僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

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勇者という存在がもたらすもの

僕と王様と公爵

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「な、なんてことを。」


 聖剣が砂になるのを目撃し王が足元から崩れ落ちた。
 ちなみにこれも僕の仕業だったりする。前にも言ったが聖剣が使えるから勇者というわけではない。今だって聖剣を失ってもグレイはこの国の救世主で勇者とよべる存在だから。なら別に聖剣なんていらないでしょ?

 今回は勇者というより聖剣に取り憑かれた男がやらかした出来事だったと一概にいえないのがもどかしい。目の前で砂となり消えた聖剣を取り戻すかのようになにもない地面を掻きむしるこの男は一体何がやりたかったのだろうか。
 
 国の住人、特に獣人を苦しめ排除しようとし剣を抜いただけで親子を引き離し、そもそも小さい頃に共に遊んだ友人を死に至らしめた。

 それらの先には国王として国を守り栄えさせないといけないという思いは感じられなかった。嫌いな獣人を排除し勇者と言う存在を使って周りを脅し、聖剣おもちゃを手に入れるために人非道のことをするなんて、まるで子供がやるごっこ遊びのようでわがままな愚者の様だ。いや、それ以下だろう。そんな人に彼がどんな思いでやったのかを聞く気にはなれない。
 聞いたところで国を混乱させた償いをしてもらわないと。


「貴方の罪は重いです。」
「罪?何の罪になるというのだ。ここは私の国だぞ。裁くのは私だぞ。」
「裁くのは国民がやる。」
「兄上。」


 兄上と気絶をしたダウニー公爵を引きずって持ってきたアキさんが合流した。見たところ怪我などはなさそうなので一安心だ。
 さらに異常事態が収まったことを察した人々が状況を確認するために集まってきた。彼等は王が勇者と紹介した子供の前でしゃがみ込んでいる状況に首を傾げていたが、招待された人々の中に口の軽い者もいたようで自然と説明が行われていた。

 しかし全てを知るわけではないのでそのうちに視線がこちらに向けられてくる。どう説明したら良いかと考えているとラウルス侯爵が前に出て説明を始めた。彼ならこの国の事情も当然わかっているので上手く説明してくれるだろう。

 獣人の奴隷計画には皆が怒り、白い楽器については持っていた人が地面に投げ捨てる姿が見られた。そして頭痛に苦しんでいた人々は今回の件で結界が広がり緩和したものもいた。


「楽器については昔から骨で作られている物もあるから全てやめろとはいわない。今回公爵が作った物は埋葬をしてやりたいが。」
「これで私は妻を苦しませたのか…。」
「ちゃんと埋葬してあげたいとは思うが全てを見つけることは叶わないとおもっている。なので、この対策の御守の配布と獣人街への結界は続けようと思う。何十年かかるかもしれないがこの『怨念』の楽器を全て眠らせられることを願うよ。」


 その言葉に反対する者は居なかった。
 そして人々の視線が向くのは今や権力が無に帰った国王と協力者の姿だ。人々の視線の冷たさに先程までの威勢はどこに行ったのかビクビクとしていて数年老けたようにも見える。


「王とこの男は国を混乱させたとして処罰が与えよう。だが、理由などは聞かない。皆の心の中にも書物にも残さず後世に伝えられずに消えてゆくのだ。」
「それはいいね。ただの人知れず罪を償う罪人と同じ扱いか。」
「それはならぬ。私は勇者の子孫で記録に残るような王なんだ。」
「いや、忘れ去られるのが一番の罰になるだろう。この芸術の国で誰にも歌われることのない存在だ。」


 この場にいた他の誰もが無言だったがその処す方法に異語をとなえる者はいない。
 そしてこの場にいた者たちが街中に伝えに行くことだろう。後はこの国で王や公爵に感化された人たちの処遇だがそれは街民達に任せたら良い。多くの国民が獣人街の人たちと仲も良いみたいだし心配は無い。
 城の鐘につけられた骨の様に密かに設置されているだろう『怨念』の対処として御守の配布は決まっているようだし、それに関しては冒険者ギルドの方も乗り気でいるようだ。どうやら3年前から頭痛の症状のせいで離職率が高くなったし依頼失敗も多くなったという。
 ということは国の周りのモンスターの数が増えている可能性もあるため優先的に配布を受けれることを約束してもらい国民が平等に渡るように手伝いをするそうだよ。

 他の問題と言えば公爵家と次期統治者と言うことだが、せっかく無になったのならそれを利用すればいい。

 巨大な赤子に破壊された現場をよいせと移動してクラウスさんの元にいく。ラウルス侯爵はまだ忙しそうだからね。クラウスさんはその肉体を使って瓦礫の除去をしている。そんな彼に声をかければ大きな瓦礫を端によせてこちらに意識を移してくれる。

 そこで今後の国のあり方について話せば大きな声で笑い『参考にしよう。』とだけ答えてくれる。
 とりあえずしばらくの憂いは取り除いた。


「グレイ。グレイシア!」
「お母さん。」
「ああ。無事だったようで良かった。」


 解決したことを誰かが知らせてくれたようで料理屋の女将さんがグレイと再開していた。普通は喜ばしいことなのだけど、僕の聞き間違いじゃなければ女性名詞が聞こえてきたような。


「グレイ、女のコだったの?」
「うん。そうだよ。」






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