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だから俺は、生きることにした。
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あの子がいなくなったのは、俺達が小学校の五年生に上がる直前のこと。四年三組、三学期も残り僅かになった時のことだった。
小倉港君。
身体は大きくないけれど、いつもにこにこしていて、頭が良くて、みんなに頼りにされていた“相談役”であったのはよく覚えている。彼は一年生の時から、たくさん難しい本を読んでいた。大人でさえ読めないかもしれない、いわゆる“非常用漢字”というのも、大抵港君に聞けば答えが返ってきたはずである。
熟に行っていたのか、それとも独学か。英語も多少は話せたらしいと聞いたことがある。学校のテストでは百点満点が当たり前、そういう生徒だった。でも、時々しょうもないミスをしてしまってはネタにして、ちょこちょこみんなを笑わせていた記憶もある。特に、みんなの顔が暗くなってくると、いつの間にか近くまでやってきていて、一言二言でみんなを明るくして帰っていく――そういう恐ろしく空気が読める人間だったのだ。
一人で本を読んでいることが多かったけれど、三年生まではけして孤立していたわけではないと知っている。まあ俺は彼と同じクラスだったわけではなくて、一緒のクラスだった斎藤君に聞いた印象では、という話なのだけれど。
ただ本が好きで、運動が苦手であったというだけ(彼はテストの点は良かったけれど、体育の成績だけはからっきしだったのだ。保健体育のテストがあると、どうにか五段階中三がキープできたようだけれど)。みんなもそれがわかっていたから、あの子を無理に誘おうとはしなかったし、俺達も誘いに乗らない港を“感じが悪い”とは思わなかったのである。
そんな彼に、俺が初めて頼ることになったのは――小学校の四年生になってからのこと。
正直に言って、四年生のクラスは酷いものだったのだ。市川美亜、という女王様のような女の子が全てを支配して、気に入らない子を取り巻き達と一緒にいじめて回っていたのである。
ターゲットは“狼”と呼ばれて、定期的に変遷していった。彼女たちは、“狼のように嫌われ者で和を乱す人間は、徹底的に教育して優しい羊に変えてあげる必要がある”という歪んだ信念の下、言いがかりをつけて悪口やパワハラのような行為を繰り返し、一人を追い詰める遊びをしていたのである。
誰もが自分が“狼”にならないことだけで必死で、友達がいじめられていても助けることのできない状況に陥っていた。なぜなら助けたら最後、次の“狼”が自分になるのは明白だったのだから。そして俺も――友達を助けることができず、そして市川美亜の恐ろしい人心掌握術と精神攻撃に怯えて毎日震える日々を過ごしていたのである。
『隆君、やっぱり君も気になってるんだよね。今のクラスの状況』
トイレでこっそり相談したい、と言った時点で彼は察していたのだろう。僕が口を開くより先に切り出したのは、港君の方だった。ちなみに町田隆、というのが僕の名前である。
『嫌な空気だな、とは俺も思ってたんだけど。でも、まさかここまで酷くなるなんて思わなかった。市川さん、綺麗だし一見すると優しそうだったし……最初にいじめられてた北見さんは可哀想だったけど、北見さんの態度が変わればもうそれで終わるとばかり思ってたのに……』
酷いことを言っているのはわかっている。僕の声は段々と尻すぼまりになっていった。
一番最初にいじめられていた、北見舞花。正直僕は、彼女以外に標的が移ることも、ここまでいじめが長引くことも全く予想していなかったのである。
『ああいうタイプは、その“態度が変わる”の基準も恐ろしく自分勝手でハードル高く設定しているものだけどね。君は、北見さんの方にも問題があると思ってたのかな?』
『正直、どうなんだろうとは思ってたけど……市川さんが怖くて首を突っ込みたくなかったというか、知ろうとするのも恐ろしかったというか。正直、俺女子って怖くて苦手なんだよ。一人にものを言うと集団で突っかかってくるイメージあってさ。一対一の喧嘩で、どうして他の人が出てくるんだっていうのは凄く疑問で仕方なかったけど』
元々女子には苦手意識があったが、今回のことでますますそれが募ってしまった形だった。だからといって、一人の少女がいじめられている状況を、笑って見ていたつもりではないのだけれど。
