闇に堕ちた令嬢は、騎士団長を捕まえた

狭山雪菜

文字の大きさ
21 / 29

突然のプロポーズ

しおりを挟む
『俺と結婚してくれないか?』

彼の言葉が私の頭の中をぐるぐると回り、驚きで声も出ない。
「…結婚…?私と…ゼンが…?」
喉が引っ付いたみたいに声が掠れて、やっと絞り出す事が出来た時疑問しか出なかった。
「ああ、ミカドと俺だ」
彼の顔が近づき、額同士がくっつく。彼の肩に手を置くと、彼は掴んでいた私の腰から手を離し腕を回して引き寄せた。私の腰と彼のお腹が密着する。
「ゼン…これは貴方のせいではないわ、今この場に居るからって責任を取るつもりも、この話を内密に…」
「俺はな、ミカド、そんなつもりで言ったわけじゃない…初めて会った時…俺を救ってくれた天使だと思ったんだ」
顔が近いからか彼の低い声が直接耳に囁くように響き、身体に染み込んでいくみたいだ。低い声でそっとミカド、と呼ばれ視線を上げると綺麗な琥珀色の瞳と視線が絡まる。
「それに…いや、1番大切な事だ…愛してる」
「っ!」
目を見開き驚く私は、信じられなくて呆然とした。
「ゼン、でも私…闇の…」
闇の力が今後どう作用してくるか、全く分からない不安定な私を引き取るというのか、愛しているから。
「ミカドがそばにいてくれるだけで、俺はどんな困難な事でも飛び越えられるさ」
優しく見守るような瞳は愛おしいものを見る眼差しで、またポロポロと涙が溢れてしまう。
「ミカドは泣き虫だな」
フッと笑う彼は私の頬を伝う涙に、ちゅっとキスをすると温かい舌がそれを舐めとる。
「…ゼン…嬉しい…私貴方を独占したい」
どんどん溢れてしまう涙を、彼は何にも言わずに舐め取り綺麗にしていく。
「一生貴方だけのものだ」
そう言って彼の肩に置いた手を取るとぎゅっと握り、額が離れたと思ったら彼の唇が私の唇と重なり瞼を閉じる。
一瞬だったかもしれないし、永遠だったかもしれない。不思議と心が満ち足りた時間が起こり、ゆっくりと彼の唇が離れた。
目を開けると彼と視線が合い、彼の顔が驚きで目を見張る。
「ミカド…瞳の色が…」
「瞳の色…?」
彼の発する言葉を理解するよりも先に、目の前に手鏡を差し出された。
「私の瞳…が」
鏡の中で驚く美しくキラキラと輝く赤い瞳が顔の女性がいた。
「…どうなってるんだ」
呆然とするゼンに、
「闇の力によって負の感情を纏っていたミカドは、愛の力によりコントロールされて封じ込まれたのよ」
アクアの声が聞こえ、振り向くとアクアは嬉しそうにそう告げた。
「おめでとうミカド…貴方の闇の力はゼンと関わる事で抑えられる事が分かったね」
彼女のウサギの耳がピクピクと動き、喜びを表していた。
「お嬢様っ」
マチも歓喜の声を上げ、一礼すると部屋から出ていってしまった。

「闇の力をコントロールして生きていくしかないわね、負の感情に捕われたら瞳の色が変わるわよ」

ーー負の感情…負の…

「ひとつは解決したわ、とっても重大なことよ…でもあとひとつ残っているのよ…誰が・・貴方の闇の力を解放したのか…」
「それでしたら、私が」
アクアが顎に手を置き、考え始めると今までいなかった室内に声が響いた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです

大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。 「俺は子どもみたいな女は好きではない」 ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。 ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。 ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。 何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!? 貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。

【完結】白い結婚成立まであと1カ月……なのに、急に家に帰ってきた旦那様の溺愛が止まりません!?

氷雨そら
恋愛
3年間放置された妻、カティリアは白い結婚を宣言し、この結婚を無効にしようと決意していた。 しかし白い結婚が認められる3年を目前にして戦地から帰ってきた夫は彼女を溺愛しはじめて……。 夫は妻が大好き。勘違いすれ違いからの溺愛物語。 小説家なろうにも投稿中

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~

湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。 「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」 夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。 公爵である夫とから啖呵を切られたが。 翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。 地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。 「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。 一度、言った言葉を撤回するのは難しい。 そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。 徐々に距離を詰めていきましょう。 全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。 第二章から口説きまくり。 第四章で完結です。 第五章に番外編を追加しました。

好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が

和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」 エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。 けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。 「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」 「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」 ──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

【完結】何もできない妻が愛する隻眼騎士のためにできること

大森 樹
恋愛
辺境伯の娘であるナディアは、幼い頃ドラゴンに襲われているところを騎士エドムンドに助けられた。 それから十年が経過し、成長したナディアは国王陛下からあるお願いをされる。その願いとは『エドムンドとの結婚』だった。 幼い頃から憧れていたエドムンドとの結婚は、ナディアにとって願ってもいないことだったが、その結婚は妻というよりは『世話係』のようなものだった。 誰よりも強い騎士団長だったエドムンドは、ある事件で左目を失ってから騎士をやめ、酒を浴びるほど飲み、自堕落な生活を送っているため今はもう英雄とは思えない姿になっていた。 貴族令嬢らしいことは何もできない仮の妻が、愛する隻眼騎士のためにできることはあるのか? 前向き一途な辺境伯令嬢×俺様で不器用な最強騎士の物語です。 ※いつもお読みいただきありがとうございます。中途半端なところで長期間投稿止まってしまい申し訳ありません。2025年10月6日〜投稿再開しております。

処理中です...