173 / 245
勇者という存在がもたらすもの
僕と感動の再会
しおりを挟むグレイはグレイシアが本当の名前だったようで女将がわざと男っぽい名前で読んでごまかしていた事情を聞いた。
僕もシシリーの時に色々と大変だったのは知っているしそれは納得した。しかし、同じぐらいだと思っていた彼女がなんと年上だった。
ラウルス家の人たちも学園を卒業している僕や兄上が、成人だと思っていたようだが僕は肉体的には未成年のままだ。ラウルス家に勘違いしていたことを謝られたが精神的に彼らより年上ではあるので返答には困ったものだ。
事件の日は自然と解散となったが、勇者のお披露目会でもあったので色々な国の人が来ていた。詳しいことは知らせていないので王の愚行だけが広がるだろう。だけどそれだけなら直ぐに記憶の奥に消えてしまう。それで良いのだ。
こんな目に合わせた非礼として獣人街の職人たち渾身の木細工を手土産に持たせたらみな喜んでいた。音の国の細工や彫刻はどこの国でも愛されているようで0がとてつもない数で取引されることもあるらしい。
会場で骨の鈴を入れられていた箱なら貴族の年収ぐらいになるだろうとのことだ。知らなかったけど。もったいないので鈴を回収して浄化の魔法を掛けた後に希望のある参加者に配布した。回収のための箱を開けるのは兄上が説明書も見ないでパッパッとしてくれ次々と取り出される鈴に苦労して構造を考えた獣人さんが目を丸くしていた。兄上曰く見なくても形状からある程度はわかるのだそうだ。流石はチート。
獣人街のほうは今は落ち着いているようだ。
体調を崩すこともなくなり仕事がスムーズに回るようになったらしい。一部の反獣人の人も居るが多くは獣人たちを気遣い、夜間の音楽を控える様になった。完全にやめないのはやはり音の国というなと芸術の国という通りなで無音なのは可笑しいだろという話が獣人からも出たからだ。
そんな感じて事後処理をしていたある日、グレイシアが会いに来たと連絡があった。あの巨大な王の欲望の犠牲者とも言える赤子を浄化して永年にわたりこの国に縛り付けてしまった聖剣を開放した英雄として今や前以上に人気者だ。なので補助にセシリアさんがついて毎日忙しそうだ。そんな彼女が訪ねてきたのはたぶんアレのことだろう。
「本当のお父さんお母さんに会いたい。」
「うん。待っていたよ。」
セシリアさんからグレイシアの出生の話しを聞くだろうなとは思っていたけど思ったより日にちがかかった。それだけ忙しかったのだろうがもう少し経っていたら国に帰るところだった。
サラート夫妻は今は獣人街の守護者と呼ばれて毎朝拝まれているそうだ。子供と再会したら成仏しようとしていたみたいだが音の国獣人街の結界を担う役目になっているのでしばらくはそのまま気楽に過ごすという。
結界と言えば兄上の膨大な魔力を使い続けるのは問題無いが一応彼は神の国の公爵様なのでちょっと距離が遠い。そこであたりに漂う魔素を魔力に変換させる術式を追加することにした。あたり周辺には兄上と『お願いね』と呟いたら濃度が濃くなってしまったがまあ、サラート夫妻に任せる事にした。
そんな嘆きのサラート夫妻は獣人街の中心に神殿が出来てそこに置かれている。最初は普通に中心部に置いといたら毎朝お祈りに人々が押し寄せて来てはっちゃかメッチャカになってしまったので遠くからでも見ることの出来る神殿を造りそっちの方に向かって祈れと言ったのだ。
「とても立派。」
「職人の親方が張り切ったからね。」
「シンリ様に勇者様。いらっしゃいませ。」
神殿の大きさは2畳にも満たない広さだが天に伸びる様な設計に一人だけ整備を整えたり位牌を守るための人が配置されている。ただその役を誰がやるかでまた揉めた事は内緒だ。
2畳の室内には祭壇が作られていて色様々な花に囲まれてその中心に位牌が置かれ、そこから穏やかな顔つきの双顔一身の人が浮かび上がっている。今日は外に出ていたい気分の様だ。
「サラート夫妻。」
『シンリくん。こんにちは。そちら‥…は。』
「お父さん、お母さん。」
『ああ。この子がそうなんですね。』
「うん。名はグレイシアだそうだよ。」
『愛しいわたしの子。』
その場の6つの目から光るしずくがしたたりおちる。
サラート夫妻とグレイシアがお互いの温もりを感じようと手をのばす。本来なら通り抜けてしまうそのこの行動は指先に当たる感触で奇跡へと変わる。
指先の感触を楽しみ手を握り合う。額を当てて親愛のキスを贈り合う。見ていた管理人は涙を溢れさせて奇跡だと呟やいた。
言葉を交わすこともなく今まで離れ離れだった時間を埋めるように触れ合う時間は短く感じたが日はもう薄暗くなるまで続いていた。
「お母さん、お父さん。守ってくれてありがとう。」
『独りにしてごめん。』
「独りじゃなかったよ。女将さんや冒険者もいたから大丈夫。」
『いい人達に出会えたな。』
「今度紹介するね。」
触れ合うのは今日だけかもしれないが、同じ国に住まうことになった彼等はいつでも出会えるだろう。
0
あなたにおすすめの小説
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する
ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。
皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。
ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。
なんとか成敗してみたい。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
ざまぁされるための努力とかしたくない
こうやさい
ファンタジー
ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。
けどなんか環境違いすぎるんだけど?
例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。
作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。
中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。
……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
気絶した婚約者を置き去りにする男の踏み台になんてならない!
ひづき
恋愛
ヒロインにタックルされて気絶した。しかも婚約者は気絶した私を放置してヒロインと共に去りやがった。
え、コイツらを幸せにする為に私が悪役令嬢!?やってられるか!!
それより気絶した私を運んでくれた恩人は誰だろう?
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる