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ピー太郎はいずこ?
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「お前みたいな能なしチキン!とっととヤキトリにされてしまえええ!」
「ちょ、誰が能なしチキンじゃい!脳みそ詰まってないのはそっちだワレェ!」
そんなかんじで、売り言葉に買い言葉。俺は異世界の案内人であったマスコットキャラっぽい鳥の妖精?ピー太郎をサーカスに売ってしまいました。
ちなみにそんな俺は異世界転移してきた現代日本人というやつです。
異世界案内人を名乗るマスコットがあんまりも口が悪くてウザいので、ずっと喧嘩ばかりをしていました。確かにこの世界は現代日本とルールが違うことが山ほどあります。魔法がある反面、携帯は使えないしコンビニはないしテレビもないしで大変です。まさか漫画までないとは思わず、僕のやる気がとっても下がっていたことは確かです。
でも、来てすぐに異世界の文化に慣れるって普通無理だと思いませんか。
どうせハチャメチャな世界なら、ゲームの通りモンスターを倒したらお金が稼げるシステムを作っておいてほしいと思います。何で武器を買うのも自腹、防具買うのも自腹、賞金かかってるモンスターの首を切ってギルドに行かないとお金がもらえないなんて初見殺しのシステムなんですか。女神様とやらは、お約束のチートスキルというやつも全然くれる気配がありません。しくしくです。
そんな時に、チキン野郎から“こんなやる気のねー転移者は初めてだぜ!”なーんて言われたら。怒るのも無理ないとは思いませんでしょーか。
「ええ、魔王退治はしたくない?勇者にはなりたくないんですって?ええ、それは残念ですねえ……」
そんな俺を、断りもなく勝手に異世界に連れてきた女神様は。俺がこんな世界は嫌だから元の場所に戻してくれというと、困ったように告げたのです。
「でも、ピー太郎ちゃんを売ってしまったんでしょ?じゃあ帰ることはできませんねえ」
「え」
「元の世界とのルートを繋ぐことができるのは、専用に付けた案内妖精だけなんですよぉ」
「はああああああああ!?」
俺は思わず絶叫しましたとも。
ちょ、無理やり異世界転移させたのも腹立たしいし、チート能力をくれなかったのもムカつきますが――この天然ボケ女神ときたら!
「ふざけんな!そういうことは早く言えよおおおお!」
***
こうなっては仕方ありません。
俺はピー太郎を買い戻すべく、サーカス団へ行きました。喋るもふもふ黄色いカラス、なんて珍しい!そう言ってピー太郎を買い取ってくれたサーカス団でしたが。
「あの鳥なら、見世物小屋に売ったぜ」
げっそりしながらサーカス団長さんが言いました。
「いくらなんでも餌代がかかりすぎる!一日であいつがどんだけ飯を食ったと思ってるんだ!」
ああ、そうでした。俺は頭を抱えます。ピー太郎は、とにかく大量の木の実を食べ続けないとすぐにやる気をなくしてしまうのです。なるべく安い木の実を大量に与えるのがいいよ、というアドバイスをするのをすっかり忘れていました。俺はサーカスの人に謝ると、見世物小屋へと向かいました。すると。
「あの鳥なら、ペットショップに売ったわよ」
呆れたように、見世物小屋の女将さんが言います。
「無理よ、無理無理。すぐにメスの鳥のところに求愛しに行っちゃうんだもの。全然芸になりゃしないわ」
ああごめんなさい。またしても俺は謝りました。ピー太郎はとにかく女の子が大好きなのです。可愛い鳥の女の子がいると、脇目もふらずにそっちの方へ飛んでいってしまう悪い癖があるのです。
嫌な予感がしつつ、俺はペットショップへ。すると。
「あの鳥なら、鳥カフェに売ったぞ」
ため息をつきながら、ペットショップの店員さんが言います。
「求愛行動なのか知らないが、とにかく歌いまくって煩い。しかも音痴!店を訪れたお客さんからクレームの嵐で、商売あがったりだよ!」
ああすみません!ほんとにそうですね。俺はぺこぺこしまくりです。ピー太郎は歌が大好きなのにとにかく音痴なんです。本人は、とっても一生懸命歌の練習をしているのですが、全然上達しません。
