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精霊たちの秋祭り
僕と精霊王の困惑
しおりを挟むあまりにも暗い世界。
自分の手のひらが微かに見えるぐらいの世界でアンナ・クロチアゼパムは佇んでいた。
なにもないようなこんな世界は初めてでここが今まで自分の板世界では無いことはすぐに分かった。何より先程まで楽しく買い物をしていたのだ。
出口も何も見えないこの状況でどうするか。
ふと先日のバルス先生の授業を思い出す。両の手の指を複雑に、たしかこんな風にくんで呪文を口ずさむ。
「『シーイング ザ トゥルー アイディンティティ』」
組まれた手の中心が淡く光ると、先程の暗闇が一転して光の玉だらけの世界が見えた。
光の玉は、ふよふよと漂いアンナが興味深いのか近くに来るとピタリと止まってまじまじと見ていかようにじっとしている。
少しだけ居心地が悪いが危害は加えられる事はなさそうだ。
「精霊様、私は元の世界に戻りたいのだけど案内してくれます?」
一部の精霊が喜んでと言うように跳ねるが、大部分が怯えたように左右に揺れる。
どうやら彼らより上の存在が彼女を連れてきたようだ。
無理やり言うことを聞かせるなんてできなくて困っていると、跳ねていた精霊の一つがこちらに近寄ってきた。まじないを解いてもその光だけは目に見える。
「連れて行ってくれるの?」
光の玉がうなずくように上下に動く。
「ありがとうございます。絶対にお礼はしますわ。」
光の玉は嬉しそうに跳ねて、アンナを案内するように動き出した。彼女は決心を固めてその後について行く。
「精霊王よ。魔神様の使者が来ましたよ。」
アンナが誘拐されたと聞いて急いで精霊界に来た僕達だけど、人間の世界でいう謁見の間の様な場所に案内された。
光を放つ苔に覆われた洞窟の様な空間に、一本の大きな木がそびえ立つ。野花や草花が辺りを飾り、その大きな木にはそれらしい男が居る。
とりあえずはノアさんとタオシャンはフード付きマントで姿を一旦隠して貰い、僕達は大樹に居る精霊王の前に立つ。
精霊王は新緑の髪にオレンジ味のある瞳のまさしくノアさんと瓜二つの姿をしている。これで別の人だったら大変だったので内心ホッとした。
僕と兄上が先頭に立って挨拶をする。
「魔神様の使者である、シンリとコウランです。」
「我は精霊王グランデと申す。まさかイトシ‥…」
「精霊王の愛し子の話しをする前に聞きたいことがあります。」
精霊王よ、僕達が愛し子だと言うことを隠したがっていることは伝えてあるだろ。
という意味合いを込めた目線を送ったあとにニコリと笑えば、精霊王が生唾を飲み込んだ。
本来なら話している途中に割り込むのは不敬に当たるからお花畑ヒロインは気をつけてね。
「うむ、早く愛しい我が子に会いたくて気を先してしまったようだ。して、話とは。」
「早く会いたいのは当然だと思いますが、こちらをどうにかしないと精霊王様も困ると思います。実は精霊にこちらの住人が誘拐されまして。」
そう言って現場に落ちていたという茸を見せれば精霊王の眉間にシワがよる。茸に残る残滓に見覚えがあるのか頭を抱えて深いため息をついた。
その場にいる兵士にハンドサインで何やら指示を出すとガバリと頭を下げた。
意外と王は話が分かるやつなのか?
「どうやら精霊の一部が暴走していたようだ謝る。すぐに連れてこよう。」
「何日かかる?」
「はて?」
「何日かかる?」
「質問内容が見えないが。」
「そもそも今回の原因はその種族特性のせいだからな。」
コウにぃの種族特性と言う言葉はなんとも今回の事にピッタリの言葉だとおもう。
未だによくわかっていない精霊王に今度は僕が説明をすることにした。
「精霊王のちょっと目を離したは人の体感では一日でした。そして最近の話と言われていたのにこちらでは30年、大人になるくらい経っているのです。」
そこまで話して、ノアさんとタオシャンに合図を送ると二人がフード付きマントを脱ぐ。そしてノアさんの精霊王との瓜二つの姿に皆が歓喜を上げかけたが、それを制したのはタオシャンの地を這うような低い声だった。
「アンナはいつ帰って来るんです?」
「何者ですか貴方は。」
「私の息子です。」
「そもそも関係のない少女を連れ去ることは犯罪だよ?お父さんだって放置されて肺炎になりかけて死ぬところだったんだ。爺ちゃんは命の恩人だよ。それを勝手に誘拐だなんて、赤子をそんな無責任に振り回しておいて誘拐犯扱いして呪いまで掛けて馬鹿じゃないの。」
「こちら、お孫様のタオシャンくんです。」
そして、現在誘拐されているアンナの良い人です。
いやあ、学園で虐められていても怒らなかったタオシャンがお怒りになってますよ。ノアさんも止める気はないらしく、アハハと傍観の構え。
ノアさんが蛹とはいえ精霊王の子なのになぜ肺炎になりかけて死にかけていたのか僕的に考えていたのだが、そもそもノアさんは産まれて直ぐに連れ出されたのではないかと、精霊としての能力の低い時期であったために人間の擬態が優先された結果肺炎にって。
タオシャンのお怒りにタジタジの精霊達。
精霊王も自らの孫だと分かった時点でどうしょうかと迷っている。強制的に排除は出来ないなところは家族思いだと思うよ。こちらを見つめても僕達も怒っているんだよ。宥めるつもりもないし、宥めるなら彼女しかないでしょ。
「あら、タオシャン何をしているの?」
そこに、キョトンとしたアンナがどこからか出現した。流石に今回は直ぐに動いたのか。
そう思っていたが、精霊王が目を見開いて驚いた顔をしているのが分かったのでそうではないらしい。
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