まあ、何もできずにいたのだから、結局共犯と思われても仕方のないことなのかもしれない。
『はっきり言って、もやもやはしたけど……女子だけの問題なのかと思ってたし、そう思いたかった。でも、今“狼”にされてるのは……』
男子に、自分たちに火の粉が降りかからなければ、関わってはいけないだろうとも考えていたのである。
わかっている。どう言い訳したってそれは、俺が問題から目をそらして逃げていただけということくらいは。実際その証拠に、今は巡り巡って男子生徒が“狼”にされている状況である。
男子も、美亜にとっては関係ない。十分“狼”にする意味があり、理由があるのだ。それを知った時、対岸の火事と決め込んでいた男子達がどれほど震え上がったかわかるだろうか。
『許せないと思うし、注意しないといけないのはわかるし……久保田君可哀想で、なんとかしてあげたいとは思うけど。助けるようなことしたら、次の標的になるのは俺だ。そんなの無理だ、自分があんなことになったら耐えられない……』
『それが普通の心理だよ。……先生に言っても、解決しないのわかってるしね』
『うん。先生が動いたらすぐバレる。誰がチクったんだってなって、確実に犯人探しが始まる……見つかっても見つからなくても、誰かが新しい狼にされるの目に見えてるじゃん。そもそも、先生が動いたって解決しないし。注意したって、あいつら表向きイイコにするだけで……先生の見てないところで酷いことするのわかってる。今だって、久保田君が小さくて手が届かないのわかってて……上履きを下駄箱の上に乗せたんだと思う。前にもあったし。掃除のために移動させて忘れました、とでも言えば言い訳できるから、あえてはっきり隠さないんだ……』
市川美亜の意地の悪いところは、どうすれば“いじめの加害者”と判断されずに逃げきれるか、そのギリギリのラインをきっちりと把握していることである。相手の身体に自分が直接傷を残す行為は絶対にしない。やるなら彼女の家のコネクションを使って無関係の大人にやらせるか、あるいは身体は傷つけず心をズタズタに引き裂く方法を模索するのだ。
そして、大人にバレても“そんなつもりではありませんでした”が通る逃げ道をちゃんと用意している。悪口もそう。あくまで“クラスをよくするための相談”を装って、ターゲットが傷つくような悪口をみんなで平気で垂れ流すのがテンプレートだ。先生がいない時間を見計らい、そしてターゲットにはしっかり聞こえる距離を保って。
さらに八方塞がりなのは。教師がこの問題に――あまりにも無頓着ということである。
『不登校になる前、種田君が先生に言ってくれたみたいなんだけど。……野中先生、全然どうすればいいのか、解決策出してくれなかったって……』
不登校になる直前に、ある男子が担任の野中に相談を持ちかけていたのだった。先生が、まるでいじめなど存在しないように振舞うことに堪忍袋の尾が切れたのだろう。真面目で責任感の強い彼ならば、他のみんな以上に気に病んでいてもおかしくはない。
だが教員は。まるで自分たちに、手を貸してくれる様子はなくて。
『他の先生達は、そういう相談は野中先生にして、みたいな雰囲気で助けてくれる気配ないし。そもそもチクった、ってバレても問題ないようにするには、話したその後から学校をお休みするくらいしかできないし。……正直、もうどうすればいいのかわからない。三年生までは学校楽しかったのに、今はみんなピリピリして、ドッチボールしてても楽しそうじゃなくて……辛い。どうすればいい?小倉君、いつもみんなの困ったこと相談してきたんでしょ?今回のことも、なんとか解決できない……?』
学校に来るのさえ辛くなっているのはもう、俺だけではなかったはずである。それでも会いたい友達がいて、いじめの状況を親に話しづらくて、結局来るしかないと思って重い足を引きずり続けているのだ。
大人が頼れないならもう、子供だけでなんとかするしかない。
イチかバチか、俺はみんなの頼れる相談役に、話を持ちかけることにした。そういう経緯だったのである。
俺の必死の言葉に、彼は。
『僕もずっと、このままの状況は良くないとは思っていた。僕自身がいじめられるかどうか、なんて問題じゃない。そもそも狼にされたこともない子達まで大きなストレスを抱えてるのは間違いない事実だ。実際、大半の子達の成績は下がってるらしいしね。先生に平均点が低いって叱られたでしょ』
