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<第十話>
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野良猫は人間にとって害である、と考える者が、人間の中に少なからずいることを俺達は知っている。
別に、その考えそのものに大してどうこう言うつもりはないのだ。誰にだって好き嫌いはあるし、猫が嫌いな人間に無理して自分達を好きになって貰おうなどとは自分達も全く思ってはいない。考えることは誰にでも自由だ。自分達の中にだって、人間が好きなヤツもいれば嫌いなヤツもいる。そのへんはおあいこである。
ただ。自分達は、自分の身に危険が及ばない限り、威嚇はしてもこちらから人間に危害を加えるような真似などしない。それは俺達が、人間と喧嘩しても一文の得にもならないことを知っているからである。
人間が好きなヤツも嫌いなヤツも大抵が知っている。この世には人間ほどズル賢く、恐ろしい生き物はいないということを。今のご時世で野良犬が極端に少ないのは、イヌたちは野良になるとすぐ人間達に捕まえられて保健所に連れていかれてしまうからだと知っている。猫はイヌよりは危険度が少ないからと見逃されているだけなのだ。
もし、人間達がそんな猫への考えを変えてしまったなら。自分達もイヌたちのように、軒並み狩られてしまうことは想像に難くない。恐ろしいことだが、人間達にはそれが出来るくらいの知恵があり、道具があるのである。生き延びていくために俺達は、何があっても根本的に“人間そのものを敵に回す”行為は避けなければならないのだ。
そうやって先祖達が長年積み重ねてきた結果があるからこそ、多くの人間と猫は上手くやれている側面もあるのである。猫に酷いことをするような者がいれば、それが野良であっても止めに入ってくれる人間がいるのはつまりそういうことだ。自分達に対して好意的でいてくれる者達まで敵にしかねない行動は本来避けるべきだと知っている。そうやって、俺達猫は人間と共生してきたのだから。
――まあ、物申したいこともないわけじゃねぇけどな。
てくてくとアカに連れられて、四丁目の三番地エリアに足を踏み入れる俺、モチ、アザミ。住宅街と言っても様々あるが、あまり新築の家が多い印象ではない。立ち並ぶ戸建てには木造建築の古そうな家も散見される。マンションやアパートもちらほら見えるが、どれも古くて色褪せている上、背が低いものばかりである。
そういえばこの国の人間達の法律だと、エリアごとに建てられる建物の高さが制限されていたり、種類が限定されていたりするのではなかっただろうか。もしかしたらこの一体は、あまりノッポな建物を建てられるような場所ではないのかもしれない。
まあ実際これだけ戸建てばかりなのである。ノッポなタワーマンションなど建ててしまうと、日陰になってしまう家が多数存在することだろう。猫以上に人間は居住環境が変わることを嫌がる生き物だ。クレームになってトラブルになるときっと非常に面倒くさいはずである。
――野良猫と違って、お前らには立派に雨風しのげる家があるってのに。俺らがお前らの棲み家を荒らしたりしたわけでもねーっとのに。……何も、殺すまでするこたぁねぇだろ、なあ。
人間の事情があるのはわかっている、でも。
猫達が今まで人間に対してどれほど多くの譲歩をし、我慢してきたか、彼らは全く知らないのである。そもそもこの近隣に猫が増えたのだって、元々は無責任な飼い主が猫を捨てたことが始まりだというのにどうしてそれがわからないのか。
自分達の気紛れで可愛がり、少しでも気に入らなかったり飽きたりしたら無責任に命を捨てていく。――人間に助けられている自覚がないわけではない俺が偉そうにどうこう言うつもりはないが。それでも人間のことを全肯定できずにいるのは、そういう側面があってのことなのだ。
猫のために人間が存在するわけではないように、猫だって人間のために存在するのではないというのに。
「チビスケを虐めてたのはな、三人の大学生なんだ」
路地を一本曲がったところで、アカが立ち止まる。
「一人。眼鏡のガリ勉男。表札を信じるなら、名字は“橘”だな」
そこは、川に面した一軒家だった。確かに表札には“橘”の一文字が刻まれている。こじんまりした小さな家で、玄関は大量の植木でいっぱいになっていた。
そういえば、前に廉と見た防犯番組で、一戸建ての場合は植木を多く置いておくと泥棒避けになると言っていた気がする。確かに、玄関からそろりそろりと侵入しようとするならば、ちょっとしたミスで倒して大きな物音を立ててしまいそうな植木は非常に邪魔な存在だろう。窓が大きくて障害物のない家の方が狙いたくなる心理はあるのかもしれない。
古家が多い三番地の中では比較的新しい家だった。と、不意に話し声が聞こえてきたので、俺達は急いでそれぞれ植木の影に隠れることにする。もしこの家の人間が犯人であった場合、猫の姿を見ていい気分になるとは到底思えないからだ。そうでなくても、小さな子猫を虐めていたのは事実であるようなのだし。
「将人、じゃあ姉ちゃん行ってくるわねー」
出てきたのは男性ではなく女性だ。派手な茶髪の彼女は、玄関の奥にいるであろう誰かに対して手を振っている。俺の隠れた場所からは相手の姿は見えない。
「今日も帰り遅いからよろしく。アンタの講義は何時からなの?」
「何でそれ毎回聞くんだよ。大抵一限からあるって言ってるだろ……」
「あー、そうだっけー?」
「そうだっけじゃないよ、全く。気を付けて行って来いよ、居眠り運転するんじゃねーぞ」
「はいはーい」
女性の軽い声と、どこかうんざりしたような青年の声。女性はこちらに気づく様子もなく、バッグを抱えて家の隣の駐車スペースに停めてある軽自動車に乗り込んでいった。ピンクの女性らしい車だ。彼女のものなのだろう。
姉ちゃん、と言っていた。もしかしてこの家に、姉と弟で二人暮らししているのだろうか?
