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勇者という存在がもたらすもの
僕と勇者
しおりを挟む「あんたは誰?」
しばらく様子を見てて泣き止んだ勇者から声がかかったと思ったらそんな言葉だった。
「女将さんからの使い。」
「何でこんな所にこれたの。」
黒髪に黒目のまだ幼い勇者は警戒心の塊のようにこちらを睨んでいる。睨んでいるといってもあまり表情が変わらないのは生まれつきか。
僕の立場と言われたら敵ではないけど味方でもない存在なのは確かではある。もしも神の国に仇なすようなら始末もする。最初はちょっとした興味が湧いて見に来たけど色々な話とあの暖かな女将さんが育てた子だからこの状況をどうにかしたくなった。
しかも国の保護というなの監禁は許せないな。勇者と言う名の元に何をするつもりなのか。
「僕はこの城を調べているんだ。」
「城を?」
「今、国では謎の病気が流行っていてね。獣人街が大被害を浴びている。」
「お母さんは?」
「大丈夫。毎日門の所で冒険者と元気に抗議活動をしているよ。」
「よかった。」
何処かほっとしたような雰囲気を感じる。
日頃兄上の状態を読んでいる身としてはこれくらいの感情の変化は読みやすくて良い。
グレイは手紙を抱きかかえるように握りしめている。
食事はちゃんと出されているようだから変に痩せてはいないが急に親から離された精神は普通なら持たないだろう。そこはさすがは聖剣に選ばれるだけはある。
「原因がこちらにあると思ってね。王が何をしたいのか調べに来たんだ。」
「王様が原因?」
「だと僕は考えている。何か知らないか?」
閉じ込められていた身としては何も知らないとは思っている。
要は王は勇者というネームバリューを使いたいだけだ。それには聖剣と言う存在が大きく王は聖剣を抜けなかった。
「王はボクの事を虫けらを見るように見てくるんだ。言葉や対応は優しいけどね。」
「うん。」
「聖剣も取り上げられたけど何故かボク以外は持てないんだ。」
聖剣に選ばれたというのは本当の事らしい。
この部屋を出たら聖剣も確認する必要がある。勇者しか持てないなら勇者に武器庫なりに持っていってもらう事になるけどわざわざ勇者に武器を与えるチャンスを与えるはずがないし恐らくは勇者を出迎えたであろう謁見の間にあるはず。
「あとはボクが今度あるお披露目会に重要らしいよ。」
「ああ、体調の悪い職人に無理難題与えたやつか。」
「ボクに相応しい会場にしてくれるらしい。」
ああ。これは面倒くさいかも。あのまま納品できようができなかろうが勇者に相応しくないと言えば処理できるんだもんな。
勇者の名の元に何をやっても許されると思っているのだろうか。
勇者を見ると女将の手紙を持って僕に何か言いたそうだ。手紙がいきなりこんなところに現れたら色々問題だから持ち帰りたいけど彼から奪うのは酷だ。それは本人も分かっているようで手紙を返そうとしているだとおもう。
「少し借りるね。」
勇者から手紙を一度貰うと紙の裏面にペンで文字を書く。それが完成すれば僕の目からはなにもないように自分の手のひらとペンしか見えない。
「はい。」
「えっ、返してくれるの?」
「魔法で君以外見えないようにしておいたからバレないよ。女将さんに返事も書く?」
「いいの?」
「疑問だらけだね。いいよ。直ぐには渡せないけど必ず渡すよ。」
そう言って空間魔法から紙とペンを渡す。
受け取った彼が黙々と書き始めたのでそれが終えるまでじっと待つことにする。じっと待つことは嫌いではない。僕の暗殺としての能力は相手が隙を見せるまでじっと待つことが多い。それこそ行動を把握するのに数日いることもある。そして相手を観察するのだ。
ボサボサのではあるがコシのある黒髪に真剣な闇のような黒い目。
顔立ちはこれは女将というより‥…。
その先はまだ確証がない。
「何だよ。そんなに見つめてて。書きづらいだろ。」
「ああ、悪い。その熱心な目が綺麗で見とれてた。」
「なっ。」
お、表情は硬いのに顔が赤い。こんなことで照れるなんて年相応で可愛いところある。え、上目線?だって前の歳も数えたら半世紀は生きてるよ。僕のあられもない姿を知っている兄様達には負けるけどこんな可愛い弟がいたら可愛がるでしょ。
「ほら、これ頼む。」
「もう良いのか?」
「あとは会ってから話すから。絶対に。」
「‥…そうだな。」
1人こんな部屋に入れられても諦めていない様子の彼に少し安堵する。出来ればこのままカビ臭いこの部屋から出して上げたいところだけど王様の勇者お披露目会で何を仕掛けるのかわからないから手はなるべくだせない。
お披露目会も胡散臭くてたまらない。
周りの国を始め招待されている人もいるらしく名簿を盗み見たら勿論神の国も招待されていた。不参加にはなっていたけどこれで来ていたら兄上もいたから面白そうだったな。なにせ今回兄上は職人街に足繁く通っているからか。
「じゃあ、またね。」
「また。」
まだ調べたいことがあるのである程度の所で帰る事にする。鍵もしめさせてもらいまた闇に身を隠し聖剣のあるだろう謁見の間に向かう。
謁見の間には王が座る玉座が一番高い位置に作られていてその前方には階段になっている。そりて玉座からは赤い絨毯が入り口まで続いていた。
そんな謁見の間に確かに聖剣があった。
玉座の後ろという場所に。
目が痛いほど派手派手な台座がありその上に仰々しく薄緑の光を放つ剣が置かれている。これが聖剣エクスカリバーらしい。
誰も居ないのを見計らい気配察知の魔法を使いながら何かないかと聖剣に触れる。すると頭の中に聖剣の情報が一気に流れ込んできた。きっと聖剣が愛し子の僕に語りたい何かがあったのだろう。
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