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<11・協力>
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痺れている間に用意してきたロープで縛ってやれば、ポーラはあっさりと大人しくなった。そのかわり“さっさと殺せ”と吠えはじめたのが問題と言えば問題だったが。
「嫌だよ、俺人殺しになりたくないよ」
「甘ったれだな。自分を殺そうとしてきた相手にも同じことを言うのか」
「正当防衛を否定するつもりはないけど、君は本気で俺達を殺しに来てないでしょ。それくらいわかるよ」
「アタシは本気だった」
「はい嘘ー」
本気で殺そうとしにきていたなら、勝負はもっとあっさり着いていたに決まっている――当然、優理とサミュエルが負ける形で。彼女がこうしてあっさり捕まる羽目になったのは本人に迷いがあって、それがある意味“甘さ”に繋がったからとも言えるだろう。彼女の言葉は完全なるブーメランだった。そして多分、本人もそれをわかっているはずだ。
「君が情もへったくれもない人間なら、交渉なんかしないであっさり俺達を殺してるでしょ。それこそ声なんかかけないで奇襲すれば一発で終わってたよ?それをしなかった上、名前までちゃんと名乗った時点で、君は本当は戦いたくないしできればそのまま帰って欲しいってのが見え見えだった。……前の人達に怪我をさせたことにも罪悪感があったんじゃないの」
その言葉に、ポーラは気まずそうに視線を逸らす。完全に図星だろう。
「だから俺は、丸腰で君に話しかけながら近づいていったんだよ。正々堂々戦いたい人間ほど、丸腰の人間を攻撃するのには抵抗があるからさ。ましてやそれが、奇襲を仕掛けるのも躊躇うくらいの子ども二人なら尚更だろ。……君が戦士として優秀なのはわかる。だからサミュエルの町の大人達を一人で倒せたんだろうし。でも、望んでこんなことしてるわけじゃないんじゃないの」
彼女は答えない。任務に失敗してしまったことの動揺と、ここからどう逃げ出すべきかの算段とを考えるのに必死なんだろうか。実際、ロープで縛ったはいいが、これで完全に彼女を封じられたとは思っていないのが優理だった。どう考えても、自分とサミュエル二人合わせても彼女に力で勝てる気がしないし、こんなロープなど屈強な彼女なら引きちぎって逃げられそうなものである。電撃による麻痺が抜けたら、縄を抜けてこちらを攻撃してきてもなんらおかしくはあるまい。
それでも、今すぐ逃げようとする気配がないのは。考えることが多すぎて混乱しているか、もしくは諦めの境地であるのかといったところだろうか。
「俺、魔女を倒そうと思ってるんだ」
「!」
ここは試しに一枚カードを切るべき時か。優理が口に出すと、ぎょっとしたようにポーラは顔を上げた。
「転生の魔女、ジェシカを倒して欲しいってある人に依頼を受けててさ。それを成し遂げないと、元の世界に帰れないんだよね」
「ユーリさん!?その話は……」
「いいよ。ここは正直に言う」
記憶喪失だのなんだので誤魔化すのはどのみち限界があるのだ。何より信用を得たいなら、真実で交渉するべきではなかろうか。
「君達の町が薬を売れなくなったのも、魔女に何かされてるからじゃないかと思ったんだけどどうかな。……もしそうなら。魔女を倒さないと、根本的に解決できることは何もないよ。このまま君はずっと、誰かの言いなりになって人を傷つけ続けるの?それでいいの?」
「それが傭兵の仕事だ。アタシ達はそれ以外に生きる方法なんかない」
「オーガだから?さっきちらっとサミュエルに聴いたけど、人間達の差別に苦しんでるって聞いた。ひょっとして、言いなりになる代わりに仲間と町に住むことを許して貰ったとか、そういうのだったりする?」
「…………」
ポーラは何も答えなかったが、その沈黙はほぼ肯定と同じだろう。優理はため息をつくしかない。どこの世界でも、人種差別やら階級差別やらは変わらないということらしい。彼女は確かに自分達と比べて大柄で屈強だし角も生えてるが、見た目は人間とさほど変わらないではないか。自分を差別してきた人間であろうと、傷つけるのを躊躇うような優しい心も持ってる。
「許せないな、君みたいな美人を差別するなんて!あ、いや美人でなくても差別されていいわけじゃないけど……」
「びっ……!?」
「あ、ご、ごめんつい」
うっかり本音がぽろっと出てしまった。顔を真っ赤にさせて固まるポーラに、優理は慌てて手を振って謝る。
「そ、その。……人の差別って、なかなかなくせないものだと思うんだけどさ。この世界の人達みんな、魔女と転生者に悩まされてるんでしょ?そいつらみんなぶっとばしたら英雄だし、オーガの一族だろうとなんだろうと認めて貰えるだろうし、みんなも助かるしで一石二鳥だと思うんだけど……だめ?」
優理の提案に、今度こそ彼女は戸惑ったようにこちらを見た。言いたいことを理解したからだろう。
「お前。アタシに協力しろって言うつもりかよ」
「だって俺弱いんだもん。サミュエルはともかく、ろくに戦えないからさ、君みたいな強い人が仲間になってくれたら心強いかなーって現金な気持ちはあるよ!」
「正直過ぎんだろ……」
ああ、完全に呆れられてしまった。優理は苦笑いするしかない。残念ながら、一から十まで本音なのだったが。
魔法で遠距離から連射できるサミュエルに加えて、近接戦闘のエキスパートであるポーラが味方になってくれたらどこまでも心強いだろう。作戦の幅も広がるはずだ。というか、自分は作戦を立てることと逃げ隠れすることしかできないので是非ともそうしたいところなのだが。
「本気で魔女を、倒せると思ってんのか」
彼女の言葉に、優理は肩をすくめる。
「倒す以外に選択肢ないよ。というか、元の世界に帰る云々がなくても見過ごせない。みんなを苦しめて、それで平気な奴のことなんか」
「苦しめられてるのが赤の他人でもか」
「目の前で苦しんでる誰かを見捨てて逃げたら、それはもう俺じゃないから」
異世界だろうと、関係ない。優理は優理の信念を貫く、それだけのことだ。
自己満足かもしれない。ヒーローになんて、本当はなろうと思った時点でなれるはずのないものなのかもしれない。
それでも、自分は、少なくとも自分自身のヒーローではあり続けたいのだ。
己を偽ったらもう、息を止めるのとなんら変わりはないのだから。
「俺、弱いけど。それでも出来ることは全力でするよ。みんなを助けたいんだ……君も含めて。だから、力を貸してくれないかな」
座り込んでいる彼女に視線を合わせて、真正面から見つめて訴えかければ。ポーラは暫くの沈黙の後、このお人よしめ、と息を吐いたのだった。
「……確かに、アタシだっていつまでもこのままでいいとは思ってなかったしな。協力してやってもいいぜ。本当に、勝つ見込みがあるなら、の話だけどな」
「まあ、そう言うよね。君みたいな人が黙って従ってるくらいなんだ。単にオーガの一族の皆のため、ってだけじゃないだろ。敵に厄介な人間がいるとか?」
「そうだな。ていうか、この町にはお前の言う魔女・ジェシカの四人の部下のうち、二人が来てるんだ。サカタ・ヨウタロウ……ってやつと、アンジョウ・ヒロミ……って名前だったと思う」
「坂田に安生!?」
これはまさか、と優理は頭を抱えたくなる。サトヤから話を聞いていたが、まさかあの事故で、あの場にいた全員が最終的にこの異世界に飛ばされてきたというオチなのだろうか。不良四人のうち全員来ているわけではなかろうとたかをくくっていたのに(サトヤはるりはは来ていると言ったが、それ以外の誰が異世界転生したかは言っていなかったためだ)。
そして空一以外の全員が、魔女の部下になっているのも確定していいのだろう。ただでさえ面倒な連中なのに、チートスキルなんぞ与えられたら大惨事以外の何者でもない。一体ここでは何をやらかしたのだろうか。
「えっと、その人たちってユーリさんが一緒に転生させられたっていう、知り合いの方々ですか?」
「まあ、顔見知りではあるかな」
そいつらにいじめられていました、なんていうのも空しいので、サミュエルにはそう言って言葉を濁しておくことにする。ああ、せめてもの救いは、あの時投げられた猫たちの方は助かっているらしいということか。
「魔女が異世界で迷惑かけまくってる上、そいつらが魔女の部下として呼び出されて大惨事になってるから止めてくれ……って俺を転生したやつに言われてさ。なんとか止めなくちゃって思ってるとこなんだよな。なんか、この世界に転生してくる時に、魔女にとんでもないチートスキルを渡されてるみたいだし……どんなスキルなのかは俺はまったく知らないんだけど」
一応優理もスキルは渡されているが、戦闘などで直接的に役に立つスキルではない。今ここでその説明をする必要はないだろう。
