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10 薫の酔っ払い
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21時きっかりに、茉白のマンションのエントランス前に駐車した。
「今日はありがと…じゃあ、また明日」
「ああ…着いたら連絡する」
「うん、気をつけて」
可愛らしい声で言葉を紡ぐ赤い唇は、さっきまで唇を貪っていたから、腫れたようにいつもよりぷっくりしていて、すごくエロい。このままもう一度腕を引いて車内に閉じ込めて唇を味わいたい欲を、ミシッとハンドルを強く握ることで留まらせる。彼女がエントランスに入り、姿が見えなくなっても俺は名残惜しくもしばらくそこに留まった。外から彼女の部屋が見えるわけじゃないが、なんとなくいつも残ってしまう。
――ああ、夢でも見てるのか、俺は
過去に彼女がいた事はあったが、謙遜でもなんでもなく俺は全くモテない。最後に彼女がいたのなんて20歳ごろで、しかも大学の時にやった合コンで知り合った女が最後だ。別れた理由は…今になっては思い出せないが、それからはずっと言葉通り、独身を貫いていた。
スポーツBARで会った茉白と再会して、恋人同士――若い茉白には"仮の"と理解のある大人の振りをしているが、この関係を途切れさせる気はなかった――として過ごすうちに、己の欲に何度敗れそうになったことか。
俺の隣で無邪気に笑う彼女は、ボディータッチも俺に寄っ掛かり甘えることにも何の抵抗もないみたいだった。
『顔が怖い』
『怒ってる』
出会いを求めてマッチングアプリをした際に言われた言葉が俺の胸を刺すのに、茉白には俺の事をそんな風に思っている節は見られない。
――むしろ、濡れた瞳で見上げられると、これ以上進めたくなるから困る
今まで見たことのないほど、芸能人と言われた方がしっくりくる茉白の美貌は会社では注目の的となっている。会社の中は比較的空調が効いて薄手の服装で過ごしやすくなったために、すらっとした手足、薄いお腹と細い腰がわかるラインのスカート、そのくせ胸はしっかりと出ていてスタイルがよいのが職場でもバレ始めている。そのスタイルの良い服の下をすでに知っているから、彼女に見惚れている男共に、俺の方が茉白を知っていると心の中でマウントを取りほくそ笑む。あどけなかった入社当時に比べて大人の雰囲気に変わった顔。ぱっちりとした大きな瞳、卵のように小さくつるんとした輪郭、ぽってりとした唇は瑞々しく、鼻もすっと伸びている。それなのに話しかけたら、にこにこと笑顔になって楽しそうに話すものだから、サポート調査課のマスコットとして可愛がられている。課の違う営業課の俺の耳にまで聞こえるくらいだから、相当なもんだろう。そんな時、茉白に彼氏がいると、瞬く間に営業課まで知れ渡ってしまい、何人かの男は落ち込んでいたのを見た。もしかしたら、落ち込んでいたのは俺かも知れなかったと思うと不思議な気持ちだ。
――それが…俺の彼女…俺のもの
心の底から叫びたいのを抑えて、俺は日々を過ごしていた。
――本音を言えば…茉白にもっと触りたい
***************
「最近課長おしゃれですね」
週末の仕事が終わり、月に一度行われる後輩を連れた飲み会の席で、仕事の話といつもしてる野球の話をしていたら、後輩にそう言われた。
「そうか?いつも似たような感じだろ」
「違いますよって!スーツ着るときは大体取引先と会う時だけで、後は似たようなポロシャツだけだったじゃないですかっ!どうしたんです?プライベートで何かありました?」
しれっととぼけるが、そんな事許してくれるはずはなく、後輩は追求の手を休めない。
「んなことは、いいだろ」
若干呂律の回っていない後輩を適当にあしらっていると、さっきまで話を聞いていただけだった今年の新入社員の安藤が、泣きそうな顔をしてぼやいた。
「…もう本当ツイテナイデス…本当…折角豊嶋さんから話しかけられたのに、次に繋げる事が出来なかった…しかも彼氏がいるって今日知るし」
真っ赤になって酔った顔だ。この分だと酔いが回ってるから、明日になったら二日酔いで死んでるだろう。
「…豊嶋さん?ああ、あの調査課の」
「すっごい美人ですよね、いやー、毎日目の保養させて貰ってますわ」
俺から話は逸れたが、茉白の話に変わって面白くない。ムッとしたけど、俺の変化など部下達が気がつくわけはなく…
「先月っ、豊嶋さんがっ話しかけてくれたのにっ」
「お前は本当に…本当にっ!同期だからって羨ましいだろっ!他のやつなんて話しかけられたくて、しょうがないってのにっ!」
項垂れる安藤の横に2人の部下が両脇に座って、肩を掴み励ましている。
「そもそも話しかけられたなら、その先の関係に進めるのが男じゃないのか?」
「そうだぞっ!お前は本当に男なのかっ!」
部下達の口調がだんだん荒くなって、絡み出すと面倒臭いタイプになる。安藤は部下の変化に気が付かずに、
「だって、営業課の社員が独身かどうか、恋人いるのとか聞いてきたら勘違いするじゃないですかっ?!なのにっ、最初に自分と課長の名前出したら、先輩に呼ばれてたとかって言ってっ!止める暇もなく行っちゃってさっ…その声とかも可愛かったけどもっ」
安藤はおいおいと泣き真似をして、部下の2人も大袈裟に慰めているが顔がニヤけている。
「何となく話しただけなのに、その気になるお前が悪い」
「そうだっ、課長の名前を出して、被害者は独身で恋人いないってバラされた課長だぞっ」
部下達はさっき安藤に言っていた、男なら押せ、の言葉をなかったかのように話す。
――茉白が…俺のことを聞いた…?
彼女は俺のことを聞いたのか、とドキッとする。そう言えば最近スキンシップが多いなと思っていたのは、俺に恋人がいないと分かったからか。そう思うと俺のことを知りたかったのか、と嬉しい気持ちになる反面、なんで俺に直接聞かないんだろうとモヤモヤとした気持ちもある。目の前に置かれたジョッキのビールを一気に煽ると、ドンッとテーブルに置いておかわりを注文した。
「…よし、今日飲むか」
「げっ…安藤っ!お前が変なこと言うから課長が凹んで俺たちが付き合うハメになったぞっ!」
「課長、すごいザルなんだよな」
「…課長頼んますよ~」
「情けない声出すな、折角の集まりなんだ、とことん飲むぞ」
本気で嫌そうな部下の声を無視して、俺は飲み足りないと一杯届くたびに注文を繰り返した。
***************
いい匂いがする、微かなバニラの匂い。柔らかな抱き枕から香る匂いをもっと嗅いでいたくて、強く抱きつくと、抱き枕が僅かに動いた。
――抱き枕…?俺はそんなの物持ってないはずだが…
浮上する意識の中で、そういえばどうやって帰ったっけ、と頭の中に疑問が起こると、昨日は飲み会をして…と昨日の行動を思い起こした。
「…起きた?」
すると、起きたばかりの気だるげな声が聞こえて、一気に目が覚めた。
「…茉白?」
ぱちっと目を開けると、俺の顔のそばに寝起きの茉白がいた。
――寝起きなのに可愛いな
脳が現実逃避しているみたいで、これは夢だと結論づけた。いつものように化粧はしていないのに、大きな目はぱっちりとしているし、まつ毛も長い。肌ももちもちしてそうだし、黒いTシャツも可愛いと見惚れてしまう。そしてその小さな身体は、俺の腕の中にすっぽりと入っていた。
「わっ、わっ!待って!今すっぴんっ」
完全に目が覚めたのか、茉白は俺の目の前に手のひらを翳して視界を遮るが、そのせいで彼女の身体が俺の胸板に押し付けられた。むにゅっと柔らかな胸を感じながらも、彼女が見えなくなるのが嫌で、茉白の手を取り下ろすと真っ赤になった茉白がいた。
「…っ!本当っすっぴんなのっ」
顔を隠そうと俺の手を解こうとする彼女の手を強く握った。
「…すっぴんも、十分に可愛いよ」
そう言って握った手のひらに口をつけると、俺の腕から抜け出そうとしていた茉白の動きが止まった。
「…うそだ」
「本当、茉白だからなんでも可愛い」
彼女の手の甲をぺろりと舐めて、チラッと茉白を見ると、あっと俺を見つめる濡れた瞳と視線が合った。彼女に誘われるがまま、茉白の顔に自分の顔を寄せると、彼女の手が俺の首の後ろへと回るのを感じながら口を塞いだ。
「…っ、ぅ…んっ」
彼女の匂いと吐息と甘い声がリアルに感じて、彼女の太ももに手を伸ばして俺の腰に回るように持ち上げる。夢だからと熱を持ち始めた下半身を、彼女の下半身へと擦りつけると絡まっていた舌を強く吸われた。
「茉白、っ」
離れるのが惜しくて茉白の舌を強めに吸うと、茉白の少し高い悩ましい声に、いよいよ下半身のズボンがキツく感じた。
「か…おるっ」
俺の太ももの外側を彼女の太ももの内側がなぞる。ゾクッとする背筋に、夢にしてはリアルだとおかしいと違和感を感じた。
「…っ、茉白っ!?」
「…ッ…ん…?」
夢じゃないのかっと感じて目を見開いて固まる俺に、彼女は俺の頬をさらりと撫でる。また俺の首に回した左手に力を入れて、俺は彼女に抵抗せずに頭を動かすと彼女とまた口が重なった。少し脚を動かすと、スーツ特有の動きにくさを改めて感じて、ここはどこだと頭の中が混乱する。
――ここは俺の家じゃねぇっ、どこだっ
自分の部屋とは違うマットレスの硬さ、ましてやバニラの匂いなんてしない。茉白とキスをしながら、視線を彷徨わせると、やっぱり俺の家にはあるはずのないインテリアが並んでいた。
「…んっ、やっ薫っ」
周りに気を取られて、キスが優しくなった俺に茉白はちゃんとしてと俺を甘えた声で詰る。
――くそっもう…どうにでもなれっ!
もう開き直って、俺は茉白の上へと覆い被さった。
「今日はありがと…じゃあ、また明日」
「ああ…着いたら連絡する」
「うん、気をつけて」
可愛らしい声で言葉を紡ぐ赤い唇は、さっきまで唇を貪っていたから、腫れたようにいつもよりぷっくりしていて、すごくエロい。このままもう一度腕を引いて車内に閉じ込めて唇を味わいたい欲を、ミシッとハンドルを強く握ることで留まらせる。彼女がエントランスに入り、姿が見えなくなっても俺は名残惜しくもしばらくそこに留まった。外から彼女の部屋が見えるわけじゃないが、なんとなくいつも残ってしまう。
――ああ、夢でも見てるのか、俺は
過去に彼女がいた事はあったが、謙遜でもなんでもなく俺は全くモテない。最後に彼女がいたのなんて20歳ごろで、しかも大学の時にやった合コンで知り合った女が最後だ。別れた理由は…今になっては思い出せないが、それからはずっと言葉通り、独身を貫いていた。
スポーツBARで会った茉白と再会して、恋人同士――若い茉白には"仮の"と理解のある大人の振りをしているが、この関係を途切れさせる気はなかった――として過ごすうちに、己の欲に何度敗れそうになったことか。
俺の隣で無邪気に笑う彼女は、ボディータッチも俺に寄っ掛かり甘えることにも何の抵抗もないみたいだった。
『顔が怖い』
『怒ってる』
出会いを求めてマッチングアプリをした際に言われた言葉が俺の胸を刺すのに、茉白には俺の事をそんな風に思っている節は見られない。
――むしろ、濡れた瞳で見上げられると、これ以上進めたくなるから困る
今まで見たことのないほど、芸能人と言われた方がしっくりくる茉白の美貌は会社では注目の的となっている。会社の中は比較的空調が効いて薄手の服装で過ごしやすくなったために、すらっとした手足、薄いお腹と細い腰がわかるラインのスカート、そのくせ胸はしっかりと出ていてスタイルがよいのが職場でもバレ始めている。そのスタイルの良い服の下をすでに知っているから、彼女に見惚れている男共に、俺の方が茉白を知っていると心の中でマウントを取りほくそ笑む。あどけなかった入社当時に比べて大人の雰囲気に変わった顔。ぱっちりとした大きな瞳、卵のように小さくつるんとした輪郭、ぽってりとした唇は瑞々しく、鼻もすっと伸びている。それなのに話しかけたら、にこにこと笑顔になって楽しそうに話すものだから、サポート調査課のマスコットとして可愛がられている。課の違う営業課の俺の耳にまで聞こえるくらいだから、相当なもんだろう。そんな時、茉白に彼氏がいると、瞬く間に営業課まで知れ渡ってしまい、何人かの男は落ち込んでいたのを見た。もしかしたら、落ち込んでいたのは俺かも知れなかったと思うと不思議な気持ちだ。
――それが…俺の彼女…俺のもの
心の底から叫びたいのを抑えて、俺は日々を過ごしていた。
――本音を言えば…茉白にもっと触りたい
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「最近課長おしゃれですね」
週末の仕事が終わり、月に一度行われる後輩を連れた飲み会の席で、仕事の話といつもしてる野球の話をしていたら、後輩にそう言われた。
「そうか?いつも似たような感じだろ」
「違いますよって!スーツ着るときは大体取引先と会う時だけで、後は似たようなポロシャツだけだったじゃないですかっ!どうしたんです?プライベートで何かありました?」
しれっととぼけるが、そんな事許してくれるはずはなく、後輩は追求の手を休めない。
「んなことは、いいだろ」
若干呂律の回っていない後輩を適当にあしらっていると、さっきまで話を聞いていただけだった今年の新入社員の安藤が、泣きそうな顔をしてぼやいた。
「…もう本当ツイテナイデス…本当…折角豊嶋さんから話しかけられたのに、次に繋げる事が出来なかった…しかも彼氏がいるって今日知るし」
真っ赤になって酔った顔だ。この分だと酔いが回ってるから、明日になったら二日酔いで死んでるだろう。
「…豊嶋さん?ああ、あの調査課の」
「すっごい美人ですよね、いやー、毎日目の保養させて貰ってますわ」
俺から話は逸れたが、茉白の話に変わって面白くない。ムッとしたけど、俺の変化など部下達が気がつくわけはなく…
「先月っ、豊嶋さんがっ話しかけてくれたのにっ」
「お前は本当に…本当にっ!同期だからって羨ましいだろっ!他のやつなんて話しかけられたくて、しょうがないってのにっ!」
項垂れる安藤の横に2人の部下が両脇に座って、肩を掴み励ましている。
「そもそも話しかけられたなら、その先の関係に進めるのが男じゃないのか?」
「そうだぞっ!お前は本当に男なのかっ!」
部下達の口調がだんだん荒くなって、絡み出すと面倒臭いタイプになる。安藤は部下の変化に気が付かずに、
「だって、営業課の社員が独身かどうか、恋人いるのとか聞いてきたら勘違いするじゃないですかっ?!なのにっ、最初に自分と課長の名前出したら、先輩に呼ばれてたとかって言ってっ!止める暇もなく行っちゃってさっ…その声とかも可愛かったけどもっ」
安藤はおいおいと泣き真似をして、部下の2人も大袈裟に慰めているが顔がニヤけている。
「何となく話しただけなのに、その気になるお前が悪い」
「そうだっ、課長の名前を出して、被害者は独身で恋人いないってバラされた課長だぞっ」
部下達はさっき安藤に言っていた、男なら押せ、の言葉をなかったかのように話す。
――茉白が…俺のことを聞いた…?
彼女は俺のことを聞いたのか、とドキッとする。そう言えば最近スキンシップが多いなと思っていたのは、俺に恋人がいないと分かったからか。そう思うと俺のことを知りたかったのか、と嬉しい気持ちになる反面、なんで俺に直接聞かないんだろうとモヤモヤとした気持ちもある。目の前に置かれたジョッキのビールを一気に煽ると、ドンッとテーブルに置いておかわりを注文した。
「…よし、今日飲むか」
「げっ…安藤っ!お前が変なこと言うから課長が凹んで俺たちが付き合うハメになったぞっ!」
「課長、すごいザルなんだよな」
「…課長頼んますよ~」
「情けない声出すな、折角の集まりなんだ、とことん飲むぞ」
本気で嫌そうな部下の声を無視して、俺は飲み足りないと一杯届くたびに注文を繰り返した。
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いい匂いがする、微かなバニラの匂い。柔らかな抱き枕から香る匂いをもっと嗅いでいたくて、強く抱きつくと、抱き枕が僅かに動いた。
――抱き枕…?俺はそんなの物持ってないはずだが…
浮上する意識の中で、そういえばどうやって帰ったっけ、と頭の中に疑問が起こると、昨日は飲み会をして…と昨日の行動を思い起こした。
「…起きた?」
すると、起きたばかりの気だるげな声が聞こえて、一気に目が覚めた。
「…茉白?」
ぱちっと目を開けると、俺の顔のそばに寝起きの茉白がいた。
――寝起きなのに可愛いな
脳が現実逃避しているみたいで、これは夢だと結論づけた。いつものように化粧はしていないのに、大きな目はぱっちりとしているし、まつ毛も長い。肌ももちもちしてそうだし、黒いTシャツも可愛いと見惚れてしまう。そしてその小さな身体は、俺の腕の中にすっぽりと入っていた。
「わっ、わっ!待って!今すっぴんっ」
完全に目が覚めたのか、茉白は俺の目の前に手のひらを翳して視界を遮るが、そのせいで彼女の身体が俺の胸板に押し付けられた。むにゅっと柔らかな胸を感じながらも、彼女が見えなくなるのが嫌で、茉白の手を取り下ろすと真っ赤になった茉白がいた。
「…っ!本当っすっぴんなのっ」
顔を隠そうと俺の手を解こうとする彼女の手を強く握った。
「…すっぴんも、十分に可愛いよ」
そう言って握った手のひらに口をつけると、俺の腕から抜け出そうとしていた茉白の動きが止まった。
「…うそだ」
「本当、茉白だからなんでも可愛い」
彼女の手の甲をぺろりと舐めて、チラッと茉白を見ると、あっと俺を見つめる濡れた瞳と視線が合った。彼女に誘われるがまま、茉白の顔に自分の顔を寄せると、彼女の手が俺の首の後ろへと回るのを感じながら口を塞いだ。
「…っ、ぅ…んっ」
彼女の匂いと吐息と甘い声がリアルに感じて、彼女の太ももに手を伸ばして俺の腰に回るように持ち上げる。夢だからと熱を持ち始めた下半身を、彼女の下半身へと擦りつけると絡まっていた舌を強く吸われた。
「茉白、っ」
離れるのが惜しくて茉白の舌を強めに吸うと、茉白の少し高い悩ましい声に、いよいよ下半身のズボンがキツく感じた。
「か…おるっ」
俺の太ももの外側を彼女の太ももの内側がなぞる。ゾクッとする背筋に、夢にしてはリアルだとおかしいと違和感を感じた。
「…っ、茉白っ!?」
「…ッ…ん…?」
夢じゃないのかっと感じて目を見開いて固まる俺に、彼女は俺の頬をさらりと撫でる。また俺の首に回した左手に力を入れて、俺は彼女に抵抗せずに頭を動かすと彼女とまた口が重なった。少し脚を動かすと、スーツ特有の動きにくさを改めて感じて、ここはどこだと頭の中が混乱する。
――ここは俺の家じゃねぇっ、どこだっ
自分の部屋とは違うマットレスの硬さ、ましてやバニラの匂いなんてしない。茉白とキスをしながら、視線を彷徨わせると、やっぱり俺の家にはあるはずのないインテリアが並んでいた。
「…んっ、やっ薫っ」
周りに気を取られて、キスが優しくなった俺に茉白はちゃんとしてと俺を甘えた声で詰る。
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