122 / 245
精霊たちの秋祭り
僕と精霊王の謝罪
しおりを挟む皆の視線が突如現れた少女の方に向いた。光苔の光でも輝く金糸の髪はタオシャンとのお出かけだったからかいつもの髪型とは違いハーフアップしている。いつものキリッとした目つきはキョトンとまんまるとなっていて可愛らしい。
「今日もお目にかかれて嬉しいです。シンリ様とコウラン殿下も驚いた顔をしてどうしたのですか?」
「やあ、アンナ様がご無事で良かった。でも、周りをよく見てご覧。」
「周り‥…何処ですの此処!」
学園外部では言うのが恥ずかしいが身分が発生するので、アンナは綺麗なお辞儀をして挨拶をしたあと、僕の言葉に辺りを見回して悲鳴の様な声を上げた。買い物していた場所とは雰囲気もいる人もだいぶ違うから驚かないほうが不思議か。
アンナは今までどうなっていたのか等を聴きたい所だけど、先にアンナの姿を見て毒気が抜けたタオシャンをどうにかして欲しい。
「ここは精霊の住んでるところとだけ教えておくからタオシャンを安心させてきてくれない。目の前で消えてだいぶ参っている。」
「あ、わかりましたわ。タオシャン、ごめんなさい。」
別にアンナが謝る事ではないだろうに、テテテとタオシャンの元に行って手で顔を覆う。目線を合わせるように自分の顔に迎えて安心させるように微笑む姿はまだ出会って一年とは思えない甘さだ。
タオシャンはアンナの微笑みに力が抜けたようにいつものほわほわした状態になる。そして彼女に怪我が無いか確かめるように身体中を観察して、傷一つ無いのを見て満足そうに抱きしめた。
そんな二人の姿を見ていた精霊王が近くの精霊を呼びつけて何かを囁いている。ちらりと兄上を見れば分かっていると言うようにじっとその口元を見ていた。
「どうやらアンナ嬢を連れていた精霊を今すぐ連れてこいと命じている様だ。」
「精霊の時間の感覚は僕達と違うけど、今すぐはどのぐらいなのか。僕達の説明で一日だ30年だと言うのを理解しているから。」
アンナとタオシャンの再会を喜ぶのは後で思いきりして貰うことにして、精霊王に声を掛けた。
「こちらの探し人は見つけられましたので、そちらの探し人を改めて紹介します。」
「頼む。」
「こちらの蛹のまま大人になったのが精霊王様のご子息、シャリノアことノア様です。その隣の少女と抱き合っているのがノア様の子供であるタオシャンです。」
「うむ。その、シャリノア、いや、ノアに宿る精霊の気配は間違いなく我の子だ。だが、どことなく衰弱していた痕跡も見えるがどういう事だ。」
その問はノアさんを心配しての事であろう。
そしてその衰弱も赤子を連れて行かれた精霊達の行動の影響である。誰が悪いと言う問題では無いが、あまりにもすれ違いごあった。
アンナを巻き込みたくなかったから伝えて居なかったのにこうして知ることになってしまった。アンナには怖い思いをさせてしまって申し訳ない。
とりあえず、じっくりと最初から説明をさせて貰った。人間がなぜ赤子をさらったのか、そして普通の人間には精霊が見えないこと、精霊の恨みのせいでその救った人はもう居ないこと、その恨みからの呪がノアさんにも受け継がれた事‥…色々と説明をした。
話が終えると、辺りは静寂に包まれる。
そりゃそうだ、精霊達のちょっとのことで大事な子が死にかけて、それを救おうとした者に呪いを掛けてしまったのだから。
「済まない。それはこちらの落ち度だ。あのとき、一緒に城に戻っていたらこうはならなかった筈だ。」
「なぜ、そうしなかったのです?」
「とても気持ちよさそうに寝ていたのだ。妻は産後が悪くその手伝いと思って、まだ力の安定していなかったノアを連れて散歩をしていたのだが、まさか寒空で一日も置いていたとは。」
「その奥さんは?」
「赤子が消えたと知って発狂して亡くなった。」
最後まで我を詰ること無く、子を探し彷徨い死んでいったそうだ。
「絶対に探し出すと言ったのだが聞いては貰えなかった。」
「もしかして、私をこちらに連れてきたのは‥…。」
「妻の一族かもしれない。」
アンナはしかりとタオシャンに抱きつく様な状態で小さく呟いたがそれを聞き取った精霊王は本当に申し訳無さそうに答えた。
アンナに話題が向きそうなので、ここに来るまで何があったのかを訪ねたら、なんとバルスさんのまじないが活躍していたようだ。
そして、アンナが道案内をしてくれたという精霊を呼ぶと精霊王の目が見開かれた。
「これは、妻と同じ色を持っている。」
そう呟く精霊王は下位にも満たない精霊を優しく撫でてお礼を言っていた。
うん。このまま時の流れの指標がないのも困るし、ここは光苔のせいでずっと昼みたいだからな。感覚が狂うのも分かる。
良さそうな候補の精霊も居るので、少しだけ力を貸すことしよう。
「その精霊を貸して欲しい。」
「‥…分かった。」
「時の精霊と言う存在が居ないようだから彼女に任せよう。」
ふよふよと僕の所に来た精霊に僕の愛用している懐中時計を渡す。
新たなる存在を生み出すにはかなりのリスクを伴うが、それでもアンナを助けてくれたお礼と、これから必要な存在だからそんなリスクを気にしてはいけない。
自分の力を精霊に分け与えながら、愛し子である僕と兄上が彼女の存在を認識する。
「君の名はクロノス。時の精霊だよ。」
あたりが光に包まれて、黒髪の綺麗な琥珀色の瞳の女性がでてきた。
0
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。
柊
ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。
そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。
すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる