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<16・因果応報の時を待て>
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あの家族はどうしたのかな、とマサユキは思う。ユージーンの一件があったので、マルレーネも同様に家族が取り返しに来るとばかり思っていたのだ。なんせ、エルフの村自体此処からさほど遠い場所ではない。徒歩でも充分到達は可能。娘が奴隷として強引に連れて行かれれば、必ずや取り戻しに来るのが親心かと思っていたのだが。
「どうやら、そういうわけでもないらしいぞ。……残念だったな、マルレーネ。お前の親や恋人は随分薄情だったらしいぜ?」
そのマルレーネは、昨夜能力を使って連れ去ってから、随分大暴れして抵抗してくれた。自分が置かれた立場を理解するやいなや、帰して帰しての一点張り。マサユキに従うどころかほぼほぼパニック状態である。
だから、少々灸を据えてやることにしたのだ。マルレーネはユージーンと比べて年齢がかなり上の、二十代の成熟した女性である。恋人もいて、マルレーネの両親と一緒に暮らしていたらしいということも既にわかっている。抵抗してくることは予想通りではあったが、彼女はあくまでマサユキの農地拡大に協力し、スローライフを援助するための労働力として連れてきた存在なのだ。奴隷として役立ってくれないのでは何の意味もない。性奴隷、という方向もあるがそもそもマサユキは性欲そのものがさほど強いタイプでもないのである(年齢のせいもあるのだろうが)。
だから、もっと物理的に、痛みを与えてやることにしたのだった。倉庫の中に押し込めて縛りつけ、ちょいと体のあちこちにピアスを開けてやることにしたのだった。幸い、薬用になるハーブはたんまりある。現代日本よりも遥かに容易く傷を治すことは可能なのだ。多少失敗しても多少傷が膿んでも問題ない。致命傷にさえならなければ、治す手段はいくらでもある。
「う、ううう、ううう……!」
彼女は今、涙でぐしゃぐしゃになった顔で倉庫のタイルの上、がんじがらめに縛り付けられて座り込んでいる状況だ。指に、腕に、足に、臍に、胸に。ピアスの穴を強引に開けるたびに彼女は痛がって律儀に悲鳴を上げ続ける。時間の経過と共に、殺してくれという声が混じりつつあるのが実に愉快だった。単純にレイプでもされた方がどれほどマシだったことかと、きっと彼女も思っているだろう。残念ながらこちらは、奴隷に快楽なんて生易しいものを与えてやる気はないのである。
自分が女達を奴隷にするのは、労働力であると同時に目の保養であり――復讐のため。
前世で、自分に見向きもしなかったどころか、陰口ばかり叩いて見下してきた奴らへのウサ晴らしに他ならないのだ。彼女達は自分を虐げた女どもと同一人物ではないが、同じ“人間”で“女”であることには変わりないのだから。
「ほらよっ!」
血だらけの女に、思い切りホースで水をぶっかける。冷たい水が傷に染みたのか、さらに大きくなる泣き声。簡単に洗い流せるようにタイル張り・排水口付きの倉庫にはしてあるが、だからといって掃除する手間がないわけではないのである。いつまでもそこでウジウジ泣かれていては、いつまでたっても室内がクサいままになってしまうのだ。
「これで分かっただろ?お前はここで一生俺の奴隷をやるしかねーんだよ。逆らったら、次はそうだな……お前の穴という穴に、イナリムカデを大量に詰め込んでやるかねえ?毒もあるし鋭い足も牙もある、さぞかし痛いだろうなあ?」
「ご、ご、ごめんなさい……ごめんなさい、許してください……もう逆らいません、いい子にします、だから、だから……!」
「わかればいいんだよ、わかれば!」
行きがけの駄賃替わりに一発蹴りを食らわせると、両手両足に繋いだ枷を外してやる。そしてホースを投げつけるように渡して言った。
「わかったら、さっさとその部屋を綺麗に掃除しろ。それがお前への最初の命令だ。でないと俺が“快適にスローライフ”できねーんだよ。それが終わったらとりあえず傷はまた治してやるし飯も食わせてやる。逆に言えば終わらなければ……わかるな?」
掃除が終わらなければ一生傷だらけで縛り付けたまま放置、食事も与えない。そういう意図を告げれば、マルレーネは壊れたようにかくかくと頷いてホースを握った。奴隷を調教した後は、掃除まで本人に全てやらせるに限るのだ。とりあえず、初日にガツンと怖い目を見させるのが、今後従順な奴隷に仕上げる最大のコツだ。既にそれはユージーンの一件で実証済みである。
そのユージーンは、自分の命令通りハーブ園の方に先んじて水撒きに行っているはずだった。怖い思い、痛い思いをしないためならば彼女はもう自分が命令せずとも進んで農園の世話をしてくれるようになった。実に素晴らしいことだ。ミナギハーブは、他の作物以上に大きな財源になることは明白である。丁寧に、少しでも多く育てて大量に出荷できるようにしなければなるまい。西に限らず北にも南にも東にも、大量の需要があることはわかっているのだから。
「ご、ご主人様……」
「おう、おはよう」
もうユージーンには、殆ど特別な“調教”をする必要はないのだろう。彼女はマサユキの足音が近づくと、それだけで振り返り、帽子を外して丁寧にお辞儀をしてくるようになった。そして、こちらが要求するまでもなく、園の状況を伝えてくれるのである。
「あ、あの……ハーブ園のAエリアは順調に育っています。少々雑草が増えてきたので抜くか除草剤を撒く必要はあるかと思いますが。ただ、日当たりの関係でBとCが少し栽培が遅れているようで……何らかの対応が必要ではないかと。このまま“日陰栽培”に切り替えてしまう、という手法もありますが」
「日陰栽培?」
「ミナギハーブは、日当たりによって風味も成分も変わってくるので。日陰栽培ハーブも、それはそれで高い需要があります。例えば殺虫剤を作る成分という意味では、日陰栽培した方が有用なはずです」
「ふんふん」
元々ハーブを育てていたエルフの村の娘というだけあって、ユージーンの知識は豊富であるし非常に有用だ。彼女の言う通り、日陰栽培というものを試してみるのもいいかもしれない。一部の農園には虫が多く発生して、少々手間どっていたのも事実だ。一部は出荷せず、こちらで薬剤を調合して使う用にするのもいいのかもしれなかった。
「それと、もう一つ区画を残してあったよな。あそこの森をそのまま農園にしたら、日当たりも全体的によくなるんじゃないか?Dエリアが日陰ってるの、あそこの木が邪魔なのもあるしな。あそこの木、まるっとなくしてハーブ農園にしちまおうぜ。いいアイデアだろ?」
マサユキがそう告げると、ユージーンの眼が少しだけ陰った。表立って逆らうことはしなくなったが、それでも彼女から感情が失われたわけではない。新たなハーブ農園を増やすということは即ち、再びエルフの村から既に出来上がっている農地を奪ってくるということである。つまり、彼女の村か、近隣の村がさらに食い扶持を失うということ。もしかしたらそれはユージーンの家の残った農地であるかもしれないし、あのマルレーネの家の農地かもしれないし、他の誰かのものかもしれないのだ。
「……ハーブ農園、まだ増やしたい、ということですか?」
「なんだ、不満か?」
「い、いえ……!」
「俺は勇者だ。女神サマから、素敵なスローライフを送るためなら何でも実現可能、っていう能力と許しを貰ってる。それがどういうことか、西の女神サマの信者ならよーくわかってるだろ?……俺に逆らうってことは、女神サマの意思に逆らうってことでもあるってことだぜ」
そうだ、自分はただ、平穏無事に、まったり過ごしたいだけ。
