僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

文字の大きさ
109 / 245
王道?邪道?乙女なアレ

私と黒幕ランデブー

しおりを挟む


 謁見の間は血の匂いや惨状で偉いことになっているので指輪の欠片を入れた瓶を持って場所を変える。兄上はまだ帰ってこないので宵月と惶麟についてきてもらいながら、人気の無いところに足を向けた。

 瓶の中の指輪は未だに黒い靄が蠢き、陰の気にまみれている。この指輪もブローチを汚染させる要因となっていたのだろう。


「むしろブローチがカリナの精神を守ったのかもね。」


 なんて私が作ったのに自画自賛じゃないけどドヤってみる。
 学校の下のダンジョンが消えての影響も考えてけっこう持ってくれた。そういえば、制服のままで来てしまったな。この制服にも慣れてきたからまあ良いけど、箒で空を飛ぶ世界じゃなくて良かったよ。


『「それ、どうするんだ?」』
「なんか、私に用事みたいだから。お話ししようかと。」  
『「それが誰だか知ってそうだな。」』
「前に同じ気配を感じたことがある。確か、といったかな。」


 ムラキの名前を言った瞬間に二人の友人は緊張した面持ちになっている。本当に分かりやすい人達だ。兄上も彼と出会ってから過保護がますます酷くなってきたように感じるので、ムラキと私とはただならぬ関係であるようだ。
 兄上がまだ欠落している記憶があることを黙っている辺り、私にとっては良くない記憶なのだろう。

 周囲に誰もいないことを再度確認して黒い靄が周囲に影響を及ぼさないように結界を張る。
 この指輪と術師の意識とは接続が切れているが、ここまでこちらに喧嘩を売るような事をしてくれたのだからお礼をしたいよね。

 無理やり接続を繋げてお話をするのだよ。相手は相当痛いだろうね。

 瓶を地面に置いて印を地面に描く。転移紋とは違い魔力を載せてそれ自体に発動条件をつけるわけでは無いので先程の様に魔力を欠如することはない。そもそも、これは魔力でやるものじゃないしね。あえて名付けるなら呪力とかかな。


『「本当に話すのか。」』
「うん。だってムカつくもん。」
『「なら、特定になりやすい物はなるべく排除したほうがいいんじゃないの?」』
「ここにこれがある時点で特定されている気はするけど。」
『「いやいや、ほら、女子軍服貸してあげるから。」』


 なぜ持っている。
 なんてことを惶麟に突っ込んではいけない。きっと、地上で遊んでいたときにで買ったのだろう。

 押しの強い変態がうざいのでササッと着替えると、髪型もそれらしくポニーテールにしておく。
 まあ、我ながらいい感じでしょう。


「『辿り巡れ』」


 一言だけ指輪に語りかければ、私の意図を読んだかというぐらいに一部の黒い靄が天をかけてゆく。
 暫く様子を見ていると黒い靄が指輪の周りに集まり人形を取ってゆく。相手の意識に繋がったようだ。
 黒い靄で出来た人形は徐々に色を変え、やはりあのときの男の姿になる。
 
 呪詛返しにも使われるこの方式は接続するときにとてつもない痛みに襲われるので今やほとんど使われない物だ。
 やはり痛かったのか男の息は荒く、どうやら地面に膝をついているようです。
 取り敢えず、挨拶はこれだよね。


術師殿。」
「だ、誰ですか。こんな邪法を使う‥な‥んて。」
「邪法だなんて酷いですわ。」


 こちらを向いたムラキが私の姿を見て言葉を失う。こんなコスプレの様な軍服の女が話しかければ驚くか。それとも私が話しかけて驚いたか。


「やはり、この国にいたのですね。」
「何の事でしょう。私は貴方を知りません。」
「惚けずとも隣国で会いましたでしょう。それに懐かしい顔も二人ほど増えた様で。」
「あら、貴方達お友達?」
『「虫唾が走る。」』


 宵月の心底嫌そうな顔に、惶麟の珍しいイライラ感を感じながらなんとなくキラキラとした眼差しで見てくるムラキと話しを進める。そもそも、世間話をしたいわけじゃないのだ。


「男爵令嬢に変な指輪を渡しましたね。」
「なんだ。あのお花畑の娘の知り合いか。」
「まさか。でも、あの令嬢のおかげで私は駆り出されたのよ。」


 同じ学園にいるのだけど、そんなヒントをあげるわけないでしょ。せっかのこの恰好なんだし、まるで軍部にでもいるように見せかけておいたほうが良さそう。


「貴方の術は私と似たところがありますわ。出身もだそうで。」
「はは。似てても当然ですよ。貴女と同門ありますからね。」
「残念ですけど、覚えてませんの。」
「その記憶は何処に落としてきたんですか。」
「さあ?前世かしらね。それより、指輪の狙いを教えてくれません?」
「そんなの‥…。」


 貴女の手掛かりを手に入れるために決まっているじゃないですか。


 にたぁと笑うその姿に彼の底しれない不気味さが現れている。
  彼の回答は予想通りであったけど私が原因なのは心苦しいな。
 後で調べないとだけど彼は私と同じぐらいの少女に指輪を渡し指輪に気が付いた私が接触してくると睨んだのだろう。
 遠隔でだけど確かに接触したね。


「はあ、神の国での人探しは苦労しました。貴女はどうやら護られて居るようですしね。」
「そうね。」
「だけど、やっと神の国ここに居る確証が取れました。」
「その確証は本当に真実?」


 神の国の物ではない軍服を身に纏い、たとえ出生を調べられてもシシリーの出身は人形の国になっている。
 それから、ムラキはこれから指名手配される。この国で行動するにしても身動きは取りにくくなるはず。


「私が本当にこの国の者だと思っているなら思っているがいいわ。」


 心底、愉快な考えだと言うように笑うと、ムラキの表情が消える。
 とりあえず、これ以上は接触したくないし指輪の欠片を消滅させようかな。

 私が行動を起こす前にムラキは一言呟いた。


「母親の記憶は戻ってますか?」



 パキリと指輪が砂状に消えてムラキの姿も四散してしまった。
 私の母親。
 彼の言う母親は多分前世の事だと思う。
 気にしていなかったが、確かに母親の記憶は欠如していた。それは、彼の記憶と共に抜け落ちているということか。となると私の辛い記憶なのだろうか。





  

 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。

ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。 そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。 すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないがやばいとは思っている

F.conoe
ファンタジー
婚約者をないがしろにしていい気になってる王子の国とかまじ終わってるよねー

処理中です...