「お前のトコからじゃ見えなかっただろうけどな。今の玄関で姉貴見送ってたのが、容疑者のガリ勉大学生だ」
玄関が閉まったのを確認すると、アカがそろそろとこちらに近づいてきた。お前その巨体でよく隠れられたな、と俺は感心するしかない。シッポも耳も派手にはみ出しまくっているではないか。というか、その赤茶のモフ毛は緑の中にいるとより目立つということに本人は気づいているのかいないのか。さっきの姉がたまたま気づかなかったから良いようなものの。
「見ての通り、家族と同居してる。が、両親は忙しくて会社に泊まり込むことが多いんだかなんだかで、殆どこの家に帰ってくるのはガリ勉野郎とケバケバしいその姉貴だけだな」
「実質二人暮らしみたいなもんか。姉貴は深夜まで仕事して帰ってくるってか」
「だろうよ、だから自動車で通勤してんだろ。電車ってのは終電があるから深夜は使えねーんだろ。夕方くれーに家を出て深夜に帰ってきて昼間は家で寝てるってのが姉貴の行動パターンみたいだ。ガリ勉野郎は、比較的午前中に出掛けてることが多いな。講義がその時間になるとかでよ」
「ふーん……」
どうやら、自分が来る前に随分調べているらしい。ふと庭先を見る俺。狭い庭の前は植木がごっちゃりしているが、カーテンもしっかり閉まっている様子だ。ただ、これはあまり判断材料にはなるまい。今日だけたまたまカーテンがしまっていた可能性もゼロではないからである。
「……まあいい、とりあえず他の家も案内してくれ、アカ。なるべく早く決着を着けてぇからな」
他の二人の容疑者も見てから、最終的な判断を下すべきだろう。俺はひらりと植木鉢の上から地面に降り立った。見ればモチ、アザミの二人はくんくんと植木と地面の臭いを嗅いでいる。
「こりゃ一体なんの木なんだろうね。ほんのり甘い香りはするけど、そんなに大きな木になるわけじゃないのかね」
アザミは赤い花をつけた植木をが気になるらしい。窓や玄関で一番数の多い植木がそれだった。小さな赤い花をつけたそれは、なるほど女の子が好みそうな可愛らしい花をつけている。アザミも女らしいところがあったんだな――と心の中で浮かんだ言葉はギリギリのところで封印したが(口にしたら百烈猫パンチが来るのは必至である)。
残念ながらクロコにはその木の種類がなんなのか特定することはできなかった。精々可愛い植木だな、くらいの印象しか持てない。そして、そんなアザミの足下で植木よりも地面が気になっているらしいのがモチである。
「……こんだけ木が多いと無理かもだし。庭に猫の死体埋めてたら臭いがするかと思ったけど、さすがにそんな簡単な話じゃなかったし。ていうか、木の臭いに紛れて他の猫の臭いがするかどうかもよくわかんないしー……」
「そうか。まあしょうがない、こっちからじゃカーテンも開けられないしな」
「それー。ここが犯人だったら一回で楽チンだったのにー」
ぶう、と文字通りモチのように膨れる白猫をよしよしと撫でながら、俺はふと残りの一匹が随分大人しいことに気付いた。どうした、と思って見れば――誰かさんが植木鉢にはまりこんだまま、冷や汗を流している。
なんというかその、ものすごく嫌な予感が。
「お、おい、クロコ……」
アカはボスらしさの欠片もない情けない声で告げたのだった。
「ケツがハマって抜けねえよ……助けてくれぇ!」
別に、その考えそのものに大してどうこう言うつもりはないのだ。誰にだって好き嫌いはあるし、猫が嫌いな人間に無理して自分達を好きになって貰おうなどとは自分達も全く思ってはいない。考えることは誰にでも自由だ。自分達の中にだって、人間が好きなヤツもいれば嫌いなヤツもいる。そのへんはおあいこである。
ただ。自分達は、自分の身に危険が及ばない限り、威嚇はしてもこちらから人間に危害を加えるような真似などしない。それは俺達が、人間と喧嘩しても一文の得にもならないことを知っているからである。
人間が好きなヤツも嫌いなヤツも大抵が知っている。この世には人間ほどズル賢く、恐ろしい生き物はいないということを。今のご時世で野良犬が極端に少ないのは、イヌたちは野良になるとすぐ人間達に捕まえられて保健所に連れていかれてしまうからだと知っている。猫はイヌよりは危険度が少ないからと見逃されているだけなのだ。
もし、人間達がそんな猫への考えを変えてしまったなら。自分達もイヌたちのように、軒並み狩られてしまうことは想像に難くない。恐ろしいことだが、人間達にはそれが出来るくらいの知恵があり、道具があるのである。生き延びていくために俺達は、何があっても根本的に“人間そのものを敵に回す”行為は避けなければならないのだ。
