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流血の狼3
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部屋に入ると、ベッドに膝を抱えているマリアがいた
「マリア…気分が優れないと聞いた」
彼女の横に座るホークに今気がついたみたいに視線を向けた
「…ホーク様…おかえりなさいませ…すいません…お出迎えもせず」
「気にしなくていい、起きて大丈夫なのか」
「…はい…ご迷惑をおかけしました」
「いや、」
いつもと違う雰囲気のマリアに戸惑うホークに、マリアはホークの襟を掴み口づけをされた
「マッマリア…?」
ホークの声も無視し、ボタンを外し積極的なマリアの異変を感じ肩を掴み動きを止める
「マリアッ!…どうした」
泣きそうなマリアは、肩を掴んだ俺の手にマリアの手を重ね離す
「………マリア…?」
「……………今日は…私が………私がホーク様を愛しますわ」
そう言ってホークが手を出す度に怒るマリアだった
*******************
マリアが眠るとすぐに寝室から抜け出し、執事を呼び今現在この屋敷にいる従業員を呼び出すように指示する
かしこまりました、と苦言を呈する事もなく居間にいるホークの無茶な指示に応えるアークにも何か思うことがあるのだろう
居間のソファーにドカッと乱暴に座るホークは、マリアのために新調した座り心地の良いソファーを感じ、また不機嫌になる
ーー誰があそこまで追い詰めたのだろうか
死んだ方がマシと思う報復を与えるべきか、それともサクッと消してマリアの不安を一刻でも早く除去させるか
沸々と沸き上がる不穏な思考を止めたのは、深夜にも関わらず使用人が制服で、居間に入った時だった
本日出勤した者が全員集まりました、アークが告げると、ホークは一人一人の顔を見て報告書通りだと、視線を鋭くした
「マリアがどうも様子がおかしい」
たった一言告げただけで、背筋がピンと伸び青褪める使用人たち
「…恐れ入りますが、旦那様」
シンっと静まり返った居間に響く、マリアの侍女ハンナの凛とした声
先を促すように、片眉を上げると、失礼します、と断りを入れた
「本日騎士団本部に到着し、エリック副団長様に団長室へ案内されるまではいつも通り愛おしい奥様でした……ただ」
この侍女はマリアの前では何も言わないが、マリアのために俺にも意見を言う豪胆な女性で信頼している
「…ただ…とは?」
唸る声にも怯まず、続ける
「私が奥様のお茶の準備のため、席を外した数分の内に団長室で何かあったみたいなのですが…どんなに聞いても、なかなか教えてくださらないのです」
ーー団長室でか?あの時間はみな訓練をし、警備兵も部屋の前にいた筈
そう、マリアには警備兵5人は必須と言っていたが、マリアを守る警備兵の姿が彼女には見えないので冗談だと思っている
しかし、彼女の視界に入らずに警備兵を付けているので気配を察知する訓練も受けていない彼女が気がつかない訳がない
「……それなら…私は何となく分かります」
恐る恐る手を上げた、メイドー名前は確か
「何がわかる…ライナ」
名前を知られているとは思っていなかったのか目を見開き、驚くライナ
「どうした」
「あっ…申し訳ありません、奥様は私が部屋の掃除をしている時にお出かけから戻ってきまして…その時に奥様に、閨の作法について聞かれました」
「……閨の作法?」
思いもしなかった単語に、皆がライナに視線を寄せる
「はい、奥様は何だか焦ったように、本を読むと言っていたのですが、何故か娼婦に関する事も言っておりました」
「……娼婦…?何故娼婦なんだ?」
「それは…分かりません、奥様はしまったと顔をして口を閉じてしまい、本の話も有耶無耶になってしまいました」
ライナは肩を落とすと、横からもう1人の使用人も声を挙げた
「本の事…でしたら私は本の調達を命じられました、仕事終わりに本屋で購入して、まだ奥様には渡していないのですが…こちらです」
さっと渡された本の表紙を見ると
「…これは…『上手くいく夫の過去との決別方法』…?これを頼まれたのか、カナヤ」
またも俺が名前を知っていたとは思っていなかったのか驚くカナヤ
「…はいっ!こちらは、この本を指定したのではなく、この中の『3章の娼婦と夫』というサブタイトルに近い本を求めてました…なんでも折り合いを付けたいと…言っていたのですが…ひっ」
ぐぐぐっと力が込められてぐにゃりと歪む厚い表紙の本に、使用人一同が息を呑む
ーー娼婦だと…夫とどう関係するんだ
怒りで更に険しくなるホークに
「…もしかしたら、団長室で何か聞いたのかも知れませんね」
と冷静な解析をするアークに
「団長室か…なら…警備兵を呼べ」
低い声がただ居間に冷たく響いた
「マリア…気分が優れないと聞いた」
彼女の横に座るホークに今気がついたみたいに視線を向けた
「…ホーク様…おかえりなさいませ…すいません…お出迎えもせず」
「気にしなくていい、起きて大丈夫なのか」
「…はい…ご迷惑をおかけしました」
「いや、」
いつもと違う雰囲気のマリアに戸惑うホークに、マリアはホークの襟を掴み口づけをされた
「マッマリア…?」
ホークの声も無視し、ボタンを外し積極的なマリアの異変を感じ肩を掴み動きを止める
「マリアッ!…どうした」
泣きそうなマリアは、肩を掴んだ俺の手にマリアの手を重ね離す
「………マリア…?」
「……………今日は…私が………私がホーク様を愛しますわ」
そう言ってホークが手を出す度に怒るマリアだった
*******************
マリアが眠るとすぐに寝室から抜け出し、執事を呼び今現在この屋敷にいる従業員を呼び出すように指示する
かしこまりました、と苦言を呈する事もなく居間にいるホークの無茶な指示に応えるアークにも何か思うことがあるのだろう
居間のソファーにドカッと乱暴に座るホークは、マリアのために新調した座り心地の良いソファーを感じ、また不機嫌になる
ーー誰があそこまで追い詰めたのだろうか
死んだ方がマシと思う報復を与えるべきか、それともサクッと消してマリアの不安を一刻でも早く除去させるか
沸々と沸き上がる不穏な思考を止めたのは、深夜にも関わらず使用人が制服で、居間に入った時だった
本日出勤した者が全員集まりました、アークが告げると、ホークは一人一人の顔を見て報告書通りだと、視線を鋭くした
「マリアがどうも様子がおかしい」
たった一言告げただけで、背筋がピンと伸び青褪める使用人たち
「…恐れ入りますが、旦那様」
シンっと静まり返った居間に響く、マリアの侍女ハンナの凛とした声
先を促すように、片眉を上げると、失礼します、と断りを入れた
「本日騎士団本部に到着し、エリック副団長様に団長室へ案内されるまではいつも通り愛おしい奥様でした……ただ」
この侍女はマリアの前では何も言わないが、マリアのために俺にも意見を言う豪胆な女性で信頼している
「…ただ…とは?」
唸る声にも怯まず、続ける
「私が奥様のお茶の準備のため、席を外した数分の内に団長室で何かあったみたいなのですが…どんなに聞いても、なかなか教えてくださらないのです」
ーー団長室でか?あの時間はみな訓練をし、警備兵も部屋の前にいた筈
そう、マリアには警備兵5人は必須と言っていたが、マリアを守る警備兵の姿が彼女には見えないので冗談だと思っている
しかし、彼女の視界に入らずに警備兵を付けているので気配を察知する訓練も受けていない彼女が気がつかない訳がない
「……それなら…私は何となく分かります」
恐る恐る手を上げた、メイドー名前は確か
「何がわかる…ライナ」
名前を知られているとは思っていなかったのか目を見開き、驚くライナ
「どうした」
「あっ…申し訳ありません、奥様は私が部屋の掃除をしている時にお出かけから戻ってきまして…その時に奥様に、閨の作法について聞かれました」
「……閨の作法?」
思いもしなかった単語に、皆がライナに視線を寄せる
「はい、奥様は何だか焦ったように、本を読むと言っていたのですが、何故か娼婦に関する事も言っておりました」
「……娼婦…?何故娼婦なんだ?」
「それは…分かりません、奥様はしまったと顔をして口を閉じてしまい、本の話も有耶無耶になってしまいました」
ライナは肩を落とすと、横からもう1人の使用人も声を挙げた
「本の事…でしたら私は本の調達を命じられました、仕事終わりに本屋で購入して、まだ奥様には渡していないのですが…こちらです」
さっと渡された本の表紙を見ると
「…これは…『上手くいく夫の過去との決別方法』…?これを頼まれたのか、カナヤ」
またも俺が名前を知っていたとは思っていなかったのか驚くカナヤ
「…はいっ!こちらは、この本を指定したのではなく、この中の『3章の娼婦と夫』というサブタイトルに近い本を求めてました…なんでも折り合いを付けたいと…言っていたのですが…ひっ」
ぐぐぐっと力が込められてぐにゃりと歪む厚い表紙の本に、使用人一同が息を呑む
ーー娼婦だと…夫とどう関係するんだ
怒りで更に険しくなるホークに
「…もしかしたら、団長室で何か聞いたのかも知れませんね」
と冷静な解析をするアークに
「団長室か…なら…警備兵を呼べ」
低い声がただ居間に冷たく響いた
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