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王道?邪道?乙女なアレ
私と黒幕ランデブー
しおりを挟む謁見の間は血の匂いや惨状で偉いことになっているので指輪の欠片を入れた瓶を持って場所を変える。兄上はまだ帰ってこないので宵月と惶麟についてきてもらいながら、人気の無いところに足を向けた。
瓶の中の指輪は未だに黒い靄が蠢き、陰の気にまみれている。この指輪もブローチを汚染させる要因となっていたのだろう。
「むしろブローチがカリナの精神を守ったのかもね。」
なんて私が作ったのに自画自賛じゃないけどドヤってみる。
学校の下のダンジョンが消えての影響も考えてけっこう持ってくれた。そういえば、制服のままで来てしまったな。この制服にも慣れてきたからまあ良いけど、箒で空を飛ぶ世界じゃなくて良かったよ。
『「それ、どうするんだ?」』
「なんか、私に用事みたいだから。お話ししようかと。」
『「それが誰だか知ってそうだな。」』
「前に同じ気配を感じたことがある。確か、ムラキといったかな。」
ムラキの名前を言った瞬間に二人の友人は緊張した面持ちになっている。本当に分かりやすい人達だ。兄上も彼と出会ってから過保護がますます酷くなってきたように感じるので、ムラキと私とはただならぬ関係であるようだ。
兄上がまだ欠落している記憶があることを黙っている辺り、私にとっては良くない記憶なのだろう。
周囲に誰もいないことを再度確認して黒い靄が周囲に影響を及ぼさないように結界を張る。
この指輪と術師の意識とは接続が切れているが、ここまでこちらに喧嘩を売るような事をしてくれたのだからお礼をしたいよね。
無理やり接続を繋げてお話をするのだよ。相手は相当痛いだろうね。
瓶を地面に置いて印を地面に描く。転移紋とは違い魔力を載せてそれ自体に発動条件をつけるわけでは無いので先程の様に魔力を欠如することはない。そもそも、これは魔力でやるものじゃないしね。あえて名付けるなら呪力とかかな。
『「本当に話すのか。」』
「うん。だってムカつくもん。」
『「なら、特定になりやすい物はなるべく排除したほうがいいんじゃないの?」』
「ここにこれがある時点で特定されている気はするけど。」
『「いやいや、ほら、女子軍服貸してあげるから。」』
なぜ持っている。
なんてことを惶麟に突っ込んではいけない。きっと、地上で遊んでいたときに面白そうだで買ったのだろう。
押しの強い変態がうざいのでササッと着替えると、髪型もそれらしくポニーテールにしておく。
まあ、我ながらいい感じでしょう。
「『辿り巡れ』」
一言だけ指輪に語りかければ、私の意図を読んだかというぐらいに一部の黒い靄が天をかけてゆく。
暫く様子を見ていると黒い靄が指輪の周りに集まり人形を取ってゆく。相手の意識に繋がったようだ。
黒い靄で出来た人形は徐々に色を変え、やはりあのときの男の姿になる。
呪詛返しにも使われるこの方式は接続するときにとてつもない痛みに襲われるので今やほとんど使われない物だ。
やはり痛かったのか男の息は荒く、どうやら地面に膝をついているようです。
取り敢えず、挨拶はこれだよね。
「はじめまして術師殿。」
「だ、誰ですか。こんな邪法を使う‥な‥んて。」
「邪法だなんて酷いですわ。」
こちらを向いたムラキが私の姿を見て言葉を失う。こんなコスプレの様な軍服の女が話しかければ驚くか。それとも私が話しかけて驚いたか。
「やはり、この国にいたのですね。」
「何の事でしょう。私は貴方を知りません。」
「惚けずとも隣国で会いましたでしょう。それに懐かしい顔も二人ほど増えた様で。」
「あら、貴方達お友達?」
『「虫唾が走る。」』
宵月の心底嫌そうな顔に、惶麟の珍しいイライラ感を感じながらなんとなくキラキラとした眼差しで見てくるムラキと話しを進める。そもそも、世間話をしたいわけじゃないのだ。
「男爵令嬢に変な指輪を渡しましたね。」
「なんだ。あのお花畑の娘の知り合いか。」
「まさか。でも、あの令嬢のおかげで私は駆り出されたのよ。」
同じ学園にいるのだけど、そんなヒントをあげるわけないでしょ。せっかのこの恰好なんだし、まるで軍部にでもいるように見せかけておいたほうが良さそう。
「貴方の術は私と似たところがありますわ。出身も日本だそうで。」
「はは。似てても当然ですよ。貴女と同門でもありますからね。」
「残念ですけど、覚えてませんの。」
「その記憶は何処に落としてきたんですか。」
「さあ?前世かしらね。それより、指輪の狙いを教えてくれません?」
「そんなの‥…。」
貴女の手掛かりを手に入れるために決まっているじゃないですか。
にたぁと笑うその姿に彼の底しれない不気味さが現れている。
彼の回答は予想通りであったけど私が原因なのは心苦しいな。
後で調べないとだけど彼は私と同じぐらいの少女に指輪を渡し指輪に気が付いた私が接触してくると睨んだのだろう。
遠隔でだけど確かに接触したね。
「はあ、神の国での人探しは苦労しました。貴女はどうやら護られて居るようですしね。」
「そうね。」
「だけど、やっと神の国に居る確証が取れました。」
「その確証は本当に真実?」
神の国の物ではない軍服を身に纏い、たとえ出生を調べられてもシシリーの出身は人形の国になっている。
それから、ムラキはこれから指名手配される。この国で行動するにしても身動きは取りにくくなるはず。
「私が本当にこの国の者だと思っているなら思っているがいいわ。」
心底、愉快な考えだと言うように笑うと、ムラキの表情が消える。
とりあえず、これ以上は接触したくないし指輪の欠片を消滅させようかな。
私が行動を起こす前にムラキは一言呟いた。
「母親の記憶は戻ってますか?」
パキリと指輪が砂状に消えてムラキの姿も四散してしまった。
私の母親。
彼の言う母親は多分前世の事だと思う。
気にしていなかったが、確かに母親の記憶は欠如していた。それは、彼の記憶と共に抜け落ちているということか。となると私の辛い記憶なのだろうか。
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