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第三話「悪魔の正体は誰だ!」
そして一時、幕は下りる
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カエデの激動の一日が、ようやく終わった。
「つ、疲れた~」
ヘロヘロになりながら、カエデはなんとか家の近所まで辿り着いていた。
朝から大量のシャドウ相手に孤軍奮闘し、悪魔と対峙し、巨大シャドウをやっつけた。
神様を名乗る怪しい老人による記憶操作が適当過ぎて、いらない苦労をした。
色々なことがありすぎて、もう頭も上手回らないくらいだ。
――と。
「やあ、カエデ。今お帰りかい?」
「あ、ミチルくん~♪」
やはり帰宅途中だったミチルと、ばったり出会った。
いつ見ても爽やかなイケメンだった。クラスの男子たちと同じ生き物だとは思えない。
カエデは、ミチルの姿を認めるなり、猫撫で声を出して満面の笑みを浮かべた。
つい先ほどまでは、死んだ魚のような目をしていたのに。
「ミチルくんも、今お帰りなの?」
「うん。……それにしても、久しぶりだね、カエデ」
「二週間ぶり? くらいかしら」
「そうだね。僕が小学校に通っていた時は、毎朝のように一緒に登校してたのにね。なんだか不思議だよ」
家が隣同士ということもあって、カエデとミチルは一緒に登校する日が多かった。
たまには、やはり近所に住むコハルも加わって、三人で犬山田小へ向かうこともあった。
けれども、ミチルが中学に進学すると、それも無くなった。
(あ~、やっぱりミチルくんかっこいいわ~! 絶対にものにしてみせるんだからね! その為にも、もっとガトーをこき使って、受験勉強がんばらないと!)
――まさか、そのこき使おうとしている相手が、他ならぬミチル本人だということも知らず、カエデは家に着くまでの僅かな時間で、ミチルとのおしゃべりを楽しんだ。
***
「じゃあ、またねミチルくん」
「うん。またね、カエデ」
お別れの挨拶をしながら、お互いの家の玄関を潜る。
「……ふぅ」
玄関のドアをきちんと閉め鍵をかけたところで、大海原ミチルは、大きなため息を吐いた。
これでようやく一息つける。
カエデと同じく、ミチルにとっても大変な一日だった。
朝一番から犬山田小へと駆けつけ、カエデと一緒に大量のシャドウと戦い、更には「悪魔」とも遭遇した。
あまりにも目まぐるしすぎて、流石のミチルも疲れを隠せなかった。
「こんなことが毎日続いたら、体が持たないよ」
家には誰もいない。だからこそミチルは、堂々と愚痴をこぼすことができた。
そのまま自分の部屋に向かうと、着替えもそこそこにベッドへと倒れ込む。
すぐにでも寝てしまいたかったが、そうもいかない。
「あ、そうか。今日の分のノートに目を通しておかないと」
カバンから数冊のノートを取り出す。いずれも、今日の授業の内容を書き留めたものだ。
中を開くと、今日の日付が書かれたページに、ミチル特有の丁寧な文字で、今日の授業の内容がびっしりと書かれていた。
――けれども、ミチルにはこれを書いた覚えはない。
朝からガトーの姿で犬山田小へ向かっていたので、殆どの授業は受けられなかったのだ。
ノートをとる時間など、なかった。
では、このノートの正体は何か?
答えは簡単だ。「神様」の不思議な力による産物だった。
黒猫のガトーの姿になっている時、ミチルの肉体は眠ったような状態になり、一切の行動ができない。
周りから見れば、ミチルが倒れてピクリとも動かないように見えるだろう。普通に考えれば、大騒ぎになる。
だが、そうはなっていない。これも、神様の不思議な力によるものだった。
教室の机に突っ伏すようになっていた筈の肉体が、いつの間にか保健室のベッドに寝かされていたり。
はたまた、学校からは遠く離れた自室のベッドに移動させられていたり。
それでいて、クラスメイトや先生には、「ミチルは元気に授業を受けていた」という偽の記憶が植え付けられていたりする。
ノートも、「ミチルが普通に授業を受けていたら」を想定して、神様が内容を追記してくれているらしい。
親切と言えば親切だが、人の記憶を勝手にいじくり回していることを考えると、恐ろしくもある。
(あの人、本当に「神様」なんだろうか?)
今日、犬山田小で遭遇した「悪魔」のことを思い出す。
とにかく不気味な存在だった。全身から放つ雰囲気だけでも、「悪魔」の名に相応しい邪悪さがあった。
そういう意味で言えば、「神様」からは悪い雰囲気を感じたことはない。
だからミチルは、一応は「神様」のことを信じているのだ。
(まあ、それでもやっぱり……騙されてるかもね、僕)
「神様」は、ミチルに「シャドウと戦える才能の持ち主を探し出して、契約してほしい」と頼んだ。
けれどもミチルは、それは「逆」なのではないかと考えるようになっていた。
つまり、「神様」の目的は最初から、カエデをシャドウと戦わせることであり、ミチルは彼女の知り合いだから選ばれたのではないか、と。
(考え過ぎだとは、思うんだけどね)
なんにせよ、シャドウが人間を襲うのは事実なのだ。
シャドウによって「悪い心」を植え付けられた人間が、酷い目に遭うことも。
だったら、ミチルは「神様」の言葉を信じて、戦い続けるしかない。
「カエデ。どうやら僕らは、厄介な神様に見込まれてしまったらしいよ」
これからも続くであろうシャドウや「悪魔」との戦いの日々を思い、ミチルは一人苦笑いした。
(了)
※作者より
とりあえず、本作はいったんここでおしまいです。
続きは評判次第なので、アルファポリスの「お気に入り」機能などを登録して、気長にお待ちください。
「つ、疲れた~」
ヘロヘロになりながら、カエデはなんとか家の近所まで辿り着いていた。
朝から大量のシャドウ相手に孤軍奮闘し、悪魔と対峙し、巨大シャドウをやっつけた。
神様を名乗る怪しい老人による記憶操作が適当過ぎて、いらない苦労をした。
色々なことがありすぎて、もう頭も上手回らないくらいだ。
――と。
「やあ、カエデ。今お帰りかい?」
「あ、ミチルくん~♪」
やはり帰宅途中だったミチルと、ばったり出会った。
いつ見ても爽やかなイケメンだった。クラスの男子たちと同じ生き物だとは思えない。
カエデは、ミチルの姿を認めるなり、猫撫で声を出して満面の笑みを浮かべた。
つい先ほどまでは、死んだ魚のような目をしていたのに。
「ミチルくんも、今お帰りなの?」
「うん。……それにしても、久しぶりだね、カエデ」
「二週間ぶり? くらいかしら」
「そうだね。僕が小学校に通っていた時は、毎朝のように一緒に登校してたのにね。なんだか不思議だよ」
家が隣同士ということもあって、カエデとミチルは一緒に登校する日が多かった。
たまには、やはり近所に住むコハルも加わって、三人で犬山田小へ向かうこともあった。
けれども、ミチルが中学に進学すると、それも無くなった。
(あ~、やっぱりミチルくんかっこいいわ~! 絶対にものにしてみせるんだからね! その為にも、もっとガトーをこき使って、受験勉強がんばらないと!)
――まさか、そのこき使おうとしている相手が、他ならぬミチル本人だということも知らず、カエデは家に着くまでの僅かな時間で、ミチルとのおしゃべりを楽しんだ。
***
「じゃあ、またねミチルくん」
「うん。またね、カエデ」
お別れの挨拶をしながら、お互いの家の玄関を潜る。
「……ふぅ」
玄関のドアをきちんと閉め鍵をかけたところで、大海原ミチルは、大きなため息を吐いた。
これでようやく一息つける。
カエデと同じく、ミチルにとっても大変な一日だった。
朝一番から犬山田小へと駆けつけ、カエデと一緒に大量のシャドウと戦い、更には「悪魔」とも遭遇した。
あまりにも目まぐるしすぎて、流石のミチルも疲れを隠せなかった。
「こんなことが毎日続いたら、体が持たないよ」
家には誰もいない。だからこそミチルは、堂々と愚痴をこぼすことができた。
そのまま自分の部屋に向かうと、着替えもそこそこにベッドへと倒れ込む。
すぐにでも寝てしまいたかったが、そうもいかない。
「あ、そうか。今日の分のノートに目を通しておかないと」
カバンから数冊のノートを取り出す。いずれも、今日の授業の内容を書き留めたものだ。
中を開くと、今日の日付が書かれたページに、ミチル特有の丁寧な文字で、今日の授業の内容がびっしりと書かれていた。
――けれども、ミチルにはこれを書いた覚えはない。
朝からガトーの姿で犬山田小へ向かっていたので、殆どの授業は受けられなかったのだ。
ノートをとる時間など、なかった。
では、このノートの正体は何か?
答えは簡単だ。「神様」の不思議な力による産物だった。
黒猫のガトーの姿になっている時、ミチルの肉体は眠ったような状態になり、一切の行動ができない。
周りから見れば、ミチルが倒れてピクリとも動かないように見えるだろう。普通に考えれば、大騒ぎになる。
だが、そうはなっていない。これも、神様の不思議な力によるものだった。
教室の机に突っ伏すようになっていた筈の肉体が、いつの間にか保健室のベッドに寝かされていたり。
はたまた、学校からは遠く離れた自室のベッドに移動させられていたり。
それでいて、クラスメイトや先生には、「ミチルは元気に授業を受けていた」という偽の記憶が植え付けられていたりする。
ノートも、「ミチルが普通に授業を受けていたら」を想定して、神様が内容を追記してくれているらしい。
親切と言えば親切だが、人の記憶を勝手にいじくり回していることを考えると、恐ろしくもある。
(あの人、本当に「神様」なんだろうか?)
今日、犬山田小で遭遇した「悪魔」のことを思い出す。
とにかく不気味な存在だった。全身から放つ雰囲気だけでも、「悪魔」の名に相応しい邪悪さがあった。
そういう意味で言えば、「神様」からは悪い雰囲気を感じたことはない。
だからミチルは、一応は「神様」のことを信じているのだ。
(まあ、それでもやっぱり……騙されてるかもね、僕)
「神様」は、ミチルに「シャドウと戦える才能の持ち主を探し出して、契約してほしい」と頼んだ。
けれどもミチルは、それは「逆」なのではないかと考えるようになっていた。
つまり、「神様」の目的は最初から、カエデをシャドウと戦わせることであり、ミチルは彼女の知り合いだから選ばれたのではないか、と。
(考え過ぎだとは、思うんだけどね)
なんにせよ、シャドウが人間を襲うのは事実なのだ。
シャドウによって「悪い心」を植え付けられた人間が、酷い目に遭うことも。
だったら、ミチルは「神様」の言葉を信じて、戦い続けるしかない。
「カエデ。どうやら僕らは、厄介な神様に見込まれてしまったらしいよ」
これからも続くであろうシャドウや「悪魔」との戦いの日々を思い、ミチルは一人苦笑いした。
(了)
※作者より
とりあえず、本作はいったんここでおしまいです。
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