僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

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海の国と泡と消えゆく想い

僕と南の海の国

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 南の海というだけあってその国の周りには色とりどりの世界が広がっていた。
 天気が良くなって海の青色がまさにスパルタブルーだ。一言で青いとは言えない緑がかった色合いの海に珊瑚の赤や黄色に魚のキラメキ、海藻の濃い緑。この風景だけで観光になりそうな世界観に僕達が見とれていると、ポリプスさんが手招きで呼んでくれた。

 僕達は今南の海に潜っている。

 港町にある南の海の国への入り口に門番がいてそこから魔法薬を貰って海に潜るのだ。
 その魔法薬の効果時間は約8時間ほどであり8時間をすぎると段々と苦しくなって終いには溺れてしまうのだ。
 なので門番は潜っていく人には名前を書いてもらい帰りにまた寄ってもらい名簿からその人の名前を消すのだという。もちろん地上に遊びに来た人魚も同じ様にがかかっている。人魚の場合は地上で呼吸ができなくなると言うことはないらしい。

 ポリプスさんは先生をしていたときは自らにあてがわれた部屋に水の魔法を使い、時間が空けばそこでのんびりと浮かんでいたそうだ。バルスさんの話によれば簡単に想像するなら部屋を開けたらゼリーがあったと言うことらしい。


「まあ、私のことは良いさ。それより女神様の使者になるって貴方は何者なの?」
「ただの暇人だよ。」
「‥…バルス坊や。」
「暇人ということです。」


 実際、冒険したり兄上の手伝いしたりと自由に生きている暇人だ。
 魔神の愛し子だってなんかの職業ではないからね。


「暇人にしては海の精霊がざわめいているのだけど。」
この綺麗な風景をゆったりと楽しみたいだけ何だけどね。」


 確かに精霊がソワソワしているのが肌に感じる。
 数年前に新たな精霊王関連で僕も巻き込まれた際に見ていた者もいるだろうし、元々僕らに好意的だからそうなるのはしかたがない。なので、独り言のように呟けば自ずと精霊が理解して大人しくなる。


「不思議な客人だね。」
「先生、神殿まではあとどれくらい掛かりますか?」
「ああ。あそこに見える珊瑚に囲まれた城が神殿に繋がる王城さ。王様に持っていけばあとは自然と奉納するだろう。」
「それって直接行っても良いものなの?」


 指さされた先にはこれまたカラフルな珊瑚が散りばめられた城が見えた。
 城の背後には巨大なシャコ貝の様な物があり、まるで城がシャコ貝に眠る秘宝の様に見える。あれならもし侵略されたとしても籠城はしやすいだろう。

 その城に向かわないといけないのだがまさか王様が住んでいるところにずけずけと入るわけにはいかない。ウォルターも指摘してきたように普通はそう考えるのだがポリプスさんは盛大に笑い声をあげてその考えを否定した。


「大丈夫。私も付いているし、女神様の使者だろう?それだけで十分。」


 ついてきなと色気のある表情で先導してくれるポリプスさんに着いていくと三叉の槍を装備した二人の半魚人が入り口を守っている場所に来た。彼女の姿が見えたところで半魚人の兵士はビシッと敬礼をして挨拶をする。
 ポリプスさんが僕達の説明をしてくれた様で、兵士の一人が城に掛けてゆく。

 暫く待っていると兵士より派手な姿の騎士が迎えに来たようだ。
 騎士もポリプスさんに挨拶をすると僕達を一瞥して迎えいれた。どうやら彼は人間に余りいい感情はないみたいで、睨みつけるような一瞥だったがそんなのは貴族の世界じゃ珍しくも無いので無視だ。


「ポリプスさんは人気者なんだね。」
「先生は凄い人ですから。」
「あんなに綺麗な方に教わってたなんてバルス先生が羨ましい。」
「ウォルターくん。先生はやめてください。」


 ヒソヒソと内輪だけで内緒話をしていると直ぐに開けた場所にでた。
 巨大な貝で造られた螺旋階段に光る海虫達が照らす。陽の光がこちらまで届くように設計されたこの場所はこちらを警戒する兵士や騎士さえ居なければ楽しめただろう。
 観光ではなく城に用事がある人間に警戒するのはわかるけど。


「魔女様。人間たちから離れてください。」
「いいえ。彼らは使命を持ってきているのです。私はその使命を見届けたいわ。」
「魔女様‥…。」
「良いではないか。せっかく人達が遊びに来たのだろう。歓迎しよう。」


 警戒する彼らがポリプスさんを僕達から引き離そうとするけど、彼女は素知らぬ顔。どうしたものかと悩んでいる彼らに声を掛けたのは螺旋階段から姿を現した巨大な人魚だった。
 白い髪に白いひげ。温厚そうな表情の彼の尾ビレはクジラに似ていて鱗はなくすべすべだ。頭には斜めにつけた王冠があり彼がこの城の主であることを示していた。
 ならばと身体を屈めて頭を下げる挨拶をする。


「お初にお目にかかります。神の国フェーリスから来ましたシンリ・ディーレクトゥスです。控えておりますのは共に参りましたバルスとウォルターです。」
「丁寧な挨拶をありがとう。わしは見ての通りこの国の王のガーランド・S・マリーンだ。」
「マリーン王に届け物がございます。」
「うむ。魔女が言うにはこの国の大切な物だとか。」


 その言葉に頷いて空間魔法から宝玉の入った箱を取り出す。
 そしてその箱を王が魔法を使い引き寄せると中を確認するため箱を開けたとき、中から女神様カトレア様が現れた。それは本人ではなく幻影ではあったがその威圧感は本物の様だ。
 周りの兵士を始め王も彼女の前では膝を付き頭を垂れる。
 僕も皆に倣って同じ動きをしていたらカトレア様(幻)が僕だけいたわるように立たせてくれた。



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