僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

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戻ってきたら大騒動

僕はシシリーになる

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「とりあえず、放置しておけ。」
「えっ?」
「噂の真相はシンかも知れないが、本当に聖女とやらが出現したのかもしれない。不確かな事で動くほど暇じゃないだろ。」


 たしかに、兄上が言うように依り代の巫女が精霊の言葉を公開した後に本当に聖女と呼ばれる存在が出てきたのかもしれない。はたまた、すでにいて公表に便乗して表に出てきたのかもしれない。
 その真相はわからないし、知るすべもない。一律に聖女と言っても特殊能力が無いと駄目な訳ではないし、きっと優しい女の子が優しさに心打たれた人々に聖女と呼ばれているんだよ。

 まあ、内心は関わるのがめんどくさいだけだと思うけど。


「でも、騒ぎってどんな感じなんだろう。」
「おい。」


 謁見の間に現れた兵士に声が掛かる。
 兵士は入ってから方膝をついて頭を下げたままであったが、声に反応を示した。顔をあげ微かに震えの残る声で騒ぎについて答えてくれた。
 その表情は兵士がつけている防具が邪魔で見えないが緊張に彩られているのが想像つく。


「彼らは、魔王を倒す事で平和になると解いていました。そこに、一部の人が同意を示し魔人まれびとや獣人達といさかいを起こしております。」
「それは、いかんな。」


 皇帝陛下は、内容に眉を潜めた。
 
 ここは神の国、すべての者が平等に暮らすべく頑張ってきた皇帝陛下にしたら許せないことなのだろう。
 しかも、ここの魔王様は広大な魔族領を納めている方らしいので、下手すると慕うものが戦にしかねないとやきもきしているのだ。


「ま、魔王は第二皇子に化けている。倒さなけらばならないとも。」



 兵士が言いずらそうに言葉を続ける。
 その内容は兄上が好きそうな事だけど、特に皇帝陛下は怒りを滲ませていた。転生者とはいえ自らの子。
 それを倒すだなんだと言われたら怒るのも当然だよね。

 まあ、魔王呼ばわりは本人が喜んでるから良いけど、倒す話になると僕も心穏やかじゃいられない。


「ちょっとだけシシリーになろうかな。」


 思わず漏れた声に壁の花となっていたアキさんが目を輝かせる。
 事情の知らない周りの人は訝しげな雰囲気をこちらに向けている。とりもあえず家族団子から兄上の元に行くと両手を揃えて目の前に出した。そのついでに首を少しだけ傾げてにっこりと。


「……何が要る?」
「清楚な感じのワンピースとワンポイント的な髪飾り、それと化粧道具も。」
「侍女に用意させる。だが、化粧は駄目だ。」
「ちょっとだけだよ。僕が私ってばれないぐらいだから。」
「駄目だ。」
「一体なんの話ですかな。」


  事情の知らないならそうなるよね。

 僕は人形の国でであった少女の話をした。そして、その親に名前を託されたことも。

『貴方にシシリーの名を貰って欲しいのです。』

 この女顔かおを利用していこうと思っていた矢先の提案に有り難くその名前を頂いた。人形師の青年は僕にシシリーが生きていた証を持っていってもらいたいと言っていた。
 僕としては偽名を考える手間も省けて助かる。
 今回はこの偽名と男の娘姿で聖女様にちょっかいをかけようかと思っている。


「と言うことで母様、セットして欲しいのですが。」
「任せなさい!可愛くしてあげるわ!」
「ディーレクトゥス婦人、私も手伝いますわ!」


 母様のぱぁという表情に思わず身体を引くと後ろから兄上から派遣されたのだろう侍女さんががっつり掴んできた。こちらもキラキラと楽しそうな表情だ。


「空いている部屋はあるかしら?」
「こちらに用意してあります。」
「じゃあ、行ってくるわね。」


 なんでだろう、僕からお願いしたのに気分的にドナドナな感じです。

 楽しそうな母様と侍女さんに半ば引きずられつつ謁見の間を出ていく。
 出るときに男性陣から憐れみの視線を頂いた気がするけど気にしない事にする。

 謁見の間から出て、直ぐのところにその空き部屋があった。
 部屋の中には変化後の瞳に合わせた淡い紫色のワンピースと幾つかの髪飾り、それと心ばかりかの化粧品が少し置いてあった。ワンピースはシンプルな感じだが、胸の膨らみをカバーするためか鎖骨に沿うようにレースの飾りがあしらわれている。
 髪飾りは派手な感じではなく、センスの良いシルバー基調の物。ワンポイントで石があしらわれているが、きっとジルコニアとかだよね。


「あら、これって皇帝妃様の……。」
「はい、是非昔着ていたこれをと皇帝妃様がおっしゃって。髪飾りも今は使ってないからと提供してくださいました。」
「皇帝妃様、さっきまで居なかったよね。」
「あ、皇帝妃様から伝言です。『男の娘受けウマー。』だそうです。」
「まさかのお腐れ様!」


 衝撃の事実がわかりましたが、色々と小道具を提供してくれた事に感謝して忘れる事にしよう。
 僕はまず、裸になると僕には大きいワンピースが手直しできるぐらいになるくらいに『成長グロウ』をつかう。だいたい12歳位なら直しもきくだろう。

 え、女性の前?
 気にしたら負けなんです。気にしてはいけません。

 成長した僕の姿に侍女さんはほうとうっとりしたような息を吐く。ちなみに眺めているところは下半身ではありません。
 彼女は直ぐに我に返り、濡れタオルで身体を拭き、衣類をを着付けてくれる。
 このワンピース、腰にリボンがついてウエストを強調してくれるのだが、ふんわりと主張しない感じで結んでくれた。緩い場所などはあっという間に直されており、皇族お付きの侍女すげぇなんて思ってたり。

 次に髪だが、父様と同じ漆黒の髪は普段、うなじ辺りで縛り折り返してアップにしているのだが、母様と侍女さんの相談の結果、全体を下ろして一部を両脇から三つ編みで後ろに纏める事にした様だ。
 最後に後ろにの纏めた所に髪飾りを取り付けた。
 化粧は兄上の言葉も参考に、顔に薄く粉をはたき唇に薄く口紅を塗っただけだった。

 それでもずいぶんと僕との印象は変わっているという。
 
 



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