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陰謀渦巻く他国旅行
私と欲に溺れた男
しおりを挟む辺りは真っ暗。人気がなくなる場所に入り込むと、予想通りに不審者は私に襲いかかってきた。見た目が派手な、まさに成金みたいな服を着ているその男は、私を手籠めにしようとして失敗したあの、元宰相の男です。
草臥れた感じはするがそれでも身なりはちゃんとしている所はさすがは、矜持の塊のお貴族様かと思う。
こうして、よくよく見ると、男の姿がよく分かる。
健康的なふっくらとした褐色の肌に、鼻下にはレ点みたいな髭。その下には私に対しての下心がありありとわかる緩んだ口元は何かをブツブツと呟いているようだ。
ただ、目だけは何か熱にうかれているようにどよんとしている。
「おまえ‥…た。」
「え?」
「お前が誘ってきたじゃないかぁ。」
飛びかかってくる男を横に軽く避けると、男は私の背後にあった木箱に激突して、大きな音をたてる。
この音で誰が来てくれたら警邏に突き出すんだけど、特に誰かが来る様子もない。
さてと、
「私は、あの時体調不良で休んでいただけですわ。」
「嘘だ!胸を押さえて色っぽく吐息を漏らして誘っていただろ!」
いや、まぁ。
影武者さんを参考にワザと色っぽくはしたけどさ、普通苦しそうに胸を押さえている人を迷いなく襲うかね。先ずは体調を心配しようよ。
密かに暗器を手に持ち、目線は男から離さない。
暗器の糸が辺りを探ると、待ち伏せのゴロツキが数人。人気がない路地にゴロツキの気配を感じないのは何かしらの結界が張ってあるからのようだ。この男に結界を張るような力量は無さそうだけど、何か魔道具でも買ったのかな。
金だけはありそうだしな。
あの兄上ブチギレ事件(勝手に命名)のあとこうやってここに居るのは金を握らせて出てきたからでしょう。そこらへんの膿はクロウリーさんに頑張って貰いましょう。
「そもそも、10歳の少女に欲を抱くとは思いませんでしたわ。」
「お前の婚約者もそんな少女を気に入る変態ではないか。」
「‥…コウラン皇子は御年13歳です。」
「‥…。」
少しだけ沈黙ができる。
私もコウにぃも記憶のせいか年齢より遥かに上に感じられるのはしょうがない。だからといって子供の演技なんぞ知っている人に見られたらと思うとやってられません。
「で、何用ですか。」
「明日には帰ると聞いたのでなぁ。その前に遊んで貰おうかと思ったまでよ。」
「国際問題になりますよ。」
「知るか!もうこの国などどうとなれ!」
皆の者!
と時代劇じゃ無いんだから、せっかく隠れていた人達を呼び出すなんて馬鹿ですね。
チンピラ達も『おっ、出番か』なんてのこのこ出てきてくれる。
隠れているのをちまちま倒すよりは早くて良いけどね。
しゅるりと糸が一瞬で辺りを貼り巡る。
敵対者達はその糸に絡め取られ身動きが取れなくなる。勝負は一瞬で終わってしまった。
「な、何だこれは。」
「うふふ、なんで私がコウ様の婚約者かわかります?なんで私が今日一人で、ぶらついてたかわかります?」
私がコウ様を守る最後の砦で強いからです。
にっこり。
最後の笑顔を向けると、カタカタと敵対者達が震える。腰を抜かしている人もいるでしょう。
ですがその身に絡まる糸のせいで床にへたり込むことも、出来ない。
ほんに、哀れなことよ。
「ば、化け物か。」
おやぁ、今回2回目の化け物呼ばわり。
酷いなぁ。私が化け物なら、私の家族たちはさらにやばい存在だよ。
「貴方は、そんな存在に喧嘩を売ってしまいましたね。」
あの日から魔法も使えず、ささやか不幸も起こっているでしょう。
大人しく貯めに貯めた全財産をもって逃げれば良かったのに。まさか、兄上の予想通りに私を襲いに来るなんて。お馬鹿さん。
軽く糸を弾けば皮膚を切り裂き血を滴らせる。
何人かはヒッという悲鳴と共に壊れたおもちゃの様に謝りつづけてます。
やれやれ、これ以上いたぶっていてはただの弱いものイジメじゃない。さっさと変な結界を外して警邏に通報しよう。
そう、思って結界の要を探せば、路地の端っこに御札の様な要がある。
口元に剣印を構え、火の呪を唱えればそれは青き焔に焼かれ消え去る。
心地よい夜風が頬を撫でると共にチリっとした痛みを一瞬感じたが、気の所為と思い警邏所に向かう。
それを見ていたムラキの存在には気が付かずに。
「せっかく手を貸してやったのにこれとは。やはり下賤の者は駄目ですね。でも、印ができましたから、まあ、成果は上々ですかね。ん?」
路地を見下ろせるとある民家の上に、胡散臭い笑みを称えた、眼鏡の男が自らの式に腰掛け、出来事を見ていた。
わざわざ使えない男を利用して、気になる娘に印を付ける事に成功し、満足気に笑みを浮かべていたが、突然、せっかくの印が消滅した。
「あの男か。この世界では力を持っているから厄介だな。とりあえず、下賤の者から僕の記憶を消しときますか。」
パチリと指を鳴らすと、貴族の男が叫び身もだえ始めた。周りにいる者達はその姿に恐怖を感じ逃げ出そうとするが、糸のせいで逃げられない。まるで蜘蛛の巣にかかった虫のようで愉快だ。
はぁ、気分が晴れたし戻りましょうか。
ムラキは蛇と共に闇夜に消える。
私が警邏隊を連れて戻ってきたときに、路地は地獄の様な有様でした。
主犯の男は気が狂っており、口からはヨダレをたらしてえへえへと笑い、他の者は糸から無理やり逃げようとしたらしく血だらけでぐったりしていて、中には手首がちぎれてしまった者も。
私は、この惨状を見せられないと糸を回収したあと城に帰されました。
城では心配してくれた兄上に抱きしめられて安心します。頭を撫でてくれて、夜には一緒に寝るというご褒美?までありました。
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