僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

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精霊たちの秋祭り

僕と精霊王の謝罪

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 皆の視線が突如現れた少女の方に向いた。光苔の光でも輝く金糸の髪はタオシャンとのお出かけだったからかいつもの髪型とは違いハーフアップしている。いつものキリッとした目つきはキョトンとまんまるとなっていて可愛らしい。



「今日もお目にかかれて嬉しいです。シンリ様とコウラン殿下も驚いた顔をしてどうしたのですか?」
「やあ、アンナ様がご無事で良かった。でも、周りをよく見てご覧。」
「周り‥…何処ですの此処!」


 学園外部では言うのが恥ずかしいが身分が発生するので、アンナは綺麗なお辞儀をして挨拶をしたあと、僕の言葉に辺りを見回して悲鳴の様な声を上げた。買い物していた場所とは雰囲気もいる人もだいぶ違うから驚かないほうが不思議か。

 アンナは今までどうなっていたのか等を聴きたい所だけど、先にアンナの姿を見て毒気が抜けたタオシャンをどうにかして欲しい。


「ここは精霊の住んでるところとだけ教えておくからタオシャンアレを安心させてきてくれない。目の前で消えてだいぶ参っている。」
「あ、わかりましたわ。タオシャン、ごめんなさい。」


 別にアンナが謝る事ではないだろうに、テテテとタオシャンの元に行って手で顔を覆う。目線を合わせるように自分の顔に迎えて安心させるように微笑む姿はまだ出会って一年とは思えない甘さだ。

 タオシャンはアンナの微笑みに力が抜けたようにいつものほわほわした状態になる。そして彼女に怪我が無いか確かめるように身体中を観察して、傷一つ無いのを見て満足そうに抱きしめた。

 そんな二人の姿を見ていた精霊王が近くの精霊を呼びつけて何かを囁いている。ちらりと兄上を見れば分かっていると言うようにじっとその口元を見ていた。


「どうやらアンナ嬢を連れていた精霊を今すぐ連れてこいと命じている様だ。」
「精霊の時間の感覚は僕達と違うけど、今すぐはどのぐらいなのか。僕達の説明で一日だ30年だと言うのを理解しているから。」


 アンナとタオシャンの再会を喜ぶのは後で思いきりして貰うことにして、精霊王に声を掛けた。


「こちらの探し人は見つけられましたので、そちらの探し人を改めて紹介します。」
「頼む。」
「こちらの蛹のまま大人になったのが精霊王様のご子息、シャリノアことノア様です。その隣の少女と抱き合っているのがノア様の子供であるタオシャンです。」
「うむ。その、シャリノア、いや、ノアに宿る精霊の気配は間違いなく我の子だ。だが、どことなく衰弱していた痕跡も見えるがどういう事だ。」


 その問はノアさんを心配しての事であろう。
 そしてその衰弱も赤子を連れて行かれた精霊達の行動の影響である。誰が悪いと言う問題では無いが、あまりにもすれ違いごあった。
 
 アンナを巻き込みたくなかったから伝えて居なかったのにこうして知ることになってしまった。アンナには怖い思いをさせてしまって申し訳ない。


 とりあえず、じっくりと最初から説明をさせて貰った。人間がなぜ赤子をさらったのか、そして普通の人間には精霊が見えないこと、精霊の恨みのせいでその救った人はもう居ないこと、その恨みからの呪がノアさんにも受け継がれた事‥…色々と説明をした。

 話が終えると、辺りは静寂に包まれる。

 そりゃそうだ、精霊達のちょっとのことで大事な子が死にかけて、それを救おうとした者に呪いを掛けてしまったのだから。


「済まない。それはこちらの落ち度だ。あのとき、一緒に城に戻っていたらこうはならなかった筈だ。」
「なぜ、そうしなかったのです?」
「とても気持ちよさそうに寝ていたのだ。妻は産後が悪くその手伝いと思って、まだ力の安定していなかったノアを連れて散歩をしていたのだが、まさか寒空で一日も置いていたとは。」
「その奥さんは?」
「赤子が消えたと知って発狂して亡くなった。」


 最後まで精霊王を詰ること無く、子を探し彷徨い死んでいったそうだ。


「絶対に探し出すと言ったのだが聞いては貰えなかった。」
「もしかして、私をこちらに連れてきたのは‥…。」
「妻の一族かもしれない。」


 アンナはしかりとタオシャンに抱きつく様な状態で小さく呟いたがそれを聞き取った精霊王は本当に申し訳無さそうに答えた。

 アンナに話題が向きそうなので、ここに来るまで何があったのかを訪ねたら、なんとバルスさんのまじないが活躍していたようだ。

 そして、アンナが道案内をしてくれたという精霊を呼ぶと精霊王の目が見開かれた。


「これは、妻と同じ色を持っている。」


 そう呟く精霊王は下位にも満たない精霊を優しく撫でてお礼を言っていた。

 うん。このまま時の流れの指標がないのも困るし、ここは光苔のせいでずっと昼みたいだからな。感覚が狂うのも分かる。

 良さそうな候補の精霊も居るので、少しだけ力を貸すことしよう。


「その精霊を貸して欲しい。」
「‥…分かった。」
「時の精霊と言う存在が居ないようだから彼女に任せよう。」


 ふよふよと僕の所に来た精霊に僕の愛用している懐中時計を渡す。
 新たなる存在を生み出すにはかなりのリスクを伴うが、それでもアンナを助けてくれたお礼と、これから必要な存在だからそんなリスクを気にしてはいけない。

 自分の力を精霊に分け与えながら、愛し子である僕と兄上が彼女の存在を認識する。


「君の名はクロノス。時の精霊だよ。」


 あたりが光に包まれて、黒髪の綺麗な琥珀色の瞳の女性がでてきた。



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