そうやって先祖達が長年積み重ねてきた結果があるからこそ、多くの人間と猫は上手くやれている側面もあるのである。猫に酷いことをするような者がいれば、それが野良であっても止めに入ってくれる人間がいるのはつまりそういうことだ。自分達に対して好意的でいてくれる者達まで敵にしかねない行動は本来避けるべきだと知っている。そうやって、俺達猫は人間と共生してきたのだから。
――まあ、物申したいこともないわけじゃねぇけどな。
てくてくとアカに連れられて、四丁目の三番地エリアに足を踏み入れる俺、モチ、アザミ。住宅街と言っても様々あるが、あまり新築の家が多い印象ではない。立ち並ぶ戸建てには木造建築の古そうな家も散見される。マンションやアパートもちらほら見えるが、どれも古くて色褪せている上、背が低いものばかりである。
そういえばこの国の人間達の法律だと、エリアごとに建てられる建物の高さが制限されていたり、種類が限定されていたりするのではなかっただろうか。もしかしたらこの一体は、あまりノッポな建物を建てられるような場所ではないのかもしれない。
まあ実際これだけ戸建てばかりなのである。ノッポなタワーマンションなど建ててしまうと、日陰になってしまう家が多数存在することだろう。猫以上に人間は居住環境が変わることを嫌がる生き物だ。クレームになってトラブルになるときっと非常に面倒くさいはずである。
――野良猫と違って、お前らには立派に雨風しのげる家があるってのに。俺らがお前らの棲み家を荒らしたりしたわけでもねーっとのに。……何も、殺すまでするこたぁねぇだろ、なあ。
人間の事情があるのはわかっている、でも。
猫達が今まで人間に対してどれほど多くの譲歩をし、我慢してきたか、彼らは全く知らないのである。そもそもこの近隣に猫が増えたのだって、元々は無責任な飼い主が猫を捨てたことが始まりだというのにどうしてそれがわからないのか。
自分達の気紛れで可愛がり、少しでも気に入らなかったり飽きたりしたら無責任に命を捨てていく。――人間に助けられている自覚がないわけではない俺が偉そうにどうこう言うつもりはないが。それでも人間のことを全肯定できずにいるのは、そういう側面があってのことなのだ。
猫のために人間が存在するわけではないように、猫だって人間のために存在するのではないというのに。
「チビスケを虐めてたのはな、三人の大学生なんだ」
路地を一本曲がったところで、アカが立ち止まる。
「一人。眼鏡のガリ勉男。表札を信じるなら、名字は“橘”だな」
そこは、川に面した一軒家だった。確かに表札には“橘”の一文字が刻まれている。こじんまりした小さな家で、玄関は大量の植木でいっぱいになっていた。
そういえば、前に廉と見た防犯番組で、一戸建ての場合は植木を多く置いておくと泥棒避けになると言っていた気がする。確かに、玄関からそろりそろりと侵入しようとするならば、ちょっとしたミスで倒して大きな物音を立ててしまいそうな植木は非常に邪魔な存在だろう。窓が大きくて障害物のない家の方が狙いたくなる心理はあるのかもしれない。
古家が多い三番地の中では比較的新しい家だった。と、不意に話し声が聞こえてきたので、俺達は急いでそれぞれ植木の影に隠れることにする。もしこの家の人間が犯人であった場合、猫の姿を見ていい気分になるとは到底思えないからだ。そうでなくても、小さな子猫を虐めていたのは事実であるようなのだし。
「将人、じゃあ姉ちゃん行ってくるわねー」
出てきたのは男性ではなく女性だ。派手な茶髪の彼女は、玄関の奥にいるであろう誰かに対して手を振っている。俺の隠れた場所からは相手の姿は見えない。
「今日も帰り遅いからよろしく。アンタの講義は何時からなの?」
「何でそれ毎回聞くんだよ。大抵一限からあるって言ってるだろ……」
「あー、そうだっけー?」
「そうだっけじゃないよ、全く。気を付けて行って来いよ、居眠り運転するんじゃねーぞ」
「はいはーい」
女性の軽い声と、どこかうんざりしたような青年の声。女性はこちらに気づく様子もなく、バッグを抱えて家の隣の駐車スペースに停めてある軽自動車に乗り込んでいった。ピンクの女性らしい車だ。彼女のものなのだろう。
姉ちゃん、と言っていた。もしかしてこの家に、姉と弟で二人暮らししているのだろうか?
