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勇者という存在がもたらすもの
勇者のお披露目会 前
しおりを挟む少ししんみりした日から数日。
今日は勇者のお披露目会。
前日までが期日だった獣人街に課せられた彫刻の納品はだいぶ余裕を持って終わった。その際には納品を担当した人がとても不服そうで文句でも良いそうだったり、いちゃもんをかけられそうだったので同行していたクラウスさんに協力してもらいちゃんと納品したという事になっている。
クラウスさんの姿にびびった納品担当者が震えながらスムーズに受け入れたと言う感じである。納品された彫刻は納品前に見せてもらったがどれも素晴らしいし、王族に進呈される予定の木細工は僕も欲しくなるぐらいの綺麗な幾何学模様のものだった。
寄木細工に似たデザインで繊細な獣人の感性が発揮された作品。そこには職人たちのこれまでの努力の結晶がつまっている。
城から帰ってから数日、ラウルス家と協力して色々と調べさせてもらった。
例えばサラート夫妻は元々はこの国の住人だったとか前の国王の婚外子ではないかと言われていたなど。
そこには勇者と女将さんが実は本当の親子ではないことも分かった。
これはラウルス侯爵家と同じ見解だったのだが勇者はサラート夫妻の失われた子供ではないかという事だ。
それなら勇者の血筋が前国王の婚外子ということで入っていても不思議ではないし見た目も似ていたのは当然のことである。あのワインセラーで感じた違和感もそれでスッキリした。
女将さんにも手紙を渡す際に尋ねたが彼女はそのことについては隠しておらず親が見つかった事を喜んでくれた。こんなに心優しい女将だったからこそ聖剣の所持ができる無垢な子になったのだと思う。
サラート夫妻が襲われたのはもしかしたら前国王の婚外子と言うことがバレたからではないだろうか。冒険者として世界中を回る彼等は別の国に勇者の血筋を持ってゆく事になる。それを良しとしない聖剣の真実をしる国のお偉方はこうした者たちを捉えたり殺したり。溜まった骨は楽器になり国中に散らばる事になったのだ。
獣人街の者を追い出さず奴隷にしたいのも同じ理由かもしれない。まあ、技術の漏洩防止や良い金づるだと思っているのも間違いないだろうけどね。
「おい。そろそろ行くぞ。」
「分かった。」
僕たちは神の国の皇帝陛下の書状を携えて一度は欠席にした神の国の代表者としてこの場にいる。事情はギルド同士の通信連絡で伝えてあり音の国の人骨の楽器は危険だという話になったのだ。なので勇者のお披露目会に侵入して国の意向を伺ってこいと公爵家である兄上が任された。僕はコウにぃのサポートでアキさんとシス兄は護衛である。
兄上の招待を知ったときのラウルス家の驚きようは地割れが起きるのではないかと思うほどだった。
皇帝陛下には不参加の訂正を出して貰い、代行人が行くことを知らせておいたのでいざ会場に向かう。
会場の至るところに彫刻が置かれていていて会場に花を添えていたがその数は納品したものよりはるかに少ない数だ。多分だが多めに発注をしてこなせなくてもお披露目会はできるようにはしておき過剰分は売る分を確保と言ったところが。
「招待状を見せてもらってもよろしいですかな。」
「こちらがそうだ。そしてこれは代行人証明の書状だ。」
「神の国の代行者ですね。確認しました。どうぞお楽しみ下さい。」
招待状の確認に来た人に書類を一通り書類を渡して、歓迎を受けた所で席に案内される。さすがはこの世界でも一位二位を争う大きな国の代表である。席に置かれているのは獣人たちが汗水垂らして頑張って作った寄木細工に似た作品が置かれている。ここは本来他国の王家が座る予定の場所だから技術力を見せつけながらも媚を売る予定なのだろう。
無論、席は1人分しか用意はない。コウにぃが代表なのでその席に座って貰い護衛などは背後に立つことにしよう。
しばらくしたら徐々に人が増えてきた。ラウルス侯爵家も招待はされているが他にも見知った顔がチラホラいたりする。
吸血鬼のような印象の男や義姉の元いた国の王様など。
どちらもシシリーとしてあっているのでワザワザ正体をバラすコトモしない。ようはスルーしておく。
皆も勇者と言う存在を見に来たのだろう。
「席を用意してもらうか?」
「コウラン様。それは他に示しがつきません。そもそもここは一応は公式の場ですから。」
「はぁ、残念だ。」
つまらなそうにテーブルの上にある細工をいじっている。
この細工には秘密の開け方がありそこに色々と隠せるようになっていた。その説明は納品時にはしてあって開け方はひとつひとつ異なる。説明の紙をセットで渡したが今は見当たらない。
だけどもチートな兄上ならものの数秒で開けてしまえたりする。
中には白い鈴 が入っていた。
その音はまさにアレと同じものである。しかし鈴には細かな模様が掘られていてそれ自体は綺麗で文句は言えない。だけどもこれが他国の王家に持ち込まれたら音で体調を崩すこともあるかもしれない。
この鈴を渡されるということは喧嘩を売っているのか馬鹿なのか。
「それでは国王の登場です。」
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