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陰謀渦巻く他国旅行
私と眠れる妃様
しおりを挟む漆黒の闇に紛れてヒョイヒョイと城の外壁を登っていくのはドレスを脱ぎ捨てたシシリーちゃんです。
そう、シシリーなのです。
シンリの姿だと警戒心を持たれてしまうかもしれないので女の子姿のままです。
部屋から出るとき「別にどっちも女の子ぽいから要らなくね。」と言ったコウにぃには頭突きを食らわせておきました。
私の気分が全然違うんだよ!
ヒョイヒョイと登るのに使うのは愛用の暗器の糸。突起に絡ませてはヨーヨーの様に登っていく。だが引っ掛けるところが無い所もある訳で、壁に糸を刺しても良いけど、あえて針を投げつけて突起にする。
それにしても、一度王宮に招き入れられたら暗殺とか簡単に出来るじゃん。ここが特別なのか他も同じなのか。
気を付けないとね。防災訓練を今度提案しよう。あの国の人達が簡単には殺られないとは思うけど。
そしたらそしたでスリル満点で楽しそう。
「ふふっ、楽しいなぁ。」
私の独り言は誰にも聞かれることなく、夜の静音に溶けてゆく。
城のてっぺんまで来ると足元にあるだろう部屋の中に人の気配一つ感じる。気配が微かにしかなくまるで死人のような気配。
これが正妃様の気配であるのだろう。その
仮死状態のまま部屋に寝かされているようだ。
他には気配がないのは、少し違和感がある。王妃に対してガラガラすぎない?
少し目を閉じて目の魔力の流れを変えてゆく、ゆっくりと目を開けば、目の前に精霊達の姿が現れた。今の私の瞳は紫暗色をしているだろう。
「さあて、不審な所はどこかなぁ。」
精霊達が私の周りを嬉しそうにくるくると回っている。何か知っていたら教えて欲しいなぁ。と思っていると精霊達がそっと出入りのできそうな窓を教えてくれた。
子供なら入れそうなその窓は、城のてっぺん近くにあるからか侵入されるとは考えていないのか、何も嵌っていなかった。
そこから中をちらりと息を潜めて見れば、清潔に保たれたベットとそこに寝かされた女性、そして周りは女性らしい装飾に囲まれている。
侍女もいないのは現状維持の魔法を使っているからなのか。確かに、今そこで倒れたように顔色は悪い。
誰もこなさそうなら処理をしたほうが良いな。
窓から中に入り込むとそっと部屋に降り立つ。特に罠の様なものは無さそうだ。
ゆっくりと正妃様に近寄ってゆく。
近寄ったら何かあるのかと思いきや、普通に近寄れてしまう。眠っている様な正妃の手に自らの手を這わせても反応も返って来ないし、誰かが慌てて来る様子もないのが不気味に感じる。
首を鳴らして、身体を解し人指と中指を立てて口元に当て、現状維持の魔法を解除する。もしかしたら魔法をかけた誰かが来るかもしれないのでここからはマッハで作業をすることにした。
正妃様のみぞおち辺りに手を当て、全身を鑑定する様に魔力の流す。胃の方から全身に黒い靄が広がっているように見える。
「うん。現状維持魔法のおかげで進行が止まっていたのが良かった。」
胃の中の黒いものを身体から排出させるために逆流させる。要は吐かせると言うことだ。嘔吐物で喉を詰まらせないために身体を横向きにして、そのまま押し出す。
口からコポと緑の液体が流れ出てきた。話を聞いていた抹茶だね。
苦味で毒を混ぜるには絶好の飲み物。身体にはいいんだよね。昔では茶道も体験したことがあるから久々に飲みたいなぁ。
なんてね。
胃の中を綺麗にしたら、今度は、身体に吸収された毒を解毒しましょうかね。
身体を鑑定したまま魔法を掛ける。
「解毒」
魔法の中で、回復や解毒などの特殊な魔法はRPGゲームではレベルが上がったりすれば結構簡単に覚えられるものだったりするけど、こちらの世界では毒の知識や身体の構造を知らないとうまく行かない。
高レベルの鑑定もちや、毒の正体を知ることで絶大な効力を発揮する。例とするなら、擦り傷が膝に出来ていたら、回復役はその傷が膝にあると知っているときと知らないときだと回復の出来が月とスッポンなのです。
なので、怪我をしたものを治す人は傷口を目視する人が多く、見なくても行えるひとは極めて珍しいのだとか。
まあ、言いたいのは正妃様のこの毒は何であるかわからなかったからそのままにされたと言うこと。
彼女の身体を蝕んでいたのは、テトロドトキシン。フグ毒で有名なこの毒は、ハムレットで仮死毒として使われたと言われている物でした。
使用する量を間違えて使えばあっという間にお陀仏になってしまう恐ろしいもの。
「はぁっ!」
横向きになっていた正妃様が息を勢いよく吐き出して、目を薄っすらと開いた。
意識が無かった人にはありがちだが、無意識にいきなり起き上がってくることがある。それは危険なので、正妃様の額に手を添えて、静かな声で話し掛けた。
「私の声が聞こえますか?」
「あっ‥…はっ‥…。」
「聞こえていたら瞬きをしてください。一回はYes。2回連続はNOにしましょう。」
その言葉に正妃様は一回瞬きをしてくれる。本来なら死にかけた事での体力欠如と、突然に知らない少女が話しかけてきたことで取り乱してもおかしくないのだが、なんとも気丈な方でしょうか。
「私は神の国の皇帝妃からの使いの者です。」
褐色の肌に映える緑の瞳が宝石の様にチカチカ瞬く。
ぽってりとした色気のある唇が緩く笑みを浮かべているのを見る限り、喜んでいるみたいです。
「毒を盛られて今の今まで眠っていたようです。」
パチリ
「犯人はまだ捕まっていません。何か知っていますか?」
パチリ
「明日、必ず面会をさせて頂きます。それまで眠っているフリは可能ですか?」
パチリ
「第一側妃様を見かけないのですが、場所はわかりますか?」
‥…パチパチ
第一側妃が見当たらない事を尋ねれば、一気に血の気が引いた様な表情になり瞬きを繰り返す。
私が侵入して、もう、1時間は経つのに誰も訪れないと言うことは眠りで世話が必要ないと判断されているという事です。
更には兵士の気配が側に無いことから、だいぶほっとかれていることが分かる。
下手したら暫く、目覚めた事に気付かれないかもしれないので、面会をさせてもらうことで気付かせようと思う。
「とりあえず今宵は身体を休ませてください。」
パチリ
私は、安心させるように微笑んで、きっと身体が、まだ上手く動かないだろうからベットを綺麗に整えてから、来た道を戻るように窓から出て行く。
とりあえず、明日に色々とやることが出来てしまった。
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