僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

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精霊たちの秋祭り

僕と新たなる精霊

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 新属性の精霊が新たに生まれるなど滅多に無い出来事だ。
 黒髪に琥珀色の瞳の女性は胸元に時を刻む時計が埋め込まれていた。


「クロノスに頼みたいこと、禁止事項はこうだよ。」


 1つ、精霊界の時の管理をする。
 1つ、一日の区切りをつける。
 1つ、時を早めたり戻すことは出来ない。
 1つ、ときの管理者は常に正しい者であれ。
 1つ、特に3つめの事を破りし時はその身は捧げられる。


「こんなものかな。ことわりに反しなけれ平和に過ごせるよ。」
「承知しました使者殿。」


 一連の出来事を見ていた皆の視線が痛い。
 精霊達は僕達が『魔神の愛し子』だと知っているからただ単に高位精霊が新たに生まれた事に驚きと歓喜の視線をくれる。僕達があまり周りに存在を知られたくないと思っているのも知っているため大騒ぎとかはしないでくれているのは助かる。

 僕達の正体を知らないノアさんやタオシャン達は目を点にして高位精霊の誕生をその凄さを実感できずに呆然としている。


「流石はシシリーのお兄様だわ。規格外。」
「その一言で片付けられるのもシシリーの兄だからだね。」
「いやいや、これは女神様が使者としての力をくれたからです。」


 と言うことにしておこう。
 僕一人ではクロノスの存在をこの世に定着は出来ない。兄上も一緒になってを認識出来たから可能になったからだ。

 説明は難しいかもしれないけど、何においても認識すると言うことがその存在の定着なのだ。石が石になったときの様に。


 新たに生まれた高位精霊に精霊王が手を伸ばす。
 

「ああ。また会えるなんて。」
「‥…愛しのグランデ。」
「き、記憶があるのか。」
「恐らくはアンナ嬢のおかげかと。」


 精霊王の妻と同じ気配をもつ精霊が居た場所は恐らくは生まれ変わる為に通る道筋であろう。
 生きた人間が行くにはである。
 本来ならそこを通り生まれ変わる時には個人的な記憶はリセットされ、生まれると同時に共用の記憶が蘇る感じになる筈だった。だけど、アンナを連れ来てくれたときにアンナが何故か一緒に連れて来てしまったのでその道筋から弾かれて個人の記憶まで持ってきてしまったのだろう。


「アンナ嬢はなんで精霊も連れてきたんだい?」
「暗闇でバルス先生のまじないをしたときに一部の精霊が怯えていたのです。しかも、私を外に連れて行って欲しいといった途端に。きっと私を連れてきた者が怖いのだろうと思いました。だから‥…。」


 実行した精霊がその者に害されないように連れてきてしまったと段々と小さくなる声で教えてくれた。
 アンナは生まれ変わる筈の存在を連れてきてしまった事に罪悪感を覚えているのかもしれない。
 だけど、そのままほっといても後悔していただろう。


「アンナといったか。精霊王としては理を曲げた事に罰を与えるべきなのだろうが、我個人としてはもう一度愛しい者に会えたことに感謝しかない。ありがとう。」
「いえ、私こそ道案内ありがとうございます。あと、罰はちゃんと受けますわ。」


 話しを聞いて心は決まっています。と凛として立つ彼女は美しい。

 確かに理から外れるような事をした彼女だけど元々そうなる原因の精霊がまだ来ていないのだし、罰はおいておこうよ。
 せっかく精霊王夫婦とその息子の対面だよ。


「そうだな。クロノス、我らの子が帰ってきた。こんなにも大きくそして孫まで連れてきたのだ。」
「ああ。グランデと同じ色の美しい髪に瞳は私に似たのね。名はノアと言うのね。」
「精霊王、まだ父と母と呼ぶ勇気が持てませんし、放置された事育てた父親への対応、すべてを許すには時間がいります。」
「わかっている。無事だったと分かっただけでも嬉しい。」


 この親子の複雑な関係の修復には長い時間が必要なのは見ている僕達でも分かる。幸いにも時の精霊が生まれたのだから今度はすれ違う事が無ければと思う。

 ノアさんはタオシャンとアンナをそばに呼び、精霊王に改めて紹介する。自分の自慢の息子とその嫁だと。
 嫁だと説明された途端に二人は真赤になって、初々しい。
 でも幸せそうに笑い合う姿はもうすでに夫婦のそれだ。


「精霊の血筋は愛するものには一筋だ。アンナよどうか孫を見捨てないでくれよ。」
「わ、私が一目惚れしたので捨てられはしても捨てるなんて‥…。」
「反対はしないんだ。」
「するわけがないだろ。妻にもう一度合わせてくれた恩人に。」
「もう一人の恩人はどうする?」


 ぶり返すなって思っている人もいると思うけど、冒険者ダリオは今回の件の被害者でもある。勝手に連れて行った彼にも責任が無いとも言い切れないけど、ノアさんがこうして元気に居るのも彼のお陰だろう。

 精霊王は考えた素振りをして、眉間にしわを寄せている。
  死者に謝罪などは普通なら出来ない。しかも人間としてだいぶ前に亡くなっているのならもう消えているかもしれない。


「ノアが見つかったのだから次代の精霊王はノアにと思っているが、蛹から変わるのさえノアは嫌だろう?」
「ここに来るまでは絶対に嫌だと思っていました。一発殴ってやるとも。」


 だけどと言葉を途切れさせたノアさん。
 この場所に来た事で自分の身体がここが故郷だと反応をするのだという。その反応が自分が精霊であることを実感する様だ。


「時間をください。一週間考えます。」
「クロノス、人間の一週間とはどんなに長いのだ。」
「我々ならすぐですが。私の胸元の時計の針がが14回回った位でしょう。」
「なんと。こうして時を見るととても長く感じるな。それを気にせずに我は赤子を放ってしまったのだな。」


 それについても謝罪をしなくてはという彼に、今後の精霊達のあり方がだいぶ変わる予感を感じた。
 

「もしも、ノアが戻らなくても彼を救った冒険者の家族に精霊王の加護を贈りたい。それは、数代まで残るように女神に祈りをささげよう。」





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