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無愛想な男5
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最近、ゆいかの様子がおかしい
そう気がついたのは、5日前のファーストフード店で待ち合わせをした時だった
部活が遅くなり、待ち合わせ時間に遅れると連絡しても、既読にならず
お店に着いた時には、顔が青ざめて考え事をしているみたいだった
ぼうっと上の空だったり、キスは受け入れてくれるのにそれ以上の接触を拒絶するようになった
何度も聞いても、何でもないと言われ
話したくなるまで待った…が、
「えっ…何?」
「だから…その…別れたいの」
日曜日、午前の部活が終わりゆいかと出かける事にしたのだか…待ち合わせ場所の駅で会った途端にゆいかに別れを告げられた
「…なんで」
不機嫌な声を隠しませず、理由を聞く
「それは…」
黙ってしまうゆいかを抱きしめると、ビクッと身体が反応した
「…なんで」
もう一度同じ事をいうとゆいかは、弱い力で俺を引き離そうと押す
「………っ…すっ…好きな人が…出来たのっ」
まさかの理由で腕が緩んだ隙に俺から離れ、腕を組み震えるゆいか
「……好きな…ヤツ…って?」
更に低くなった俺の声にゆいかの視線が床に注がれる
「……っ真央のっ…しっ知らない人だよっ」
ーー俺の知らないやつ
怒りで頭が真っ白になりそうなのをぐっと奥歯を噛み、我慢する
「ゆいか、本当なのか?」
一歩近づく毎に一歩下がるゆいか
「本当っ…っ」
泣きそうな顔をし、背が壁に当たると青ざめるゆいか
「そうか…無理だな」
「えっ…どう…して?」
まさか断られるとは思っていなかったのか、きょとんと聞き返す顔も可愛いなと、苦笑する
ーー本当に好きなんだな、好きな人がいるって言っているのにゆいかの気持ちを認めて諦めるなんて俺にはできない
「それは…ゆいかは既に俺のモノだから」
壁に背をくっつけているゆいかの顎に手をやり、無理矢理上に向かせ視線を合わせた
「真央…?」
「絶対に別れない」
ゆいかの唇を親指でなぞる
「っ…っ私はっ…他にっ」
ポロポロ涙を流すゆいかを見て、泣き顔も可愛いと思ってしまう俺は、歪んだドロドロとした思いにゆいかの口を塞ぐ
顔の角度を変え、ゆいかの気持ちも考えずに傍若無人に貪る口内を、ギリっとゆいかが思いっきり噛んだ
「…っ」
痛みで口内に広がる鉄の味で舌が切れた事を知る
「…絶対に、別れない」
口元を拭い、ゆいかに告げると俺は背を向けそのまま立ち去った
**************
ゆいかが別れたいと言ってからひと月、ゆいかに電話をしてもLINEのメッセージを送っても応えない
俺の心は目に見えて荒れた
いつも通りに通う学校と部活、終わったら帰り部屋に籠る
元々少なかった口数も減った…というかしゃべる事自体煩わしく感じて最低限となった
一度柚月に心配そうな顔して
「お前、大丈夫か?」
と聞かれたが、適当に答えた
まだ夏の日差しが残るある日曜日の練習試合
試合終了の笛と共に視界がぐにゃりと歪み俺の意識が途切れた
そう気がついたのは、5日前のファーストフード店で待ち合わせをした時だった
部活が遅くなり、待ち合わせ時間に遅れると連絡しても、既読にならず
お店に着いた時には、顔が青ざめて考え事をしているみたいだった
ぼうっと上の空だったり、キスは受け入れてくれるのにそれ以上の接触を拒絶するようになった
何度も聞いても、何でもないと言われ
話したくなるまで待った…が、
「えっ…何?」
「だから…その…別れたいの」
日曜日、午前の部活が終わりゆいかと出かける事にしたのだか…待ち合わせ場所の駅で会った途端にゆいかに別れを告げられた
「…なんで」
不機嫌な声を隠しませず、理由を聞く
「それは…」
黙ってしまうゆいかを抱きしめると、ビクッと身体が反応した
「…なんで」
もう一度同じ事をいうとゆいかは、弱い力で俺を引き離そうと押す
「………っ…すっ…好きな人が…出来たのっ」
まさかの理由で腕が緩んだ隙に俺から離れ、腕を組み震えるゆいか
「……好きな…ヤツ…って?」
更に低くなった俺の声にゆいかの視線が床に注がれる
「……っ真央のっ…しっ知らない人だよっ」
ーー俺の知らないやつ
怒りで頭が真っ白になりそうなのをぐっと奥歯を噛み、我慢する
「ゆいか、本当なのか?」
一歩近づく毎に一歩下がるゆいか
「本当っ…っ」
泣きそうな顔をし、背が壁に当たると青ざめるゆいか
「そうか…無理だな」
「えっ…どう…して?」
まさか断られるとは思っていなかったのか、きょとんと聞き返す顔も可愛いなと、苦笑する
ーー本当に好きなんだな、好きな人がいるって言っているのにゆいかの気持ちを認めて諦めるなんて俺にはできない
「それは…ゆいかは既に俺のモノだから」
壁に背をくっつけているゆいかの顎に手をやり、無理矢理上に向かせ視線を合わせた
「真央…?」
「絶対に別れない」
ゆいかの唇を親指でなぞる
「っ…っ私はっ…他にっ」
ポロポロ涙を流すゆいかを見て、泣き顔も可愛いと思ってしまう俺は、歪んだドロドロとした思いにゆいかの口を塞ぐ
顔の角度を変え、ゆいかの気持ちも考えずに傍若無人に貪る口内を、ギリっとゆいかが思いっきり噛んだ
「…っ」
痛みで口内に広がる鉄の味で舌が切れた事を知る
「…絶対に、別れない」
口元を拭い、ゆいかに告げると俺は背を向けそのまま立ち去った
**************
ゆいかが別れたいと言ってからひと月、ゆいかに電話をしてもLINEのメッセージを送っても応えない
俺の心は目に見えて荒れた
いつも通りに通う学校と部活、終わったら帰り部屋に籠る
元々少なかった口数も減った…というかしゃべる事自体煩わしく感じて最低限となった
一度柚月に心配そうな顔して
「お前、大丈夫か?」
と聞かれたが、適当に答えた
まだ夏の日差しが残るある日曜日の練習試合
試合終了の笛と共に視界がぐにゃりと歪み俺の意識が途切れた
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