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海の国と泡と消えゆく想い
僕と商人のおじさん
しおりを挟む海の探索が終わり地上に戻ってきた僕達はポリプスさんと別れて宿探しをしていた。海の国の入り口ともあって宿屋は多いがどこの場所が良いなどという情報はざんねんながらない。ギルドに所在の情報を提出しに行ったのだが対応してくれたのはまだ新人の少年で僕の姿に見下せる対象になったようで、不愉快な思いをしたから早めに出てきてしまった。なので宿屋の情報を聞けなかったのだ。
今はポリプスさん教わったフェンに関わる住所を見ながらリゾート地の様な住宅の中を歩いている。港に近いところは貿易も盛んだからか様々な商品があって目移りするぐらいカラフルだったが、一歩こちらにはいると白い壁と赤い屋根とが基調とした風景に変わっている。ここから見える景色は確かに感動を覚えるほどだ。
そんな中にフェンの仕事場があるようだ。
壁が類にもれずに真っ白で赤い屋根は今や夕日に当たり真っ赤に染まる。他の建物より大きく造られているここは出入り口に『クローデット商会』と描かれている。
何処かで聞いたことがある名前だなと思っていたのだけど『クローデット商会』は我先にと兄上もといアシュレイ公爵の商品を遠くから買いに来た団体だ。
なんで今まで思い出さなかったのかと言われたらフェンとは初対面であることと、『クローデット商会』とは主に兄上とアキさんが対応していたからだと思う。
なんとも世間は狭いものだ。
商会の中に入るとそこには海を渡ったその先に続く国の商品が並び、その部屋に対して少なくはない人数の人々がせわしなく動いていた。
そこでフェンが机に向かい何かをしている姿がみえる。このままずけずけと入る程世間知らずでは無いので近くを通りかかったお兄さんに呼んでもらう事にした。
「坊っちゃん。お客さんです。」
「ん~。」
「坊っちゃん!可愛い娘が来てますって。」
「アクアか?」
最初の一声では反応が鈍かったが、可愛いと言う単語で飛び上がるようにして机から飛び上がった。呼んでくれたお兄さんに感謝を示してから、やっとこちらを見たフェンに手を振っておく。
「何だ。お前らか。」
「仕事中悪いね。僕達暫くこの町に滞在することになってね。良い宿屋知らないかい?」
「魔女に聞けば良いだろ?」
「彼女から君を紹介されたんだ。」
「たく。用事を終えたら帰るんじゃなかったのかよ。」
おやおや、どうやらあの時の心の声が漏れていたらしい。
そこで海であったことを掻い摘んで説明する。僕達だって直ぐに帰りたかったのだけどねと念を押しながら。
最初はげっとした顔をしていたが海の国の王がパーティーを主催するとなった話をし始めてからは興味を持ったようで真剣に話を聞き始めた。
大体の説明を終えると彼は紙とペンを取り出してサラサラと地図らしきもの書き出し、最後に紋様の入ったシーリングワックスで印を付ける。
「この町一番の宿屋を紹介してもいい。」
「‥…条件は?」
「話が早くて良いな。アクアの様子を見てくれないか?」
「はあ?」
どうやら僕達と別れた後にデートらしきものはやれたらしいがアクアの様子が普通と違うらしい。再会したばかりなので彼女の普通はわからないが今まで人を見てきた中で何か抑え込んでいるような危うさを感じたそうだ。
「これでも商人を十数年続けているからな。見る目は鍛えている。アクアの憂いを晴らす手助けは何でもする予定だ。だけど、他人の意見も聞きたい。そこでお前達が様子を見てきて欲しいと言うことだ。」
「まあ、お茶に誘われているからそれぐらいは良いよ。」
「てか、十数年商人やってたって何歳なのよ。」
「45だが?」
「おん?」
いや、ウォルター聞いといてその反応は無いよ。
ちょっと老けているなぁとは思っていたけど実際思っていた年齢よりは高かった。ポリプスさんから聞いたけどアクアは確かこの間20歳になったと言っていたな。倍以上違うぞ。
「す、好きになったんだからしょうがないだろう。」
「彼女が好きになるとは保証はないけどな。」
「ぐぬぬ。」
「まあ、様子を見に行くときに探っとくよ。」
「頼む。」
フェンから紙を受け取りこれ以上仕事の邪魔にならないようにすんなり退散することにした。
紙に書かれた宿屋は豪華な佇まいというよりアットホームな雰囲気な場所だった。食堂もついていて朝ごはんは無料で食べられるらしい。紹介されたと紙切れを見せればそこにある印をみて慌てて一番いい部屋を用意してくれた。
ただ良いところはそんなVIP対応でも変に屁理屈にならない宿屋の皆だ。
普通に部屋に案内してもらいお風呂も他の宿泊者と同じところではいれる。希望すれば貸し切りにもしてくれるらしい。当たり障りのない従業員はちゃんと管理しているようで変に話しかけないし満足だ。冒険者ギルドの新人もここで鍛えて貰えばいいのに。
「パーティー用の服を用意しないとですね。」
「それはクローデット商会に任せよう。少ないけど装飾品は持ってきてるからそれで十分だとおもう。ウォルターは騎士だし服は要らないだろう。」
「ええぇ。お洒落したい。」
「武器はどうするんだ。」
「それは腰に付けておくさ。」
どうやら明日は買い物をしないといけないようだ。
ウォルターにはせっかくだから護衛騎士でも参加できるようにちゃんとした礼服を用意しないと駄目のようだ。大剣使いなのに腰に指す得物は駄目だ。ならちゃんとトータルコーディネートをしようじゃないか。
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