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<第八話>
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オーズの住む家から少し歩いていき、川を渡って俺達は四丁目に入っていく。縄張りというものこそあるものの、俺とアカの仲が悪くないことを知っているからか、四丁目の猫達も特に攻撃を仕掛けてくることはない。よその者であることは間違いないので多少遠巻きにはするが、それだけである。
「ミッキーの散歩ルートなんだけど」
少し困ったように、モチが続ける。
「残念だけど、俺達はここから先はそんなに詳しくないんだし」
「そうだな。あたしらもなるべく四丁目や五丁目に入るのは避けてるしな。ボスのクロコはアカに認められてるから他の猫もそうそう絡んでこねーけど、あたしらはそういうわけじゃないしな」
「え、そうなのか」
猫の暗黙の了解というものは自分も認識している。しかし、自分とアカがそれなりに仲が良いため、他の猫もそうなのかと勝手に思っていたフシがあるのだ。
「俺から言おうか?三丁目の奴らはいい奴らばっかりだから仲良くしてくれって。俺とアカでお互いの仲を取り持てば、お前らが喧嘩する理由はなくなるだろ?」
俺がストレートにそう告げれば、モチとアザミは二匹揃ってはぁああ、と深くため息をついた。なんだろうその反応は。自分はそんなに間違ったことを言っただろうか。
「あー……まあ、そういう考えに至るのもわかるちゃわかるけど。そのへん、ボスはちょっと甘いんだし。今半飼い猫状態だけど、そのへんの野良のルールは俺らの方がわかってるんだし」
なんていていうのかなあ、とモチ。
「そりゃ、ボス同士が仲良くしてれば、その下に連中もそうそう表立って喧嘩はしないもんだけどさ。でも、相手の縄張りに住んでるボスが良い奴だからって、そこの猫全部が良い奴とは限らないんだし。猫同士相性もある。嫌いな奴ってのはどーしてもいる。みんな仲良しこよしとはなかなかいかない。飼い猫同士ならともかく、野良はそのへんシビアなんだし」
「人間相手でも猫相手でも、油断したらガブリといかれちまう現状ってのを知ってるからねえ。表向き仲良しなら、実態もそうかというとそういうわけじゃない。むしろ、あんまりボスがしゃしゃり出ない方がいい場合ってのもあるのさ」
「そう、なのか?」
「あんたたまに忘れちまってるようだけどね。あたしら猫は本来群れるような生き物じゃないだろ?そこが犬との違いだ。それでも縄張りで切り分けて、擬似的に群れみたいのが形成されるってのはさ、強い者には従っておけっていう本能が働くからってのが大きいんだよね。だから、群れほどまとまってるわけじゃない。あたしら三丁目の連中はちょっと経緯が経緯だからさ、あんたのことをみんな慕ってるし群れのボスみたいな扱いをしてるけど……多くの場合は、ボスはボスであってボスじゃない。強いから言うことを聞いてるだけであって、人望があるとは限らないし……それこそ、命令を聞いてやる義理なんざない、ってのが本来のところなんだよな」
結論を言うとさ、とアザミは締めた。
「あんたがアカに余計なことを吹き込むと、立場が悪くなるのはアカかもしれねぇよってこと。……うまく説明できた自信はないけど、このあたりは野良として長いあたしらの話を素直に聞いておいてくれよな。あたしらは、あんたほどアカのことに詳しくないからってのもあるんだけどさ」
そういうものなのか、と俺は思う。確かに、自分はモチやアザミ達とは大きく違う点がある。三丁目の実質ボスのような立場に収まってしまってはいるが、俺は一日たりとも野良をやったことのない猫だ。野良猫の辛い暮らしもしたことがないし、今日の食物に困った経験もない。野良の暗黙の了解というのも、分かっているとは言い難い。なら、モチとアザミの意見に従っておいた方が無難ではあるのだろう。
同時に。こういうことを物怖じせずに伝えてくれる彼らの存在は実にありがたいなと思う。ボスとして自分を立ててはくれるが、だからといって恐れ敬ってなんでもヘイコラ言うことを聞くというわけではない。間違ったことをすれば叱ってくれるし猫パンチも食らわしてくれる。彼らもまた、これ以上なく有難い仲間であると言って過言ではなかった。そう、ミッキーと、同じように。
「……話を戻すんだけど」
少し気まずくなった空気を引き戻すように、モチは口を開いた。
「ミッキーが、四丁目のどんなルートを辿って来たのかは知らない。でも、四丁目のそんな奥の方までは行ってないと思うんだし。この橋を渡ってから、そこの道を真っ直ぐいって……しばらくするとまたこの橋のところまで戻ってくるんだけど。その間の時間、三十分もかかってなかったと思うんだし」
「三十分か。それならそんなに遠くまではいかないか。四丁目は三丁目よりずっと広いしな」
「あと、三丁目に戻ってきてからは、さっき通った道をほぼ逆走してるだけだったはず。だから、他に三丁目のどこかに寄ってるってことも多分ない。とすると、ミッキーが言ってた“毎日のように寄ってる場所”ってのは、四丁目のどこかだったと考えるのが妥当だと思うんだし」
「なるほどな……」
四丁目の、何処か。そこに、ミッキーが毎日通っている目的地がある。それも、五丁目に近いような、四丁目の奥地ではない。ざっくり言うと、四丁目は望月側の向こう、三丁目よりも南に広がるエリアだ。そして四丁目よりもさらに南に行くと五丁目に辿り着くという具合である。そして、四丁目は大まかに長方形のような形をした番地であるため、南北に敷地が長いのだ。ミッキーの目的地は、この川にほど近い、北側の方に限定されることだろう。
――まあそういえば、あいつ四丁目に行くってはっきり言ってたしなあ。
『んーっと……まあ、その。ちょっと気になる家があって。そこんちの猫と、いつもガラス越しに話してるんスよね。そいつ、檻に入れられててなかなか出して貰えないみたいで、話し相手がいなくて寂しそうだから』
記憶力には自信がある。
ミッキーの言葉を一字一句そのまま思い出し、俺は考えを口にする。
「ミッキーを殺した犯人と、ミッキーが毎日通っていた家ってのがどこまで関連してるのかはわからねえ。ただ、ミッキーが通っていた家がどんなものであるのか、全く想定できないわけじゃない」
モチとアザミに話すことで、自分自身の考えの整理にもなる。そもそも、情報を抱え落ちしてもいいことは何一つない。お互いの考えを話し、共有することで新しい発見に繋がることもあるのだから。
「まず、その家はほぼ一軒家と見て間違いないと思う」
「どうしてだい、クロコ。あたしらは猫だぜ?高い場所だってするする登れるだろう?マンションやアパートの上の階って可能性も充分にあると思うんだけどね」
「可能性がゼロだとは言わねえけど、低いんじゃねえかな。確かに、俺らは高い場所に登るのはそう難しいことじゃあない。けど、普段の散歩でそうそう高い場所をぴょんぴょん飛び回りながら歩くか?屋根づたいにパトロールなんてもんするか?歩いたとしても精々塀の上どまりだと思わねえか?」
木に登ることもあるにはあるが、圧倒的に地面を歩いていることの多い自分達だ。それは、地面の近くを歩くことで、他の猫の臭いなどを嗅いだり調べたりしながら動いているというのもあるのである。他の猫が地面を歩くなら、自分も地面を歩いた方がいい。天敵に狙われているような特殊な状況や、木の上にエサがあるような状況ならば話は別になってくるだろうけども。
そして、自分達の視点は人間よりも遥かに低い。地面スレスレの場所を歩いているのであれば、当然目に付く範囲も地面に近い場所に限定されるだろう。よほど酷い鳴き声などがすれば上を見上げることもあるだろうが、同じ猫の存在に気づきやすいのはやはり一階の一戸建てである。
「いつも檻に入れられてるような猫なら、主人に対して多少なりの恐怖心があってもおかしくない。子猫ならともかく、そうそうニャーニャーやかましく泣いたら主人の機嫌を損ねかねないと俺なら自重するけどな。勿論ケースバイケースだが……それでも、お相手が一戸建てに住んでいる一階にいる猫、である可能性が一番高いとは思うぜ」