可愛い女の子と一緒に、農業しながら幸せに暮らしたいという、人として当たり前のことを願っているだけに過ぎないのだ。一体誰が、そんな自分を非難する権利を持っているというのだろう?誰だって、自分が一番可愛い。自分の平穏な生活ほど愛しいものはない。己はただ、それをチート能力をもってして実現しようとしているだけ。他の者がそれで迷惑を被ろうが知ったことではないのだ――なんせ、誰だって多かれ少なかれ、自分のためだけに身勝手に生きているイキモノなのだから。
自分はそれを、前世で嫌というほど思い知らされてきたのだから。
「俺の平和な生活のためには、素敵な農業ライフを送れるだけの広い農地と、そのための労働力がちょっぴり必要ってだけだ。他のクズい勇者どもと比べて、なんともささやかで可愛い願いと力だろ?」
「はい……そうです。そのとおり、です」
「だろだろ。わかればいいんだよ、わかれば」
震える少女の頭をポンポンと叩くと、マサユキは再び能力を発動させた。邪魔な老木が生え、日陰を作っていたエリアに向けて意識を集中させる。
命令も、農地拡大も。必要なキーワードは決まっている。
「此処に、新しいハーブ農園を作る!“俺のスローライフにはそいつが必要”だ!」
スローライフに必要。快適なスローライフのため。そう言葉にすれば、マサユキがイメージした通りに力が発動する仕掛けになっているのだ。
瞬間、鬱蒼とした森の一角が緑色の光に包まれる。ほどなくして、綺麗に整えられた、青々と輝くハーブ園が出現した。園に掲げられた立札なども一緒に“転移”してきている。やはりというべきか、ユージーンやマルレーネと同じ村のミナギハーブ園が飛ばされて来たようだ。これは世話のしがいがありそうである。ここまで育ててくれたエルフの連中には感謝してもいいかもしれないな――そう思いつつ、細かなチェックを入れようとマサユキが足を踏み入れた、その時だった。
「!?」
ずん、と足が沈み込む感触。もしマサユキに、もう少しそちらの知識があったのなら――自分が非常にまずい状況に置かれたことに気づいたことだろう。
しかし残念ながら、マサユキは前世でただのくたびれたサラリーマンで、ギャルゲーをやるくらいしか趣味がなかったマサユキである。ゆえに、気付くことなどなかったのだ。己が踏んだそれが――畑に埋まった爆発物の類である、なんてことは。
「な、なん」
思わず飛び退いてしまった、次の瞬間。
ぶわり、と土が盛り上がり――一気にマサユキを巻き込んで、大爆発を起こしたのだった。
「どうやら、そういうわけでもないらしいぞ。……残念だったな、マルレーネ。お前の親や恋人は随分薄情だったらしいぜ?」
そのマルレーネは、昨夜能力を使って連れ去ってから、随分大暴れして抵抗してくれた。自分が置かれた立場を理解するやいなや、帰して帰しての一点張り。マサユキに従うどころかほぼほぼパニック状態である。
だから、少々灸を据えてやることにしたのだ。マルレーネはユージーンと比べて年齢がかなり上の、二十代の成熟した女性である。恋人もいて、マルレーネの両親と一緒に暮らしていたらしいということも既にわかっている。抵抗してくることは予想通りではあったが、彼女はあくまでマサユキの農地拡大に協力し、スローライフを援助するための労働力として連れてきた存在なのだ。奴隷として役立ってくれないのでは何の意味もない。性奴隷、という方向もあるがそもそもマサユキは性欲そのものがさほど強いタイプでもないのである(年齢のせいもあるのだろうが)。
だから、もっと物理的に、痛みを与えてやることにしたのだった。倉庫の中に押し込めて縛りつけ、ちょいと体のあちこちにピアスを開けてやることにしたのだった。幸い、薬用になるハーブはたんまりある。現代日本よりも遥かに容易く傷を治すことは可能なのだ。多少失敗しても多少傷が膿んでも問題ない。致命傷にさえならなければ、治す手段はいくらでもある。
「う、ううう、ううう……!」
彼女は今、涙でぐしゃぐしゃになった顔で倉庫のタイルの上、がんじがらめに縛り付けられて座り込んでいる状況だ。指に、腕に、足に、臍に、胸に。ピアスの穴を強引に開けるたびに彼女は痛がって律儀に悲鳴を上げ続ける。時間の経過と共に、殺してくれという声が混じりつつあるのが実に愉快だった。単純にレイプでもされた方がどれほどマシだったことかと、きっと彼女も思っているだろう。残念ながらこちらは、奴隷に快楽なんて生易しいものを与えてやる気はないのである。
自分が女達を奴隷にするのは、労働力であると同時に目の保養であり――復讐のため。
前世で、自分に見向きもしなかったどころか、陰口ばかり叩いて見下してきた奴らへのウサ晴らしに他ならないのだ。彼女達は自分を虐げた女どもと同一人物ではないが、同じ“人間”で“女”であることには変わりないのだから。
「ほらよっ!」
血だらけの女に、思い切りホースで水をぶっかける。冷たい水が傷に染みたのか、さらに大きくなる泣き声。簡単に洗い流せるようにタイル張り・排水口付きの倉庫にはしてあるが、だからといって掃除する手間がないわけではないのである。いつまでもそこでウジウジ泣かれていては、いつまでたっても室内がクサいままになってしまうのだ。
「これで分かっただろ?お前はここで一生俺の奴隷をやるしかねーんだよ。逆らったら、次はそうだな……お前の穴という穴に、イナリムカデを大量に詰め込んでやるかねえ?毒もあるし鋭い足も牙もある、さぞかし痛いだろうなあ?」
「ご、ご、ごめんなさい……ごめんなさい、許してください……もう逆らいません、いい子にします、だから、だから……!」
「わかればいいんだよ、わかれば!」
行きがけの駄賃替わりに一発蹴りを食らわせると、両手両足に繋いだ枷を外してやる。そしてホースを投げつけるように渡して言った。
「わかったら、さっさとその部屋を綺麗に掃除しろ。それがお前への最初の命令だ。でないと俺が“快適にスローライフ”できねーんだよ。それが終わったらとりあえず傷はまた治してやるし飯も食わせてやる。逆に言えば終わらなければ……わかるな?」
掃除が終わらなければ一生傷だらけで縛り付けたまま放置、食事も与えない。そういう意図を告げれば、マルレーネは壊れたようにかくかくと頷いてホースを握った。奴隷を調教した後は、掃除まで本人に全てやらせるに限るのだ。とりあえず、初日にガツンと怖い目を見させるのが、今後従順な奴隷に仕上げる最大のコツだ。既にそれはユージーンの一件で実証済みである。
そのユージーンは、自分の命令通りハーブ園の方に先んじて水撒きに行っているはずだった。怖い思い、痛い思いをしないためならば彼女はもう自分が命令せずとも進んで農園の世話をしてくれるようになった。実に素晴らしいことだ。ミナギハーブは、他の作物以上に大きな財源になることは明白である。丁寧に、少しでも多く育てて大量に出荷できるようにしなければなるまい。西に限らず北にも南にも東にも、大量の需要があることはわかっているのだから。
「ご、ご主人様……」
「おう、おはよう」
もうユージーンには、殆ど特別な“調教”をする必要はないのだろう。彼女はマサユキの足音が近づくと、それだけで振り返り、帽子を外して丁寧にお辞儀をしてくるようになった。そして、こちらが要求するまでもなく、園の状況を伝えてくれるのである。
「あ、あの……ハーブ園のAエリアは順調に育っています。少々雑草が増えてきたので抜くか除草剤を撒く必要はあるかと思いますが。ただ、日当たりの関係でBとCが少し栽培が遅れているようで……何らかの対応が必要ではないかと。このまま“日陰栽培”に切り替えてしまう、という手法もありますが」
「日陰栽培?」
「ミナギハーブは、日当たりによって風味も成分も変わってくるので。日陰栽培ハーブも、それはそれで高い需要があります。例えば殺虫剤を作る成分という意味では、日陰栽培した方が有用なはずです」
「ふんふん」
元々ハーブを育てていたエルフの村の娘というだけあって、ユージーンの知識は豊富であるし非常に有用だ。彼女の言う通り、日陰栽培というものを試してみるのもいいかもしれない。一部の農園には虫が多く発生して、少々手間どっていたのも事実だ。一部は出荷せず、こちらで薬剤を調合して使う用にするのもいいのかもしれなかった。
「それと、もう一つ区画を残してあったよな。あそこの森をそのまま農園にしたら、日当たりも全体的によくなるんじゃないか?Dエリアが日陰ってるの、あそこの木が邪魔なのもあるしな。あそこの木、まるっとなくしてハーブ農園にしちまおうぜ。いいアイデアだろ?」
マサユキがそう告げると、ユージーンの眼が少しだけ陰った。表立って逆らうことはしなくなったが、それでも彼女から感情が失われたわけではない。新たなハーブ農園を増やすということは即ち、再びエルフの村から既に出来上がっている農地を奪ってくるということである。つまり、彼女の村か、近隣の村がさらに食い扶持を失うということ。もしかしたらそれはユージーンの家の残った農地であるかもしれないし、あのマルレーネの家の農地かもしれないし、他の誰かのものかもしれないのだ。
「……ハーブ農園、まだ増やしたい、ということですか?」
「なんだ、不満か?」
「い、いえ……!」
「俺は勇者だ。女神サマから、素敵なスローライフを送るためなら何でも実現可能、っていう能力と許しを貰ってる。それがどういうことか、西の女神サマの信者ならよーくわかってるだろ?……俺に逆らうってことは、女神サマの意思に逆らうってことでもあるってことだぜ」
そうだ、自分はただ、平穏無事に、まったり過ごしたいだけ。
可愛い女の子と一緒に、農業しながら幸せに暮らしたいという、人として当たり前のことを願っているだけに過ぎないのだ。一体誰が、そんな自分を非難する権利を持っているというのだろう?誰だって、自分が一番可愛い。自分の平穏な生活ほど愛しいものはない。己はただ、それをチート能力をもってして実現しようとしているだけ。他の者がそれで迷惑を被ろうが知ったことではないのだ――なんせ、誰だって多かれ少なかれ、自分のためだけに身勝手に生きているイキモノなのだから。
自分はそれを、前世で嫌というほど思い知らされてきたのだから。
「俺の平和な生活のためには、素敵な農業ライフを送れるだけの広い農地と、そのための労働力がちょっぴり必要ってだけだ。他のクズい勇者どもと比べて、なんともささやかで可愛い願いと力だろ?」
「はい……そうです。そのとおり、です」
「だろだろ。わかればいいんだよ、わかれば」
震える少女の頭をポンポンと叩くと、マサユキは再び能力を発動させた。邪魔な老木が生え、日陰を作っていたエリアに向けて意識を集中させる。
命令も、農地拡大も。必要なキーワードは決まっている。
「此処に、新しいハーブ農園を作る!“俺のスローライフにはそいつが必要”だ!」
スローライフに必要。快適なスローライフのため。そう言葉にすれば、マサユキがイメージした通りに力が発動する仕掛けになっているのだ。
瞬間、鬱蒼とした森の一角が緑色の光に包まれる。ほどなくして、綺麗に整えられた、青々と輝くハーブ園が出現した。園に掲げられた立札なども一緒に“転移”してきている。やはりというべきか、ユージーンやマルレーネと同じ村のミナギハーブ園が飛ばされて来たようだ。これは世話のしがいがありそうである。ここまで育ててくれたエルフの連中には感謝してもいいかもしれないな――そう思いつつ、細かなチェックを入れようとマサユキが足を踏み入れた、その時だった。
「!?」
ずん、と足が沈み込む感触。もしマサユキに、もう少しそちらの知識があったのなら――自分が非常にまずい状況に置かれたことに気づいたことだろう。
しかし残念ながら、マサユキは前世でただのくたびれたサラリーマンで、ギャルゲーをやるくらいしか趣味がなかったマサユキである。ゆえに、気付くことなどなかったのだ。己が踏んだそれが――畑に埋まった爆発物の類である、なんてことは。
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