僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

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精霊たちの秋祭り

終焉エピローグ

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  前にも来たことのある大きな木が印象的な、精霊界の謁見の間。光苔がキラキラと昼間の様な明るさを保つこの空間で、今日は新たな精霊が覚醒する。
 新緑の髪に暫く冒険にも行っていなかったからか白い肌、少しタレ目の男が部屋の中心に用意された祭壇に横になる。

 祭壇の周りには見慣れない茸が円形に生えていて、いつかの風景が精霊たちには思い浮かぶ。あの時は何も知らずに行動をしてしまったが反省はしても後悔はしていない。それで良いと、あのときの人間が言っていたのだ。

 今日の覚醒の儀式は特別なものだ。
 我々の世界を創ってくれた魔神様方の愛し子も参加している。興味深そうなひょろりとした印象をもつ男と、綺麗めというより可愛らしい顔立ちの男は並んで仲良く術式なんてものを話している。

 彼等が特別な存在であることは精霊たち全てが知っている。彼等の怒りは世界の怒りである。

 先日、彼等の怒りが我々に向く事件があった。
 どうにか怒りは収まったが、この部屋にあるが荒れて大変だったとだけ記しておこう。


 祭壇に横になる男は人では大人という分類だ。その状態まで蛹であった精霊は前例がないのではないだろうか。もしかしたらうまく羽化できないかもしれない。苦しいかもしれない。
 だが、我々は新たなる王の素質をもつ者の誕生を待ち望んでいたのだ。
 現精霊王グランデは他の高位精霊を跡に据えても構わないと思っているようだが、それは恐らく無理だ。あの他のどんな属性にも愛される素質は彼のいや、彼等の能力のなすものだ。


 男の表面に罅がはいる。
 男の息子だという少年が、駆け寄りたいのをぐっとこらえているようだ。一緒にいる少女がそんな少年に寄り添い共に支え合っているようだ。


 いよいよ罅が多くなり額から大きな裂け目ができ始めた。ゆっくりと中の男が浮き上がる。
 新緑の髪はまさにその名称の様に瑞々しい若葉のようで、短かった髪は今までの成長を取り戻すかの如く祭壇に広がり落ちる。

 陶器のような透明感のある肌の手が出てきた。これを見ると前は日に焼けた肌だったのがよく分かる。
 そしてとうとう‥…。




「お父さん!」
「なんか色々と凄いことになってるね。」


  無事に覚醒を終えたノアさんは地面にまで広がる長い髪を鬱陶しそうにしながらも、駆けてきた愛息子のタオシャンを抱きしめている。

 脱皮と言っても良いのだろうかノアさんの姿で薄く輝く抜け殻はそのまま飾りたいほど美しい。
 後に聞いた話ではこの蛹の抜け殻は砕いて世界樹の肥料となるらしい。今回同行してくれたバルスさんの見立ててはギルドに一欠片持っていけば巨万の富になるのではと言っていた。
 なんとノアさんが、今日野次馬しに来ていただけの僕達に欠片をくれると言ってくれたので有り難くもらっておく。


 ノアさんの変化は姿だけでは無かった。
 魔法が殆ど使えなかったノアさんがファンタジーでいう上位魔法まで使えるようになったのである。精霊王曰く修行して精霊の力が使いこなせればもっと威力が上がるとかなんとか。


「では、暫くは精霊界で修行ですか。」
「うん。人の世界に馴染めるようになるまではそうなるね。その間はタオシャンを頼む。」
「タオシャンは自立しているから大丈夫だと思うけど、分かった。」


 実際、僕が動くより先にアンナが動きそうだしね。
 
 ノアさんがあまりにも髪が邪魔そうだったので精霊の人達や精霊王に確認してある程度の短さまで切らせて貰った。切った髪を鑑定すると魔法耐性などの効果があったので、髪の毛入りのミサンガ‥…はやめとこう。何かしらのアイテム作成に使わせて貰おう。


「バルスさんは記録取れた?」
「はい。あと、精霊の儀式の形とかも教えて貰えたので文献にします。」
「そしたら、『精霊とのあり方』なんて本にして出そうよ。この間の収穫祭から精霊に関心が集まっているから売れそう。」
「あ、その題名良いですね。」


 使わせて貰いますとメモ帳にカキカキ。
 こんないきあたりでつけた名前で良いのかな。本人が良いなら良いのか。


 今回の騒動もどうにか収まった様でとりあえずは一安心だ。
 ここのところ騒動続きで楽しいけど疲れたよ。秋も深まり冬になったら直ぐに春になる。そしたら僕達も学年が上がり後輩もできる。
 僕と兄上は学年が上がったら飛び級制度で卒業間近まで行く予定だ。卒業してもいいかと思っていたが、何やらコウにぃが考えがあるみたいなので留まっている。
 卒業したとしたら王家を抜けて冒険者になると言っていた。うん。なんか直ぐにギルドランク上位になってドラゴンとか神獣侍らかせて色々としてそう。

 僕も卒業したら冒険者になって世界中が見てみたい。モンスターを倒したり、魔神達が作り上げた綺麗な風景をみたり。考えるだけで楽しそうでしょう。


「お前の兄達が離してくれると良いな。」
「ヴァン兄様とシス兄様?」
「あの兄弟はお前を箱入りの令嬢だとでも思っているのか。過保護だ。」
「う~ん。」


 それをあんたが言うのかときっとバルスさんは言いたいだろうね。なんだかんだで優しくて手を貸してくれる兄上もブラコンだと思うけど。僕も兄様達やコウにぃが大好きなブラコンですのでなんとも言えない。はっ!相思相愛か!


 



__________
 


 お読みいただきいつもありがとうございます。

 次の更新は5/3からさせて頂きます。
 宜しければ見ていただけたらと思います。
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