そのための解決策を全く講じないのは先生なのにね、と肩をすくめる港。
『しかも、野中先生もだいぶヒステリー気味になってたし……薬もいっぱい飲んでるようだったから、あれは休職しちゃうかもしれないなあ……』
『え、ええ?そんな……』
『大人を頼ってもどうにもならないって君の考えは正しいよ。そもそも、学校からイジメが出るっていうのは、学校側からすると大問題なんだ。とにかく“そんなものはない”ってことにしたいんだよ。大騒ぎになって責任取らされるイメージ強いからじゃないかな、指導不足だって。僕からすると、いじめそのものを事前に阻止するのって本当に難易度が高くて、それができないからいじめが起きた後に迅速に対処する方法を考えた方が遥かに建設的だと思うんだけどねえ』
言動がもはや小学生のレベルではない。なんと達観していることか。同時に、その彼の落ち着きぶりは俺に確信させたのである。
きっと彼なら、港ならこの状況をなんとかできるのではないか、と。
『みんな、元凶が誰なのかはわかっている。市川美亜だ。彼女が改心すれば、あるいはこのクラスからいなくなれば問題は解決する……ように見えるかもしれないけれど、実際そんなことはないんだよね。最大の問題は、彼女の父が与党国民平和党の、衆議院議員の娘だってことなんだけど』
『あ……!』
ここで俺は思い出した。市川美亜が、“あたしのパパは特別なの”と話していたことを。金持ちである、というのはなんとなく察していたことではあったのだけど。
『これが高校だったら、退学処分ってやり方もできなくはなかったんだろうけど。小学校で、義務教育。十四歳未満だから何が問題が起きても逮捕できる年齢でさえない。そもそも大前提として退学・停学なんて学校側でさせられないのに、おまけで親がこれじゃね。下手な手を打てば、学校側が訴えられる事態になりかねない』
『そんな、悪いのはあっちなのに……!』
『そう、どう考えても諸悪の根源は市川美亜なのに、それを父親の機転と人脈で覆されかねないんだよ。こっちは普通の公立の学校法人なんだから。……だったら彼女を在籍させたまま改心させられるのかって話だけど、それが難しいのは君もなんとなくわかってるんじゃないのかい?』
『小倉君でも、無理だと思うの?』
『無理というか、限りなく厳しいかな』
絶望的な気持ちになる俺に追い討ちをかけるがごとく、港が告げる。
『ある意味、彼女は僕と“同族”だから。あれは、ただの子供のいじめの主犯じゃない。たった一人で、言葉で、暴力さえも用いずに人心を掌握して集団を操る力を持っている……立派な“魔女”だ』
魔女。ああ、確かに全くその通りだ。
人の心を自在に操り、空気を誘導し、自分は手を汚さずに誰かを追い詰める。まるで魔法のようだと、何度そう思ったことだろう。
『勿論、そういう力を持っている人は世の中にそれなりの数いると思うよ。そしてそれを、人の為世の為に使っている素晴らしい人もたくさん存在している。でも、そういう才能の活かし方を“意図的に”誤る人が時々存在するんだよね。市川美亜は、まさにそういう類の人間。彼女は自分がしていることが本気で悪だと思っていない。教室に、自分の為の独裁国家を作ることが、間違いだとは全く考えていないって印象だ。何度か直接言葉を交わしたけど明白だったよ。あれは、第三者がどうこう言って意見を変えられるようなタイプじゃない。非行に走る生徒を仮に“芯が曲がる”と表現するなら彼女の場合は……最初から“芯と呼ばれるものが存在しない”だ』
『説得しても、無意味ってこと?』
『この世界に絶対なんてものはないから、ゼロだとは言わないけれど。ほぼほぼ無意味だと思っていいと考えてるよ。注意すれば彼女は当然のように“自分の世界を自分のために動かして何がいけない?”と返してくるだろうさ。……そういえば、彼女三年生の終わりの終わりに転校してきたんだっけね。前の学校でも相当やらかしていたんじゃないかと思うんだけど、どうかなあ……』
もしかしたら、そういう情報も少し調べればわかったのかもしれない。
まあ、小学生である以上、前の学校とやらを突き止めて調べても大人が口を割ることはなかっただろうが。
『人狼ゲームで言うならば、最初から吊るすべき人狼がわかっているような状態だ。でも、既にみんなの心は市川美亜に洗脳されつつある。占い師が指をさしたら最後、そっちが狼に仕立て上げられるっていう状況だ。だから誰も彼女を糾弾できない。環境的にも排除できないし、ましてやさっき言ったように説得してどうこうできるような相手でもないことは明白だ』