もっと言えば、四丁目の方はマンションの数そのものがさほど多くないし、数少ないマンションの多くはペット禁止だったと記憶している。そもそもマンションの一階の庭は狭く、オートロックということもあってそうそう猫が入り込めるようには出来ていないだろう。ミッキーの物言いからすれば、ガラスごしに対面することが可能だったと推測されるからきっとそのあたりは除外していいはずである。
「あとはそうだな。カーテンが開いたままになってる可能性が高いな」
「あ、檻の中に入れられっぱなしの猫じゃ、カーテンの開け閉めなんてものはできないからか」
「そういうこと。ただ、一般家庭で、一階のカーテンを開けっ放しにしたままってのはちょいと無用心ではあるよな。カーテンが開いていたら、外から中の様子が丸見えになっちまう。人間ってのは、そういうのを滅茶苦茶気にするはずだしな」
そこから絞れる条件。つまり、ミッキーが会いに行った猫は、一戸建ての一階に檻に囲われて飼われており、しかもカーテンが開けっ放しである。カーテンを開けっ放しにしてしまう理由、もしくはしておいても構わない理由があるとするなら、その家が外から覗かれにくい構造をしていると考えるのが自然だろう。
つまり、庭に植木などがたくさんあって窓を遮っているか。もしくは、人が通らない道の裏に大窓が面しているかのどちらかではなかろうか。
「といっても、これだけじゃまだまだ候補が多すぎる。あとは、アカの情報を待ってみるしかねえだろうな」
てくてくと四丁目の猫達の視線を感じながら、俺が向かった先は。アカとその取り巻きがいつもねぐらにしている、潰れた元印刷工場である。
雨風を凌げて、かつふわふわの梱包材やダンボールが捨て置かれたままになっているこの場所は、アカが見つけたとっておきのマイホームなのだそうだ。此処で、アカは取り巻き達と、妻と子供達と一緒に生活しているのである。
「おい、アカーいるか?俺だ、クロコだ。ちょいと話がしたいんだけどよ!」
俺は奥に向かって声を張り上げた。この時間なら、あの猫もパトロールから帰宅しているはずである。
「ミッキーの散歩ルートなんだけど」
少し困ったように、モチが続ける。
「残念だけど、俺達はここから先はそんなに詳しくないんだし」
「そうだな。あたしらもなるべく四丁目や五丁目に入るのは避けてるしな。ボスのクロコはアカに認められてるから他の猫もそうそう絡んでこねーけど、あたしらはそういうわけじゃないしな」
「え、そうなのか」
猫の暗黙の了解というものは自分も認識している。しかし、自分とアカがそれなりに仲が良いため、他の猫もそうなのかと勝手に思っていたフシがあるのだ。
「俺から言おうか?三丁目の奴らはいい奴らばっかりだから仲良くしてくれって。俺とアカでお互いの仲を取り持てば、お前らが喧嘩する理由はなくなるだろ?」
俺がストレートにそう告げれば、モチとアザミは二匹揃ってはぁああ、と深くため息をついた。なんだろうその反応は。自分はそんなに間違ったことを言っただろうか。
「あー……まあ、そういう考えに至るのもわかるちゃわかるけど。そのへん、ボスはちょっと甘いんだし。今半飼い猫状態だけど、そのへんの野良のルールは俺らの方がわかってるんだし」
なんていていうのかなあ、とモチ。
「そりゃ、ボス同士が仲良くしてれば、その下に連中もそうそう表立って喧嘩はしないもんだけどさ。でも、相手の縄張りに住んでるボスが良い奴だからって、そこの猫全部が良い奴とは限らないんだし。猫同士相性もある。嫌いな奴ってのはどーしてもいる。みんな仲良しこよしとはなかなかいかない。飼い猫同士ならともかく、野良はそのへんシビアなんだし」
「人間相手でも猫相手でも、油断したらガブリといかれちまう現状ってのを知ってるからねえ。表向き仲良しなら、実態もそうかというとそういうわけじゃない。むしろ、あんまりボスがしゃしゃり出ない方がいい場合ってのもあるのさ」
