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待ち合わせ

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いつもの下校時間だけど、待っている相手が短縮授業だったのを思い出した
ゆいかはスマホを見て改札へ向かう

『2番ホーム クマの自販機の前』

待ち合わせ場所の目印しか書いてない、素っ気ない返信に笑みが零れる

ーー渡辺らしい

既に待っている事に気がついて、ニヤけるのを止めて急いで向かう


エスカレーターを降り、2番ホームにあるはずのクマの自販機を探すためキョロキョロと見渡せば50m先にクマの自販機の前に昨日と同じ格好の(制服だからそうなんだけど)渡辺が線路に身体を向け待っていた
早すぎず遅くもない速度で近くと、私に気が付いた渡辺が
よぉ、低い声で挨拶してくれる
「ごめん!待った?」
と遅くなった事を謝ったら
「別に」
と素っ気ない返事が返ってきた
変わらないなぁ、と懐かしい気持ちになっていたら若干汗をかいていた渡辺を見て
「ごめん…暑いよね、何か飲み物いる?」
後ろの自販機を指すと
「いや…俺が買うよ、どれがいい?」
と逆に聞かれてびっくりする
「いやいや!私が遅れたから!」
否定すると渡辺は苦笑して
じゃあ、とスポーツ飲料を指す
ピッとSuicaで決済しガコンと商品が落ちて、取り出して渡辺に渡す

「サンキュ」
と短く返事をし受け取る
喉が渇いていたのか半分程飲むと、自販機に向き合い
「坂本は?」
と聞いてくる
「えっ?私?」
と聞き返すと
渡辺は自販機を指してどれを飲むかを聞いてくる
「ううん!いらないよ!」
と言っても
「奢ってくれたお礼だから」と言って譲らない
いらないよ!で、どれ?とやりとりを繰り返してこれは受け取らないと引かないと感じて
「…じゃぁ、コレ」と青い宇宙人みたいなキャラクターが描かれているオレンジを指す

「んっ」
とIC決済して私に渡す
「…ありがとう…でも待たせたお礼だったのに、意味ないじゃん」
とお礼を言って不満も少しだけ零すが、面白くて笑ってしまう
そんな私を見て優しい顔でいた渡辺に照れてしまう


「….今日は暑いね」
「…そうだな」

…………会話が続かない

でもなんだか心地よい沈黙だ


オレンジを飲み、2人並んでいると流れる電車が到着するホームのアナウンス
ペットボトルの蓋を締めカバンに入れると到着とする電車に乗った






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