そもそも、と港は続ける。
『仮にみんなが、彼女の洗脳を抜け出してこっちに味方してくれても。僕らみんなで彼女を孤立させて追い詰めるような行為をしたら、今度は逆に僕たちの方が彼女を“いじめている”状況になってしまいかねない。それは倫理的にどうかと思うし、根本的な“いじめ問題の解決”にはなっていない。報復合戦にもなれば完全に堂々巡り。もっと言えば僕らが一年耐えても、彼女は進級すれば必ず同じことを繰り返すさ。少なくともあと二年、どこかのクラスが犠牲になることは確定的だ』
『じゃ、じゃあどうすればいいの!?八方塞がりじゃないか!』
『そうだね。……だから唯一、方法があるとすれば一つだけだと思っている』
方法?この状況を覆す方法など、本当にあるというのだろうか。唖然とする俺の前で、港はにっこりと笑ったのだ。
『彼女に自分の意思で、いじめ行為をやめさせるか……あるいは、この学校から出て行くように仕向けることだ。大丈夫、僕にいい作戦があるんだよね』
後で友人に話を聞けば。彼は前から、相談すれば“なんでも”解決できることで有名だったというのだ。自分の力に、本人も絶対の自信があったのだろう。どんな相談であっても、その知恵と知識でなんとかしてこれた、そういう自負が彼にはあったに違いない。
今回のいじめの問題は、そんな彼が初めて挑戦する難題だったのだろう。
何でも解決できてきた彼が、初めて解決できないかもしれない壁にブチ当たったのだ。相談を受けた時の彼の顔はむしろ輝いていたことをよく覚えている。
『絶対に僕がなんとかしてみるよ。きっと僕は、こういう問題を解決するために生まれてきたんだから』
彼もまた、ある意味“魔術師”と呼ばれる類だったのだろう。普通の子供とは大きく思考が乖離していた。人が見えない何かを見て、人が恐るようなものさえ取るに足らないと鼻で笑えるような何かを持っていた。全く俺達とは、別の次元で生きていた“人間の姿をした別の存在”であったのだと、大人になった今ならそう思うのだ。
港はその相談の後、あえて目立つことによって自ら美亜の“狼”の地位に躍り出た。そして散々いじめを受けた後――線路に向かって身を投げたのである。
彼はいじめの証拠画像や記録を取ると、それを彼が死んだ一週間後に複数のSNSで同時アップされるような仕掛けを施していた。いじめで自殺者が出て、その告発が出回れば――あの市川美亜もその親も、権力だけで事実を握りつぶすことなどできない筈だと、そう踏んだのだろう。
そして、優秀な相談役で、みんなに頼られていたはずの少年は――あまりにもあっけなく、俺達の前から姿を消したのである。
***
「お前、ほんと馬鹿だったよな」
彼が、いじめを解決するためだけに命を捨てたことを知ったのは――小学校を卒業してから、かなりの月日が流れた後だった。
有給休暇を取ってやってきた群馬県の墓地の前。俺は汗をぬぐいつつ彼の家の墓に手を合わせ、唇を噛み締めるのである。
「本当に馬鹿だったよ。……なんでそんなに頭いいのに、自分が死ぬことでみんなが傷つくってことに、気づかないで逝っちまうのかね」
彼の告発文は、出回る前に警察に見つかり――差し止められてしまっていた。
そして市川美亜は何故か、彼が自殺してからしばらくした後、同じく電車の事故に遭い――両目と利き腕、下半身の自由を失ったのである。それが、果たして最後の最期で港が仕掛けた呪いのようなものであったのか、は今でもわからない。確かなのは最終的に市川美亜が学校にこれなくなったことで、彼女による小学校でのいじめだけは収束させることができたということだけである。
「……そんなことするくらいなら、市川美亜を殴ってでも……それこそ暴力で止めたって、そのほうが全然マシだったのにさ。お前が、そうやって死んじまうくらいなら」
蝉時雨の中、虚しい呟きは溶けていく。
未だに本当の答えなど誰にもわからない。学校の問題も、いじめの問題も、根絶するにはどうすればいいかなど。
ただ一つ確かなことは。此処に一人、彼のことを確かに覚えていて、教育委員会で働くことを決めた人間がいるということだけである。
「俺は生きて探すよ。生きてる限り探してやる。……俺はお前のように、一つだけの答えで満足したりしねぇから」
