僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

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はじまりと記憶

皇子様は魔王様③

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皇子様は魔王様③





「ラングドシャ領主カーディス・レオン・ディーレクトゥスが三子、シンリ・ディーレクトゥスが見えられました。」


 皇帝陛下と会える謁見の間に着いたあと、繋いでた手を離してもらい一人で護衛兵士の元に行けば、四人のうち一人が扉をノックし扉を開けて中に声を掛けた。長い名前だけどよく噛まないよなぁなんて別の事をかんがえていると謁見の間の中から、渋めの声が入るように促した。

 扉を開けていた兵士がにこりと人好きする笑みを浮かべて再度促してくれたので、中に入って行くと後ろから兄様達が着いてきてくれた。
部屋の中には、父様と母様、そして上座の段違いにある黒檀の上等な椅子に座っている、ナイスミドルなおじ様とその両脇にこれまた将来が楽しみな青年少年が控えていた。

 思ったより人が少ないなという感想よりも僕の目はその青年少年の片割れからそらせなくなっている。

 闇を思わせる様な漆黒の髪を首元で括っており、狂気じみた切れ長の目は青灰色を呈して此方を捉えている。
 アリスの国のチェシャ猫の様に口元には愉快そうに笑みを称えており、全身は痩身じみていてと言う割には背が高いのが離れたここからもわかった。

 僕はこの痩身に見える身体が本当は鍛え上げられた美しいものだと知っている。



「あ、あにう……え……。」



 僕の口元から自然と息と共に声が洩れた。その洩れた単語に思わずぎょっとした。

 ちょとまって、なんで僕は初めて会った筈の人を知っているんだ。
 それに、兄上って……。


ヅキン……ヅキン……


 屋敷で起こった頭痛よりも強い頭痛が僕を襲う。
 頭にもうひとつ心臓があるかの様に鼓動を打ちながら痛みを感じる。
その痛みは徐々に酷くなり、それに伴って手足の感覚が鈍くなりとうとう足の力が抜けて来た。


ヅキン……ヅキン……



「シンリ?」
「おいっ!」



 助けを求めたかったが声も出ず、冷や汗が頬を幾線も伝う。
 周りが顔を青ざめ、荒い息をしている僕の異変に気付いた時には力を入れられない身体が傾いていた。
 あぁ、倒れるなぁと実際倒れながら思っていると力なく宙に伸びていた手を誰かが掴んだ。そのまま引っ張られ、暖かいけど硬い所に包まれた後に、顎に指を掛けられ顔を上に向けさせられた。

 目の前には何処か懐かしい青灰色の瞳がある。
 目元が緩み愛しげな眼差しが降り注ぐ。
 そして、口元に何か固いものが押し付けられた。その固いものは口の中に入って来たと同時に液状カプセルの様にパチリと弾けた。
 弾けたものは口の中で揮発して、酸素が身体を巡るように僕の体を満たし、頭には記憶が駆け巡る。


 それは懐かしくあり悲しい記憶。
 だけど、これで彼が誰だかわかった。
 僕の大事な大切な人。


 しばらくすると、脳が記憶の処理を始めた。
 頭痛は既に収まっていたが段々と意識が遠退いてゆく感覚がする。
 めったに見ることが出来ない少しだけ不安そうな彼に微笑んでやれば、優しい手つきで冷や汗のせいで張り付いた髪を鋤いてくれた。



「……兄上、少しだけ眠ります。」



そう掠れた声で言い捨てて、目を閉じた。









 そこは暗くて寒くて寂しくて痛い場所。そこに訪れる人は僕にとっては恐怖の対象であった。何でかはがこの場所は僕を縛り付ける。
 何度も助けてと訴えては絶望した。

 そんな暗くて寒く寂しい所からただ一人、救いだしてくれた僕の光明。


『ほら、行くぞ。』


 なにも知らなかった僕に生きる術を教えてくれ、いつも潰れそうな時は側に居て叱咤して励ましてくれる。


『笑え。どんな時でもだ。』


 前世でいま、笑うことが出来るのはきっと彼のお蔭。

 唯一無二の存在。 



『神無、何処に居ても見つけ出してやるから安心しろよ。』



 懐かしい記憶を見ていた。

 頭痛はすっかり良くなっている。最初の記憶を取り戻した時はこんなことはなかったのだが、起きているときに取り戻したからか?


 倒れてからさほど時間がたっていないようで、意識が浮上して辺りを見回せば、謁見の間の中心で僕の兄上が抱き締めてくれていた。
 目線があうと、兄上が頭をなでなでしてくれる。

 ただ、兄上と僕の回りにドーム型の膜が張られているのが気になった。
 よく見ると膜の外側からは兄様達が綺麗な顔を歪め、膜に対して攻撃をしているとようだ。あげくのはてには、父様まで剣を抜き攻撃している。



「兄上、あれは。」



 もしかしたら、転生者だとバレて家族に嫌われたのだろうか。



「あいつらは、お前を助けようとしてるだけだ。あんな攻撃で結界がどうこうするわけがないのにな。」



 どうやら、兄上はチートの上をゆく最強チートのようだ。
 そして、ふと疑問に感じた。兄上は記憶を持っているのだろうか?
 やばっ、普通に兄上って呼んじゃったよ。

 今さらに焦っているのがわかったのか、頭上でフッと鼻で笑われるのがわかった。神無の時は感情が表面にあまり出なかったが今は恥ずかしくて顔を真っ赤に染めた。
 それにまたクスリと笑い、頭を髪を乱す勢いでわしゃわしゃされた。
 そのとたんに攻撃が激しさをますが結界はびくともしない。



「安心しろ。お前が神無なのは知ってる。」
「じゃあ、」
「あぁ、転生者だ。この世界は転生者が多い。お前の事だ、伝えて無いんだろ?」



兄上は何でもお見通しデシタ。




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