僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

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勇者という存在がもたらすもの

僕と旅行道中事変

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 シス兄様を誘って三日後、僕たちは音の国ミュージアに出発した。
 前日の卒業式はちょっとした乱闘騒ぎもあったのだが概ねに終わって良かった。シシリーの卒業証書もシンリの卒業証書も貰えた事に驚いたが学園長がウィンクしながら『私優しいでしょう?』と聞いてきたときに盛大に頷いといた。

 とにかく、僕たちは学園を卒業してゆったりと旅行道中だ。
 タウンコーチ風の馬車はギルドから借りたものだが車輪や本体などちゃんと整備はしっかりとしていてお洒落だけど旅路も楽に行けるように工夫がいっぱいだ。道中命を預ける事になるのだからこれだけ整備されている馬車を見ると、ギルドへの信頼も上がるしまた借りたくなるものだ。

 タリスさんが気合を入れておすすめしてくれた馬車でもあって程よい硬さに振動も少なくてとても快適な旅行になりそうだ。これ程のクオリティはコウにぃも満足度が高いようでどこの馬車なのか聞いていたようだが、どうやらギルド職員の一人がで改造していたようで帰ってきたら今の公爵家の馬車も改造してくれると話をつけた。
 御者としていま運転してくれているのはアキさんでその隣には僕がいる。荷台の部屋の中には無言でコウにぃとシス兄様が対角線に座っている。ギスギスした空気も感じられるのが何か怖い。

 僕がアキさんの隣にいるのは馬車の運転の仕方を教わっているからだ。
 長距離の馬は定期的に交換が必須となっているが、ギルドのテイマーさんが調教したうま型の魔獣は交換しなくても安定して長距離を走ってくれるし、弱いモンスターや野獣なら威圧で退けてくれるすぐれものだ。
 ただし、テイマーさんから離れる事になるのでテイマーさんが貸し出す人の顔を覚え込ませて匂い袋も渡してくれる。それでテイマーさんが居なくても言うことを聞いてくれる。
 僕には麒麟が友人としているからか最初から懐いていたのでこれを気に御者を覚えようとしているのだ。

 そうは行ってもうま型の魔獣がストレスなく走るようにサポートをするだけなので特にやることは無いのでもっぱら流れる景色からのお勉強だ。

 あの植物が生えていると水辺が近いや、あの実はまずいが胃腸が弱っている時等に良いのだなど色々と教えてくれる。知識は財産という言葉もあるのでそんなに僕に教えたらもったいないよと伝えたのだけど、『シンリ様だからです。』と言ってくれるので今はせっかくなのでそのま教えてもらう。


「あそこに見える石碑は何?」
「えっと‥…あの楠木の下ですか?」
「そう。祠の様な花が置かれているあれ。」
「あれは野党、野獣に襲われたけど身元の受け取りがなかった人をまとめて入れているお墓の様なものです。」


 冒険者は根なし草のようなもので全国を歩き回る。危険も承知で遠くに移動していることも日常茶飯事である。 冒険者だけでなく普通の人だってどこか見知らぬ地でなくなることも少なくない。そんなときに纏めてしまって申し訳ないがこういった祠に埋葬するのだとか。
 この祠は世界中の至るところにあり、名前がわかれば祠に穿たれ何十年ぶりに親族が名前を見つけて感動の再会などたまにあるそうだ。再会と言ってもその時はこの祠の下の一部なのだが。


「祠には管理者がいまして主に近くのギルドが担当します。その際に死因やその時の状況の記録も残されるようです。」
「‥…ギルドってやること多いね。」
「そうです。なので常に上が人手不足にならないようにフォローしているみたいですよ。」
「冒険の隙間にタリスさんやクロスさんの手伝いでもしようかな。」
「喜ぶと思いますよ。」


 祠の前を通る時にただ黒い想いが僕に流れ込んでくる。それは殺された恨みだったり故郷に帰りたいと言う思いだったり。意思のないただの想いの残りが祠には染み付いているようだ。年月が経てば自然ときえるだろう。


「顔色が悪そうですが今日はこの辺で野宿しますか。」
「いや、大丈夫。先に進もう。冒険者達が入れる途中休憩所が楽しみだったんだ。」
「そうですか。なら、あと一時間程頑張りましょう。」
「そうだね。」


 こんなところで休んだら夢見が悪どころの問題じゃない。
 先程通った祠の中にはたちの悪い奴がいる様で我々が通る時に聞こえなくても語りかけて来ていたようだ。あいにくと僕には聞こえてしまってアキさんが心配したけど慣れっこなのでスルーだ。ただ久しぶりに胸糞だったので腕に巻き付く宵月に目配せをして退治だけはしておいてもらおう。

 宵月は普段から腕に巻き付いている。学園を卒業したので開放しようかと思っていたのだけど本人が嫌がったのだ。だからといってやたらと干渉もしてこない、むしろ放置しといてくれるのでまあいっかとそのままにしている。

 今回の頼み事に了解したとばかりにスッと姿を消したので帰りにはあの不愉快な怨念は消えていることであろう。


コンコン


「何かあったのか。」
「別にないよ。あと一時間ぐらいで今日の野営地だって。」
「ああ。今日の残りはそこで過ごすのか。」
「そうだよ。楽しみだよね。」


 荷台の方からノックと同時に声をかけられた。
 察しのよい兄上が何かに気がついた様だが、特に何かを伝えるような内容ではないし別にちょっと不愉快になっただけなので誤魔化しておく。

 それよりも休憩所が楽しみだな。




 
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