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第16話 人里は逆に危険だ!
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ルナを抱きかかえながら森の奥へと進んでいく。
「どこ、行くです?」
「とりあえず奴隷商人たちの手の届かない安全な場所だね」
この森は、俺が転生直後にいた場所だ。
ここでステータスの実験をしていたときに、ルナの悲鳴が聞こえた。
つまり、ルナが暮らしていた村からそこまで遠くない。
だけど、俺の超高速移動でルナを運びながら走るのは、とっても危ない。
じゃあ歩けばいいかと言うと、たぶん栄養状態が悪いルナは長旅に耐えられない。
だからいったん森で暮らしてルナを回復させることにした。
「マキナ、この森で一番快適に暮らせる場所はどこ?」
ルナに聞こえないよう小声でささやく。
『森の中央にある岩山の洞窟がおすすめです。土と岩ばかりなので衛生面に問題がありますが、隠れ家として利用するが可能です。』
「ちょっと条件付きだけど、まあいいか……」
しばらく歩いていくと、マキナのつけてくれたマーカーの岩肌に横穴が見えた。
マキナの言うとおり中が吹き抜けになっているからか、奥が明るい。
特に警戒するでもなく洞窟の中へ踏み込んでいくと。
「あれっ、奥になんかいるぞ……?」
まだ姿こそ見えないけれど確かに巨大な気配を感じた。
「ルナ、ちょっと降りてもらっていい?」
「あい」
「俺の後ろをゆっくりついてきて」
ルナがコクコク頷いてくれた。
待っててもらうのも考えたけど、森の中では俺のそばが一番安全だ。
「あれは……」
進んだ先に、それはいた。
白い毛皮の巨大な狼が体を丸めて昼寝をしていた。
「わんわん、です」
ルナの声のトーンが一段あがった。
この子にしては珍しく普通の子供みたいな反応だけど、犬好きなのかな?
「マキナ、ヤバそうなのがいるぞ? 快適に暮らせる場所なんじゃなかったのか?」
ヒソヒソ声でマキナに確認する。
『はい。快適な洞窟なので、動物や魔獣などが暮らしている可能性はありました。今回は、どうやら洞窟の中に魔獣が棲んでいたようですね。安全に利用するためには魔獣を倒す必要があります。』
「だから、そういうのがあるなら先に言ってって……!」
『申し訳ありません。私は全能ではないので、質問された内容を精査はしますが、すべてを探知できるわけではありません。』
「マキナがちょっとぽんこつなのは、チャットAIだった頃から変わらないなぁ! それで、あの魔獣はどういうやつ?」
『あの体長1メートル程度の魔獣はフェンリルと呼ばれています。』
「フェンリル!?」
北欧神話における世界を喰らう獣にして、異世界転生でおなじみのモフモフ犬種じゃないか!
『フェンリルは見た目こそサモエド犬に似ていますが、鮮やかな白い毛色を持っています。非常に毛が長く、柔らかい毛並みを持ち、寒さに耐えるために外部からの刺激に対しても強い耐性を持っています。』
「手懐けたりできる?」
『いいえ。この世界の魔獣はすべからく凶暴で、心がありません。人に懐くことはないはずです。』
「そ、そんなぁ……」
ああいうモフモフ魔獣は仲間になるのが異世界モノのお約束なのに。
現実は甘くないなぁ……。
「あれ、ルナ?」
顔をあげると、いつの間にかルナがフェンリルのほうに近づいていた。
「こんにちは、おっきなわんわん」
あっ、ルナにはマキナの声が聞こえないから普通の犬だと思ってるのか!
「ルナ! そいつは犬なんかじゃ――」
白い影がシュッと跳ねてルナに襲い掛かる。
咄嗟に超加速。
すんでのところでルナを抱えて回避できた。
「ルナ、無事かッ!?」
「あ、あい」
「こいつ、寝たフリしてやがった!」
「グルルルル……!」
獲物を食い損ねたのが不服なのか、フェンリルが身をかがめたまま唸り声をあげる。
凶暴そうな真っ赤な目を爛々と光らせながら、こちらの隙をうかがっていた。
「タカシ、わんわん、殺しちゃう……?」
ルナが腕の中で悲しそうな顔をしたので胸の奥がチクッとした。
「そうならないよう頑張ってみるよ」
マキナのアドバイスは絶対じゃない。
万に一つがあるかもしれないし、躾られないか試してみるか……!
