180 / 245
海の国と泡と消えゆく想い
僕とお祝いムードの海の国
しおりを挟む『この度は加護が遅れて悪かった。』
「いえ、」
『この者に宝玉を託す際にこの幻影も仕込ませて貰った。』
「そうなのですね。」
幻影とはいえ女神像と同じ姿の煌めくブロンドをラフにまとめ、優しそうな相貌を持つ人外の美しさを持つカトレア様が目の前に現れる。返事はいらない存在とはいえ王様は冷や汗を浮かべてそんなカトレア様にでもとても低姿勢。この世界の管理を任されている方だからそうなるのは分かる。そんな彼女の脇に立たされている僕に何者だという視線が集中するのは当然で妬みの視線も感じるところだ。
『この者は快く使者になってくれた少年だ。手厚く歓迎してやってほしい。』
「もちろんです。」
『この海に良き息吹が巡ることを願っている。』
一方的になってしまうのは幻影だからなのだが最後に僕の方に微笑みかけてくれるのを見ると本当に幻影なのか疑わしいところだ。
女神様が居なくなり、静かだった周囲にざわめきが起こる。目の前にこの世界の秩序を保つ方が現れたとなれば血気立つのも当然であり、先程までと僕達に向ける視線の意味合いも変わると言うものだ。
届け物も終えたし帰りたいところだが幻影といえど女神様降臨しなおかつ今年は無理だと思っていた女神様の加護が与えられた。
王様は女神様の前とは打って変わって盛大に喜んでいる。
「加護を得たことを知らせるパーティーを行う。是非とも使者殿には参加して頂きたい。」
「僕達は人なので今からパーティーの日まで待つと言うのは。」
「無論、一度地上に上がってもらい準備が出来たら魔女経由でしらせよう。大体準備や招待状で一週間ほどで開催できよう。」
「僕達の事は気にせず‥…。」
「ならん。女神様が手厚く歓迎して欲しいとおっしゃっていたからな。」
「ここまで来ると王様は頑固だよ。」
ポリプスさんにヒソとそう言われてしまえば諦めるしかない。
パーティーの参加を承諾すると王様は直様に準備に取り掛かり始めた。その姿を後目に僕達は来たときと同様に騎士に案内されて城を出た。
しかし先程とは異なり、騎士がまるで名誉だと言うように晴れやかでありながら名残惜しそうな目線に見送られて城を後にしたのだ。
「まさか、加護を持ってきていたとはね。」
「こんなに騒ぎになるならいつも通り夜に侵入したほうが楽だったな。」
「ははは。聞かなかった事にしておくよ。」
「それにしても一週間か。」
パーティーを開く期間としてはとても短いが待つ身としては長いことこの上ない。公爵家はコウにぃが居るからこれくらいどうと言うことはないが、こうなれば近場の冒険者ギルドに現在地報告をして依頼をこなしつつ待つことにするか。
その前に泊まる宿も探さなくてはならない。
港町は貿易も行っているから宿屋はあるとは思う。どうせなら料理が美味しい所だと文句はない。
「ポリプスさん美味しいご飯の食べられる宿屋ってある?」
「そうさね。私はこっちの住人だからよくわからないけど、フェンなら詳しいから住所あげるわ。」
とりあえずギリギリまで海の国を回った後にフェンの所に行ってみよう。
海の国は東西南北にそれぞれ存在しているがそれぞれに特徴がある。北は氷が浮き寒い水の中にあるし、西は少し寒いが氷とまではいかない、東は温かいが南ほどではない。南が一番暖かく年中入っていても大丈夫と言われている。
そんな海の国はそろそろ分かると思うが人魚達の国である。
昔は人間たちと交流を断っていた所もあるがここの港町の様に海を守るために人が集まって人魚と共存する者たちも多い。
交流を断っていた時代人魚達は人達が海に落としたもので色々と遊んでいたという歴史があり博物館にはその歴史が飾られて、人魚も人も楽しんでいる。
人魚の生活はわざわざ海の国へ来ないと見れないのでせっかくなので楽しませてもらう事にしたのだ。
「それじゃあ、遅いけどご飯にするかい?」
「何を食べているかは気になる。」
「もっぱら火は使えないから生のものばかりだよ。」
美味しいステーキとかは無いよと言ってカフェらしき所の脇を通るとわかめのサラダになにかの切り身のカルパッチョらしきもの。
確かに体温も低い人魚が揚げ物なんてやっては熱などで火傷をしてしまうから大変な事になるだろう。
「人が観光にくる様になってからは専用の店もあるから大丈夫だよ。」
ポリプスさんが食事の為に案内してくれたのは魔法で加工されたお店だった。中に入ると水は消えていて中には人の姿。人魚もいるがその前に出されているのは火傷しないように工夫された料理ばかり。
店員は僕達に気がつくと側に寄ってくる。それに対しても仲介の様に間に入ってくれるから助かった。魔女は人魚でもあるが今は人になっているため人と同じものでも大丈夫だそうだ。
その変身薬も安くは無いので先程も言ったが人魚姿のままの人とがいるが、ちゃんと店側が対応してくれるのだという。
ちなみに人魚の姿の時はエラの部分を水の膜で覆うことで数時間なら地上でもそのままの姿で行動が可能らしいが、幾分足はヒレなので歩くことが出来ないし、陽の光で焼けてしまうらしい。
僕が人魚を見ているのをみて、興味があると判断したポリプスさんは人魚に付いてとあの変身薬について話してくれた。
「改良品が出るのは良いのだけど数年前に質の悪い変身薬が安価で売られてたのだけど、それが副作用が酷くてね。声が出ないのはまだいい方で、切れる前に海に入ると泡になって消える事もあったから大変だったよ。」
「もしかして、アクアの声が出なかったのって。」
「多分その副作用だね。私の作った変身薬で上書きしたから大丈夫だよ。」
その事件は国が重くみた様で薬を回収したらしいが安価の薬はいつの時代でも何処も欲しい物。危険性を知っていても使うものが居るようで排除するのに時間がかかったのだとか。アクアも密かに隠し持っていたのを妹の為に使用したのだろう。
これでポリプスさんと再会できなかったら危なかった。
0
あなたにおすすめの小説
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する
ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。
皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。
ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。
なんとか成敗してみたい。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
ざまぁされるための努力とかしたくない
こうやさい
ファンタジー
ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。
けどなんか環境違いすぎるんだけど?
例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。
作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。
中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。
……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
気絶した婚約者を置き去りにする男の踏み台になんてならない!
ひづき
恋愛
ヒロインにタックルされて気絶した。しかも婚約者は気絶した私を放置してヒロインと共に去りやがった。
え、コイツらを幸せにする為に私が悪役令嬢!?やってられるか!!
それより気絶した私を運んでくれた恩人は誰だろう?
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる