179 / 245
海の国と泡と消えゆく想い
僕と南の海の国
しおりを挟む南の海というだけあってその国の周りには色とりどりの世界が広がっていた。
天気が良くなって海の青色がまさにスパルタブルーだ。一言で青いとは言えない緑がかった色合いの海に珊瑚の赤や黄色に魚のキラメキ、海藻の濃い緑。この風景だけで観光になりそうな世界観に僕達が見とれていると、ポリプスさんが手招きで呼んでくれた。
僕達は今南の海に潜っている。
港町にある南の海の国への入り口に門番がいてそこから魔法薬を貰って海に潜るのだ。
その魔法薬の効果時間は約8時間ほどであり8時間をすぎると段々と苦しくなって終いには溺れてしまうのだ。
なので門番は潜っていく人には名前を書いてもらい帰りにまた寄ってもらい名簿からその人の名前を消すのだという。もちろん地上に遊びに来た人魚も同じ様に制限がかかっている。人魚の場合は地上で呼吸ができなくなると言うことはないらしい。
ポリプスさんは先生をしていたときは自らにあてがわれた部屋に水の魔法を使い、時間が空けばそこでのんびりと浮かんでいたそうだ。バルスさんの話によれば簡単に想像するなら部屋を開けたらゼリーがあったと言うことらしい。
「まあ、私のことは良いさ。それより女神様の使者になるって貴方は何者なの?」
「ただの暇人だよ。」
「‥…バルス坊や。」
「暇人ということです。」
実際、冒険したり兄上の手伝いしたりと自由に生きている暇人だ。
魔神の愛し子だってなんかの職業ではないからね。
「暇人にしては海の精霊がざわめいているのだけど。」
「僕はこの綺麗な風景をゆったりと楽しみたいだけ何だけどね。」
確かに精霊がソワソワしているのが肌に感じる。
数年前に新たな精霊王関連で僕も巻き込まれた際に見ていた者もいるだろうし、元々僕らに好意的だからそうなるのはしかたがない。なので、独り言のように呟けば自ずと精霊が理解して大人しくなる。
「不思議な客人だね。」
「先生、神殿まではあとどれくらい掛かりますか?」
「ああ。あそこに見える珊瑚に囲まれた城が神殿に繋がる王城さ。王様に持っていけばあとは自然と奉納するだろう。」
「それって直接行っても良いものなの?」
指さされた先にはこれまたカラフルな珊瑚が散りばめられた城が見えた。
城の背後には巨大なシャコ貝の様な物があり、まるで城がシャコ貝に眠る秘宝の様に見える。あれならもし侵略されたとしても籠城はしやすいだろう。
その城に向かわないといけないのだがまさか王様が住んでいるところにずけずけと入るわけにはいかない。ウォルターも指摘してきたように普通はそう考えるのだがポリプスさんは盛大に笑い声をあげてその考えを否定した。
「大丈夫。私も付いているし、女神様の使者だろう?それだけで十分。」
ついてきなと色気のある表情で先導してくれるポリプスさんに着いていくと三叉の槍を装備した二人の半魚人が入り口を守っている場所に来た。彼女の姿が見えたところで半魚人の兵士はビシッと敬礼をして挨拶をする。
ポリプスさんが僕達の説明をしてくれた様で、兵士の一人が城に掛けてゆく。
暫く待っていると兵士より派手な姿の騎士が迎えに来たようだ。
騎士もポリプスさんに挨拶をすると僕達を一瞥して迎えいれた。どうやら彼は人間に余りいい感情はないみたいで、睨みつけるような一瞥だったがそんなのは貴族の世界じゃ珍しくも無いので無視だ。
「ポリプスさんは人気者なんだね。」
「先生は凄い人ですから。」
「あんなに綺麗な方に教わってたなんてバルス先生が羨ましい。」
「ウォルターくん。先生はやめてください。」
ヒソヒソと内輪だけで内緒話をしていると直ぐに開けた場所にでた。
巨大な貝で造られた螺旋階段に光る海虫達が照らす。陽の光がこちらまで届くように設計されたこの場所はこちらを警戒する兵士や騎士さえ居なければ楽しめただろう。
観光ではなく城に用事がある人間に警戒するのはわかるけど。
「魔女様。人間たちから離れてください。」
「いいえ。彼らは使命を持ってきているのです。私はその使命を見届けたいわ。」
「魔女様‥…。」
「良いではないか。せっかく人達が遊びに来たのだろう。歓迎しよう。」
警戒する彼らがポリプスさんを僕達から引き離そうとするけど、彼女は素知らぬ顔。どうしたものかと悩んでいる彼らに声を掛けたのは螺旋階段から姿を現した巨大な人魚だった。
白い髪に白いひげ。温厚そうな表情の彼の尾ビレはクジラに似ていて鱗はなくすべすべだ。頭には斜めにつけた王冠があり彼がこの城の主であることを示していた。
ならばと身体を屈めて頭を下げる挨拶をする。
「お初にお目にかかります。神の国から来ましたシンリ・ディーレクトゥスです。控えておりますのは共に参りましたバルスとウォルターです。」
「丁寧な挨拶をありがとう。わしは見ての通りこの国の王のガーランド・S・マリーンだ。」
「マリーン王に届け物がございます。」
「うむ。魔女が言うにはこの国の大切な物だとか。」
その言葉に頷いて空間魔法から宝玉の入った箱を取り出す。
そしてその箱を王が魔法を使い引き寄せると中を確認するため箱を開けたとき、中から女神様が現れた。それは本人ではなく幻影ではあったがその威圧感は本物の様だ。
周りの兵士を始め王も彼女の前では膝を付き頭を垂れる。
僕も皆に倣って同じ動きをしていたらカトレア様(幻)が僕だけいたわるように立たせてくれた。
0
あなたにおすすめの小説
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する
ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。
皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。
ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。
なんとか成敗してみたい。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
ざまぁされるための努力とかしたくない
こうやさい
ファンタジー
ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。
けどなんか環境違いすぎるんだけど?
例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。
作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。
中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。
……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
気絶した婚約者を置き去りにする男の踏み台になんてならない!
ひづき
恋愛
ヒロインにタックルされて気絶した。しかも婚約者は気絶した私を放置してヒロインと共に去りやがった。
え、コイツらを幸せにする為に私が悪役令嬢!?やってられるか!!
それより気絶した私を運んでくれた恩人は誰だろう?
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる