僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

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精霊たちの秋祭り

プロローグ

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 風が肌にしみるようになってきた。今日も仕事を終えて盛大に酒盛りをした男が二人で酔を冷ます目的で、家までの道を街を離れて遠回りし森を歩いていると微かな声が何処かからか聞こえる。
 近くに子猫でも捨てられて居るのか。
 男達は辺りを調べることにした。

 その内にその声が人の赤子の声だと気が付いた彼らは先程よりも必死になりその音の元を探し出す。酔いなどはとっくに消え失せ、段々と弱くなる声に焦りだけが先走る。

 なぜ赤子がこんな人気の無い森にいるのか、母親は一体。

 最悪の情景が頭を掠めるもこの目で確認するまではと頭をふって想像を霧散させた。


「おい!彼処あそこを見ろ!」


 一人の男が指差した先には、不思議な光景があった。
 茸が円形に育ちその中心には切り株がある。その切り株はまるでその中心の者を守るかのように中心が窪み、揺り籠の様である。

 そこには、男達が探していたものがいた。


 幻想的な光景に一度は動きを止めていたが、赤子が泣かずにカヒュと変な咳をしているのを見て、慌てて赤子をその腕の中に掬いあげた。

 赤子の身体がとてつもなく熱く感じる。
 熱が出てしまっているのか。

 母親の姿も見えずに、どうしたものかとゆうちょに悩んでいる場合では無さそうだ。この子に今必要なのは医者だ。

 男達は二人で頷き合うと街に向かって足先を向けた。
 熱のせいか林檎のように真っ赤になっている頬を夜風で冷たくなっていた、手で冷やすように当てる。その際に泥が顔についてしまったが、それよりも苦しそうなこの子をどうにかしたくて、新緑の様な綺麗な髪を避けて冷たい手を赤子の熱を移る様に額に当て続けた。

 なぜだろう。顔はこんなに熱いのに赤子はとても寒そうに身体を震わせている。

 するともう一人の男の上着が赤子に押し付けられた。
きっと独り言を呟いていたのだろう。赤子を抱きしめる男はお礼を言ってその上着で赤子を包む。

 直ぐに街の灯りが彼らを迎える。
 未だに酔いの醒めない街人や食堂の賑わいを他所に、男達は医者の元へと急いだ。




(どうしよう。うばわれてしまった。)


(おろかなニンゲンはもっていった。)


(ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない ゆるさない。)


(たいせつなあのこをとりもどさないと。)


(さがしてバツを。)


(バツを バツを バツを バツを バツを バツを)




 男達の背後では茸の輪が光り、中から小さな光りが男達を睨みつけていた。その光の背後にはショックを受けたように立ち尽くす存在を守るかのように。
 








「何か聖女の集いこの間は大変だったらしいね。」


 秋になり、風が寒くなってきたかな言うときにタオシャンが久しぶりに話しかけてきた。
 私に推薦状を書いてくれたタオシャンは聖女の集いの期間中から病状の悪化した父親の看病をしていたらしい。
 毎年、この時期には体調を崩してしまう父親の看病を含め家計を助ける為に色々と大変なご様子。

 今日はわりかし父親の体調が良さそうで父親から『勉強してこい』と家を追い出されたので学校に半日だけ来たそうだ。

 タオシャンが来ない日はアンナも元気が無いので父親が早く良くなると良いなと、千羽鶴を折っていたら魔力を込めすぎて何匹か飛んでいってしまった。その鶴の行方を見たときにちょうどタオシャンが教室に入ってくるのを見つけたのである。



「風邪だと思う。」
「お母様などは大丈夫なのですか?」
「うん。母さんはもう居ないから。」
「あ、申し訳ございません。」
「ううん。記憶もない頃の話だし大丈夫。」



 父親が体調を崩しているのだから他の家族もどうなのか聞こうとしたアンナの顔色が一瞬で青ざめる。
 それを優しい声でフォローする姿はとても仲の良すぎるお二人様。

 そういえば前にバルスさんにお願いしてタオシャンの事を調べて貰ったけど、身体を壊す前はとても凄腕の冒険者だったとか。

 何なら、この間の冒険者がパーティーで挑む依頼を友人と二人で達成してしまうほどだそうだ。
 とある依頼で切り株に足を取られて重症を負ってしまったのを残念がる人達もいたようだ。


 タオシャンの父親を慕ってくれている人達も居るようでタオシャンが一人で苦しい生活をしていなかったと知ってバルスさんもほっこりしていた。



「今度、お父様のお見舞いに行ってもいいですか?」
「え、汚い裏通りの所だよ?行っても良い事なんて。」
「そんなの関係ありません。私がタオシャンの家に行きたいだけって何を言っているのかしら。」
「何だ。とうとう顔見せか。」


 顔を真っ赤にして、俯く可愛らしいアンナに対してコウにぃが止めの一言を追加した。
 先程までは本をよんでいる様だったのにからかう為なら何でもするね。
 まあ、僕も同じ事思ったけどね。

 タオシャンもつられて耳まで真っ赤にさせながらお礼と共にお見舞いの許可をしていたけど、これはシシリーもつきあわされるな。
 何か教室も二人のせいで熱い気がする。


「シシリー、忘れていたが放課後に神殿に行くぞ。」
「喜んでお供しますわ。」


 神殿と言うことはもしかしなくても父上達の関係だろうな。
 この間のムラキという前世カンナを知っているようだし何かお話でもあるのだろう。
 しばらく身を隠した方がいいのかも知れない。


 

 
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