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精霊たちの秋祭り
僕はシンリ・ディーレクトゥス
しおりを挟む使い慣れた机ではあるが僕としてなら初めての席。相変わらずコウにぃは日の当たる席でつまらなそうに教科書を広げるでも無しに内職(政治系の色々)を行っているようだ。
本来そんな彼の隣にはシシリー・ディーレクトゥスという婚約者が座っていて、偶にコウ様が内職について相談したりしている仲睦まじい姿が目撃されているのだが、今日はコウにぃの隣にはどことなくシシリーと似た顔にご令嬢達が羨みそうなつややかな漆黒の髪の髪を後で束ね、水色であるのに銀のような光を携えた瞳は優しげな人物が居る。
シシリーを介さないとあまり話してくれないコウにぃが遠慮なく話しているのを、物珍しげに見ている傍観者なクラスメイトは誰がこの人物に声をかけるかそわそわとしていた。
「あ、あの!」
「なにか?」
「そこは、私の友人のシシリーの席でございます。」
おずおずと声をかけてきたのは、予想通りアンナだった。そのアンナの後ろには慌てた様なタオシャンと僕を知っているウォルターが居た。
アンナは第二皇子と気軽に話している僕が自らの爵位より上だと想像をしているが、私の為に勇気を持って話しかけた様だ。
僕は少しだけジト目でアンナに尋ねる。
「確か、席は自由だったと思うが?」
「はい。ですが、シシリーはコウラン殿下の婚約者で仲睦まじい姿は私の癒しなのです。」
癒しだったの?
スカートを握るアンナの手がカタカタと震えていてとても憐れだ。兄上はこんな時でも興味はないようで陳列書を眺めて何かを書き込んでいる。
タオシャンが彼女を庇うように前に出る前に、僕はニコリと笑ってアンナの頭を撫でた。
俯いていた顔がこちらを見上げるように見てくる。
「名前は?」
「アンナ・クロチアゼパムです。」
「君がアンナ嬢か。僕はシンリ・ディーレクトゥスだよ。」
「ディーレクトゥス?」
「もう、コウにぃっと失礼、コウラン皇子も言ってくださいよ。妹に怒られてしまうでしょ。」
わざと仲が良さそうに間違えて『コウにぃ』よびをして訂正をしておく。それが気に食わないコウにぃは昨日からむくれっぱなしで可愛らしいのだけど、この姿を見た他の人に同意を求めたら、何か可哀相な者を見るような反応を返された。解せぬ。
と、それはともかく僕の言葉に聞き耳を立てて興味津々だった皆が動きを止めた。
更に言葉を重ねようとしたとき、バルスさんとユーシアさんが教室に入ってきてしまった。
事情は説明済なので、教師の登場で生徒が席についたのを見計らって僕を教壇に呼び寄せる。
「シシリーさんが暫くお休みするそうです。その間は別の学園にいたシンリさんが(皇子との中和剤として)通うようです。」
「シンリ・ディーレクトゥス。ディーレクトゥス辺境伯の第三子でシシリーのお兄様だよ。よろしくね。」
「男!?」
なんか変な声が出ていたけどまあ良いや。
僕の中の母様の遺伝子が強いのか綺麗め美人な女のコフェイスは健在だ。シシリーの時は軽く化粧もしているから同一人物だとは気づかれないとは思うけど、目の色だけでも変えようかと思ったら皆に反対されてしまったので諦めた。
元々、シシリーの設定が母様に似ていると言うこともあるので僕がシシリーに似てても問題はないのだけども。
「先程は失礼しました。シシリー様と仲良くして頂いてますアンナと申します。」
「妹からはよく話は聞いているよ。可愛らしい方だと。」
「か、かわ‥…。」
「あと、後ろはタオシャン様かな?ウォルターは久しぶりだ。」
うん。ウォルターはダンジョンで過ごしたもんね。
余計なことは言うなよと目線で制せば、ウォルターはから笑いをして『久しぶりです。』と小さい声でかえしてくれた。よろしい。
とりあえず、僕としては初めての出会いだからボロが出るのを誤魔化す為にシシリーから色々と聞いたことにしておく。
「シシリー、様は具合が悪いのですか?」
「いや、自分の出生を知りたいと人形の国に暫くは居るとの事だ。シシリーに頼まれたからその間のコウラン皇子の監視役は僕と言うことだよ。」
「監視‥…。」
「サボるのは程々にしてね。」
「‥…。」
「ね!」
「分かっている。」
コウラン皇子のサボり姿はもう殆どの人が見ていることだ。
ちなみに飛び級制度の為のテストはシシリーには帰ったら纏めてやるということになっている。この特別な対応はシシリーの出生が今回の『聖女の集い』事件に関係しているのではとなったからだ。暫くはシシリーはお休み予定だったからこちらは助かるけど。
この学園の目的だったダンジョンも無くなったし、基礎も色々と学べたので飛び級制度を利用して早く卒業してしまうのも良いだろう。
「そうなのですね。」
「何か?」
「いえ、タオシャンの家に一緒に行こうかと思っていまして。」
「(やっぱり。)タオシャン様と二人っきりの方が嬉しいのでは?」
「あ、それはとても嬉しいですけど、二人っきりはまだ恥ずかしくて。じゃなくて、タオシャンのお父様を見て貰いたくて。彼女なら原因が分かるのではないかと。」
何だこの甘酸っぱいの。
胸焼けするわ。
まあ、二人の交際は僕は大賛成だから何も言わないよ。それにこの二人はいずれ国の重臣としてなくてはならない人物になりそうだから、他国へは行ってもらいたくないんだよね。
言い方は悪いけど恩をここで売っておこうかな。
「では、三日後でよければ僕が見に行くよ。」
「いいのですか?」
「うん。妹の友人だからね。」
「ありがとうございます。」
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