばある。でも、それが見つからなければなんの意味もないではないか。ステイが不満を漏らそうとすると、今度は享がそうか、と呟いた。

「津築先輩。葵城先生と特に親しかったんですよね。何かプレゼントを貰ったり、物を借りたりしていませんでしたか?どんな些細なものでもいいので」

 情報を託すとしたら、それは葵城が特に信頼していた人物。先生達が敵である以上、軽音部の生徒である可能性は極めて高いはずである。
 津築はしばし眼を瞬かせて考えた後、あ、と声を上げたのだ。

「そういえば。……どうしても読みたかった文庫があって。先生に話したら、先生が丁度自分も持ってるし、もう読まないからってプレゼントしてくれた古書があったんです。……もしかしたらそこに、ヒントがあるのかもしれません……!」
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