闇に堕ちた令嬢は、騎士団長を捕まえた

狭山雪菜

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登場

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部屋から入ってきたのは、父だった。

「お父様」
私の姿を見ると一瞬驚き、そのあといつもの優しい顔になった。
「ミカド、その宝石のように赤く輝く瞳は私のお祖母様、つまり曾祖母様と同じ色だよ」
父のうしろにはムルクとマチも居て、全員が部屋に入ると部屋の扉が閉まった。
ーーこの瞳が…?
ご先祖様の絵は父の執務室に飾られているために、見ることはなかったが、幼い頃よくご先祖様の偉業を母は私に話してくれた。
「…アーテラ公爵、先程入室した際に語られていた、私とは」
ぐっと唸る低い声のゼンは、この和やかになっていた空気を霧散し父に問いかける。
「ミカドに光のクリスタルを埋め込ませた犯人だよ…ところでクルシュペル騎士団長、ミカドとの距離が近いようだが?」
ふんっとどうでもいい事を聞かれたかのように、冷たく話す父にいつもとは違う雰囲気を感じ戸惑う私。
「…あの…お父様…?」
「それなら、先程ミカドに結婚を申し込み了承をもらった所だ」
こっちこそ、ふんっと小馬鹿にしたように返すゼンに、父の眉がピクッピクッと動く。
「…婚約…だと…?そんな事許されると思っているのか」
青筋を立てた父を、ゼンは私の肩を引き寄せ抱きしめる。彼の胸板に頬が当たり、もう父の顔もゼンの顔も見えない。
「許す許さないも、もう既にミカドの了承を取っていますし、そこの光のクリスタルの光の守護者・・・・・とやらが証人だ」
「確かに聞いたわ」
「…‥.貴方はどちら様ですか?」
お茶を啜る音と困惑する父の声が聞こえ、彼の胸板に手を置き顔を上げた。
「ゼン」
彼の名を呟くと、うっと詰まり視線を彷徨わせ、
「…すまん」
と諦めて謝罪する。彼の言葉に満足した私は彼から父の方へと視線を戻した。
「お父様、彼女は光のクリスタルの守護者のアクア様ですわ」
ゼンの膝の上から降りようと動くが、彼の手が私の脇腹を強く掴み離さない。このまま離してと彼に言っても、この手を離してくれないと感じた私は、諦めて父にアクアの説明をする事にした。
「光のクリスタルの…」
アクアを見て驚く父に、私は首を傾げた。
「お父様、光のクリスタルの守護者を知っているのですか?」
騎士団長であるゼンですらアクアの存在を知らないのに、驚き方が警戒心満載だったゼンとは違っていた。
「勿論、アールスライト王国の王族とアーテラ公爵含め4大公爵家当主にしか受け継がれない光のクリスタルの秘密だ…何故ミカドが知ってる」
優しい喜びの顔から一転、険しい顔になった父に少しだけ怖くなるが、素直にアクアとの出会いから告げた。
「避暑地にいた時に、小さい頃の夢を見て…それで彼女が出てきたのです…でも今日初めて名前を知りました」
シンと静まる部屋に、少女の声が響く。
「アーテラ公爵当主、なるほどね、貴方が…ふーん」
にっこり笑う少女は足を組み、目を細めた。

「なら、ミカドに光のクリスタルを埋め込み闇の力を解放したのは誰かしら」

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