僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

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戻ってきたら大騒動

私はレールを引く

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 汗でベタついている手で捕まれ、その不快感に顔を歪ませていると、兄様が腰に帯刀していた剣に手をかけた。チャキッと小さいながらも特徴的な音に、アクタは手を離し両手を軽く上げて無害で有ることを示した。私は、あのねっとり感が嫌でハンカチで押さえるも感覚が記憶に残って離れない。つい、ごしごしと擦ってしまい捕まれたところが赤くなってしまった。

 うぅ、捕まれたところ洗いたい。


「我がお嬢様は急いで居るのだが?」
「興味深い話でしたもので、時間は取れませんかな?」
「……申し訳ございませんが、ある御方と待ち合わせておりますの。少し高貴な御方のため待たせることは不敬に当たりますので。」
「では、その待ち合わせが終わりましたら私めの教会に寄るというのはいかがですか。」


 この話しに食い付くとは思っていたけど、結構必死ね。
 まあ、先程まで魔王に怯えていると思っていた少女が実は別の愛し子に怯えていたと知ったし、愛し子が本当なら先程までの話が嘘になるしね。
 だからといって、テリトリーにいくわけ無いじゃない。


「わざわざお嬢様が寄れというのか?」
「それでは、私の方から参りましょう。お住まいは何処ですか。」


 良くない噂を聞く教会が家に来るなんてそんなの誰も嫌であろう。だから大体は断る。そこですかさず自分の教会テリトリーに招き入れる手口かしら?
 もちろん両方断っても良いけど、そしたら愛し子なんて嘘と公言して、聖女を怯ませる魔王の策略だなんて言うのかも。

 そして、私は魔王を手引きしている少女と言って捉えるのかしらね。

 嘘だと思われても別に良いんだけどね。もう少し彼らに付き合うのも一興か。


「でしたら、西通の『やどりぎ』という名の宿に泊まってますので、明日にでもどうぞいらしてください。」
「お嬢様!」
「これ以上遅れたらさすがに不味いわ。ふふ、大丈夫。バンが守ってくれるし。」
「……今夜に伺うのは不味いのですか?」


 アクタは少し考える風をして、予想道理の質問をしてきた。でも、それはあなたが嫌なはず。


「いつ帰るか分からぬ人を、ギルド御用達で猛者が多く居る所で待ちますか?」
「明日伺います。」
「受け付けに伝えておきますわ。」


 この会話中にクレアが反応しないのが気になったが、一旦この場を離れることにする。
 今回の件で、聖女、魔王騒動は少しはなりをひそめるでしょうし、魔人や人の騒動も表だっては無くなるでしょう。

 私達が離れてしばらくすると後を数人の気配が追ってきていた。おそらくあの場にいたさくらの人達であろう。
 兄様と追ってきている人の気配の確認したあと、分かるように王都で今人気の食事処へと入る。

 この食事処は異世界の珍しい料理を出すところで、予約さえすれば平民貴族関係なく入れる所である。値段はリーズナブルなものから、時価という物まである。
 味も美味しいと評判で、予約争奪戦が起こる店だ。

 その店に迷い無く入ると、入り口の店員に紙を見せた。すると店員は慌てたように奥へと消え、すぐさま身のこなしが他とは違う初老の男を連れて帰って来た。
 初老の男と一言二言話した後、店の奥へと案内される。

 背後で先程の店員に追ってきていた者の気配が近寄るのを感じて笑みを浮かべた。
 後は追跡者の働きに任せよう。





翌日、仮宿の『やどりぎ』な一室で寛いでいると、殺気を帯びた気配が宿を取り囲む様に現れ、それからしばらくして宿の主人が私に客が来たと報せにきてくれた。
 主人は宿の周りの気配が分かっているようで、『嬢ちゃん気を付けろよ。』と声をかけてくれる。
 さすがにギルド御用達の宿の主がこんな素人同然の奴等の気配は分かるか。
 もちろん、ギルド加入の冒険者も居るわけで、相手は素人同然の奴等だからと騒ぎ立てはしないが、すれ違う度に『付いていこうか?』『何か有ったら叫べよ。』なんて声をかけてくれる。
 
 ううむ、変なチンピラも居るかと思っていたけど会う人会う人、親切で優しくて若い私達を心配してくるいい人ばかりの、良い宿だ。
 一階は食堂兼ギルド出張所になっているそうで、宿に泊まった人だけの特別クエストも有るのだとか。

 そんな一階の片隅にアクタとクレア、それと護衛らしきチンピラが待っていた。
 今は午前中の遅い時間のため、ギルドの猛者はあまり居ないが、それでも見た目美少女が噂のある教会の男と会うのに数人が見守ってくれている。

 そこに宿の主人が含まれた頃、私はにこやかにアクタの前に進み出た。


「お待たせしました。」
「いやいや、都合をつけていただき感謝しております。では、教会に参りましょうか?」
「?。はて、話しをするだけなのでは?」
愛し子の話しは広がるのは不味いでしょう。人気の居ないほうが。」
「いえ、昨日あんな人前で言ったのでもう同じかと。それに、あと数日で発表されるらしいですし。」


 さらに、言い募ろうとするアクタに、兄様は鋭い目を向ける。
 それにいち早く気づいた護衛のチンピラはすぐに耳打ちをしてアクタに何かを伝えて納得させていた。
 なるほど、このチンピラけっこう出来る方なのかもしれない。


「では、話しを聞いても?」
「はい。」


 魔神の愛し子は数日前に現れました。現れたと言ってもその記憶が戻り覚醒したということです。
 愛し子はその事で周りに迷惑をかけたくないので誰であるか、性別は何かといったことを伏せておくよう仰って、一部の者以外は知らないそうです。
 ですが、愛し子という名は国のため公表することに決めたそうです。
 愛し子はこの国のどんなものでも受け入れる国風が好ましく、無駄な争いから守るためにそうしたとか。
 愛し子は第二皇子の政策に共感して、守護を与えているらしいです。
 国が発表したあと、居ることの証明に何かするのだと聞きました。

 愛し子が何かあれば世界は敵に回るそうですよ。


「それが、私が聞いた話しです。」


 ギルドの誰かの息を飲む音が響く。
 ギルドはこの世界のいたるところにある。今話した内容が世界を回れば変な考えをするものも減るだろう。

 
「こんな話しは信じられませんな。」
「そうですか。」
「そもそも、貴方はどこでその話しを聞いたのですか?まだ公表されていないと言うのに。」
「伝が、ありまして。」


 そんなとんでも存在がいてたまるかって思うよね。目の前に居るんだけど。
 はこの世界で普通に過ごしたいからたとえ傷ついても、死にそうになっても何もするなと伝えたけれど、どうしても我慢できないことがあるらしい。


「わたくしの事がこんなにも伝わっていたなんて。」


 予想道理、彼女は地雷騙りを踏んだ。
 彼女は見せしめにさせてもらおう。





 
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