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海の国と泡と消えゆく想い
開演
しおりを挟むその日は泡が海の中にまで発生するほどに荒れた月夜の日だった。
海を渡り歩き冒険をしていたとある商船が久々に地元に戻ろうとしていた矢先に嵐の夜に遭遇した。船が大きく左へ右へ傾く中、船員たちは船が海に食われないように船の表に出て嵐に対しての対処をしていた。帆を畳み荷物を縛り。そうしている内に一人の男が足を波に掬われて荒れ狂う海へと落ちた。
それを目撃した仲間が皆に声をかけたがこの荒れ狂う海だ。もう助かりはしないだろう。例え今生きていようと暗闇で見通しも悪い夜の海でなおかつこの荒れようでは助ける事は出来ないだろう。これはこの船に乗って何度も似た経験をしている彼もわかっていることだろう。
海の世界ではたまにあることで船員たちは後ろ髪を引かれながらも彼に心で謝りながら作業を再開した。
嵐の日の海は空から色々なものが降ってくる。
一人の少女は空を見上げてその光景を見ていた。この世界でも嵐の時はいつもと違い危険である。使い方も知らぬものや大きな木の欠片などが降り注ぐのだ。皆が早々に家に入り戸締まりを行う。だけども少女は病弱な妹の為に開いていない店をめぐり果物を探していた。熱が出て苦しそうな妹が果物が食べたいと言ったことで探しに出たのだ。両親は自分たちも探しに行くと言ってくれたが、両親の名前を呼ぶ妹を見て妹は寂しがりだから側に居てあげてほしいとお願いしたのだ。
3件目の店の戸を叩こうとした時ふと空の情景に視線がいった。その時に空からキラリと光る何かが落ちてくるのが見えた。痛い透明な雨とは違う。視線を凝らして睨みつけるように見ると空から人が落ちてきているようだ。どうやら人のつけていたネックレスが光輝いてそれが見て取れたのだろう。人は気絶しているようで力無くなすがままに落ちてきている。
この人はここの住人ではない。上で住む人だ。
それではこのままでは危険だ。
慌てて空に浮かび人を回収して月が揺らぐ空に向かってゆく。どんなに荒れた天気であろうとこれ以上この人を傷つけさせるわけにはいかない。
その一心で人を守りながら上昇した。
空を突き抜けるとそこには別の空が拡がっていた。星さえも隠す雨雲のせいで真っ暗闇が辺りを包む。
雨飛沫なのか波の飛沫かわからないが顔に痛いほど当たるなかで少女は辺りを見回しチカチカと暗闇で唯一目についた光のに向かって泳ぎ始めた。光の元にだどりつくと運良くそこは人里の海岸に造られた灯台の麓のようだった。少女はできるまた限り流されないように陸上の方に人を押しやり意識の無い人を介抱する。
本当はもっと安全な所に連れて行きたかったが今はその術が無かった。
よく見ると助けた人は男性のようで気を失っている姿とはいえ彼女にとって初めて近くでみる存在だった。
胸が微かに動くのを見て死んで居ないことに安堵をし、飲み込んだ水を吐き出させようとしていると、そのうちにケホケホと咳き込んで薄っすらと目が開いた。ここまでくれば大丈夫だろうと少女が微笑むと開いた目から覗く太陽のような金色の瞳が驚愕に見開かれた。
少女は陸地の遠くから誰かがここの異常に気が付いた事に気づき、人が集まるのを恐れて国に戻ろうとしたのだが、はっとこの男が何も持っていないことに気が付き少し迷ったが一粒の青色の真珠を手に握らせた。これでこの男が怪我をしていても治療が受けられるだろう。
「ま、て‥…。」
「お大事に。」
男が掠れた声をあげていたがその声は余りにも小さく、気づかぬ少女はカナリアのように澄んだ声をあとに残し戻っていった。
その後、男は付近の住民に助けられて手厚い介護を受けたのち無事に自分の家に戻ることが出来た。家族が仲間から嵐の海に落ちたと聞かされた為、泣かれなごら喜びの再会となったけどその心にはあのときの微笑む美しい少女の姿がが残っていた。
少女はあの後の帰りに運良く嵐で流されたらしき果物を見つけて無事に妹に食べさせることができた。初めて見る果物に妹は大喜びをしてしばらくはその果物を食べたがっていたようだがその日以降その果物は見つけることは出来なかった。
少女もまた探し回ったがやはり見つからない。その際に上に行っては灯台を見ては地上の華やかさに想いをはせる。あそこに行けば妹の欲しがる果物も見たことない物もいっぱいあるだろう。そしてあの時の男もきっと元気にあそこにいるだろう。
自然と口角が上がりまた海に身を沈める。
この世界は不思議だ。空が2つもあるなんて。私の見たことのない世界が幸せでありますように。
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