俺は不安になってきました。彼は一体、何回売られたのでしょう。おそるおそる鳥カフェに行くと。
「あの鳥!高いお金出して買ったのに!窓から逃げちゃったわ!」
鳥カフェ店員さんは、もうカンカンです。
「人見知り激しくて全然お客さんに懐かないの!あんなんじゃ全然仕事にならない。躾ようとしたら、私の手を啄いていなくなったわ、どうしてくれるのよ!」
きっと。ピー太郎は、どこにいってもうまくやれず、いろんな人に売り渡されて叱られてばかりの現状に落ち込んでしまったのでしょう。なんだか彼のことが可哀想になってしまいました。
そして、彼が人見知りであった、という事実をここで初めて知ったのです。いっつも喧嘩腰であった彼ですが、自分には心を開いてくれていたのでしょう。いつも遠慮なく、良いところも悪いところも言い合える仲だったということに、ここでようやく俺は思い至ったのでした。
「ピー太郎!どこだー!」
俺は彼の名前を呼びながら探し回りました。
そして、まさかと思って女神様に与えられた自分の家に戻ると――玄関口で、しょんぼりしているピー太郎に出くわしたのです。
「……ごめん、マキオ」
彼は落ち込んだように首を垂らしながら言いました。
「オラ初めて気づいたんじゃ。マキオはオラがいろんなことができなくても、失敗しても、全部受け止めてくれていたって。マキオも異世界転移で大変だったっていうのにな。……酷いこと言って、本当にごめん」
「ピー太郎……」
俺は、ピー太郎をぎゅっと抱きしめました。
「俺こそ、ごめん!もう、ピー太郎をどっかに売り飛ばしたりなんかしない!これからも一緒に頑張ろうな……!」
こうして、俺達は仲直り仲直り。
なんか大事なことを忘れてる気がするけれど、きっとこれでハッピーエンドなんでしょう。
「くおらああああ!お前みたいな能なしチキン!とっととヤキトリにされてしまえええ!」
「ちょ、誰が能なしチキンじゃい!脳みそ詰まってないのはそっちだワレェ!」
なんか、元通りになっただけの気もしますが。
めでたしめでたしなのです……多分。
「ちょ、誰が能なしチキンじゃい!脳みそ詰まってないのはそっちだワレェ!」
そんなかんじで、売り言葉に買い言葉。俺は異世界の案内人であったマスコットキャラっぽい鳥の妖精?ピー太郎をサーカスに売ってしまいました。
ちなみにそんな俺は異世界転移してきた現代日本人というやつです。
異世界案内人を名乗るマスコットがあんまりも口が悪くてウザいので、ずっと喧嘩ばかりをしていました。確かにこの世界は現代日本とルールが違うことが山ほどあります。魔法がある反面、携帯は使えないしコンビニはないしテレビもないしで大変です。まさか漫画までないとは思わず、僕のやる気がとっても下がっていたことは確かです。
でも、来てすぐに異世界の文化に慣れるって普通無理だと思いませんか。
どうせハチャメチャな世界なら、ゲームの通りモンスターを倒したらお金が稼げるシステムを作っておいてほしいと思います。何で武器を買うのも自腹、防具買うのも自腹、賞金かかってるモンスターの首を切ってギルドに行かないとお金がもらえないなんて初見殺しのシステムなんですか。女神様とやらは、お約束のチートスキルというやつも全然くれる気配がありません。しくしくです。
そんな時に、チキン野郎から“こんなやる気のねー転移者は初めてだぜ!”なーんて言われたら。怒るのも無理ないとは思いませんでしょーか。
「ええ、魔王退治はしたくない?勇者にはなりたくないんですって?ええ、それは残念ですねえ……」
そんな俺を、断りもなく勝手に異世界に連れてきた女神様は。俺がこんな世界は嫌だから元の場所に戻してくれというと、困ったように告げたのです。
「でも、ピー太郎ちゃんを売ってしまったんでしょ?じゃあ帰ることはできませんねえ」
「え」
「元の世界とのルートを繋ぐことができるのは、専用に付けた案内妖精だけなんですよぉ」
「はああああああああ!?」
俺は思わず絶叫しましたとも。
ちょ、無理やり異世界転移させたのも腹立たしいし、チート能力をくれなかったのもムカつきますが――この天然ボケ女神ときたら!