「そう、なのか?」
「あんたたまに忘れちまってるようだけどね。あたしら猫は本来群れるような生き物じゃないだろ?そこが犬との違いだ。それでも縄張りで切り分けて、擬似的に群れみたいのが形成されるってのはさ、強い者には従っておけっていう本能が働くからってのが大きいんだよね。だから、群れほどまとまってるわけじゃない。あたしら三丁目の連中はちょっと経緯が経緯だからさ、あんたのことをみんな慕ってるし群れのボスみたいな扱いをしてるけど……多くの場合は、ボスはボスであってボスじゃない。強いから言うことを聞いてるだけであって、人望があるとは限らないし……それこそ、命令を聞いてやる義理なんざない、ってのが本来のところなんだよな」
結論を言うとさ、とアザミは締めた。
「あんたがアカに余計なことを吹き込むと、立場が悪くなるのはアカかもしれねぇよってこと。……うまく説明できた自信はないけど、このあたりは野良として長いあたしらの話を素直に聞いておいてくれよな。あたしらは、あんたほどアカのことに詳しくないからってのもあるんだけどさ」
そういうものなのか、と俺は思う。確かに、自分はモチやアザミ達とは大きく違う点がある。三丁目の実質ボスのような立場に収まってしまってはいるが、俺は一日たりとも野良をやったことのない猫だ。野良猫の辛い暮らしもしたことがないし、今日の食物に困った経験もない。野良の暗黙の了解というのも、分かっているとは言い難い。なら、モチとアザミの意見に従っておいた方が無難ではあるのだろう。
同時に。こういうことを物怖じせずに伝えてくれる彼らの存在は実にありがたいなと思う。ボスとして自分を立ててはくれるが、だからといって恐れ敬ってなんでもヘイコラ言うことを聞くというわけではない。間違ったことをすれば叱ってくれるし猫パンチも食らわしてくれる。彼らもまた、これ以上なく有難い仲間であると言って過言ではなかった。そう、ミッキーと、同じように。
「……話を戻すんだけど」
少し気まずくなった空気を引き戻すように、モチは口を開いた。
「ミッキーが、四丁目のどんなルートを辿って来たのかは知らない。でも、四丁目のそんな奥の方までは行ってないと思うんだし。この橋を渡ってから、そこの道を真っ直ぐいって……しばらくするとまたこの橋のところまで戻ってくるんだけど。その間の時間、三十分もかかってなかったと思うんだし」
「三十分か。それならそんなに遠くまではいかないか。四丁目は三丁目よりずっと広いしな」
「あと、三丁目に戻ってきてからは、さっき通った道をほぼ逆走してるだけだったはず。だから、他に三丁目のどこかに寄ってるってことも多分ない。とすると、ミッキーが言ってた“毎日のように寄ってる場所”ってのは、四丁目のどこかだったと考えるのが妥当だと思うんだし」
「なるほどな……」
四丁目の、何処か。そこに、ミッキーが毎日通っている目的地がある。それも、五丁目に近いような、四丁目の奥地ではない。ざっくり言うと、四丁目は望月側の向こう、三丁目よりも南に広がるエリアだ。そして四丁目よりもさらに南に行くと五丁目に辿り着くという具合である。そして、四丁目は大まかに長方形のような形をした番地であるため、南北に敷地が長いのだ。ミッキーの目的地は、この川にほど近い、北側の方に限定されることだろう。
――まあそういえば、あいつ四丁目に行くってはっきり言ってたしなあ。
『んーっと……まあ、その。ちょっと気になる家があって。そこんちの猫と、いつもガラス越しに話してるんスよね。そいつ、檻に入れられててなかなか出して貰えないみたいで、話し相手がいなくて寂しそうだから』
記憶力には自信がある。
ミッキーの言葉を一字一句そのまま思い出し、俺は考えを口にする。
「ミッキーを殺した犯人と、ミッキーが毎日通っていた家ってのがどこまで関連してるのかはわからねえ。ただ、ミッキーが通っていた家がどんなものであるのか、全く想定できないわけじゃない」
モチとアザミに話すことで、自分自身の考えの整理にもなる。そもそも、情報を抱え落ちしてもいいことは何一つない。お互いの考えを話し、共有することで新しい発見に繋がることもあるのだから。
「まず、その家はほぼ一軒家と見て間違いないと思う」
「どうしてだい、クロコ。あたしらは猫だぜ?高い場所だってするする登れるだろう?マンションやアパートの上の階って可能性も充分にあると思うんだけどね」
「可能性がゼロだとは言わねえけど、低いんじゃねえかな。確かに、俺らは高い場所に登るのはそう難しいことじゃあない。けど、普段の散歩でそうそう高い場所をぴょんぴょん飛び回りながら歩くか?屋根づたいにパトロールなんてもんするか?歩いたとしても精々塀の上どまりだと思わねえか?」
木に登ることもあるにはあるが、圧倒的に地面を歩いていることの多い自分達だ。それは、地面の近くを歩くことで、他の猫の臭いなどを嗅いだり調べたりしながら動いているというのもあるのである。他の猫が地面を歩くなら、自分も地面を歩いた方がいい。天敵に狙われているような特殊な状況や、木の上にエサがあるような状況ならば話は別になってくるだろうけども。
そして、自分達の視点は人間よりも遥かに低い。地面スレスレの場所を歩いているのであれば、当然目に付く範囲も地面に近い場所に限定されるだろう。よほど酷い鳴き声などがすれば上を見上げることもあるだろうが、同じ猫の存在に気づきやすいのはやはり一階の一戸建てである。
「いつも檻に入れられてるような猫なら、主人に対して多少なりの恐怖心があってもおかしくない。子猫ならともかく、そうそうニャーニャーやかましく泣いたら主人の機嫌を損ねかねないと俺なら自重するけどな。勿論ケースバイケースだが……それでも、お相手が一戸建てに住んでいる一階にいる猫、である可能性が一番高いとは思うぜ」
もっと言えば、四丁目の方はマンションの数そのものがさほど多くないし、数少ないマンションの多くはペット禁止だったと記憶している。そもそもマンションの一階の庭は狭く、オートロックということもあってそうそう猫が入り込めるようには出来ていないだろう。ミッキーの物言いからすれば、ガラスごしに対面することが可能だったと推測されるからきっとそのあたりは除外していいはずである。
「あとはそうだな。カーテンが開いたままになってる可能性が高いな」
「あ、檻の中に入れられっぱなしの猫じゃ、カーテンの開け閉めなんてものはできないからか」
「そういうこと。ただ、一般家庭で、一階のカーテンを開けっ放しにしたままってのはちょいと無用心ではあるよな。カーテンが開いていたら、外から中の様子が丸見えになっちまう。人間ってのは、そういうのを滅茶苦茶気にするはずだしな」
そこから絞れる条件。つまり、ミッキーが会いに行った猫は、一戸建ての一階に檻に囲われて飼われており、しかもカーテンが開けっ放しである。カーテンを開けっ放しにしてしまう理由、もしくはしておいても構わない理由があるとするなら、その家が外から覗かれにくい構造をしていると考えるのが自然だろう。
つまり、庭に植木などがたくさんあって窓を遮っているか。もしくは、人が通らない道の裏に大窓が面しているかのどちらかではなかろうか。
「といっても、これだけじゃまだまだ候補が多すぎる。あとは、アカの情報を待ってみるしかねえだろうな」
てくてくと四丁目の猫達の視線を感じながら、俺が向かった先は。アカとその取り巻きがいつもねぐらにしている、潰れた元印刷工場である。
雨風を凌げて、かつふわふわの梱包材やダンボールが捨て置かれたままになっているこの場所は、アカが見つけたとっておきのマイホームなのだそうだ。此処で、アカは取り巻き達と、妻と子供達と一緒に生活しているのである。
「おい、アカーいるか?俺だ、クロコだ。ちょいと話がしたいんだけどよ!」
俺は奥に向かって声を張り上げた。この時間なら、あの猫もパトロールから帰宅しているはずである。
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