何も変わらなくても、何かを変えるための努力ならきっとできるのだ。
そのちっぽけな力がやがて、大きな変革を齎すこともあるように。
小倉港君。
身体は大きくないけれど、いつもにこにこしていて、頭が良くて、みんなに頼りにされていた“相談役”であったのはよく覚えている。彼は一年生の時から、たくさん難しい本を読んでいた。大人でさえ読めないかもしれない、いわゆる“非常用漢字”というのも、大抵港君に聞けば答えが返ってきたはずである。
熟に行っていたのか、それとも独学か。英語も多少は話せたらしいと聞いたことがある。学校のテストでは百点満点が当たり前、そういう生徒だった。でも、時々しょうもないミスをしてしまってはネタにして、ちょこちょこみんなを笑わせていた記憶もある。特に、みんなの顔が暗くなってくると、いつの間にか近くまでやってきていて、一言二言でみんなを明るくして帰っていく――そういう恐ろしく空気が読める人間だったのだ。
一人で本を読んでいることが多かったけれど、三年生まではけして孤立していたわけではないと知っている。まあ俺は彼と同じクラスだったわけではなくて、一緒のクラスだった斎藤君に聞いた印象では、という話なのだけれど。
ただ本が好きで、運動が苦手であったというだけ(彼はテストの点は良かったけれど、体育の成績だけはからっきしだったのだ。保健体育のテストがあると、どうにか五段階中三がキープできたようだけれど)。みんなもそれがわかっていたから、あの子を無理に誘おうとはしなかったし、俺達も誘いに乗らない港を“感じが悪い”とは思わなかったのである。
そんな彼に、俺が初めて頼ることになったのは――小学校の四年生になってからのこと。
正直に言って、四年生のクラスは酷いものだったのだ。市川美亜、という女王様のような女の子が全てを支配して、気に入らない子を取り巻き達と一緒にいじめて回っていたのである。
ターゲットは“狼”と呼ばれて、定期的に変遷していった。彼女たちは、“狼のように嫌われ者で和を乱す人間は、徹底的に教育して優しい羊に変えてあげる必要がある”という歪んだ信念の下、言いがかりをつけて悪口やパワハラのような行為を繰り返し、一人を追い詰める遊びをしていたのである。
誰もが自分が“狼”にならないことだけで必死で、友達がいじめられていても助けることのできない状況に陥っていた。なぜなら助けたら最後、次の“狼”が自分になるのは明白だったのだから。そして俺も――友達を助けることができず、そして市川美亜の恐ろしい人心掌握術と精神攻撃に怯えて毎日震える日々を過ごしていたのである。
『隆君、やっぱり君も気になってるんだよね。今のクラスの状況』
トイレでこっそり相談したい、と言った時点で彼は察していたのだろう。僕が口を開くより先に切り出したのは、港君の方だった。ちなみに町田隆、というのが僕の名前である。
『嫌な空気だな、とは俺も思ってたんだけど。でも、まさかここまで酷くなるなんて思わなかった。市川さん、綺麗だし一見すると優しそうだったし……最初にいじめられてた北見さんは可哀想だったけど、北見さんの態度が変わればもうそれで終わるとばかり思ってたのに……』
酷いことを言っているのはわかっている。僕の声は段々と尻すぼまりになっていった。
一番最初にいじめられていた、北見舞花。正直僕は、彼女以外に標的が移ることも、ここまでいじめが長引くことも全く予想していなかったのである。
『ああいうタイプは、その“態度が変わる”の基準も恐ろしく自分勝手でハードル高く設定しているものだけどね。君は、北見さんの方にも問題があると思ってたのかな?』
『正直、どうなんだろうとは思ってたけど……市川さんが怖くて首を突っ込みたくなかったというか、知ろうとするのも恐ろしかったというか。正直、俺女子って怖くて苦手なんだよ。一人にものを言うと集団で突っかかってくるイメージあってさ。一対一の喧嘩で、どうして他の人が出てくるんだっていうのは凄く疑問で仕方なかったけど』
元々女子には苦手意識があったが、今回のことでますますそれが募ってしまった形だった。だからといって、一人の少女がいじめられている状況を、笑って見ていたつもりではないのだけれど。
まあ、何もできずにいたのだから、結局共犯と思われても仕方のないことなのかもしれない。
『はっきり言って、もやもやはしたけど……女子だけの問題なのかと思ってたし、そう思いたかった。でも、今“狼”にされてるのは……』