「お前のトコからじゃ見えなかっただろうけどな。今の玄関で姉貴見送ってたのが、容疑者のガリ勉大学生だ」
玄関が閉まったのを確認すると、アカがそろそろとこちらに近づいてきた。お前その巨体でよく隠れられたな、と俺は感心するしかない。シッポも耳も派手にはみ出しまくっているではないか。というか、その赤茶のモフ毛は緑の中にいるとより目立つということに本人は気づいているのかいないのか。さっきの姉がたまたま気づかなかったから良いようなものの。
「見ての通り、家族と同居してる。が、両親は忙しくて会社に泊まり込むことが多いんだかなんだかで、殆どこの家に帰ってくるのはガリ勉野郎とケバケバしいその姉貴だけだな」
「実質二人暮らしみたいなもんか。姉貴は深夜まで仕事して帰ってくるってか」
「だろうよ、だから自動車で通勤してんだろ。電車ってのは終電があるから深夜は使えねーんだろ。夕方くれーに家を出て深夜に帰ってきて昼間は家で寝てるってのが姉貴の行動パターンみたいだ。ガリ勉野郎は、比較的午前中に出掛けてることが多いな。講義がその時間になるとかでよ」
「ふーん……」
どうやら、自分が来る前に随分調べているらしい。ふと庭先を見る俺。狭い庭の前は植木がごっちゃりしているが、カーテンもしっかり閉まっている様子だ。ただ、これはあまり判断材料にはなるまい。今日だけたまたまカーテンがしまっていた可能性もゼロではないからである。
「……まあいい、とりあえず他の家も案内してくれ、アカ。なるべく早く決着を着けてぇからな」
他の二人の容疑者も見てから、最終的な判断を下すべきだろう。俺はひらりと植木鉢の上から地面に降り立った。見ればモチ、アザミの二人はくんくんと植木と地面の臭いを嗅いでいる。
「こりゃ一体なんの木なんだろうね。ほんのり甘い香りはするけど、そんなに大きな木になるわけじゃないのかね」
アザミは赤い花をつけた植木をが気になるらしい。窓や玄関で一番数の多い植木がそれだった。小さな赤い花をつけたそれは、なるほど女の子が好みそうな可愛らしい花をつけている。アザミも女らしいところがあったんだな――と心の中で浮かんだ言葉はギリギリのところで封印したが(口にしたら百烈猫パンチが来るのは必至である)。
残念ながらクロコにはその木の種類がなんなのか特定することはできなかった。精々可愛い植木だな、くらいの印象しか持てない。そして、そんなアザミの足下で植木よりも地面が気になっているらしいのがモチである。
「……こんだけ木が多いと無理かもだし。庭に猫の死体埋めてたら臭いがするかと思ったけど、さすがにそんな簡単な話じゃなかったし。ていうか、木の臭いに紛れて他の猫の臭いがするかどうかもよくわかんないしー……」
「そうか。まあしょうがない、こっちからじゃカーテンも開けられないしな」
「それー。ここが犯人だったら一回で楽チンだったのにー」
ぶう、と文字通りモチのように膨れる白猫をよしよしと撫でながら、俺はふと残りの一匹が随分大人しいことに気付いた。どうした、と思って見れば――誰かさんが植木鉢にはまりこんだまま、冷や汗を流している。
なんというかその、ものすごく嫌な予感が。
「お、おい、クロコ……」
アカはボスらしさの欠片もない情けない声で告げたのだった。
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