「サカタ、アンジョウの二人は魔女の部下で間違いない。本人達は魔女というより、仲間のルリハというやつに従っているみたいだったけどな。そのルリハの願いを叶えるために、魔女の願いを叶える必要があると言っていた」
ポーラは渋い顔で説明する。
「その魔女の願いを叶えるためには、世界中の大地に埋まっている魔石を根こそぎ掘り起こさないといけないらしい。そのために、魔石を探知する機械の増産と、それを使って魔石の採掘をするための人員を欲している。この町の工場が、薬の生産も含め軒並みストップしたのはそのせいだ。必要な道具も機械も人員も、みんなそっちに持ってかれちまってるからな。自分達のための薬の生産さえままならないのに、よその町に売るなんて余裕あると思うか?」
「あーそういうこと……」
「サカタとアンジョウは二人揃って町に来て、いきなり町の人間達に能力を見せつけて恐怖で支配して……工場と、町そのものを乗っ取っちまったのさ。アタシらも迷惑してたんだけど、傭兵として仕事をするなら町で特別に生活保障するって言われて……仲間の何人かがそれに乗っかちまってね。ただでさえ、町はずれで貧乏な生活させられてたからなあ」
そういう事情か、と優理は理解する。貧しい生活から一転、町で少しでもマシな暮らしがさせてもらえるなら、傭兵として雇われるのも間違いではないだろう。ポーラ本人としては、苦い気持ちがあったようだが。
「魔石を集めて、魔女が何をしようとしているかはわからない。ただ、伝説の力を手に入れようとしているらしい、って話は聞いてる。大量の魔石がないと、それができないんだと。……ただでさえ鬼のように強い魔女だってのに、これ以上どんな力が必要だってんだか」
「なるほど」
本当は、ポーラ以外のオーガの仲間達にも協力を要請できるのが一番なのだろう。ただし、この様子だと彼女たちも一枚岩ではないようだし、下手に揉めていたらポーラの心変わりが例の二人に知られる羽目になりそうだ。
ならばここは、自分とサミュエルとポーラの三人だけでどうにかできるやり方を考えた方がいいだろう。
「……坂田と安生の能力。ポーラは見たんだよね?わかってる範囲で、教えて貰ってもいい?」
あまりぐずぐずはしていられない。
素早く情報収集して、策を練らなければ。
「嫌だよ、俺人殺しになりたくないよ」
「甘ったれだな。自分を殺そうとしてきた相手にも同じことを言うのか」
「正当防衛を否定するつもりはないけど、君は本気で俺達を殺しに来てないでしょ。それくらいわかるよ」
「アタシは本気だった」
「はい嘘ー」
本気で殺そうとしにきていたなら、勝負はもっとあっさり着いていたに決まっている――当然、優理とサミュエルが負ける形で。彼女がこうしてあっさり捕まる羽目になったのは本人に迷いがあって、それがある意味“甘さ”に繋がったからとも言えるだろう。彼女の言葉は完全なるブーメランだった。そして多分、本人もそれをわかっているはずだ。
「君が情もへったくれもない人間なら、交渉なんかしないであっさり俺達を殺してるでしょ。それこそ声なんかかけないで奇襲すれば一発で終わってたよ?それをしなかった上、名前までちゃんと名乗った時点で、君は本当は戦いたくないしできればそのまま帰って欲しいってのが見え見えだった。……前の人達に怪我をさせたことにも罪悪感があったんじゃないの」
その言葉に、ポーラは気まずそうに視線を逸らす。完全に図星だろう。
「だから俺は、丸腰で君に話しかけながら近づいていったんだよ。正々堂々戦いたい人間ほど、丸腰の人間を攻撃するのには抵抗があるからさ。ましてやそれが、奇襲を仕掛けるのも躊躇うくらいの子ども二人なら尚更だろ。……君が戦士として優秀なのはわかる。だからサミュエルの町の大人達を一人で倒せたんだろうし。でも、望んでこんなことしてるわけじゃないんじゃないの」
彼女は答えない。任務に失敗してしまったことの動揺と、ここからどう逃げ出すべきかの算段とを考えるのに必死なんだろうか。実際、ロープで縛ったはいいが、これで完全に彼女を封じられたとは思っていないのが優理だった。どう考えても、自分とサミュエル二人合わせても彼女に力で勝てる気がしないし、こんなロープなど屈強な彼女なら引きちぎって逃げられそうなものである。電撃による麻痺が抜けたら、縄を抜けてこちらを攻撃してきてもなんらおかしくはあるまい。
