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騎士団長という男1

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アスガート王国には5つの騎士部隊があり、それを統治するのは騎士団長であり事実上の騎士団団長の上司が防衛省大臣だ

歴代の騎士団をまとめるのは防衛省と決まっており、騎士団長にならなければ防衛省大臣にはなれないとの決まり事が昔からあった

今の口髭公爵こと防衛省大臣ガウス・ファウル公爵は代々ファウル家が歴任してきた由緒正しい家柄で、当時28歳という最年少の年齢で騎士団長に上り詰め、剣・弓・大砲を完璧にこなし、作戦指揮に立てば100%の勝率をあげ、蛇のように執念深く相手を追い込むことから蛇団長と恐れられていた。
感情の籠らないブルーの瞳に見つめられたら蛇に睨まれた錯覚を起こし体が動かなくなるとの逸話もある
その蛇団長こと大臣の執務室には、重々しい空気に包まれていた。
普段の温厚な雰囲気を一切感じさせない口髭公爵とは可愛い呼び名など言ったら相手を地獄の先まで追い詰めそうなブルーの瞳を俺、現アスガート王国騎士団団長ヴィン・ハウンドに向けていた

ふむ…身内とはいえ相変わらず外面とはえらい差だな

なんて呑気に構えていたのが気に食わないのか、口髭公爵は睨みを効かせたまま口を開いた

「… ヴィン・ハウンド騎士団長殿、娘のアンナと外出するみたいだな」
口元をひくひくと歪ませ、怒鳴るのを我慢しているかのようだ

口髭公爵は公爵夫人、娘のアンナを溺愛しているのというのは周知の事実であり、家族に接触を試みた愚か者は二度と日の目を見ることがないと言われていた
実際その愚か者を見た者はいないので、消されたかもしれない

愛してやまない夫人の愛娘アンナとの婚約を国王陛下から命じられた時の口髭公爵の顔は未だに語り継がれており、その場にいた俺を射殺す眼差しは周りに衝撃を与えたが、指示系統でよく会っていてその瞳に慣れていた俺はなんとも思わなかった


むしろ、やっと婚約にありつけた
と見当違いの事を考えていた


防衛省大臣は知らないみたいだったが、騎士団団長の天使狂いは有名な話だった


現騎士団長のヴィン・ハウンドは、ハウンド男爵の次男として生まれ幼い頃から騎士団に入団するべく身体を鍛えていた

入団後は王都の警備や討伐に向かい
男爵家次男という微妙な立ち位置のため、このまま騎士団管理職になり嫁を迎えるのか…などと漠然と思っていたが、この後の人生を変える運命の出会いを迎えたのだった
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