僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

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勇者という存在がもたらすもの

僕は今日は頑張れない

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「大丈夫ですかシン君にコウさん。」
「だいじょばない。」
「‥…。」


 ミュージアに入ってその芸術の国と呼ばれる由来もよくわかるほどに色鮮で賑わっていた。花に溢れ絵画に溢れ音に溢れ。見るものすべてが色鮮やかであり新鮮だった。まるでモザイク画の世界に来てしまったかの錯覚を覚えながらシス兄の友人が住んでいるという住宅街へ向かう。
 街の中央にただずむ城の脇から切断するかの様に広がる見上げるほどの壁がどうやら獣人との住居との境目様で、シス兄の友人、ラウルス侯爵家はその近くにあるらしい。

 何度も曲がりくねる道を通りラウルス侯爵家についた頃には、さっきまではしゃいでいた僕とコウにぃが頭を抱えて馬車の荷台でぐったりとした姿を晒すこととなった。

 車酔いならず馬車酔いかなんて事はなく。突然の頭痛に襲われたのだ。
 頭痛が起こってからというもの先程まで愉快だったが煩わしくてたまらないのである。この状態であるのなら獣人でなくても音楽が不愉快で煩い。眼の前もチカチカとしてきて色の情報の多いこの世界がまぶしすぎる。音の無い真っ暗な世界で少し休みたいぐらいだ。

 兄上も同じような状態らしくいつに増して凶悪顔をして無言で苛ついているようだ。
 アキさんが気遣ってくれているが今はただただ休みたい。


 ぐったりとした僕達を気にかけながらもシス兄はラウルス侯爵子息に挨拶をしにいったようだ。槍に取り憑いたサラート夫妻は何か言いたげだったけどシス兄の持ち物なのでそのまま持っていかれてしまった。
 
 記憶を戻るときにづきづき心臓が脳に有るのかってぐらい痛くなったけど今回は痛みはそれほどじゃないけどずっと続いているしなんか気持ち悪いし煩わしいんだよ。


静かなる闇サイレントアンクレア
「あ、れ。」
「‥…。」
「おーい。大丈夫か。」


 最近から加わった声が聞こえたと思ったら突然目の前が真っ暗になり先程までうるさかった音が消えた。だけどシス兄の声が聞こえては来る。
 状態としてはとても心地良い闇だ。音の攻撃から逃れられた僕は先程までの頭痛が緩和されている。それはコウにぃも同じようでホッとしたため息が聞こえてくる。


「この幽霊が早くシンリ達の元に戻りたがっていたからな。クラウスには呼んでくると言って直ぐに戻ったんだ。」
「うん。サラート夫妻のかけてくれた魔法のお陰で楽になった。」
『よか、た。ワタシのオリジナルの魔法‥…だ。』
「ということはこの原因が何かわかっているのかな。」
『コウモリ‥…のモンスター、攻撃受けるとたまになる。』


 ああ。超音波みたいなのが原因ということか。この国の様々な音の重なり合いで特定の周波が出てそれが耳の良い獣人や一部の人や僕達に影響が出たのか。
 だいぶ落ち着いてきたから暗闇は解除したい。
 だけど音を聞くとまた頭痛になってしまうかもしれないな。

 僕が口を開こうとしたとき、兄上がパチリと指を鳴らした。すると暗闇が消えてだけど音も消えたままという不思議な状態になった。
 なるほど、兄上も構造を理解してこのあたりを包み込むような結界を張ったのか。
 これならこの屋敷にいる間は悩まなくて済みそうだ。


「二人だけに張ろうとしたら屋敷全体になってしまっただけだ。」
「改良は僕がするよ。」


 体調が良くなった僕達に一瞬で屋敷を覆う結界を張った驚きから我に返ったサラート夫妻が安心したように胸を撫で下ろす。最初の頃は嘆いてばかりだったのに落ち着いて来た様子の夫妻にこちらも安堵する。最初より言葉がわかりやすくなっていることはいい徴候だ。

 この結界を不審に思った人達がこちらに集まってくる。
 その中には体格のとてもいいゴリラ‥…間違えた体格の良い男が先頭でむかって来ている。そうだよな。いきなり屋敷が結界で覆われたら驚くか。


「エリシス、大丈夫か?」
「おう。悪いな連れの魔法だ。驚かせたな。」
「いや、見たところただの結界のようだから心配はしていなかったさ。」


 ここにいる誰よりも大きな身体。170cm以上あるアキさんより大きい姿から見るに2メートルは超えているのではないだろうか。そんな巨体は品の良い服に包まれている。白いシャツにダークグリーンのベスト、その姿はまさにお坊ちゃまといった風である。目につくのはその巨体だけでない。アキさんとはまた違ったエンジ色の髪に同じ色の迫力のある目。それぞれが良い意味でバランスよく揃った顔立ちである。


「こんな状況だが紹介するけど、俺の可愛い弟のシンリだ。」
「兄が学生時代お世話になりました。シンリ・ディーレクトゥスです。この数日も宜しくお願いします。」
「‥…!」
「あちらが弟関係でコウラン・アシュレイとアキンドだ。」
「どうも。」
「それと憑き人のサラート夫妻だ。無害だ。」
「そうか無害なのか。なら良い。私はクラウス・ラウルスだ。宜しく頼む。」


 頼むと言われて僕の前にちょこんと手を出された。眼の前に出されたのでそのまま握手をさせてもらうけど僕で良かったのかな。
 フリフリと上下に振っていると、なんか感動したのか片手で顔を多い天を仰ぎだした。どうしようかシス兄を見れば腹を抱えて大爆笑している。
 
 そのこちらに向いている指を逆にするぞ!


「あ、あの。」
「すまない。この顔だからか初対面で泣かれる事が多いのだ。しかもちゃんと目を見てくれるのは久々だ。」


 それはクラウスさんの身長のせいもあると思うけど。


「我々は君たちを歓迎する。」
「はい。ありがとうございます。」
「所でこの結界なのだが‥…。」
「ごめんなさい。僕達、この国に来て頭痛に悩まされてて。このサラート夫妻が助けてくれたんですけど、それをコウにぃが改造して結界を張ってしまったんです。この中だと僕達は楽なんですが不愉快なら解除します。」
「なんと。いやいや。屋敷で寝込んでいた者が楽になった様でむしろ教えてもらいたいと思っているのだ。」



 ワタワタと事情を説明したらクラウスさんの目が輝いて僕を抱きしめる。あの巨体に抱きしめられる僕は身体が浮いて宙ぶらりん。慌てた周囲が助けてくれるまで生きた心地がしなかった。




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