30 / 245
戻ってきたら大騒動
私は騒動の行く末を見つめる
しおりを挟む冒険者達に怒られた後、兄様に連れられて昔から皆に愛されている光陰教会に来ていた。
ここで本当の愛し子様と会う予定だと宿の皆には伝えてある。
教会には皇帝陛下が話をつけてあるようで、すんなりと奥の聖堂に通された。聖堂は光に溢れて、何処と無く雰囲気がこの世界で初めて彼らに逢った部屋に似ていた。
聖堂の奥に、一体の女性の像が立っている。
彼女が、この協会の名前にもなった女神様なのだとか。
カトレア様は、魔神達にこの世界の秩序の監視役として任されている偉い神様だそうで、たとえ悪と呼ばれている存在でも、善と呼ばれている存在でも平等に愛し、裁きを下すのだとか。
僕は、その像の前に片膝をついて祈りを捧げるように手を組んだ。ちなみに洋服は着替え済みです。さすがにあの格好では会うのもどうかと思うしね。
そして、ゆっくりと目を閉じて魔神達の名を呼ぶ。
すると、その場の空気が変わったのが感じられる。
目を開けると、想像通りあの白い部屋に来ていた。
部屋には、嬉しそうな父上達と控えるように立つ一人の美人なお姉さん。
お姉さんは煌めくブロンドをラフにまとめ、優しそうな相貌を持つ超絶美人さん。
あの聖堂にあった女神像と何処と無く雰囲気が似ているから、きっと彼女がカトレア様なのだろう。
「シンリ、待っていたよ☆」
「相変わらずのテンションですね。」
「そうそう、その反応だよ!それでこそ、シンリだよね!」
「思い出したようで何よりだ。」
「ご心配お掛けしました。」
ぺこりと頭を下げると、二人して違うだろと言われて腕を拡げた姿で待ち構えられている。
少し、恥ずかしく戸惑っていると、さらに催促されてしまったので、えーいままよと飛び込んでいった。
「ただいま!」
「ふーふー。可愛いなぁ。」
「変態臭いぞ。シンリ、お帰り。」
「あっ、そうだ。お土産が有るんだ。」
二人の腕から抜け出すと、例のもののイメージを固める。すると、先程からの馴染みの重さが手に現れた。
気に入ると良いんだけど。と笑顔付きで渡すのはロキ王の入ったビン。
きっと今頃は現実のビンは光のエフェクトに包まれて消えていることだろう。
渡された、六花は何とも言えない表情でそれを受け取り、ビンを開けて中の怨霊を解き放った。
ビンから飛び出た怨霊は煙の様に辺りに充満し始めた所で、紫暗が手で何かを集めるような動きをした。
手が動く度に煙は圧縮されて、最後にはこぶしだいの玉に変化変化する。
その玉は黒く濁っており、輝きが無い。
それを、控えていた女性に渡せば、女性は恭しく受け取った。
「これはカトレアに任せる事にするよ。シンリ、ご苦労様。」
「あっ、やっぱりこの美人さんは女神様だったんだ。」
「様などはお止めください。魔神様方の御子様。」
「カトレア様こそ。僕はこの世界ではただの一人の住人ですよ。」
「いえ、貴方様は…。」
「僕がそう願っているんです。ただの伝とコネが凄い人間です。」
「…とてつもない伝とコネですが、貴方様がそう願うのでしたら。」
カトレア様は渋々という感じで引き下がった。納得はしていないだろうけど、これ以上の追求もなさそうなのでまあ、良いだろ。
「それ、どうするの?」
「魂まで汚れてますので、転化させて新たな魂とするのですよ。」
「ロキ王は消えるんだ?」
「消える訳ではありませんが、まあ、似たようなものですね。」
これであいつの処遇は決まったと報告していいかな。人形の国の被害者の冥福と、ロキ王の新たな門出が良いものである事を願おう。
何でロキ王もかって?
