僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

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海の国と泡と消えゆく想い

僕とぎこちない2人

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 店内に響いた男の驚愕の声。
 男は僕達に向き直るとバルスさんの肩をガシッと掴み揺すりながら詳しい状況を聞こうとしている。前後に揺すられてバルスさんがアワアワしているのでとりあえず、控えていたウォルターに合図を出せば心得たとばかりに取り押さえてくれた。
 こうしてまじまじとみるこの男は日焼けした小麦色の肌に金眼で日焼けして茶色くなった髪をしていて、磨けばいい感じになりそうだ。

 彼の慌てようにお姉さまがはっと何かに気が付いた。


「まさか、お前が探しているという少女はアクア嬢ちゃんだったのかい?」
「ああ。あの嵐の日に助けてくれた少女だ。この真珠も証拠だ。」


 ウォルターに取り押さえられていながらも首元から小さな小瓶に入った大粒の青色の真珠を見せてきた。それを見たアクアがあっと声を出して彼のもとによる。再度ウォルターに合図を出して開放するように指示をだすとすっと離れて、お姉さまの脇についた。おう。上から豊満なお姉さまの夢袋お胸を見ているのはわかっているからな。

 きっとお姉さまもそれには気づいているだろうにそれを無視してアクアに覚えているか問う。


「はい。嵐の日に空から人が落ちてきたので助けました。治療が受けれないと困ると思って真珠を握らせて。」
「間違いないようだね。バルス坊やに人探しを頼もうと思っていたのにもう解決してしまったよ。」
「そんな用事だったんですね。」
「お前の実力を買っているのさ。さて、遅くなったが私は南の海の魔女ポリプスさ。こう見えて人魚だ。」


 自らの正体を明かすと言うことは僕達の事を信用してくれているという証。彼女が人魚なら同じ国に住むというアクアも人魚に違いない。そう分かると色々と点が線に結ばれてゆく。
 アクアが声が出なかったのはヒレを足に変える薬の副作用で、魔女が渡したのはその副作用に対しての薬と言うこと。
 そしてバルスさんを呼び出したのは人魚は地上での制限がかかるので人探しを任せたかった。そんな意図があったのだろう。まあ、こっちは運命の再がもうすでに完了してしまっているけどね。


「あの。俺はフェン・クローデット。先ずは助けてくれて有難う。」
「無事で良かったわ。」
「えっと、それでだな。」
「?。」


 彼女と目線が合わせられないのか頭を掻きながらそっぽを向くフェンの態度で何が言いたいのか分かる。
 きっと一目惚れであろう。命が危ないときに助けてくれた美しい少女。自ら大切にしていた宝物を見知らぬ他人が困らないようにと差し出すことのできる心の優しさ。惚れないわけがないよな。

 一点だけ問題があるが今は彼の次なる言葉を待つことにする。


「お、俺、お礼に港町を、案内するよ。」
「まあ、嬉しいわ。妹に果物をあげたいの。」
「オッケー、美味しい所を案内するよ。」
「優しいのね。」


 何だろう。何かもどかしい。
 でも、これでバルスさんの用事も無くなったし僕の用事を終えてお土産を買ったら帰るかな。


お出掛け楽しみね。」
「え‥…。」
「違うのよ。そうじゃないのよ。」


 にっこりと花が咲くような笑顔と共に発せられた言葉にフェンは固まり、ポリプスさんはやっぱりと言うように頭を抱える。
 苦笑いを浮かべる僕達を見て思い出した様にハッとするアクア。どうやら僕達が海の国に用事があるのを思い出してくれたみたいだ。


「用事があったのでしたね。ごめんなさい。」
「いや。町を案内してくれる奴が見つかって良かったな。」
「そういえば海の国へ用事があるっていってたね。差し支え無ければなんの用事か教えてもらえるかい?」


 悪い人たちでは無さそうだしそのうちに海の国からお知らせはされるだろうし言っても大丈夫かな。


「僕は女神様から海の国への加護を届けに来ました。」
「な、なんだって?」
「聞いた話によると加護を貰う神事の日に嵐がきて加護を渡せなかったと、ちょうどお祈りに来た僕に託されたのです。」
「なんと。こんなところにいる場合ではないじゃないか。」


 急いで届けるべきものだとは思うけど、僕が港町に来た時点で加護は発動しているようにかんじている。その証拠に港町から見えていた黒い雨雲がここに来る前には消えていた。
 波も落ち着いていてこれならゆっくりでも良いかなと、思ったからこそバルスさんの用事がてらアクアの付き添いをしていたのだ。
 ポリプスさんの驚きも分かる。
 まさかの昔の教え子が連れてきた子の一人が海の国の重要なものを持っている人だとは思わない。


「出来れば道案内を頼みたいのです。」
「そうだね。私が行くよ。フェンはアクア嬢ちゃんをちゃんとエスコートしておやり。」


 ちらっとぎこちない二人を見ればポリプスさんは心得たとばかりに僕の話に乗ってきた。彼に人魚と人との恋の障害を乗り越える位の気持を持っているならまた会うことになる。その前にふたりきりで進展させるのも大切な事だ。

 早く言えば馬に蹴られたく無いと言う事なのだけど。

 ポリプスさんが店仕舞いの支度をして看板や商品を片付けて皆で店を出ればもうすでにお腹の空く昼頃になっているようだ。僕達はこのまま海の国に行くことにして二人と別れた。アクアの後ろでフェンが感謝の意を表しているのにまた苦笑い。


「アクア、また海の国で会えるといいね。」
「ええ。そしたらお茶でもしましょう。」
「‥…それは気になる。」


 海のでお茶ってどうなっているんだろうか。

 こうして僕達は海の国に向かった。




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