それでも、今すぐ逃げようとする気配がないのは。考えることが多すぎて混乱しているか、もしくは諦めの境地であるのかといったところだろうか。
「俺、魔女を倒そうと思ってるんだ」
「!」
ここは試しに一枚カードを切るべき時か。優理が口に出すと、ぎょっとしたようにポーラは顔を上げた。
「転生の魔女、ジェシカを倒して欲しいってある人に依頼を受けててさ。それを成し遂げないと、元の世界に帰れないんだよね」
「ユーリさん!?その話は……」
「いいよ。ここは正直に言う」
記憶喪失だのなんだので誤魔化すのはどのみち限界があるのだ。何より信用を得たいなら、真実で交渉するべきではなかろうか。
「君達の町が薬を売れなくなったのも、魔女に何かされてるからじゃないかと思ったんだけどどうかな。……もしそうなら。魔女を倒さないと、根本的に解決できることは何もないよ。このまま君はずっと、誰かの言いなりになって人を傷つけ続けるの?それでいいの?」
「それが傭兵の仕事だ。アタシ達はそれ以外に生きる方法なんかない」
「オーガだから?さっきちらっとサミュエルに聴いたけど、人間達の差別に苦しんでるって聞いた。ひょっとして、言いなりになる代わりに仲間と町に住むことを許して貰ったとか、そういうのだったりする?」
「…………」
ポーラは何も答えなかったが、その沈黙はほぼ肯定と同じだろう。優理はため息をつくしかない。どこの世界でも、人種差別やら階級差別やらは変わらないということらしい。彼女は確かに自分達と比べて大柄で屈強だし角も生えてるが、見た目は人間とさほど変わらないではないか。自分を差別してきた人間であろうと、傷つけるのを躊躇うような優しい心も持ってる。
「許せないな、君みたいな美人を差別するなんて!あ、いや美人でなくても差別されていいわけじゃないけど……」
「びっ……!?」
「あ、ご、ごめんつい」
うっかり本音がぽろっと出てしまった。顔を真っ赤にさせて固まるポーラに、優理は慌てて手を振って謝る。
「そ、その。……人の差別って、なかなかなくせないものだと思うんだけどさ。この世界の人達みんな、魔女と転生者に悩まされてるんでしょ?そいつらみんなぶっとばしたら英雄だし、オーガの一族だろうとなんだろうと認めて貰えるだろうし、みんなも助かるしで一石二鳥だと思うんだけど……だめ?」
優理の提案に、今度こそ彼女は戸惑ったようにこちらを見た。言いたいことを理解したからだろう。
「お前。アタシに協力しろって言うつもりかよ」
「だって俺弱いんだもん。サミュエルはともかく、ろくに戦えないからさ、君みたいな強い人が仲間になってくれたら心強いかなーって現金な気持ちはあるよ!」
「正直過ぎんだろ……」
ああ、完全に呆れられてしまった。優理は苦笑いするしかない。残念ながら、一から十まで本音なのだったが。
魔法で遠距離から連射できるサミュエルに加えて、近接戦闘のエキスパートであるポーラが味方になってくれたらどこまでも心強いだろう。作戦の幅も広がるはずだ。というか、自分は作戦を立てることと逃げ隠れすることしかできないので是非ともそうしたいところなのだが。
「本気で魔女を、倒せると思ってんのか」
彼女の言葉に、優理は肩をすくめる。
「倒す以外に選択肢ないよ。というか、元の世界に帰る云々がなくても見過ごせない。みんなを苦しめて、それで平気な奴のことなんか」
「苦しめられてるのが赤の他人でもか」
「目の前で苦しんでる誰かを見捨てて逃げたら、それはもう俺じゃないから」
異世界だろうと、関係ない。優理は優理の信念を貫く、それだけのことだ。
自己満足かもしれない。ヒーローになんて、本当はなろうと思った時点でなれるはずのないものなのかもしれない。
それでも、自分は、少なくとも自分自身のヒーローではあり続けたいのだ。
己を偽ったらもう、息を止めるのとなんら変わりはないのだから。
「俺、弱いけど。それでも出来ることは全力でするよ。みんなを助けたいんだ……君も含めて。だから、力を貸してくれないかな」
座り込んでいる彼女に視線を合わせて、真正面から見つめて訴えかければ。ポーラは暫くの沈黙の後、このお人よしめ、と息を吐いたのだった。
「……確かに、アタシだっていつまでもこのままでいいとは思ってなかったしな。協力してやってもいいぜ。本当に、勝つ見込みがあるなら、の話だけどな」