悪い奴だったけどそれでも一応、この世界の父上達が創った世界の住人だからね。今度は道を外れないよう願うだけだよ。
あっさりと、厄介者の処理が終わり僕の役目も終わった。干渉出来ない魔神に届けると行った感じだったのでやっぱり、僕か兄上の役目だったんだなぁとかしみじみとおもうよ。
さてと、あんまり長居すると、兄様も心配するので戻ることを伝える。すると、六花がいやいやと抱きついて離れなくなった。
「向こうは、時が止まってるから大丈夫だよ。お茶でもしようよ。」
「干渉は最低限の約束だ。諦めろ。」
「紫暗は話したくないの?」
「話したいに決まっているだろ!」
「じゃ、じゃあ、一時間だけ。カトレア様、一時間したら強制終了してください。」
「わかりました。」
僕だって一緒にお喋りとかしたい。
でも、あんまり干渉すると世界のバランスが崩れるとコウにぃに聞いていたから、直ぐに帰るつもりだったけどあと少し位良いよね。
あと一時間居ることが決まると、六花はいそいそとお茶の準備をして、紫暗はテーブルの準備をしてくれた。
頑なに拒否していたカトレア様を必殺技涙目で同席させると、お茶を一口。
超絶旨い。
「そういえば、何故邪眼のままなんだ? 色々見えて大変だろ?」
「あえっ?切り替えられるの?」
「…まだ慣れてないんだな。失礼する。」
紫暗が目元に手を当て、魔力の流れの変え方を身体に教えてくれる。
なんとなくわかってきた頃、手を外された時にはモヤモヤしていたものとか、光のオーブとかが消えていた。凄く見やすいです。
「邪眼発動時には色々と見えてはならないものも見えるからな。邪魔なら精霊を見えなくなるまで押さえられるぞ。」
「それは後々、自分で学ぶよ。ありがとう。」
「えぇ、ずるい!私だって何かしたい☆」
「じゃあ、彼女に救済処置出来ないかなぁ。」
「む、彼女かい? 彼女は私たちの絆を…。」
「絆も大事なのは知っているけど、僕は父上達に出会えただけで満足なんだ。」
彼女とはクレアの事である。
今回の事で懲りただろうし、どうせなら愛し子発表の時にでも元に戻せば、信憑性も上がるだろう。
それに、僕にはこうして父上とお茶を出来るだけで幸せなのだ。
「ぐぬぬ、可愛い事を言ってくれる。わかったよ。精霊王に伝えておこう。カトレア、頼むよ。」
「はい。彼女が反省していれば魔素もどうにかしましょう。」
「ありがとう。父上、大好きです。」
「ただし、今度来るときはシシリーで来ることな。直接見たかったんだからな。」
「俺も楽しみにしていよう。」
ええー。偉い立場の父親に女装を見せるって恥ずかしんだけど。
え、カーディス父様は? だって、何時も母様と一緒に姉妹みたいだ言われてるから拒否反応はないよ。 覚えてないと思われてるけど実は、よく母様に女物着せられたりしたしね。
「今度ね。」
しばらく来る気ないから言っておくだけ言っておくけど。
ほら、世界のバランスのためにはちょいちょいここに来るもんじゃないよね。
この後は誤魔化しつつもゆったりのんびりお茶会をしました。
「ただいま。」
「ああ、帰ってきたんだね。ビンが消えてるということは始末してくれそうなんだ。」
「うん。」
「それは、よか…た…!」
カトレア様の像から振り向くと、兄様の言葉が途切れて、目が見開かれた。
その行動の意味がわからず首を傾げる。すると力強く抱きしめられた。顔を埋めている首筋に冷たい何かを感じる。
息が荒く、時折嗚咽を漏らしていることから恐らく泣いているのだろう。
「ヴァン兄様、どうかしましたか。」
「眼、眼が元の色にっ。父様と同じ…。」
手を背中に回し、宥めるように一定のリズムてさする。
どうやら、邪眼が発動していないときは元の水色に戻るようだ。
兄様は人形の国から帰ってきた僕が雰囲気が変わり瞳も変わって別の人に見えたらしい。でも、大切な弟で。とやりきれない気持ちを隠しつつ、今まで何も言わずに来ていたのだそうだ。
「ずるいけど、その父様と同じ瞳を見て、安心して泣けてきてしまったよ。やっぱりシンリはシンリなんだって。」
はにかむ兄様を見てなんだか、家族の絆が深くなった気がします。
1
あなたにおすすめの小説
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する
ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。
皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。
ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。
なんとか成敗してみたい。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
ざまぁされるための努力とかしたくない
こうやさい
ファンタジー
ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。
けどなんか環境違いすぎるんだけど?
例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。
作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。
中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。
……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
気絶した婚約者を置き去りにする男の踏み台になんてならない!
ひづき
恋愛
ヒロインにタックルされて気絶した。しかも婚約者は気絶した私を放置してヒロインと共に去りやがった。
え、コイツらを幸せにする為に私が悪役令嬢!?やってられるか!!
それより気絶した私を運んでくれた恩人は誰だろう?
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる