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人間界観光ツアーに参加した悪魔の話
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人間界格安バスツアーに参加した悪魔のソラスは仮装集団のひしめく東京・渋谷でガラの悪い男達に絡まれてしまう。モブレのピンチかと思いきや見知らぬ人間に助けられて――?!
※イケメン人間(名前出ない)×おのぼりさん悪魔のやおいコメディです
***
「『イビスタグラムで話題沸騰! 人間界の日本観光ツアーinハロウィン!』」
スマートフォンに表示された文字を
読み上げたのは若い男の声だった。
声の主は短い赤毛に緑の瞳の青年だ。衣服の背と臀部に穴が開けられており、背から生えた蝙蝠のような翼と、臀部から伸びる先がハートのように大きく尖った黒い鞭のような尻尾が異形を物語るが、それ以外は人間とさして変わらない。
青年は名前をソラスといい、魔界で暮らすしがない悪魔である。有給を使って何処かへ旅行にでも行ってみようかと思い付き、観光ツアーのサイトを見ていた。
スマートフォンの画面には奇妙な格好をした若い人間達が市街に集まる写真や、東京のオーソドックスな観光名所の風景写真が数枚紹介されている。
「『仮装パーティに沸き立つ渋谷センター街は勿論、時間内ならご自由に東京観光をお楽しみ頂けます』」
サイトを見る緑の目はキラキラと輝いている。ハロウィンやら仮装パーティやらはよくわからないが、写真の中の人間達は楽しそうだ。
「次元渡界バス料金は往復五万……すごい安い……あ、約款見とかないと……」
魔界と人間界は異なる次元に存在し、それは壁となり往来を阻んでいる。ソラスのような低級悪魔が人間界に行くには大金を積まなければ叶わないが、月収から換算すると五万で人間界へ行けるのは破格だった。
美味い話には裏がある。安く出来るのには理由がある。サイト下部にある契約約款のリンクをタップし、内容に目を通すと何処の会社でもそういうかんじだろう文章から始まり、免責事項などが小難しく記載されている。
「……当社の都合による当日の運行休止を含めて、利用者が渡界バスへの乗車が不可能だった場合、当社は一切の返金・代替手配はしないものとする。ただし事前にツアーを中止する場合や、利用者がキャンセル申請をした場合は返金に応じる。はぁ、なるほど?」
交通費を安くしている代わりにスケジュールの変動はしないということだろう。時間通りにバスに乗りさえすれば問題はないし、今の時期は気候も安定しているのでバスが運行出来なくなる可能性も少ない。
「……一泊二日の予定で、宿泊施設は基本的に各自で用意……追加料金を支払えばツアー会社が手配してくれるんだ。ふうん」
ソラスは生まれて二十年と経つが、働いてばかりで魔界すら旅行をしたことがない。いきなり人間界に行くのは不安が大きいが、楽しそうな写真を見ていると行ってみたくて仕方なくなった。
「スマホは人間界でも使えるし、困ったらこれさえあれば大丈夫だろ」
人間界同様、魔界の住人達にとってもスマートフォンは日常生活に欠かせない必需品となっている。魔界のスマートフォンは魔力を動力にしているので持ち主さえ元気なら何時でも使える優れものだ。
「……も、申し込んでみようかな」
呟きの後、ソラスの指はさっさとツアー申請ボタンをタップし、必要事項を入力していく。その顔は旅行への期待から紅潮していた。
ソラスは食品工場で働いている。魔界と人間界は文明的に大差ない。空の色が赤黒いことや、人間が電気を使って動かす機械を魔力で動かしているくらいの違いだろうか。
ソラスの働く工場も魔力によって稼働している。魔力量の多い優秀な悪魔は魔力源として雇われ、ソラスのような低級悪魔は少ない魔力で動かせる工具を使って物を作る。
小さな頃は人間と契約して魂を集める営業職に憧れたものだが、持って生まれた魔力量から諦めた。一人で人間界に行けるような者でなければ営業職は勤まらない。
毎日同じ作業を続けて、社会の歯車の一つとして生きる暮らしも悪くはなかった。思いきって決めた旅行のように、ちょっとした贅沢が楽しみで仕方ないのだ。
(同じ部署のみんなにはお土産買ってこよう。美味しいお菓子調べないと)
余所事を考えていても目と手は勝手に動く。いつものように仕事をこなして終える日々を繰り返し、旅行の日はあっという間にやって来た。
***
渡界バスの外観は、やはり人間界のものと変わらない。日本でよく見られるマイクロバスだ。日本へ行くので現地の物と大差ない方が悪目立ちせず溶け込みやすいということもある。
集合場所である市街のロータリーには、一台のバスが停まっていた。フロントガラスには『人間界日本東京行き:ハロウィンツアー』と書かれた紙が貼られており、入口では添乗員の女性が乗車券を確認している。ソラスも送られてきた券を見せると「はい、本日は弊社のツアーにご参加頂きありがとうございます」とにっこり微笑まれ、席はあちらです、と案内された。
ソラスの席は最後列の五人掛けの右端で、窓から景色が見渡せる。ちらほらと他の席が埋まり始め、最後列は四人家族のゴースト達が座った。
「おとうさん、にんげんかいたのしみだねぇ!」
「そうだね。でもバスの中ではお利口さんにしていようね」
真っ白い風船のような体にピンク色のリボンをつけた、小さな女の子ゴーストが父親らしき大きな体のゴーストへはしゃいだ声で話し掛ける。同意しつつも子供を嗜めた父親に代わり、母親ゴーストがソラスへ「うるさくてすみません」と謝った。
「俺は大丈夫ですよ。旅行は楽しいものですからね」
「お兄さんもハロウィン行くの?」
ソラスの隣に座った、眼鏡を掛けた男の子らしきゴーストが尋ねてくる。体の大きさからして女の子のお兄さんだろうか。
「うん。楽しそうだからね」
「ボクも楽しみにしてるんだ!」
ハロウィンパーティの他にもあれがしたいこれがしたいと男の子の話を聞いているうちに、出発の時間になったらしい。バスのエンジンが掛かった。
「皆様、本日はイービル観光のハロウィンツアーへご参加頂き誠にありがとうございます。一泊二日の短い間ですが、よろしくお願い致します」
バスの扉が音を立てて閉まり、添乗員が挨拶する。これから次元を越える渡界トンネルへ向かい、しばらく時空間を走行することを涼やかな声が説明した。
「目的地に着くまではバスの中で、皆様思い遣りを持ってご自由にお過ごし下さい。次元トンネル内は代わり映えのしない光景が続きますので仮眠をお勧めします。人間界に渡りましたら一度声を掛けさせて頂きます」
バスは走り出し、市街を駆け抜けていく。見慣れた街並みを見ながら、朝の早かったソラスは仮眠を取ることにした。隣のゴースト家族も同じらしく、大人しく目を閉ざしている。
密やかな話し声が聞こえてくる席もあるが、大半は眠っているらしい。いつの間にか眠りについたソラスの意識が戻る頃には、バスは東京都内を走っていた。
***
魔界のスマートフォンは人間界にも対応しており、画面には東京の時刻が表示される。バスが着いた頃には既に夕方になっていた。
「渡界トンネルを走行した影響もございますが、人間界と魔界では時差も大きいです。帰りの時間までにバスへ戻られない場合は自己責任での帰宅となりますのでご注意下さい」
明日の十一時にバスは魔界へ出発する。その時間を過ぎたら待たずに置いていくのだと、約款に書かれていたことを再度注意するということは守られないことがあるのだろう。
「遅れないようにしないと……」
ソラスもそれなりに貯えてはいるものの、渡界費用には足りないだろう。乗り遅れれば魔界へ帰れなくなってしまうが、必要以上に恐れることはない。きちんと時間を守ればいいだけだ。
見慣れない街並みを走りながら、茜空に聳え立つスカイタワーやただのビル群を見る。タワーやビルは魔界にも存在するが、今居る世界が違うというだけで似た建造物すら新鮮に見えた。
バスは観光ホテルの駐車場に停められた。エンジンが止まると添乗員が口を開く。
「ホテルプランを申し込んだ方はこちらのホテルでの宿泊となります。先にチェックインを済ませますので私と共にフロントへ向かいましょう。私と運転手もこちらへ泊まりますので、何かありましたらお気軽にご相談下さい。これより明日の十一時までは、人間界で節度を守りご自由にお過ごし下さい。観光プランをあまり考えていないようでしたらお勧めの観光地など紹介致します」
音を立ててバスの扉が開き、乗客がぞろぞろと降りていく。
「お兄さんもここのホテル?」
寝ぼけ眼のゴーストが尋ねてくる。ソラスは頭を振った。
ソラスの荷物はボディバッグ一つに収まっている。一泊なので財布とスマートフォン、着替えは下着くらいでいいだろうと、かなり軽量化した。荷物が多ければ先にホテルへ預けて外出するのだろうが、そうする必要のないソラスはスマートフォンの案内を見て渋谷へ向かっていた。
ソラスはホテルなどの手配はしていない。近年利便性が向上しているらしいビジネスホテルとやらに泊まってみたいと思っているが、部屋が空いてなければカプセルホテルやら漫画喫茶で構わない。行き当たりばったりなことすら楽しんでいた。
魔界にも魔力で動く列車はある。切符も電子化が進みスマートフォンで改札が通れるようになっているのは人間界と同じで、つまりシステムは同じだった。行き先をよく見さえすれば難なく渋谷へ辿り着く。
駅を出ると空はすっかり暗く、街は奇抜な格好の若者で溢れていた。
「……魔女達よりは慎みがあるか」
若い女性は胸の谷間を晒し、下着が見えそうなミニスカート姿で歩いている者が多い。バニーガールもいるが、魔界に住む女達は裸同然の姿の者もいるので可愛らしいものである。
「魔界のナイトクラブよりは大人しくお上品だな」
ゾンビやフランケンシュタイン、ミイラの格好をした若者が街中で喧嘩をしているが、魔界の本物達に比べたらお遊戯みたいなものだ。思わず顔を顰めるような罵倒は聞こえてこない。
「コスプレってやつだな」
ハロウィンはおばけの仮装をする祭だと人間界の情報サイトで見たが、中にはゲームや漫画のキャラクターの姿ではしゃいでいる者もいる。いつの間にか仮装だけでなくコスプレするようになったらしいが、楽しそうだからいいのだろう。
「……」
ソラスは人間界で悪目立ちしないよう、人間界のファッション誌に載っていた『垢抜けた社会人の大人しめモノクロコーデ』を参考に白シャツに黒ベストとチノパン、黒いスニーカーの量産型男子の格好をしている。髪は赤いままだが、最近の若者は多彩な染色をしているのであまり注目されなかった。
翼と尻尾は隠しており、今のソラスは髪が赤いだけの人間にしか見えない。けれど、奇妙喜天烈な人間達のひしめく今の渋谷ならば、大丈夫なのではないか。
路地裏に引っ込んだソラスは誰の目もないことを確認してから、翼を生やし尻尾を伸ばした。シャツの裾から覗く翼はぱたぱたと動き、チノパンから這い出た尻尾はふよふよと宙を漂う。
思いきって路地に出るが、誰もソラスを気にしない。よく出来たアクセサリーだと思われる程度だ。
本物の悪魔が目の前にいるというのに、そんなこと知らない人間達は渋谷の街を楽しげに歩いている。ソラスも同じように楽しげに、目を輝かせて人間の街を観察していた。
***
残念なことに仮装していると利用出来ないという貼り紙をしている商店が多く、理由をスマートフォンで調べたソラスは悲しくなった。仮装パーティの雰囲気に煽られ、無関係の店へ嫌がらせ行為や暴力事件を起こす人間が過去にいて問題になったらしい。
中には仮装してても利用出来る店もあったが、出来ない方が多い。人間界の喫茶店などに入ってみたいが今夜は諦め、明日帰る前に何処かへ入ってみようと決める。今日はとりあえず渋谷の様子を楽しんで、もう少ししたらホテルなり漫画喫茶なり探せばいい。
道行く人を眺め、時折街並みの写真を撮っていたソラスの尻尾が、突然何かに掴まれた。
「ひえ!?」
「あー? なんだこれ。よく出来てんね」
「たっつんなにしてんだよォ」
振り返ると赤ら顔の若者がソラスの尻尾を掴んでおり、思わず逃げようとする尻尾の先を興味深そうに見ている。その後ろには仲間だろう男達三人が、連れに絡まれるソラスを見た。
「お? 外人か?」
「……んだよ、男かよ」
「けどキレーな顔してんじゃん。もうこれでよくね?」
「女一人も掴まらねぇもんな。警官はうるっせーし……」
よくわからないことを口々に言い始める。悪魔には言語翻訳能力が備わっているので彼らの言葉はわかるのだが、意味がわからなかった。
「穴ならもう何でもいいわ。行こうぜ」
「え。ちょっ、いや……」
「うるせっての。ほら飲めよ!」
男の一人が持っていた缶ビールを口に押し付けられ、半分以上残っていた中身を全て無理矢理飲まされる。ビールの他に、何か嫌な苦味があった。
「それ例の?」
「そ。キメキメチャンポンビール」
ゲラゲラと笑い声が上がる中、ソラスの意識は急速に遠退いていた。下級とはいえ悪魔であるソラスが人間用のビールを飲んだだけで酔うのはおかしい。
「た……け、」
か細い声は下卑た笑いに掻き消される。意識を失いぐったりとしたソラスの体を、尻尾を掴んだ男が抱え運び出そうとした時。
「お巡りさんこっちです! あの男達、人を連れ去ろうとしてて!」
喧騒の中、声が響いた。ソラスを抱える男達を誰かが指し示しながら警官を呼んでいる。
男達は厳つい外見とガラの悪さから当然のように警官に目を付けられていた。ソラスの前に女性へ言い寄ろうとしたのだが、その度に警官に声を掛けられ女性達は逃がされた。
「クソッ」
ソラスを抱えたままでは走れないと、その場へ投げ捨てて逃げていく。男達に絡まれる青年の姿を見ながらも助けることはしなかった通行人達は走り去る男達の背を見て、捨てられたソラスを見て、何も見なかった、気にしなかったと無視して歩き去っていく。
「……おーい。大丈夫?」
一人だけソラスに近寄る影があった。その声は警官を呼んだものと同じだが、周りに警官はいない。
地面に伏したソラスを抱え起こし、心配そうに見つめるのは端正な顔立ちの男だった。ファンキーなおばけのイラストがプリントされたパーカーを着ている程度で、髪も染められず仮装らしい仮装をしていない彼は道の端へ移動し、ソラスに声を掛け続ける。何度目かの呼び掛けはようやくソラスの意識に届き、薄く瞼を上げ、緑の目が男を見た。
「……たす、けてぇ……」
意識を持った尻尾が、見知らぬ男へ伸ばされる。ソラスを抱える腕へ絡み付き、震える唇が儚く助けを乞う。
日本人ではない。それ所か人間離れした雰囲気の青年に熱っぽく見つめられ、男は何故か興奮を覚えた。
「助けるって、どうしたらいいの」
「……からだ。へん、あついよぉ……」
「やっぱ変なもん飲まされたのかな。ガラ悪すぎたもんあいつら……」
助けて、とそればかり繰り返しながら体を押し付けてくるソラスを、男は体に凭れさせながら抱き、立ち上がらせる。ゆっくりと歩き始めた二人は次第に渋谷の喧騒から外れ、静かなネオン煌めくホテル街へ向かっていった。
***
トイレとシャワールームが備え付けられただけの、大きなベッドが鎮座する部屋。そう書いてみるとビジネスホテルと変わりないように思える。
部屋の中に連れ込まれる前から、ソラスは男に甘えるように引っ付き、ふっくらと主張する股間を押し当て、男の唇に吸い付いていた。
「んっ、ん、ちゅ、んぷ」
ラブホテルのエントランスで部屋を選ぶパネルを操作している時も。エレベーターに載って部屋へ向かう間も。はやく部屋に入りたいと急ぐ手で部屋の鍵を開けている間も。蕩けた顔を晒したソラスは媚びるように男にキスをして、せがんでいた。
「たすけて……たすけてぇ……」
体が熱くて仕方ない。解放を求めて恥を忘れたソラスは自分を支える男にすり寄り、男の体を使って自分を慰めていた。見知らぬ他人の体に甘えるのが気持ちいい。
部屋の扉を開ければすぐにベッドルームが待っている。扉を閉めた男はソラスを連れて奥の扉、シャワールームへ進んだ。狭い脱衣所で服を剥ぎ取られている間も、ソラスは男に抱き着いていた。
「……何だこれ」
ソラスは翼と尻尾を出したままだった。仮装で賑わう渋谷ではそれらしく作られたアクセサリーというか、仮装の一部と認識され流されていたが、素っ裸になるとそれらが肌から生えているのがよくわかる。
真っ黒い立派な翼は緩く羽ばたき、尻から生えた尻尾は男の手に絡み付いて甘える。ハートの形をした先っぽを触るとソラスが喘いだ。
「あっ、あ、や、そこっ」
「……本物?」
特殊な接着剤で肌にくっ付け、自動で動く骨組みを利用している……にしては本当の生き物のように不規則かつ正確に動いている。まさか、という思わず呟いた言葉を、ソラスは頷いて肯定した。
「あっ、あん……おれぇ……あくまだよ」
「悪魔が何で渋谷で人間に拉致されかかってんだよ」
「そんなに……んっ……つよくないから……あ、あ……」
話しながら男も服を脱ぎ、二人揃って広くないシャワールームへ入る。ソラスは男にされるがまま、乳首や性器を弄られながら体を洗われてしまった。
シャワールームを出たソラスは男に連れられるがまま、ベッドの上で犯されていた。四つん這いのソラスの腰を男が両手で掴み、体を洗いながらほぐした尻孔へ猛ったペニスを突き入れる。
「はっ、はっ、はっ、あっ、は、あ、あぁ……あっ」
「……はっ、く、うっ……」
胎の奥を太く硬い肉棒で押し突かれると、ソラスの体の熱が増す。痺れた頭は快感に酔い、素直な口は恥じらいもなく爛れた声を上げる。翼は快感に浸るようにふやけ、尻尾は男の体に絡み付く。背後から聞こえる男の熱を帯びた呻きや息遣いが、さらに性感を増した。
胎の中を抉る雄はソラスが締め付ける度に大きさを増している気がする。それが嬉しくて気持ち良くて、ソラスは尻孔に力を込めた。
「あっ……あんっ……」
「うぁ……締まるっ……」
性器への締め付けに男は感じ入っているのか、腰を打つ動きを止めてしまった。胎の刺激が休まると物足りなさに体が疼き、ソラスは自然と尻を振っていた。自分を可愛がる雄で気持ち良くなりたいと、それだけだった。
「あっ、は。あ、あっ……あ、あっあっあっあっあっ……あ、あーっ……」
男を使って自慰するようなソラスの行動を、男は黙って見ていた。食い入るように見つめ、しばらくすると再び腰を振り始める。先程よりも速く、力強い動きはソラスの尻を壊そうとしているかのようだった。
パンパンと肉を打つ小気味良い音が響く。ベッドが軋みを立てる。自分の口からは蕩けた声が吐き出されていく。
耳から聞こえる音で、肌に伝わる雰囲気で。五感から伝わるもの全てでソラスは犯され、悦び、愉しんでいた。
「あっ……いくっ……イクッ! いっちゃうぅうっ!!」
「ああ、くそっ……イけよ……!」
胎の奥。腸壁をゴリゴリと擦られ、喚び起こされる快感に悶え、宣言通り射精する。雄を咥えた孔にも力が入り、締め付けたからか男もソラスの中へ精を吐いた。
「……っ、は、あー……」
「あ……あ、ああっ……ひっ……あつぃ……」
胎の奥へ熱い体液を注がれる。
「…………は、あ。あ。きもちぃ……」
出したばかりだというのに、熱に侵されたソラスのペニスはゆるゆると芯を持ち始めている。ソラスの中に居座る雄も、再び硬く膨らんでいた。
「ん、ふ……あ……」
間を置かず、男が腰を揺すり始める。媚肉を擦り自身を高め、ソラスの性感も拾い育てていく。
「あ。あ。あ。あっ……あ、あ……」
ソラスも応えるように尻を振り、男を締め付けて快感を追った。
***
カーテンの閉められた窓の外はすっかりと白み、早起きの鳥が喧しく囀り始めていた。ベッドサイドに置かれた電波時計の液晶には早朝の時刻が表示されている。すっかり夜が明けていた。
ソラスはベッドの上で、男に跨がっていた。寝転がる男の股座に乗り、衰えぬ雄を咥えた尻を上下させて自ら快感を掘り起こす。
「ああんっ……あっ、あっ、あっ、あんっ……」
「あー……いい……」
「あ。はっ。きもちいい?」
「うん」
男の言葉にソラスは嬉しそうに笑い、もっと良くしようと腰を動かす。男に覆い被さるように体を倒し、ソラスの行動を熱っぽく見つめる端正な顔に唇を寄せ、重ね合わせる。舌を絡ませながら腰を振って太く大きなペニスで胎の中の悦楽を掘り当てる。
爛れた欲望が尽きないまま絡み合う二人は、時間も忘れて互いだけを見て、体を重ね続けていた。
※イケメン人間(名前出ない)×おのぼりさん悪魔のやおいコメディです
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「『イビスタグラムで話題沸騰! 人間界の日本観光ツアーinハロウィン!』」
スマートフォンに表示された文字を
読み上げたのは若い男の声だった。
声の主は短い赤毛に緑の瞳の青年だ。衣服の背と臀部に穴が開けられており、背から生えた蝙蝠のような翼と、臀部から伸びる先がハートのように大きく尖った黒い鞭のような尻尾が異形を物語るが、それ以外は人間とさして変わらない。
青年は名前をソラスといい、魔界で暮らすしがない悪魔である。有給を使って何処かへ旅行にでも行ってみようかと思い付き、観光ツアーのサイトを見ていた。
スマートフォンの画面には奇妙な格好をした若い人間達が市街に集まる写真や、東京のオーソドックスな観光名所の風景写真が数枚紹介されている。
「『仮装パーティに沸き立つ渋谷センター街は勿論、時間内ならご自由に東京観光をお楽しみ頂けます』」
サイトを見る緑の目はキラキラと輝いている。ハロウィンやら仮装パーティやらはよくわからないが、写真の中の人間達は楽しそうだ。
「次元渡界バス料金は往復五万……すごい安い……あ、約款見とかないと……」
魔界と人間界は異なる次元に存在し、それは壁となり往来を阻んでいる。ソラスのような低級悪魔が人間界に行くには大金を積まなければ叶わないが、月収から換算すると五万で人間界へ行けるのは破格だった。
美味い話には裏がある。安く出来るのには理由がある。サイト下部にある契約約款のリンクをタップし、内容に目を通すと何処の会社でもそういうかんじだろう文章から始まり、免責事項などが小難しく記載されている。
「……当社の都合による当日の運行休止を含めて、利用者が渡界バスへの乗車が不可能だった場合、当社は一切の返金・代替手配はしないものとする。ただし事前にツアーを中止する場合や、利用者がキャンセル申請をした場合は返金に応じる。はぁ、なるほど?」
交通費を安くしている代わりにスケジュールの変動はしないということだろう。時間通りにバスに乗りさえすれば問題はないし、今の時期は気候も安定しているのでバスが運行出来なくなる可能性も少ない。
「……一泊二日の予定で、宿泊施設は基本的に各自で用意……追加料金を支払えばツアー会社が手配してくれるんだ。ふうん」
ソラスは生まれて二十年と経つが、働いてばかりで魔界すら旅行をしたことがない。いきなり人間界に行くのは不安が大きいが、楽しそうな写真を見ていると行ってみたくて仕方なくなった。
「スマホは人間界でも使えるし、困ったらこれさえあれば大丈夫だろ」
人間界同様、魔界の住人達にとってもスマートフォンは日常生活に欠かせない必需品となっている。魔界のスマートフォンは魔力を動力にしているので持ち主さえ元気なら何時でも使える優れものだ。
「……も、申し込んでみようかな」
呟きの後、ソラスの指はさっさとツアー申請ボタンをタップし、必要事項を入力していく。その顔は旅行への期待から紅潮していた。
ソラスは食品工場で働いている。魔界と人間界は文明的に大差ない。空の色が赤黒いことや、人間が電気を使って動かす機械を魔力で動かしているくらいの違いだろうか。
ソラスの働く工場も魔力によって稼働している。魔力量の多い優秀な悪魔は魔力源として雇われ、ソラスのような低級悪魔は少ない魔力で動かせる工具を使って物を作る。
小さな頃は人間と契約して魂を集める営業職に憧れたものだが、持って生まれた魔力量から諦めた。一人で人間界に行けるような者でなければ営業職は勤まらない。
毎日同じ作業を続けて、社会の歯車の一つとして生きる暮らしも悪くはなかった。思いきって決めた旅行のように、ちょっとした贅沢が楽しみで仕方ないのだ。
(同じ部署のみんなにはお土産買ってこよう。美味しいお菓子調べないと)
余所事を考えていても目と手は勝手に動く。いつものように仕事をこなして終える日々を繰り返し、旅行の日はあっという間にやって来た。
***
渡界バスの外観は、やはり人間界のものと変わらない。日本でよく見られるマイクロバスだ。日本へ行くので現地の物と大差ない方が悪目立ちせず溶け込みやすいということもある。
集合場所である市街のロータリーには、一台のバスが停まっていた。フロントガラスには『人間界日本東京行き:ハロウィンツアー』と書かれた紙が貼られており、入口では添乗員の女性が乗車券を確認している。ソラスも送られてきた券を見せると「はい、本日は弊社のツアーにご参加頂きありがとうございます」とにっこり微笑まれ、席はあちらです、と案内された。
ソラスの席は最後列の五人掛けの右端で、窓から景色が見渡せる。ちらほらと他の席が埋まり始め、最後列は四人家族のゴースト達が座った。
「おとうさん、にんげんかいたのしみだねぇ!」
「そうだね。でもバスの中ではお利口さんにしていようね」
真っ白い風船のような体にピンク色のリボンをつけた、小さな女の子ゴーストが父親らしき大きな体のゴーストへはしゃいだ声で話し掛ける。同意しつつも子供を嗜めた父親に代わり、母親ゴーストがソラスへ「うるさくてすみません」と謝った。
「俺は大丈夫ですよ。旅行は楽しいものですからね」
「お兄さんもハロウィン行くの?」
ソラスの隣に座った、眼鏡を掛けた男の子らしきゴーストが尋ねてくる。体の大きさからして女の子のお兄さんだろうか。
「うん。楽しそうだからね」
「ボクも楽しみにしてるんだ!」
ハロウィンパーティの他にもあれがしたいこれがしたいと男の子の話を聞いているうちに、出発の時間になったらしい。バスのエンジンが掛かった。
「皆様、本日はイービル観光のハロウィンツアーへご参加頂き誠にありがとうございます。一泊二日の短い間ですが、よろしくお願い致します」
バスの扉が音を立てて閉まり、添乗員が挨拶する。これから次元を越える渡界トンネルへ向かい、しばらく時空間を走行することを涼やかな声が説明した。
「目的地に着くまではバスの中で、皆様思い遣りを持ってご自由にお過ごし下さい。次元トンネル内は代わり映えのしない光景が続きますので仮眠をお勧めします。人間界に渡りましたら一度声を掛けさせて頂きます」
バスは走り出し、市街を駆け抜けていく。見慣れた街並みを見ながら、朝の早かったソラスは仮眠を取ることにした。隣のゴースト家族も同じらしく、大人しく目を閉ざしている。
密やかな話し声が聞こえてくる席もあるが、大半は眠っているらしい。いつの間にか眠りについたソラスの意識が戻る頃には、バスは東京都内を走っていた。
***
魔界のスマートフォンは人間界にも対応しており、画面には東京の時刻が表示される。バスが着いた頃には既に夕方になっていた。
「渡界トンネルを走行した影響もございますが、人間界と魔界では時差も大きいです。帰りの時間までにバスへ戻られない場合は自己責任での帰宅となりますのでご注意下さい」
明日の十一時にバスは魔界へ出発する。その時間を過ぎたら待たずに置いていくのだと、約款に書かれていたことを再度注意するということは守られないことがあるのだろう。
「遅れないようにしないと……」
ソラスもそれなりに貯えてはいるものの、渡界費用には足りないだろう。乗り遅れれば魔界へ帰れなくなってしまうが、必要以上に恐れることはない。きちんと時間を守ればいいだけだ。
見慣れない街並みを走りながら、茜空に聳え立つスカイタワーやただのビル群を見る。タワーやビルは魔界にも存在するが、今居る世界が違うというだけで似た建造物すら新鮮に見えた。
バスは観光ホテルの駐車場に停められた。エンジンが止まると添乗員が口を開く。
「ホテルプランを申し込んだ方はこちらのホテルでの宿泊となります。先にチェックインを済ませますので私と共にフロントへ向かいましょう。私と運転手もこちらへ泊まりますので、何かありましたらお気軽にご相談下さい。これより明日の十一時までは、人間界で節度を守りご自由にお過ごし下さい。観光プランをあまり考えていないようでしたらお勧めの観光地など紹介致します」
音を立ててバスの扉が開き、乗客がぞろぞろと降りていく。
「お兄さんもここのホテル?」
寝ぼけ眼のゴーストが尋ねてくる。ソラスは頭を振った。
ソラスの荷物はボディバッグ一つに収まっている。一泊なので財布とスマートフォン、着替えは下着くらいでいいだろうと、かなり軽量化した。荷物が多ければ先にホテルへ預けて外出するのだろうが、そうする必要のないソラスはスマートフォンの案内を見て渋谷へ向かっていた。
ソラスはホテルなどの手配はしていない。近年利便性が向上しているらしいビジネスホテルとやらに泊まってみたいと思っているが、部屋が空いてなければカプセルホテルやら漫画喫茶で構わない。行き当たりばったりなことすら楽しんでいた。
魔界にも魔力で動く列車はある。切符も電子化が進みスマートフォンで改札が通れるようになっているのは人間界と同じで、つまりシステムは同じだった。行き先をよく見さえすれば難なく渋谷へ辿り着く。
駅を出ると空はすっかり暗く、街は奇抜な格好の若者で溢れていた。
「……魔女達よりは慎みがあるか」
若い女性は胸の谷間を晒し、下着が見えそうなミニスカート姿で歩いている者が多い。バニーガールもいるが、魔界に住む女達は裸同然の姿の者もいるので可愛らしいものである。
「魔界のナイトクラブよりは大人しくお上品だな」
ゾンビやフランケンシュタイン、ミイラの格好をした若者が街中で喧嘩をしているが、魔界の本物達に比べたらお遊戯みたいなものだ。思わず顔を顰めるような罵倒は聞こえてこない。
「コスプレってやつだな」
ハロウィンはおばけの仮装をする祭だと人間界の情報サイトで見たが、中にはゲームや漫画のキャラクターの姿ではしゃいでいる者もいる。いつの間にか仮装だけでなくコスプレするようになったらしいが、楽しそうだからいいのだろう。
「……」
ソラスは人間界で悪目立ちしないよう、人間界のファッション誌に載っていた『垢抜けた社会人の大人しめモノクロコーデ』を参考に白シャツに黒ベストとチノパン、黒いスニーカーの量産型男子の格好をしている。髪は赤いままだが、最近の若者は多彩な染色をしているのであまり注目されなかった。
翼と尻尾は隠しており、今のソラスは髪が赤いだけの人間にしか見えない。けれど、奇妙喜天烈な人間達のひしめく今の渋谷ならば、大丈夫なのではないか。
路地裏に引っ込んだソラスは誰の目もないことを確認してから、翼を生やし尻尾を伸ばした。シャツの裾から覗く翼はぱたぱたと動き、チノパンから這い出た尻尾はふよふよと宙を漂う。
思いきって路地に出るが、誰もソラスを気にしない。よく出来たアクセサリーだと思われる程度だ。
本物の悪魔が目の前にいるというのに、そんなこと知らない人間達は渋谷の街を楽しげに歩いている。ソラスも同じように楽しげに、目を輝かせて人間の街を観察していた。
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残念なことに仮装していると利用出来ないという貼り紙をしている商店が多く、理由をスマートフォンで調べたソラスは悲しくなった。仮装パーティの雰囲気に煽られ、無関係の店へ嫌がらせ行為や暴力事件を起こす人間が過去にいて問題になったらしい。
中には仮装してても利用出来る店もあったが、出来ない方が多い。人間界の喫茶店などに入ってみたいが今夜は諦め、明日帰る前に何処かへ入ってみようと決める。今日はとりあえず渋谷の様子を楽しんで、もう少ししたらホテルなり漫画喫茶なり探せばいい。
道行く人を眺め、時折街並みの写真を撮っていたソラスの尻尾が、突然何かに掴まれた。
「ひえ!?」
「あー? なんだこれ。よく出来てんね」
「たっつんなにしてんだよォ」
振り返ると赤ら顔の若者がソラスの尻尾を掴んでおり、思わず逃げようとする尻尾の先を興味深そうに見ている。その後ろには仲間だろう男達三人が、連れに絡まれるソラスを見た。
「お? 外人か?」
「……んだよ、男かよ」
「けどキレーな顔してんじゃん。もうこれでよくね?」
「女一人も掴まらねぇもんな。警官はうるっせーし……」
よくわからないことを口々に言い始める。悪魔には言語翻訳能力が備わっているので彼らの言葉はわかるのだが、意味がわからなかった。
「穴ならもう何でもいいわ。行こうぜ」
「え。ちょっ、いや……」
「うるせっての。ほら飲めよ!」
男の一人が持っていた缶ビールを口に押し付けられ、半分以上残っていた中身を全て無理矢理飲まされる。ビールの他に、何か嫌な苦味があった。
「それ例の?」
「そ。キメキメチャンポンビール」
ゲラゲラと笑い声が上がる中、ソラスの意識は急速に遠退いていた。下級とはいえ悪魔であるソラスが人間用のビールを飲んだだけで酔うのはおかしい。
「た……け、」
か細い声は下卑た笑いに掻き消される。意識を失いぐったりとしたソラスの体を、尻尾を掴んだ男が抱え運び出そうとした時。
「お巡りさんこっちです! あの男達、人を連れ去ろうとしてて!」
喧騒の中、声が響いた。ソラスを抱える男達を誰かが指し示しながら警官を呼んでいる。
男達は厳つい外見とガラの悪さから当然のように警官に目を付けられていた。ソラスの前に女性へ言い寄ろうとしたのだが、その度に警官に声を掛けられ女性達は逃がされた。
「クソッ」
ソラスを抱えたままでは走れないと、その場へ投げ捨てて逃げていく。男達に絡まれる青年の姿を見ながらも助けることはしなかった通行人達は走り去る男達の背を見て、捨てられたソラスを見て、何も見なかった、気にしなかったと無視して歩き去っていく。
「……おーい。大丈夫?」
一人だけソラスに近寄る影があった。その声は警官を呼んだものと同じだが、周りに警官はいない。
地面に伏したソラスを抱え起こし、心配そうに見つめるのは端正な顔立ちの男だった。ファンキーなおばけのイラストがプリントされたパーカーを着ている程度で、髪も染められず仮装らしい仮装をしていない彼は道の端へ移動し、ソラスに声を掛け続ける。何度目かの呼び掛けはようやくソラスの意識に届き、薄く瞼を上げ、緑の目が男を見た。
「……たす、けてぇ……」
意識を持った尻尾が、見知らぬ男へ伸ばされる。ソラスを抱える腕へ絡み付き、震える唇が儚く助けを乞う。
日本人ではない。それ所か人間離れした雰囲気の青年に熱っぽく見つめられ、男は何故か興奮を覚えた。
「助けるって、どうしたらいいの」
「……からだ。へん、あついよぉ……」
「やっぱ変なもん飲まされたのかな。ガラ悪すぎたもんあいつら……」
助けて、とそればかり繰り返しながら体を押し付けてくるソラスを、男は体に凭れさせながら抱き、立ち上がらせる。ゆっくりと歩き始めた二人は次第に渋谷の喧騒から外れ、静かなネオン煌めくホテル街へ向かっていった。
***
トイレとシャワールームが備え付けられただけの、大きなベッドが鎮座する部屋。そう書いてみるとビジネスホテルと変わりないように思える。
部屋の中に連れ込まれる前から、ソラスは男に甘えるように引っ付き、ふっくらと主張する股間を押し当て、男の唇に吸い付いていた。
「んっ、ん、ちゅ、んぷ」
ラブホテルのエントランスで部屋を選ぶパネルを操作している時も。エレベーターに載って部屋へ向かう間も。はやく部屋に入りたいと急ぐ手で部屋の鍵を開けている間も。蕩けた顔を晒したソラスは媚びるように男にキスをして、せがんでいた。
「たすけて……たすけてぇ……」
体が熱くて仕方ない。解放を求めて恥を忘れたソラスは自分を支える男にすり寄り、男の体を使って自分を慰めていた。見知らぬ他人の体に甘えるのが気持ちいい。
部屋の扉を開ければすぐにベッドルームが待っている。扉を閉めた男はソラスを連れて奥の扉、シャワールームへ進んだ。狭い脱衣所で服を剥ぎ取られている間も、ソラスは男に抱き着いていた。
「……何だこれ」
ソラスは翼と尻尾を出したままだった。仮装で賑わう渋谷ではそれらしく作られたアクセサリーというか、仮装の一部と認識され流されていたが、素っ裸になるとそれらが肌から生えているのがよくわかる。
真っ黒い立派な翼は緩く羽ばたき、尻から生えた尻尾は男の手に絡み付いて甘える。ハートの形をした先っぽを触るとソラスが喘いだ。
「あっ、あ、や、そこっ」
「……本物?」
特殊な接着剤で肌にくっ付け、自動で動く骨組みを利用している……にしては本当の生き物のように不規則かつ正確に動いている。まさか、という思わず呟いた言葉を、ソラスは頷いて肯定した。
「あっ、あん……おれぇ……あくまだよ」
「悪魔が何で渋谷で人間に拉致されかかってんだよ」
「そんなに……んっ……つよくないから……あ、あ……」
話しながら男も服を脱ぎ、二人揃って広くないシャワールームへ入る。ソラスは男にされるがまま、乳首や性器を弄られながら体を洗われてしまった。
シャワールームを出たソラスは男に連れられるがまま、ベッドの上で犯されていた。四つん這いのソラスの腰を男が両手で掴み、体を洗いながらほぐした尻孔へ猛ったペニスを突き入れる。
「はっ、はっ、はっ、あっ、は、あ、あぁ……あっ」
「……はっ、く、うっ……」
胎の奥を太く硬い肉棒で押し突かれると、ソラスの体の熱が増す。痺れた頭は快感に酔い、素直な口は恥じらいもなく爛れた声を上げる。翼は快感に浸るようにふやけ、尻尾は男の体に絡み付く。背後から聞こえる男の熱を帯びた呻きや息遣いが、さらに性感を増した。
胎の中を抉る雄はソラスが締め付ける度に大きさを増している気がする。それが嬉しくて気持ち良くて、ソラスは尻孔に力を込めた。
「あっ……あんっ……」
「うぁ……締まるっ……」
性器への締め付けに男は感じ入っているのか、腰を打つ動きを止めてしまった。胎の刺激が休まると物足りなさに体が疼き、ソラスは自然と尻を振っていた。自分を可愛がる雄で気持ち良くなりたいと、それだけだった。
「あっ、は。あ、あっ……あ、あっあっあっあっあっ……あ、あーっ……」
男を使って自慰するようなソラスの行動を、男は黙って見ていた。食い入るように見つめ、しばらくすると再び腰を振り始める。先程よりも速く、力強い動きはソラスの尻を壊そうとしているかのようだった。
パンパンと肉を打つ小気味良い音が響く。ベッドが軋みを立てる。自分の口からは蕩けた声が吐き出されていく。
耳から聞こえる音で、肌に伝わる雰囲気で。五感から伝わるもの全てでソラスは犯され、悦び、愉しんでいた。
「あっ……いくっ……イクッ! いっちゃうぅうっ!!」
「ああ、くそっ……イけよ……!」
胎の奥。腸壁をゴリゴリと擦られ、喚び起こされる快感に悶え、宣言通り射精する。雄を咥えた孔にも力が入り、締め付けたからか男もソラスの中へ精を吐いた。
「……っ、は、あー……」
「あ……あ、ああっ……ひっ……あつぃ……」
胎の奥へ熱い体液を注がれる。
「…………は、あ。あ。きもちぃ……」
出したばかりだというのに、熱に侵されたソラスのペニスはゆるゆると芯を持ち始めている。ソラスの中に居座る雄も、再び硬く膨らんでいた。
「ん、ふ……あ……」
間を置かず、男が腰を揺すり始める。媚肉を擦り自身を高め、ソラスの性感も拾い育てていく。
「あ。あ。あ。あっ……あ、あ……」
ソラスも応えるように尻を振り、男を締め付けて快感を追った。
***
カーテンの閉められた窓の外はすっかりと白み、早起きの鳥が喧しく囀り始めていた。ベッドサイドに置かれた電波時計の液晶には早朝の時刻が表示されている。すっかり夜が明けていた。
ソラスはベッドの上で、男に跨がっていた。寝転がる男の股座に乗り、衰えぬ雄を咥えた尻を上下させて自ら快感を掘り起こす。
「ああんっ……あっ、あっ、あっ、あんっ……」
「あー……いい……」
「あ。はっ。きもちいい?」
「うん」
男の言葉にソラスは嬉しそうに笑い、もっと良くしようと腰を動かす。男に覆い被さるように体を倒し、ソラスの行動を熱っぽく見つめる端正な顔に唇を寄せ、重ね合わせる。舌を絡ませながら腰を振って太く大きなペニスで胎の中の悦楽を掘り当てる。
爛れた欲望が尽きないまま絡み合う二人は、時間も忘れて互いだけを見て、体を重ね続けていた。
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