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陰謀渦巻く他国旅行
私と愚かな王様
しおりを挟む先程まで、頼りなさげに顔を白黒していた吸血鬼の様な男は、自らもコウにぃの足元にその身を伏した。
「魔神の愛し子に愛されし皇子ですよね。」
「‥…。」
「5年前のあの奇跡の日から忘れた事はありませんでした。聖女を騙った少女の結末も知っています。」
あの日に神の国に来ていたのか。
てっきり睨んでいるからなんか我々が気に入らないのかと思っていたけど違うんだね。
男は丁度外交でフェーリス国に来ていた。外交と言っても、古くからの知人に知恵を借りる為の物で国同士がどうのこうのと言うわけではない。だが、旅行に行くなんて話は当時、王族の一人が亡くなっていたため貴族の一人である男にはご法度のはずでした。
だから、外交と銘打って国を出た男が目にしたのは、精霊や死者の降り立つ奇跡の瞬間でした。前日に知人と偽聖女の下手な演劇の様なやり取りを、遠くから見ていた男は神の国に魔神の愛し子が愛する魔王と言う名の皇子がいる事を知ったのです。
まさか逢えるとは思っていなかかった存在に、周りが何かしらやらかさないかハラハラと見ていたら睨めつけるような形となってしまった様です。
良い人じゃん。
補足ですが、私が宰相に襲われていたときにまず助けに駆けつけてくれたのも彼です。
『何やっているんですかー!』
って兄上よりもアキさんよりも素早く宰相を殴りつけてくれて、今も証人として同行を頼んでました。
「この度は大切な婚約者を危険な目に合わせて申し訳ございません。宰相のやった行いでもうお怒りかもしれませんが、この国の民は関係ないのです。」
「お、おい。こんなことで国に関わるのかよ。」
「王としての覚悟もない人は黙ってください。」
突然迷い込んだ王様という責任を理解するのは大変だったのは分かる。でも、甘い言葉ばかりを享受するのを選んだのは貴方でしょう。正妃様が正論で嗜めるのが嫌でお淑やかな第一側妃様ばかり偏った接し方。
それによる正妃様の心労は思いもよらなかったでしょう。
今も、何もわからず王様としての仮面が剥がれかかっている王様を慌てて二人の妃様は止めにはいる。
いまは、目の前の吸血鬼の様な男にかかっているのです。
「俺が、何もしなくても周りが勝手にやるぞ。」
「はい。存じております。しかし、この淀んだ王城の事は国民は知りません。」
「何故、そう言い切れる。人の口に戸は建てられないだろ?」
「この、クロウリー・バレイショが責任を持って王城の中で留めました。」
へぇ、この人クロウリーさんって言うんだ。
うん、この人なら良いわ。
身体を預けている兄上にポショポショ聞こえないように話し掛ける。
頷くことはしなかったが、私と同じ考えであると判断した。
「最後に問いたい。国民は知らぬ罪ではないか?」
「いえ、知らぬ罪とは知る機会があるのに何も知ろうとしなかった者の罪です。国民は知る機会さえ与えられなかった。」
まあ、知らぬ罪はアレキサンド王様に当てはまるよね。
兄上は、一度、靴をカツと鳴らすと、きっと謁見の間の前で状況把握の為に集まっているだろう人達にも聞こえる様に声を張る。
「国民にちゃんと伝えよ!アレキサンド王は王の器ではない!代わりに、クロウリーが3年治めろ。それで今回の件は無しにしても良いぞ。」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
その笑みには、これが呑めなければどうなるか分かっているよなとの暗黙の言葉も含まれて居る。
その後のクロウリーさんの3年とはその間に体制を整えろとのお心です。3年で周りが認めればクロウリーさんがそのまま王になればいいし、荷が重ければ、民主国家にすればいいさ。
ちなみに宰相は私に手を出したのがお怒りらしい精霊さんがもうすでに色々とやってしまっています。
良いぞ、きっと色々な少女を泣かせたんだから苦しんでしまえ!
それと、兄上の言葉の真意がわかる人が王城内をここまでカオスにしないはずだから、慌てて妃をはねのけて立ち上がるアレキサンド王様。
「ぼ、僕、いや、私はどうなる!何故お前達に決められないといけないんだ!」
はあ。
ついついため息をつきたくなってしまう。
「俺に喧嘩を売ってただで済むとでも?」
「粗相をしたのはこの宰相なのに。」
「その宰相を決めたのはお前だろ?」
「だって、沢山の贈り物をしてくれたし。」
「そいつの能力じゃなくて賄賂で決めたのかよ。やっぱり王の器じゃないな。」
呆れた。
もう、その一言に尽きる。謁見の間の前に居るだろう人々もそれが聞こえていたのか『マジかよ』とか『おかしいと思ったんだ』なんて声も聞こえる。妃二人も額に手を当て頭が痛くなる様子だ。
突然王になった男は、体のいい操り人形のようだったろうな。甘い言葉ばかりを浴びせて、判断が出来なくて。何なら、側妃の塔に娘がいて孕めば実権も握れるってか。
王様が可愛そう?いえいえ、きっと正妃様が忠告したはずよ。なのに苦言から逃げるからそうなるの。
正妃様はその身にまとうアイボリー色のドレスをシワになるぐらい握りしめて王様の前に立つ。
「王よ。昔の貴方の方が王らしかったわ。」
正妃様の瞳から涙が溢れ、一筋の白い筋になる。それを見てハッして、何かを思い出し言葉が突き刺さったのか泣きそうな顔を浮かべてアレキサンド元王は項垂れてしまった。
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