「どこ、行くです?」
「とりあえず奴隷商人たちの手の届かない安全な場所だね」
この森は、俺が転生直後にいた場所だ。
ここでステータスの実験をしていたときに、ルナの悲鳴が聞こえた。
つまり、ルナが暮らしていた村からそこまで遠くない。
だけど、俺の超高速移動でルナを運びながら走るのは、とっても危ない。
じゃあ歩けばいいかと言うと、たぶん栄養状態が悪いルナは長旅に耐えられない。
だからいったん森で暮らしてルナを回復させることにした。
「マキナ、この森で一番快適に暮らせる場所はどこ?」
ルナに聞こえないよう小声でささやく。
『森の中央にある岩山の洞窟がおすすめです。土と岩ばかりなので衛生面に問題がありますが、隠れ家として利用するが可能です。』
「ちょっと条件付きだけど、まあいいか……」
しばらく歩いていくと、マキナのつけてくれたマーカーの岩肌に横穴が見えた。
マキナの言うとおり中が吹き抜けになっているからか、奥が明るい。
特に警戒するでもなく洞窟の中へ踏み込んでいくと。
「あれっ、奥になんかいるぞ……?」
まだ姿こそ見えないけれど確かに巨大な気配を感じた。
「ルナ、ちょっと降りてもらっていい?」
「あい」
「俺の後ろをゆっくりついてきて」
ルナがコクコク頷いてくれた。
待っててもらうのも考えたけど、森の中では俺のそばが一番安全だ。
「あれは……」
進んだ先に、それはいた。
白い毛皮の巨大な狼が体を丸めて昼寝をしていた。
「わんわん、です」
ルナの声のトーンが一段あがった。
この子にしては珍しく普通の子供みたいな反応だけど、犬好きなのかな?
「マキナ、ヤバそうなのがいるぞ? 快適に暮らせる場所なんじゃなかったのか?」
ヒソヒソ声でマキナに確認する。
『はい。快適な洞窟なので、動物や魔獣などが暮らしている可能性はありました。今回は、どうやら洞窟の中に魔獣が棲んでいたようですね。安全に利用するためには魔獣を倒す必要があります。』
「だから、そういうのがあるなら先に言ってって……!」
『申し訳ありません。私は全能ではないので、質問された内容を精査はしますが、すべてを探知できるわけではありません。』
「マキナがちょっとぽんこつなのは、チャットAIだった頃から変わらないなぁ! それで、あの魔獣はどういうやつ?」
『あの体長1メートル程度の魔獣はフェンリルと呼ばれています。』
「フェンリル!?」
北欧神話における世界を喰らう獣にして、異世界転生でおなじみのモフモフ犬種じゃないか!
『フェンリルは見た目こそサモエド犬に似ていますが、鮮やかな白い毛色を持っています。非常に毛が長く、柔らかい毛並みを持ち、寒さに耐えるために外部からの刺激に対しても強い耐性を持っています。』
「手懐けたりできる?」
『いいえ。この世界の魔獣はすべからく凶暴で、心がありません。人に懐くことはないはずです。』
「そ、そんなぁ……」
ああいうモフモフ魔獣は仲間になるのが異世界モノのお約束なのに。
現実は甘くないなぁ……。
「あれ、ルナ?」
顔をあげると、いつの間にかルナがフェンリルのほうに近づいていた。
「こんにちは、おっきなわんわん」
あっ、ルナにはマキナの声が聞こえないから普通の犬だと思ってるのか!
「ルナ! そいつは犬なんかじゃ――」
白い影がシュッと跳ねてルナに襲い掛かる。
咄嗟に超加速。
すんでのところでルナを抱えて回避できた。
「ルナ、無事かッ!?」
「あ、あい」
「こいつ、寝たフリしてやがった!」
「グルルルル……!」
獲物を食い損ねたのが不服なのか、フェンリルが身をかがめたまま唸り声をあげる。
凶暴そうな真っ赤な目を爛々と光らせながら、こちらの隙をうかがっていた。
「タカシ、わんわん、殺しちゃう……?」
ルナが腕の中で悲しそうな顔をしたので胸の奥がチクッとした。
「そうならないよう頑張ってみるよ」
マキナのアドバイスは絶対じゃない。
万に一つがあるかもしれないし、躾られないか試してみるか……!
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