「ふざけんな!そういうことは早く言えよおおおお!」
***
こうなっては仕方ありません。
俺はピー太郎を買い戻すべく、サーカス団へ行きました。喋るもふもふ黄色いカラス、なんて珍しい!そう言ってピー太郎を買い取ってくれたサーカス団でしたが。
「あの鳥なら、見世物小屋に売ったぜ」
げっそりしながらサーカス団長さんが言いました。
「いくらなんでも餌代がかかりすぎる!一日であいつがどんだけ飯を食ったと思ってるんだ!」
ああ、そうでした。俺は頭を抱えます。ピー太郎は、とにかく大量の木の実を食べ続けないとすぐにやる気をなくしてしまうのです。なるべく安い木の実を大量に与えるのがいいよ、というアドバイスをするのをすっかり忘れていました。俺はサーカスの人に謝ると、見世物小屋へと向かいました。すると。
「あの鳥なら、ペットショップに売ったわよ」
呆れたように、見世物小屋の女将さんが言います。
「無理よ、無理無理。すぐにメスの鳥のところに求愛しに行っちゃうんだもの。全然芸になりゃしないわ」
ああごめんなさい。またしても俺は謝りました。ピー太郎はとにかく女の子が大好きなのです。可愛い鳥の女の子がいると、脇目もふらずにそっちの方へ飛んでいってしまう悪い癖があるのです。
嫌な予感がしつつ、俺はペットショップへ。すると。
「あの鳥なら、鳥カフェに売ったぞ」
ため息をつきながら、ペットショップの店員さんが言います。
「求愛行動なのか知らないが、とにかく歌いまくって煩い。しかも音痴!店を訪れたお客さんからクレームの嵐で、商売あがったりだよ!」
ああすみません!ほんとにそうですね。俺はぺこぺこしまくりです。ピー太郎は歌が大好きなのにとにかく音痴なんです。本人は、とっても一生懸命歌の練習をしているのですが、全然上達しません。
俺は不安になってきました。彼は一体、何回売られたのでしょう。おそるおそる鳥カフェに行くと。
「あの鳥!高いお金出して買ったのに!窓から逃げちゃったわ!」
鳥カフェ店員さんは、もうカンカンです。
「人見知り激しくて全然お客さんに懐かないの!あんなんじゃ全然仕事にならない。躾ようとしたら、私の手を啄いていなくなったわ、どうしてくれるのよ!」
きっと。ピー太郎は、どこにいってもうまくやれず、いろんな人に売り渡されて叱られてばかりの現状に落ち込んでしまったのでしょう。なんだか彼のことが可哀想になってしまいました。
そして、彼が人見知りであった、という事実をここで初めて知ったのです。いっつも喧嘩腰であった彼ですが、自分には心を開いてくれていたのでしょう。いつも遠慮なく、良いところも悪いところも言い合える仲だったということに、ここでようやく俺は思い至ったのでした。
「ピー太郎!どこだー!」
俺は彼の名前を呼びながら探し回りました。
そして、まさかと思って女神様に与えられた自分の家に戻ると――玄関口で、しょんぼりしているピー太郎に出くわしたのです。
「……ごめん、マキオ」
彼は落ち込んだように首を垂らしながら言いました。
「オラ初めて気づいたんじゃ。マキオはオラがいろんなことができなくても、失敗しても、全部受け止めてくれていたって。マキオも異世界転移で大変だったっていうのにな。……酷いこと言って、本当にごめん」
「ピー太郎……」
俺は、ピー太郎をぎゅっと抱きしめました。
「俺こそ、ごめん!もう、ピー太郎をどっかに売り飛ばしたりなんかしない!これからも一緒に頑張ろうな……!」
こうして、俺達は仲直り仲直り。
なんか大事なことを忘れてる気がするけれど、きっとこれでハッピーエンドなんでしょう。
「くおらああああ!お前みたいな能なしチキン!とっととヤキトリにされてしまえええ!」
「ちょ、誰が能なしチキンじゃい!脳みそ詰まってないのはそっちだワレェ!」
なんか、元通りになっただけの気もしますが。
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