「まあ、そう言うよね。君みたいな人が黙って従ってるくらいなんだ。単にオーガの一族の皆のため、ってだけじゃないだろ。敵に厄介な人間がいるとか?」
「そうだな。ていうか、この町にはお前の言う魔女・ジェシカの四人の部下のうち、二人が来てるんだ。サカタ・ヨウタロウ……ってやつと、アンジョウ・ヒロミ……って名前だったと思う」
「坂田に安生!?」
これはまさか、と優理は頭を抱えたくなる。サトヤから話を聞いていたが、まさかあの事故で、あの場にいた全員が最終的にこの異世界に飛ばされてきたというオチなのだろうか。不良四人のうち全員来ているわけではなかろうとたかをくくっていたのに(サトヤはるりはは来ていると言ったが、それ以外の誰が異世界転生したかは言っていなかったためだ)。
そして空一以外の全員が、魔女の部下になっているのも確定していいのだろう。ただでさえ面倒な連中なのに、チートスキルなんぞ与えられたら大惨事以外の何者でもない。一体ここでは何をやらかしたのだろうか。
「えっと、その人たちってユーリさんが一緒に転生させられたっていう、知り合いの方々ですか?」
「まあ、顔見知りではあるかな」
そいつらにいじめられていました、なんていうのも空しいので、サミュエルにはそう言って言葉を濁しておくことにする。ああ、せめてもの救いは、あの時投げられた猫たちの方は助かっているらしいということか。
「魔女が異世界で迷惑かけまくってる上、そいつらが魔女の部下として呼び出されて大惨事になってるから止めてくれ……って俺を転生したやつに言われてさ。なんとか止めなくちゃって思ってるとこなんだよな。なんか、この世界に転生してくる時に、魔女にとんでもないチートスキルを渡されてるみたいだし……どんなスキルなのかは俺はまったく知らないんだけど」
一応優理もスキルは渡されているが、戦闘などで直接的に役に立つスキルではない。今ここでその説明をする必要はないだろう。
「サカタ、アンジョウの二人は魔女の部下で間違いない。本人達は魔女というより、仲間のルリハというやつに従っているみたいだったけどな。そのルリハの願いを叶えるために、魔女の願いを叶える必要があると言っていた」
ポーラは渋い顔で説明する。
「その魔女の願いを叶えるためには、世界中の大地に埋まっている魔石を根こそぎ掘り起こさないといけないらしい。そのために、魔石を探知する機械の増産と、それを使って魔石の採掘をするための人員を欲している。この町の工場が、薬の生産も含め軒並みストップしたのはそのせいだ。必要な道具も機械も人員も、みんなそっちに持ってかれちまってるからな。自分達のための薬の生産さえままならないのに、よその町に売るなんて余裕あると思うか?」
「あーそういうこと……」
「サカタとアンジョウは二人揃って町に来て、いきなり町の人間達に能力を見せつけて恐怖で支配して……工場と、町そのものを乗っ取っちまったのさ。アタシらも迷惑してたんだけど、傭兵として仕事をするなら町で特別に生活保障するって言われて……仲間の何人かがそれに乗っかちまってね。ただでさえ、町はずれで貧乏な生活させられてたからなあ」
そういう事情か、と優理は理解する。貧しい生活から一転、町で少しでもマシな暮らしがさせてもらえるなら、傭兵として雇われるのも間違いではないだろう。ポーラ本人としては、苦い気持ちがあったようだが。
「魔石を集めて、魔女が何をしようとしているかはわからない。ただ、伝説の力を手に入れようとしているらしい、って話は聞いてる。大量の魔石がないと、それができないんだと。……ただでさえ鬼のように強い魔女だってのに、これ以上どんな力が必要だってんだか」
「なるほど」
本当は、ポーラ以外のオーガの仲間達にも協力を要請できるのが一番なのだろう。ただし、この様子だと彼女たちも一枚岩ではないようだし、下手に揉めていたらポーラの心変わりが例の二人に知られる羽目になりそうだ。
ならばここは、自分とサミュエルとポーラの三人だけでどうにかできるやり方を考えた方がいいだろう。
「……坂田と安生の能力。ポーラは見たんだよね?わかってる範囲で、教えて貰ってもいい?」
あまりぐずぐずはしていられない。
素早く情報収集して、策を練らなければ。
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