男子に、自分たちに火の粉が降りかからなければ、関わってはいけないだろうとも考えていたのである。
わかっている。どう言い訳したってそれは、俺が問題から目をそらして逃げていただけということくらいは。実際その証拠に、今は巡り巡って男子生徒が“狼”にされている状況である。
男子も、美亜にとっては関係ない。十分“狼”にする意味があり、理由があるのだ。それを知った時、対岸の火事と決め込んでいた男子達がどれほど震え上がったかわかるだろうか。
『許せないと思うし、注意しないといけないのはわかるし……久保田君可哀想で、なんとかしてあげたいとは思うけど。助けるようなことしたら、次の標的になるのは俺だ。そんなの無理だ、自分があんなことになったら耐えられない……』
『それが普通の心理だよ。……先生に言っても、解決しないのわかってるしね』
『うん。先生が動いたらすぐバレる。誰がチクったんだってなって、確実に犯人探しが始まる……見つかっても見つからなくても、誰かが新しい狼にされるの目に見えてるじゃん。そもそも、先生が動いたって解決しないし。注意したって、あいつら表向きイイコにするだけで……先生の見てないところで酷いことするのわかってる。今だって、久保田君が小さくて手が届かないのわかってて……上履きを下駄箱の上に乗せたんだと思う。前にもあったし。掃除のために移動させて忘れました、とでも言えば言い訳できるから、あえてはっきり隠さないんだ……』
市川美亜の意地の悪いところは、どうすれば“いじめの加害者”と判断されずに逃げきれるか、そのギリギリのラインをきっちりと把握していることである。相手の身体に自分が直接傷を残す行為は絶対にしない。やるなら彼女の家のコネクションを使って無関係の大人にやらせるか、あるいは身体は傷つけず心をズタズタに引き裂く方法を模索するのだ。
そして、大人にバレても“そんなつもりではありませんでした”が通る逃げ道をちゃんと用意している。悪口もそう。あくまで“クラスをよくするための相談”を装って、ターゲットが傷つくような悪口をみんなで平気で垂れ流すのがテンプレートだ。先生がいない時間を見計らい、そしてターゲットにはしっかり聞こえる距離を保って。
さらに八方塞がりなのは。教師がこの問題に――あまりにも無頓着ということである。
『不登校になる前、種田君が先生に言ってくれたみたいなんだけど。……野中先生、全然どうすればいいのか、解決策出してくれなかったって……』
不登校になる直前に、ある男子が担任の野中に相談を持ちかけていたのだった。先生が、まるでいじめなど存在しないように振舞うことに堪忍袋の尾が切れたのだろう。真面目で責任感の強い彼ならば、他のみんな以上に気に病んでいてもおかしくはない。
だが教員は。まるで自分たちに、手を貸してくれる様子はなくて。
『他の先生達は、そういう相談は野中先生にして、みたいな雰囲気で助けてくれる気配ないし。そもそもチクった、ってバレても問題ないようにするには、話したその後から学校をお休みするくらいしかできないし。……正直、もうどうすればいいのかわからない。三年生までは学校楽しかったのに、今はみんなピリピリして、ドッチボールしてても楽しそうじゃなくて……辛い。どうすればいい?小倉君、いつもみんなの困ったこと相談してきたんでしょ?今回のことも、なんとか解決できない……?』
学校に来るのさえ辛くなっているのはもう、俺だけではなかったはずである。それでも会いたい友達がいて、いじめの状況を親に話しづらくて、結局来るしかないと思って重い足を引きずり続けているのだ。
大人が頼れないならもう、子供だけでなんとかするしかない。
イチかバチか、俺はみんなの頼れる相談役に、話を持ちかけることにした。そういう経緯だったのである。
俺の必死の言葉に、彼は。
『僕もずっと、このままの状況は良くないとは思っていた。僕自身がいじめられるかどうか、なんて問題じゃない。そもそも狼にされたこともない子達まで大きなストレスを抱えてるのは間違いない事実だ。実際、大半の子達の成績は下がってるらしいしね。先生に平均点が低いって叱られたでしょ』
そのための解決策を全く講じないのは先生なのにね、と肩をすくめる港。
『しかも、野中先生もだいぶヒステリー気味になってたし……薬もいっぱい飲んでるようだったから、あれは休職しちゃうかもしれないなあ……』
『え、ええ?そんな……』
『大人を頼ってもどうにもならないって君の考えは正しいよ。そもそも、学校からイジメが出るっていうのは、学校側からすると大問題なんだ。とにかく“そんなものはない”ってことにしたいんだよ。大騒ぎになって責任取らされるイメージ強いからじゃないかな、指導不足だって。僕からすると、いじめそのものを事前に阻止するのって本当に難易度が高くて、それができないからいじめが起きた後に迅速に対処する方法を考えた方が遥かに建設的だと思うんだけどねえ』
言動がもはや小学生のレベルではない。なんと達観していることか。同時に、その彼の落ち着きぶりは俺に確信させたのである。
きっと彼なら、港ならこの状況をなんとかできるのではないか、と。
『みんな、元凶が誰なのかはわかっている。市川美亜だ。彼女が改心すれば、あるいはこのクラスからいなくなれば問題は解決する……ように見えるかもしれないけれど、実際そんなことはないんだよね。最大の問題は、彼女の父が与党国民平和党の、衆議院議員の娘だってことなんだけど』
『あ……!』
ここで俺は思い出した。市川美亜が、“あたしのパパは特別なの”と話していたことを。金持ちである、というのはなんとなく察していたことではあったのだけど。
『これが高校だったら、退学処分ってやり方もできなくはなかったんだろうけど。小学校で、義務教育。十四歳未満だから何が問題が起きても逮捕できる年齢でさえない。そもそも大前提として退学・停学なんて学校側でさせられないのに、おまけで親がこれじゃね。下手な手を打てば、学校側が訴えられる事態になりかねない』
『そんな、悪いのはあっちなのに……!』
『そう、どう考えても諸悪の根源は市川美亜なのに、それを父親の機転と人脈で覆されかねないんだよ。こっちは普通の公立の学校法人なんだから。……だったら彼女を在籍させたまま改心させられるのかって話だけど、それが難しいのは君もなんとなくわかってるんじゃないのかい?』
『小倉君でも、無理だと思うの?』
『無理というか、限りなく厳しいかな』
絶望的な気持ちになる俺に追い討ちをかけるがごとく、港が告げる。
『ある意味、彼女は僕と“同族”だから。あれは、ただの子供のいじめの主犯じゃない。たった一人で、言葉で、暴力さえも用いずに人心を掌握して集団を操る力を持っている……立派な“魔女”だ』
魔女。ああ、確かに全くその通りだ。
人の心を自在に操り、空気を誘導し、自分は手を汚さずに誰かを追い詰める。まるで魔法のようだと、何度そう思ったことだろう。
『勿論、そういう力を持っている人は世の中にそれなりの数いると思うよ。そしてそれを、人の為世の為に使っている素晴らしい人もたくさん存在している。でも、そういう才能の活かし方を“意図的に”誤る人が時々存在するんだよね。市川美亜は、まさにそういう類の人間。彼女は自分がしていることが本気で悪だと思っていない。教室に、自分の為の独裁国家を作ることが、間違いだとは全く考えていないって印象だ。何度か直接言葉を交わしたけど明白だったよ。あれは、第三者がどうこう言って意見を変えられるようなタイプじゃない。非行に走る生徒を仮に“芯が曲がる”と表現するなら彼女の場合は……最初から“芯と呼ばれるものが存在しない”だ』
『説得しても、無意味ってこと?』
『この世界に絶対なんてものはないから、ゼロだとは言わないけれど。ほぼほぼ無意味だと思っていいと考えてるよ。注意すれば彼女は当然のように“自分の世界を自分のために動かして何がいけない?”と返してくるだろうさ。……そういえば、彼女三年生の終わりの終わりに転校してきたんだっけね。前の学校でも相当やらかしていたんじゃないかと思うんだけど、どうかなあ……』
もしかしたら、そういう情報も少し調べればわかったのかもしれない。
まあ、小学生である以上、前の学校とやらを突き止めて調べても大人が口を割ることはなかっただろうが。
『人狼ゲームで言うならば、最初から吊るすべき人狼がわかっているような状態だ。でも、既にみんなの心は市川美亜に洗脳されつつある。占い師が指をさしたら最後、そっちが狼に仕立て上げられるっていう状況だ。だから誰も彼女を糾弾できない。環境的にも排除できないし、ましてやさっき言ったように説得してどうこうできるような相手でもないことは明白だ』
そもそも、と港は続ける。
『仮にみんなが、彼女の洗脳を抜け出してこっちに味方してくれても。僕らみんなで彼女を孤立させて追い詰めるような行為をしたら、今度は逆に僕たちの方が彼女を“いじめている”状況になってしまいかねない。それは倫理的にどうかと思うし、根本的な“いじめ問題の解決”にはなっていない。報復合戦にもなれば完全に堂々巡り。もっと言えば僕らが一年耐えても、彼女は進級すれば必ず同じことを繰り返すさ。少なくともあと二年、どこかのクラスが犠牲になることは確定的だ』
『じゃ、じゃあどうすればいいの!?八方塞がりじゃないか!』
『そうだね。……だから唯一、方法があるとすれば一つだけだと思っている』
方法?この状況を覆す方法など、本当にあるというのだろうか。唖然とする俺の前で、港はにっこりと笑ったのだ。
『彼女に自分の意思で、いじめ行為をやめさせるか……あるいは、この学校から出て行くように仕向けることだ。大丈夫、僕にいい作戦があるんだよね』
後で友人に話を聞けば。彼は前から、相談すれば“なんでも”解決できることで有名だったというのだ。自分の力に、本人も絶対の自信があったのだろう。どんな相談であっても、その知恵と知識でなんとかしてこれた、そういう自負が彼にはあったに違いない。
今回のいじめの問題は、そんな彼が初めて挑戦する難題だったのだろう。
何でも解決できてきた彼が、初めて解決できないかもしれない壁にブチ当たったのだ。相談を受けた時の彼の顔はむしろ輝いていたことをよく覚えている。
『絶対に僕がなんとかしてみるよ。きっと僕は、こういう問題を解決するために生まれてきたんだから』
彼もまた、ある意味“魔術師”と呼ばれる類だったのだろう。普通の子供とは大きく思考が乖離していた。人が見えない何かを見て、人が恐るようなものさえ取るに足らないと鼻で笑えるような何かを持っていた。全く俺達とは、別の次元で生きていた“人間の姿をした別の存在”であったのだと、大人になった今ならそう思うのだ。
港はその相談の後、あえて目立つことによって自ら美亜の“狼”の地位に躍り出た。そして散々いじめを受けた後――線路に向かって身を投げたのである。
彼はいじめの証拠画像や記録を取ると、それを彼が死んだ一週間後に複数のSNSで同時アップされるような仕掛けを施していた。いじめで自殺者が出て、その告発が出回れば――あの市川美亜もその親も、権力だけで事実を握りつぶすことなどできない筈だと、そう踏んだのだろう。
そして、優秀な相談役で、みんなに頼られていたはずの少年は――あまりにもあっけなく、俺達の前から姿を消したのである。
***
「お前、ほんと馬鹿だったよな」
彼が、いじめを解決するためだけに命を捨てたことを知ったのは――小学校を卒業してから、かなりの月日が流れた後だった。
有給休暇を取ってやってきた群馬県の墓地の前。俺は汗をぬぐいつつ彼の家の墓に手を合わせ、唇を噛み締めるのである。
「本当に馬鹿だったよ。……なんでそんなに頭いいのに、自分が死ぬことでみんなが傷つくってことに、気づかないで逝っちまうのかね」
彼の告発文は、出回る前に警察に見つかり――差し止められてしまっていた。
そして市川美亜は何故か、彼が自殺してからしばらくした後、同じく電車の事故に遭い――両目と利き腕、下半身の自由を失ったのである。それが、果たして最後の最期で港が仕掛けた呪いのようなものであったのか、は今でもわからない。確かなのは最終的に市川美亜が学校にこれなくなったことで、彼女による小学校でのいじめだけは収束させることができたということだけである。
「……そんなことするくらいなら、市川美亜を殴ってでも……それこそ暴力で止めたって、そのほうが全然マシだったのにさ。お前が、そうやって死んじまうくらいなら」
蝉時雨の中、虚しい呟きは溶けていく。
未だに本当の答えなど誰にもわからない。学校の問題も、いじめの問題も、根絶するにはどうすればいいかなど。
ただ一つ確かなことは。此処に一人、彼のことを確かに覚えていて、教育委員会で働くことを決めた人間がいるということだけである。
「俺は生きて探すよ。生きてる限り探してやる。……俺はお前のように、一つだけの答えで満足したりしねぇから」
何も変わらなくても、何かを変えるための努力ならきっとできるのだ。
そのちっぽけな力がやがて、大きな変革を齎すこともあるように。
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